血尿は、いろいろな原因で表れるおしっこの症状の一つです。
ストレスも犬の血尿の原因の1つになります。
血尿は、必ずしも目に見える真っ赤な色(肉眼的血尿)だけでなく、色の変化がわからない、気付きにくいものもあります。
今回は、血尿の確認方法や対処法についてお伝えしますね。
犬の血尿を発見するポイント
おしっこは、犬にとっても大切な健康のバロメーターです。
私達も、健診時や医療機関を受診した時には、尿検査をすることが多いですよね。
尿検査は痛みなどを伴う検査ではないので、体に負担もかからず、手軽にできるスクリーニング検査です。
尿から得られる情報はたくさんあります。
尿からの情報は、今後どのように治療を進めていくかの目安になります。
普段、何気なく見ている犬のおしっこですが、まずは正常な尿の状態を知っておきましょう。
犬の正常な尿と異常な尿
犬の正常尿は、薄い黄色で濁りなどがなく透明感があり、尿臭はありますが強い腐敗臭などはありません。
もし強いにおいがあるとすれば、それは細菌感染が原因になっている可能性があります。
身体に水分が不足している時は、濃縮して色も濃くなります。
脱水がないのに常に濃い黄色の尿は、ビリルビンの混入が原因に考えられます。
ビリルビンは赤血球の代謝物質の黄色の色素であり、肝機能を図る数値の1つです。
肝機能の異常があると体内のビリルビンは増え、肌が黄色く見えます。
これが黄疸と呼ばれ、白目の部分や耳の内側の皮膚が黄色く変色していれば、黄疸が出ているサインです。
黄疸がある時の尿は濃い黄色になり、ビリルビン尿と呼ばれます。
尿は、簡単な検査で尿比重(水と比較した重さ)を測定して数値化できます。
尿比重の正常値は1.015~1.040の範囲内です。
嘔吐や下痢で脱水になると、尿比重の数値が高くなり濃縮を示します。
反対に、極端に薄い低比重尿が続くと、腎臓の濃縮力に問題があると考えられます。
低比重尿は、腎不全や尿崩症などの病気の可能性もあります。
尿のPHの正常値は5.5~7.0の範囲内です。
PHは水素イオン指数のことで、酸性かアルカリ性かの液性を表します。
7.0を中性とし、それを基準に数字が小さいほど酸性に近く、大きいほどアルカリ性に近づきます。
PHは、食事内容にも影響されます。
このPHは何の参考になるかと言うと、アルカリ性尿では、ストルバイト結晶と呼ばれる尿路結石の元になる物質ができやすくなるのです。
1日尿量は体重1kgあたり20~45ml程度が正常です。
60ml以上で、多尿という症状の診断の目安になります。
血尿
見ただけですぐにわかるような、赤い血液まじりの色をした尿を「肉眼的血尿」と呼びます。
でも血尿はそれだけではなく、ピンク色や茶色など、薄っすらと色が着いているだけの血尿もあるのです。
また、見た目は全くわからない血尿もあります。
ちなみに、見た目ではわからなくても、尿に血液が混じっているかどうかは、潜血反応という簡単な検査で診断可能です。
見た目は赤い色で血尿に見えるものも、区別が必要です。
血尿には
- 血尿:赤血球が混じっている(本当の出血)
- 血色素(ヘモグロビン)尿:赤血球の成分であるヘモグロビンの色素が混じっている
があります。
さらに区別が必要なものに、筋組織の成分であるミオグロビンという物質が壊されて混じる「ミオグロビン尿」というものもあります。
ミオグロビン尿は色が赤いので血尿に見えますが、これは血液ではなく血尿とは違うものです。
血尿を厳密に確認するには、尿を遠心分離にかけて400倍顕微鏡で検査します。
肉眼的にわからない血尿であっても、顕微鏡下の視野に5個以上の赤血球が認められるものは血尿であり、「顕微鏡的血尿」と呼ばれます。
顕微鏡の尿検査では、血尿以外にも、尿路結石の原因になるストルバイト結晶や、細菌感染を意味する白血球や細菌を調べることができます。
肉眼的血尿を確認する方法
室内でペットシーツを使っているなら、白いペットシーツにすれば、尿の色を確認することは簡単にできますね。
でも、外で排泄する犬などは色の確認が困難かもしれません。
そこで、これは一つの方法ですが、白い使い捨てトレー(総菜などに使われるトレー)を散歩の時に持参してみるのもおすすめです。
排尿時に、そのトレーを受け皿にするとどんな色の尿か確認することができますよ。
また、検査で病院に持参する為に採尿が必要な時は、ペットシーツをわざと裏返しに使って、防水面に排泄させてみて下さい。
こうすると、染み込まずに溜まった尿をスポイトやシリンジなどで吸って採取できます。
うちの犬も一時期、膀胱結石の観察の為、受診のたびに採尿が必要でした。
私は、シートは裏返さず、排尿時に後ろから容器で急いで吸って採取していました。
採取には、スポイト代わりに、百均などで売っているお弁当用の醤油入れのプラ容器を使っていましたが、これもなかなか使えましたよ。
採尿の必要はなく色を確認するだけなら、排尿後ティッシュペーパーなどで拭いてみましょう。
そのままティッシュをビニール袋に入れて病院に持参し、獣医師に見せるとよいですね。
血尿の原因になる病気
《血尿の原因になる病気》
- 尿路結石
- 膀胱炎
- 中毒
- 感染症
- 炎症や腫瘍
尿路結石は、ストルバイトなどが原因になって、尿の流れる通路(尿路)に石ができる病気です。(腎・尿管・膀胱・尿道等の結石がある)
《犬の尿路系の図》
石は尿路の壁を傷つけながら動くので、その傷からの出血が血尿の原因になります。
石が完全に詰まってしまうと尿は出なくなり、強い痛み症状になって、尿毒症に移行するなど重症化の危険があります。
膀胱炎は、膀胱の細菌感染によって炎症が起き、血尿の原因になります。
人でも同じことが言えるのですが、細菌感染は尿道が短いメスの方に起こりやすいです。
膀胱炎は慢性化したり再発したりしやすい病気です。
中毒の時にも血尿は起こります。
この時の血尿は、血色素(ヘモグロビン)尿です。
玉ねぎなどのネギ類やチョコレートなどの食べ物には、犬には代謝できない成分が含まれています。
このような食べ物を犬が誤食すると中毒を起こし、赤血球が壊されることが血尿の原因になります。
感染症も血尿の原因になります。
血尿を引き起こす感染症には、フィラリア(蚊による感染症)・バベシア(マダニによる感染症)・レプトスピラ(ねずみの尿が媒介する感染症)などがあり、この時の血尿も血色素(ヘモグロビン)尿です。
前立腺肥大や前立腺炎はオスの老犬に発症する病気で、主な症状は排尿困難であり、血尿の原因にもなります。
他にも、直腸や生殖器、脾臓、肝臓の癌などの腫瘍も血尿(血色素尿)の原因になります。
ストレスも血尿の原因になる
猫には、ストレスが原因になる特発性膀胱炎という病気があることがよく知られています。
人も、ストレスが血尿の原因になることがあり、犬も同じ意味で考えてよいでしょう。
この場合、ストレスそのものが血尿を引き起こす直接の原因になるのではなくて、ストレスが蓄積して健康状態が悪くなることが、血尿の原因を引き起こすという理屈です。
ストレスで心身に負担がかかっている状態は、疲労を招いて免疫力も低下することがよく知られていますね。
免疫力の低下は、膀胱炎を始めとして、様々な感染症にかかるリスクが高くなります。
さらに、ストレスや疲労の蓄積による体調の悪化は、元々あった腎疾患などの悪化を招きやすくなります。
このような病気は血尿の原因になり、ストレスと血尿が関連づけられる理由はそこにあると考えられます。
また、激しい運動により身体の負荷が大きくなると、血色素尿の原因になることもわかっています。
本来、運動は犬のストレス解消効果があるはずのものですが、それが過剰になると身体に負担がかかります。
それが血尿の直接の原因になったり、ストレスを蓄積させる原因になります。
血尿の治療と予防のための対処法
血尿以外に嘔吐や下痢などの随伴症状がある場合、容態が急変する可能性もあるので緊急を要します。
特に中毒の心当たりがある場合、全身状態が悪い・ぐったりしている・舌が白い(蒼白である)などは緊急性がある状態です。
このような時は、すぐに医療機関を受診する必要があります。
血尿の治療は、それぞれの原因ごとの治療になります。
感染が原因の血尿に対しては抗生剤などが投与されます。
結石が原因の場合は、尿閉に対する処置や石を取り除く手術がおこなわれます。
また、中毒に対しては胃洗浄などが行われます。
医療機関で行われる治療と並行して、飼い主にできることは、日常生活の中で再発の原因になるものを取り除く工夫や免疫力を高める工夫だと思います。
ストレスを緩和し、快適な暮らしを整えることは、犬の体力や免疫を高め、病気の再発予防にも大事な要素になります。
繰り返される膀胱炎が血尿の原因になっている場合などは、犬に何らかのストレスがかかり続けている可能性もあります。
ストレスの原因を探り出し、それを取り除く、または犬から遠ざけるなどの対策を考えてみて下さい。
ストレスを上手に発散できるような場面を作ってあげましょう。
まとめ
犬の血尿の原因で多いのは結石と膀胱炎です。
ストレスが高まると免疫力が低下し、このような病気をたびたび再発しやすくなります。
犬の健康管理は身体と共にメンタルケアも大事です。
どんな環境でもストレスはゼロにはなりませんが、蓄積させないようにすることは飼い主さんの工夫次第です。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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