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犬の熱中症を発症させやすい環境・症状・死亡率について

♦救急

熱中症は夏場の話と思いがちですがそうではなく、条件が揃えばいつでも発症する危険があります。

私は人の救急で勤務していた時に熱中症と遭遇していましたが、熱中症は短時間で重症化し、症状が進行すれば命も危険に陥り大変怖いです。

昨年、車内でチワワ6匹亡くなった話がSNSで炎上しましたが、犬が熱中症で亡くなる話は悲しいけどよく聞くように感じます。

犬の命を守るために、犬の熱中症が起こりやすい環境や症状についての情報共有したいと思います。

熱中症は短時間で起こる全身疾患と考えて

私達が運動や作業をするたびに体は温まったり暑くなったりしますが、それは生体が活動することで熱を発してるからです。

体が熱を作り出すことを産熱と呼び、それを逃がすことを放熱と呼びます。

産熱と放熱のバランスを取ることで、通常、体温は一定に保たれていますが、熱中症は、産熱と放熱のバランスが崩れてしまった状態です。

激しい運動や炎天下、外気温の高い場所などで急激に体温が上昇した時にその熱を逃がすことができなければ、全身の臓器の機能にも異常が現れます。

熱が体内にこもり高体温が持続すれば、生体の組織は破壊されていくのです。

その影響は脳・心臓・肝臓・腎臓など各臓器に及び、重症化すると多臓器不全になり命に関わることになります。

犬は人よりも熱中症になりやすい

体温があがると、体内に溜まった熱を放熱する為に私達は汗をかきます。

人の汗腺は全身にあるので、汗を全身から出すことができ、効率よく熱を放散できます。

でも犬と人の汗腺の分布は異なり、犬は肉球や鼻の付近だけでしか汗を出すことはできません。

犬の全身にあるアポクリン腺は体臭の元になる皮脂を分泌しますが、体温調節をする汗の分泌はしません。

犬の体温調整は、舌を出してハァハァと速い呼吸をするパンティング( panting)という動作がその役割をします。

パンティングで舌から唾液(水分)を蒸発させ、その気化熱で体温調節をおこなうのですが、これは人よりもはるかに効率が悪いです。

犬は高体温になると効率の悪い方法でしか調整できないので、人よりも熱中症に弱いと言えます。

特にハイリスクの犬がいる

短頭犬種と呼ばれる犬種は特に熱放散の効率が悪いことが知られています。

《短頭犬種》

シーズー・パグ・ボストンテリア・フレンチブルドッグ・ペキニーズなど

このような鼻が低い犬種は、鼻腔が小さくて空気の通り道が狭く、パンティングが他の犬種より効率が悪いです。

このような犬種は特に高体温に陥りやすいことは、おそらく短頭犬種の飼い主さんならご存じと思います。

飛行機に搭乗させる時も死亡事故のリスクが高いので、航空会社によって制限されています。

【ANA規定】

【JAL規定】

 

短頭犬種以外では、寒い地域が原産の犬種は寒さに強いですが暑さには大変弱いです。

《寒冷地原産の犬種》

サモエド・アラスカンマラミュート・シベリアンハスキーなど

テレビ番組のレギュラーとしても人気で、2012年に熱中症で亡くなったZIPPEI(ジッペイ)という犬もサモエドという犬種でした。

ZIPPEI(ジッペイ)は、8月という真夏にエアコンの切れた車内に置かれていて6匹の兄弟も一緒に亡くなりましたので、もう暑さに弱いという問題ではないですが。

この時は様々な批判が飛び交いました。

当時の詳細を探してみるとこちらにありました。

犬種に限らず、心臓に病気のある犬、気管虚脱を持っている犬なども、呼吸器や循環器の機能が元々低いので熱中症になりやすいです。

それと同じ理屈で、肥満の犬も、脂肪に包まれて熱がこもりやすく、気管が狭かったり心臓に負担がかかりやすい為にハイリスクです。

【参考記事】

気管虚脱がある犬の発作のコントロール 日常生活での対処法

心臓に雑音が生じる犬の病気 僧帽弁閉鎖不全症の症状と治療

加えて老犬や子犬なども身体機能が弱ってたり不完全なためにハイリスクです。

淡い色の犬よりも黒い被毛を持った犬の方が若干体温が上がりやすいと言われます。

要注意はサマーカットにしている犬です。

人の目線からは、被毛を刈り上げると涼しげで「夏仕様」になるかもしれません。

でも犬の被毛は無駄にあるわけではなく、その中に空気を含んで冬は暖かく、夏は涼しく保つ役割があるのです。

被毛により、直射日光によるダメージを防ぎ外気温の直接の影響を受けないように体を守っているのです。

短くカットするなら良いですが、丸刈りにしてしまうと皮膚が直射日光を受け、体温の上昇を防ぐことができなくなります。

丸刈りにしてしまった後に被毛が生えない可能性もありますので、気を付けて下さい。

【参考記事】

暑い夏の犬の散歩は危険も!お出かけは万全の対策で

発症しやすい環境条件

熱中症の発生の危険が高いのは、梅雨の晴れ間や梅雨明けしてすぐの頃と言われます。

その理由が暑熱馴化(しょねつじゅんか)にあります。

動物には、季節が変わって外気温が変化してもその環境に体を適応させる能力が元々あります。

暑い季節は、皮膚の血流を増やして熱の放散を早い段階で始め、体温上昇をさせないようにしますが、これが暑熱馴化です。

でも体調の切り替えはすぐにできるものではなく、季節の変わり目から完全に切り替えが終わるまでに60日かかるそうです。

切り替えが終了しない間に急激に気温が変化すると、体温調整がスムーズにいかず熱中症になりやすいのです。

反対に寒い季節には寒冷馴化(かんれいじゅんか)が起こります。

これは寒くなるにつれて体内の熱量が増加し、低体温にならないように適応する能力です。

熱中症発生の目安

《目安となる環境》

気温22℃以上、湿度60%以上

近年の温暖化の環境の中で、これはすでに春にもあると言えるでしょう。

地面からの照り返し、風の有無によっても条件は異なります。

熱中症は、天気の良い春先からすでに用心しておかなくてはなりません。

車内

熱中症の発生でもっとも多いのが、車内に犬を残し留守番させている状況です。

先述したZIPPEI達7匹もこの状況で命を落としました。

飼い主は、エアコンを付けていたと主張していたようですが、どういう理由なのか発見時にエアコンは付いていなかったようです。

犬達はみんなケージに入れられて車内に置かれていました。

昨年SNSで炎上したチワワ6匹の熱中症による死亡も、やはり車内に残されていて起こったことでした。

車内の温度についてJAFが実験した次のようなデータがあります。

各部測定箇所別/ピーク時の温度と時間

  1. ダッシュボード付近  ・・・・・・・・   70.8 ℃(時間:11時50分頃)
  2. 車内温度(運転席の顔付近) ・・・・・・・・    48.7℃(時間:14時10分頃)
  3. 測定日の外気温 ・・・・・・・・  23.3 ℃(時間:13時40分頃)
  4. フロントガラス付近 ・・・・・・・・  57.7℃(時間:11時50分頃)

この日は最高気温が23℃と比較的過ごし易い1日でした。しかし、車内温度は50℃近くまで上昇し、車内に置いた一部の缶入り炭酸飲料が破裂しました。

出典元:JAF http://www.jaf.or.jp/eco-safety/safety/usertest/temperature/detail1.htm

JAFによると、車内温度はたった10分でも10度上昇するそうです。

また、日なたでは、春先と真夏でも日射量に変わりはないとのことです。

そして、仮にエアコンが入っていたとしても、犬がいる場所にそれが十分届いているかどうかはわかりません。

これは人も乗っていてエアコンの効いている車内でも、犬だけが熱中症を発症してしまうこともあることを示しています。

犬を車に乗せる時は、人の体感だけでなく、くれぐれも注意が必要です。

室内

犬を室内で留守番させる時も熱中症の危険があります。

ケージの場所に日が当たり、犬はその中以外に自分で移動できない場合、たとえエアコンが入っていても犬の環境は高温になります。

留守番中にエアコンを付けていない家もあるようですが、閉め切った部屋の中は人が想像する以上に室温が上がるものです。

昔は窓を少し開けておけば涼しい風が入ったかもしれませんが、最近の環境では難しいと思います。

留守中に犬は自分でどうすることもできず、逃げ場もありません。

そのような想定で留守中の環境を整えて下さい。

屋外

犬は、人より地面に近い場所にいるので、地面からの照り返しもかなり強く受けます。

炎天下では、レジャーや散歩などできるだけ避けた方が安全です。

焼けた地面の上では、熱中症だけでなく、肉球の火傷を起こしてしまう危険もあります。

屋外に繋いでいる犬は、室内が無理だとしても玄関先など、直射日光を避けられる涼しい場所に移動してあげて欲しいと切に願います。

近年の気候は、昔とは大きく違い、犬の外飼いは過酷だと思います。

初期症状を早期発見することがカギ

熱中症になると、犬の直腸温(深部体温)は41℃以上になります。(熱中症の時は外的条件に左右されない直腸温の確認が必要)

犬の平熱は、37.9℃~39.9℃です。

それを越える場合、発熱する病気がなければ熱中症の可能性が大きいです。

体温を下げようと犬はしきりにパンティングし、呼吸は荒くなります。

パンティングで水分を大量に蒸泄させるため、体は脱水になっていきます。

この状態はまだ初期症状で、この時点で体を冷やして体温を下げ、水分を補給するという対処が必要です。

初期症状を見逃し進行させてしまうと、次第に体内を巡る血液の循環量が不足し、脳が酸欠状態になって意識障害なども見られるようになります。

重症化した熱中症で救命できるのは約半数

症状が進行すると、激しいパンティングに加えて流延(よだれ)・嘔吐・下痢などの症状も見られるようになります。

高体温で消化器などの臓器の機能が低下していくからです。

そしてこのような症状は、すでに熱中症の初期を過ぎているサインです。

脳の虚血によって意識が混濁し反応が鈍くなり、完全な意識消失・電解質の異常による痙攣発作などの症状が起こります。

このような症状は、かなり重症化していると言えます。

人の場合、救急車で搬入されてくるのはこの段階が多いかもしれません。

人も初期には異常が起こっていることに気づきにくいのです。

もっと進行すると、吐血・下血・血尿・目の充血・口腔の紫斑などの症状が見られるようになります。

これはDIC(播種性血管内凝固症候群)の兆候であり、生命の危険があります。

熱中症で動物病院に搬入される犬の死亡率=約50%

熱中症は進行も早く、時間勝負とも言える軽視できない救急疾患です。

重篤な合併症には、横紋筋融解症、急性腎障害、急性呼吸窮迫症候群、そして最終的には敗血症および播種性血管内凝固が含まれる。犬の最も一般的な臨床徴候としては、急性虚脱、頻呼吸、自発的出血、ショックサイン、精神異常、例えばうつ病、方向転換またはせん妄、発作、昏睡および昏睡が挙げられる。早期の適切な体内冷却および集中的な支持療法にもかかわらず、重度の炎症性および止血性障害を改善するための特定の治療法がないため、死亡率は約50%であり、ヒトの熱中症患者のそれと同様である。

出典元:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29435477

 

 それぞれ54例のうち28例および54例に診断された播種性の血管内凝固(P = 0.013)および急性腎不全(P = .008)が死の危険因子であった。 全体の死亡率は50%であった。入院時の低血糖(<47mg / dL、P = 0.003)、延長PT(> 18秒、P = 0.05)、およびaPTT(> 30秒、P <.001)は死亡と関連していた。24時間後の血清クレアチニン> 1.5mg / dL(P = .003)、遅延入院(> 90分、P = .032)、発作(P = .02)、および肥満(P = .04)もまた死の危険因子であった。犬の熱中症は、適切な治療にもかかわらず、深刻な合併症および高い死亡率をもたらす。

出典元:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16496921

上記の資料より、発症して90分以上を経過してからの処置も救命率を下げるということがわかります。

犬の命を救うには、熱中症の症状に気づいた時点で迷わず早く病院に連れて行って下さい。

後遺症

重症の熱中症は、熱中症そのものから回復できたとしても後遺症が残る可能性があります。

一度、臓器に組織の壊死が起こった場合、元には戻らないものもあるからです。

例えば、腎機能は一度失えば完全に回復することが難しく、その後も慢性疾患として抱えていかなければならなくなることもあります。

【参考記事】

犬の腎不全と余命 検査数値と腎臓病のステージについて

犬の腎臓の重大な病気「尿毒症」末期症状にどう対処するか?

脳の損傷があれば麻痺などの後遺症が残るかもしれません。

体温調節機能がその後もうまくいかなくなり、熱中症を起こしやすくなることもあるようです。

 

まとめ

私が救急で遭遇した熱中症の患者さんは、屋外よりも室温の高い閉ざされた屋内で仕事をしていた人や、普通に家にいた人が多い印象でした。

本人は重症化するまで自覚がなく、血液検査でも電解質などの数値がかなり悪くなっているパターンです。

まして犬はもっと気づきにくいかもしれません。

熱中症はあっという間に重症化しますので十分に注意してあげて下さい。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

 

 


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