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犬のクッシング症候群に併発する糖尿病の症状と治療・予後

♦内分泌ホルモン

犬の糖尿病の初期症状は病気だということが分かりづらく、進行して初めて気づくことが多いです。

そして、糖尿病を起こす別の病気がその背景にあることもあります。

クッシング症候群もその一つです。

私の知人の犬もクッシング症候群で、闘病を頑張っていましたが残念ながら寿命が尽きました。

糖尿病を併発するクッシング症候群がどんな病気で、生活上の注意は何か、予後などについてみなさんと情報共有したいと思います。

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クッシング症候群はホルモン異常による病気

クッシング症候群は、別の呼び方で「副腎皮質機能亢進症」と言われます。

副腎とは、左右の腎臓の上にある、内分泌の役割を持った小さな器官のことです。

ここからコルチゾール(糖質コルチコイド)というホルモンやその他のホルモンが分泌されて、血液中で一定の濃度を保っています。

コルチゾール=生体の恒常性を維持する為に不可欠なホルモン

  • 抗炎症作用
  • 糖質やタンパク質・ミネラルなど栄養素の代謝調節
  • ストレスに対する生体反応の調節
  • 免疫反応の調節

例えば、アレルギー治療の時などに人にも動物にも副腎皮質ホルモンやステロイドと呼ばれる医薬品を使うことがありますよね。

この薬は、このコルチゾールを人工合成させて作られたものです。

つまり、あのような薬は元々体内で作られているホルモン物質ということになります。

 

副腎からのコルチゾール分泌には、脳の直下にある脳下垂体という器官が関与します。

コルチゾールの血中濃度が低くなると、下垂体はACTH(副腎皮質刺激ホルモン)というホルモン分泌を増やします。

このACTHが副腎皮質を刺激するのです。

その刺激でコルチゾールが分泌されるという2段階のしくみになっています。

しかしこのシステムの途中に問題が生じ、コルチゾールが過剰に分泌され続けることがあります。

そうすると、過剰なコルチゾールのせいで、糖の代謝や免疫系に影響が現れ、さまざまな症状が出て来ます。

これがクッシング症候群です。

ホルモンの名前がややこしいのでちょっとわかりにくいですね。

クッシング症候群の原因別分類

クッシング症候群は、原因が何であるかによって分類され、それぞれに治療も異なります。

  1. 下垂体依存性クッシング症候群(PDH)
  2. 副腎性クッシング症候群(AT)
  3. 医原性クッシング症候群

1は、脳下垂体の刺激ホルモンが過剰になることで、副腎からのコルチゾール分泌も過剰になるというパターンです。

犬のクッシング症候群の約8割はこのパターンのようです。

これを起こす原因は、脳下垂体にできた良性腫瘍が多いとされます。

2は、副腎そのものに問題があるパターンで、副腎腫瘍が原因であることが多いです。

3は、他の病気の治療でステロイド剤を長期投与している場合などに、薬剤の副作用としてクッシング症候群の症状が出る状態です。

クッシング症候群の多くは5歳~8歳以上の雌犬に好発します。

2は特に老犬に多く、好発犬種というわけではないですが、ダックスフントやプードルに多い傾向があるとのことでした。

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クッシング症候群の特徴的な症状

クッシング症候群には典型的な症状があるので、それで発見され治療に結びつくことが多いと考えられます。

そもそも無症状の段階では治療の対象にはならず、症状の出現が治療の目安でもあります。

 

《クッシング症候群の症状》

多飲・多尿・腹部膨満・両側対称性脱毛・皮膚が薄くなる・皮膚の乾燥・色素沈着・石灰沈着・パンティング(暑い時のように舌を出してハァハァと呼吸をする)・肝臓腫大・内臓脂肪増加・骨格筋委縮(頭部や四肢)・歩行困難・心雑音・無気力

症状はとても多彩なのですが、この病気の主訴は多飲、多尿である場合が多く、9割以上に表れる一般的な症状です。

次いで多いのが皮膚の何らかの症状で、こちらも8割以上という高確率で表れます。

《クッシング症候群の脱毛》

画像出典元 http://tamc.jp/syorei/hihu03.html

また、膀胱炎も高い確率で起こしています。

腹部膨満の症状も表れ、犬のクッシング症候群で見られる腹部膨満のことを通称ポットベリー(太鼓腹の意味)と呼びます。

ポットベリーは、腹腔内の脂肪が増えて膨張するために起こり中心性肥満とも言われます。

それと対照的に、四肢は筋肉が落ちて細くなり、皮膚の脱毛と共にかなり特徴的な外見になります。

それでも腹部膨満は肥満と見なされ、脱毛は老化現象として見なされてしまうことも多いので、病気の症状を見過ごされてしまう危険もあります。

過剰なコルチゾールは糖代謝に影響するので、肝臓のグルコース生成過剰となり糖尿病の原因になります。

クッシング症候群に糖尿病が併発するのはこのような理由からです。

しかもベースがクッシング症候群である為、糖尿病の治療だけでは改善せず、治療が複雑で困難になりやすいのです。

その結果、糖尿病の悪化を招きやすくなります。

糖尿病以外にも高脂血症や甲状腺機能低下症なども起こしやすくなります。

下垂体腫瘍によるクッシング症候群は、腫瘍が直径10mm以上になると脳を圧迫するようになります。

そうなると脳の症状も出て来るようになります。

うつ状態や視力障害、旋回、認知症などの症状が出るようになって、死に結びつくこともあります。

副腎腫瘍は、大血管を巻き込みながら大きくなると、体内で出血を起こして突然死する危険もあります。

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クッシング症候群と糖尿病の合併

クッシング症候群の症状である多飲、多尿は、糖尿病でも代表的な症状です。

血液検査をすれば高血糖を示すなどの類似点もあるので、最初は単純に糖尿病と診断されがちです。

 

しかしクッシング症候群が背景にある糖尿病の場合は、インスリン療法の効果があがりにくく、インスリン抵抗性の糖尿病のパターンを示します。

インスリン療法をおこなっても血糖値の安定が難しいインスリン抵抗性の糖尿病は、クッシング症候群が隠れている可能性があるのです。

どのような検査でわかるのか?

クッシング症候群の検査は、

  • 血液検査
  • 尿検査
  • レントゲン
  • ACTH刺激試験
  • 副腎エコー

などがあります。

クッシング症候群であるかどうかを明確にしたのちに、どの分類に入るのかを調べます。

医原性(ステロイド投与中)ではない場合は、1のPDHか2のATかを区別します。

レントゲン撮影をすると、肝腫大、副腎の腫大や石灰化、心拡大など、クッシング症候群に特有な所見が認められます。

ACTH刺激試験は、クッシング症候群であるかを明確にする検査で、短時間で検査でき、ほぼ確定できます。

ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を投与して、その反応を血液検査で測定するのです。

他には、低用量デキサメダゾン抑制試験(LDDST)という検査が行われることもあります。

クッシング症候群が確定なら、副腎エコーをしてPDHとATの鑑別をします。

両者はそれぞれ画像上で副腎の形状が異なって見えるので、診断がつきます。

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糖尿病が合併したクッシング症候群の治療と予後

クッシング症候群からの糖尿病は、インスリンに抵抗を示す為に糖尿病の治療が難航します。

それでもインスリン治療をするのは、積極的に血糖コントロールをおこなうというより重度合併症のケトアシドーシスを予防する目的などです。

同時進行でクッシング症候群の治療が必要ですが、それもPDHとATでは異なります。

PDH(下垂体依存性クッシング症候群)

PDHの方は内服治療です。

治療薬にはミトタントリロスタンなどが使用されます。

  • ミトタン:副腎皮質溶解作用
  • トリロスタン:コルチゾール合成阻害作用薬

トリロスタンは、薬価が高く、治療費が高額になることが難点でした。

でも、現在はトリロスタンと同じ成分で薬価の低い動物医薬品アドレスタンが発売され、治療しやすくなっていると思われます。

クッシング症候群が改善されてくれば、インスリン抵抗性も改善します。

そうなれば血糖値がコントロールでき、糖尿病も改善します。

インスリン抵抗性さえ改善できれば、インスリンの効果が期待できるからです。

多飲・多尿の症状はどちらにも共通の症状ですので、クッシング症候群が改善しても糖尿病のコントロールがつくまでは続きます。

インスリン療法の効果が出るようになれば改善されてくるはずです。

内服治療が目指すのは症状の消失であり、過剰投与になると今度は副腎皮質機能低下症を起こしてしまうので、薬の量の調整はとても重要です。

内服薬以外の治療法には、放射線療法(リニアック照射)・外科手術などもありますがあまり一般的ではありません。

PDHの予後には下垂体腫瘍の大きさが関係し、先述したように10mmを越えるような大きさの場合は、脳の障害を起こし死亡リスクも高くなります。

予後は糖尿病のコントロールの良否にも左右されるでしょう。

AT(副腎性クッシング症候群)

ATの場合は、手術可能な状態であるなら外科手術で腫瘍を摘出することがベストです。

しかし腫瘍が悪性であれば、転移や大血管への浸潤などが起こり手術が困難になります。

こちらは薬によるコントロールは難しく、予後もシビアであると理解しておいた方がよいかもしれません。

医原性クッシング症候群

医原性のものについては、ステロイド剤を休止や中止することで改善し、それが糖尿病の原因であれば糖尿病も改善が期待できるでしょう。

ただ、ステロイド剤を急激に減らしたり中止したりすることは禁忌です。

副腎機能が薬剤に依存した状態になっているので、急に薬をカットしてしまうと副腎皮質機能低下症を起こす危険があります。

獣医師の指示のもとで徐々に減らしていき、日数をかけて最終的に休止あるいは中止という段階を踏まなければなりません。

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まとめ

糖尿病そのものが初期症状を見つけにくい上に、クッシング症候群と糖尿病は症状が似ているので、糖尿病の診断だけしかついてない場合もあるようです。

有効な治療に重要なのは、糖尿病の背景にクッシング症候群があると発見されることです。

クッシング症候群も糖尿病も、それぞれ治療が簡単ではなく、二つが合併していれば治療が難しいのも事実です。

医療なくしての改善はないことを理解し、早期に発見し必ず適切な医療を受けさせてあげて下さい。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

 

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