犬の腎臓の重大な病気「尿毒症」末期症状にどう対処するか?

尿毒症は、腎臓病から腎不全になり、さらに進行した末期症状のことです。

腎臓という臓器は、体内の毒素の代謝を担っていて、その役割はとても重要なものです。

しかし、病気や外傷などで組織が壊れてしまった腎臓は、二度と再生することができません。

今回は、犬の腎臓の病気で末期の尿毒症の治療や対処法について解説します。

腎臓は壊れたらもう元には戻らない

腎臓は、体の背中側の左右にそれぞれ1つずつある臓器です。

もし何かの理由で腎臓が1つになったとしても、残った腎臓が健康であれば1つでも十分に機能し、生きていくことができるほど、腎臓はタフな臓器とも言えます。

人の医療で、生体腎移植という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか?

これは腎不全の患者さんに対し、家族間で基準を満たした場合に限り、腎臓を1つ提供して移植する治療方法です。

あくまでもドナー(提供者)になる側の意志の上に成り立つ治療ですが、健康であれば1つを提供してもそれまでと変わりなく生きていけるからこそ、このような治療が行われるのです。

腎臓は、1つの単純な臓器ではなく、その中には、ネフロンと呼ばれる、腎臓機能の中心になる独立した細かい器官が、犬の場合だと約80万個あります。

その無数のネフロンの1つ1つが、「濾過・再吸収・濃縮」という機能を持ち、体外に排出する尿を作っているのです。

尿の元である液体成分をそこで濾過し、体内に必要な成分や水分は再吸収されて血液中に戻されます。

そして、体に不要な毒素などを含んだ濃縮した液体だけを尿として膀胱まで送ります。

腎臓は、そのようなフィルターとしての機能をメインとしています。

それに加えて、他にも複数の重要な役割を持っているのです。

体の中で、毒素の排泄という役割を持つ臓器は、腎臓以外に肝臓もあります。

肝臓は他の臓器と比較して大きく強い臓器であり、唯一、再生能力のある臓器とされています。

しかし、腎臓は一度ダメージを受けたらその組織は再生することがないのです。

80万個あるネフロンは、たとえその数が半分(50%)になっても腎臓の機能を保っていることができます。

ネフロンの75%以上がだめになった時、腎臓は、正常に機能できない腎不全という状態になります。

【参考記事】

犬の腎不全と余命 検査数値と腎臓病のステージについて

肝機能検査の数値の異常 肝臓・胆のうに多い犬の病気

犬の腎不全は2通りの経過がある

犬の腎不全には、急性腎不全慢性腎不全という2通りの病態があります。

突然の発症で、急激な病状の進行によってみるみるうちに重症に陥ってしまうのが急性腎不全です。

一方、その発症要因に年齢や食生活という背景が関係し、気付かないうちに腎臓病になっていてじわじわと時間をかけて進行するのが慢性腎不全です。

慢性腎不全は、症状が現れて異変に気付いた時にはネフロンの大部分がだめになっていて、すでに腎臓が正常に機能できなくなっていたというような経過をたどります。

急激な経過をたどる急性腎不全

急性腎不全の原因で多いのは、心臓病や重症の脱水など、全身の血流量に影響するような病気の存在です。

このような病気は、腎臓に流れ込むはずの血流量が極端に減少し、その結果、腎臓が正常に機能できなくなってしまいます。

あるいは、急性腎炎などの腎臓そのものの病気が原因であることもあります。

全身の感染症、薬物中毒が原因になることもあります。

腫瘍や腎結石などで尿路が塞がれてしまい、尿が排泄ができなくなることで腎臓機能が障害される、というようなパターンで発症することもあります。

【参考記事】

頻尿や血尿で急変の危険?尿路結石はあなどれない犬の病気

ゆっくりと腎臓を蝕む慢性腎不全

慢性腎不全は、それまでの食習慣とか加齢による機能の低下ももちろん原因になるのですが、この病気が多く発生する好発犬種もあります。

先に述べたように、腎臓は、ネフロンの大部分が壊れてダメにならない限りは、目立った症状が現れるでもなく、その機能を維持し続けます。

正常なネフロンの数がいよいよ少なくなって、腎臓の機能が限界になった時にようやく腎不全の症状が見られるようになるのです。

尿毒症は腎不全の末期

急性でも、慢性でも、腎不全がさらに進行して腎臓の機能のほとんどが失われ、体に不必要な老廃物(毒素)を体外に排出できなくなると、血液中には毒素が蓄積していきます。

老廃物(毒素)の中には窒素も含んでいます。

それが体内に溜まっていくと高窒素血症になるので、血液検査をしてみると血液中の尿素窒素(BUN)の数値が高く表れます。

尿毒症を起こす主な物質、インドキシル硫酸、尿素、クレアチニンといった毒素も溜まっていき、これらの毒素を含んだ血液が全身をめぐり、他の臓器にも悪影響を与えるようになります。

この状態を尿毒症と呼び、尿毒症は治療が遅れれば死に至る重度の病状で、腎不全の末期症状です。

尿毒症の症状

腎不全は、腎臓が水分を再吸収して尿を濃縮するという基本的な機能が失われていくので、体の水分が必要以上に体外に排出されます。

そのために体は常に脱水状態となり、喉が渇いてたくさん水を飲むという、多飲多尿という症状が現れます。

しかし、尿毒症という末期まで進行した場合、腎臓の機能は完全に停止してしまうので、水分も毒素も体内に貯留し、まったく尿が作られない無尿や極端に尿量が少なくなる乏尿という症状に変化していきます。

同じようにおしっこが出ないという症状の中には、尿閉というものもあるので区別が必要です。

尿閉は字のごとく、おしっこが作られているにもかかわらず、それが排出されるまでの尿路の流れの途中で、何らかの原因によりその通り道が塞がれてしまい、流れ出ていくことができない状態のことです。

尿閉の原因は、主に腫瘍や結石であることが多いです。

無尿や乏尿はおしっこを作る機能そのものが失われていますが、尿閉ではおしっこが作られているにも関わらず出すことができないので、カテーテルなどで排出させてやらなければなりません。

尿閉、無尿、乏尿はいずれも尿毒症に繋がる兆候と考えることができます。

そのままでは命の危険を招くことにもなりかねない病状です。

尿毒症になると、老廃物の毒素が血液の流れに乗って全身に回り、全身の水分や電解質のバランス調整もできなくなります。

尿毒症には、吐き気、嘔吐、下痢、貧血、むくみ、高血圧、心不全などの症状が現れます。

そして、特徴的な症状の1つとして、口臭がアンモニア臭になるといったものがあります。

全身をめぐる毒素は、脳神経にも影響を及ぼす為、神経症状である痙攣昏睡などが現れるようになります。

尿毒症の治療

尿毒症は、一刻も早く、血液中から老廃物を取り除く治療が必要になります。

輸液や輸血によって体内の血液循環量を増やしながら、同時に利尿剤を使って尿を排出させます。

また、対症的な治療として、心臓の機能を高める薬や、降圧剤なども使用します。

尿毒症の改善をはかりながら、その原因になっている病気があるのであれば、その治療を行います。

しかし、尿毒症は末期状態であり、悪化した状態では、利尿剤に対する反応も悪くなりがちで、薬を使用しても期待した効果が得られないことも少なくありません。

腎不全の点滴治療・自宅でも可能な場合がある

慢性腎不全の場合は、多尿のために脱水になるので、点滴治療は脱水に対する有効な治療です。

点滴治療には、皮下点滴と静脈点滴の2通りの方法があります。

静脈点滴は、入院しておこなわなければならないのですが、皮下点滴であれば、獣医師の指導の元で飼い主さんが自宅で行うことも可能なので、通院の負担が軽減されるでしょう。

急性腎不全は、原則として入院治療なので、自宅点滴の適応ではありません。

ただ、人に置き換えてみるとわかると思いますが、通常、点滴は静脈に入れるからこそ大量であってもスムーズに入るのであり、皮下点滴は薬剤の量に限度があって、静脈に比べると吸収も遅いです。

そして、このような治療で延命や病状を維持できるのは、あくまでも腎臓の機能がわずかでも残っている腎不全の段階です。

腎臓の機能が完全に壊れてしまって尿毒症まで進行している状態では、このような治療ではもう間に合いません。

尿毒症になる前に、まだこのような対処をすることができれば、少しでも状態を改善して延命する手段にもなりますが、すでに末期の尿毒症では治療の選択肢もかなり狭くなるのです。

尿毒症には透析治療か腎移植か

腎臓が全く機能しなくなり、血液中に老廃物が溜まって全身に影響を及ぼす「尿毒症」は、腎臓の代替となる人工透析治療によって、血液を浄化する治療が唯一の有効な治療法でもあります。

人であれば、ギリギリまで待たずに間違いなくこの治療が適応されるところだと思います。

人に透析治療を導入する時、急性腎不全であれば、危険な状態を脱するまで一時的に透析治療を行い、本来の腎機能が回復するまでの治療と考えます。

急性腎不全で、尿毒症を起こして全身状態が悪く、緊急透析の必要がある場合などは、ICUで長時間に渡る透析をおこなうこともあります。

一方の慢性腎不全では、腎機能はすでに失われたものとして、永久的(腎移植するまで)、定期的(1回4~5時間で週に3回など)に透析治療を続けることになります。

犬に対しても、急性期の透析治療には期待もできるとされます。

急性腎不全は、尿毒症に陥っても、そうなった原因を取り除けば、腎臓そのものは損傷がなく正常に機能する可能性があるからです。

しかし、慢性的に腎臓がだめになってしまったものに対し、定期的かつ永久的に透析治療による延命というのは、犬に対しては現実的な治療方法ではありません。

1回に何時間もかかる透析を犬が動かずに受けることは困難であり、それを週に3~4日、永久に通い続けるというのも無理と言えるでしょう。

また犬に対する透析治療ができるような高度な設備のある医療機関は、多いわけではありません。

腎臓移植という方法は根本治療になるもので、数少ないですが、犬の腎臓移植をおこなっている病院はあるようです。

ただし、臓器移植には課題も多くあります。

  • ドナー(臓器提供者)の問題
  • 術後の拒絶反応
  • 移植後も免疫抑制剤を維持する必要性
  • 感染症の管理

これらをクリアすることは容易なことではありません。

それでも助かる方法があるのなら手を尽くし、どんなことをしても死なせたくないという飼い主さんの気持ちは、私がそういう選択をするのかは別として、理解できなくはありません。

尿毒症の余命と飼い主としてできること

急性腎不全は、急激に症状が進行するので、犬に何らかの症状が現れてから尿毒症という末期に至るまでに、それほど時間はかからないと考えた方がよいでしょう。

急性腎不全でも慢性腎不全でも、尿毒症までに陥ると、犬の余命は数時間~数か月と考えられています。

おしっこが出なくなり、それに気づかず、治療が何もなされないならば、余命は数日以内という短さになることも覚悟する必要があります。

それほどに、尿毒症とはかなり深刻な末期症状であり、決して楽観視できないものです。

余命には開きがあり、その要素として

  • 犬の基礎体力
  • 対症療法をどこまでするのか、またはできるのか
  • 治療にどこまで反応が得られて効果が出るのか

というような条件が関係してくると考えられます。

 

まとめ

犬の病気で、尿毒症とは腎不全の末期症状のことです。

尿毒症は、急性、慢性に関わらず、腎不全が進行した末期状態であり、犬の余命も厳しくなります。

透析治療は、犬の急性腎不全の一時的な治療としてなら有効とも考えられますが、慢性腎不全になって生命を維持していくための治療法としては、適応がないのが現実です。

慢性腎不全も、早い段階で対処すれば、点滴療法などで状態を改善することはまだ可能ですので、末期まで気づかないことがないように、普段から健診などを受けて、健康状態をいつも把握しておくことが大事です。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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