愛犬に安楽死を選択する時 てんかんという病気も対象になる?

犬のてんかんには、重篤になる可能性のあるものと症状が比較的軽く経過するものがあります。

てんかん発作は、薬でいかにコントロールできるかが鍵になりますが、時としてその発作が直接の死因になることもあります。

てんかん発作は実際に見ている方も辛く、犬をその苦しみから解放してやりたいと断腸の思いで安楽死の選択をした飼い主さんもいます。

犬の安楽死には賛否あると思いますが、今回はそのことについて書いてみたいと思います。

安楽死とは苦痛の緩和の最終手段

まずは人間においての安楽死の定義を確認してみましょう。

安楽死には、積極的安楽死消極的安楽死の2通りがあります。

積極的安楽死とは、医療の上において、本人の意思または事前の意思表示に基づいて、他人(医師)により薬物を直接用いて死に至らせる行為です。もちろん、前提になる条件があり、それは次のようなものになります。

  1. 本人の明確な意思表示
  2. 死に至るような回復不可能な病気や障害の終末期
  3. 心身の耐え難い重大な苦痛
  4. 死を回避する手段、苦痛の緩和方法のいずれも存在しない

一方、消極的安楽死とは、医療の上において、病気や障害を予防、または救命、生命を維持するための方法が可能であるが、本人の意思または事前の意思表示、または本人の意思表示が不可能な場合に最も近い家族の明確な意思に基づいて、治療を開始しない、あるいは治療の中止により、死に至らせる行為です。

いくつかの国では積極的安楽死が法的に認められています。しかし日本では2017年時点ではまだ法整備には至ってなく、積極的安楽死の行為は違法になります。

ただ、消極的安楽死は、治療中断は許されない一部の重大な感染症を除いて、明確な意思表示に基づくという条件下では合法とされています。

これはあくまでも人間の定義ですが、本来の安楽死の意味とはこのようなものです。

犬の安楽死はどのように行われているか?

犬の安楽死は、獣医師に依頼して獣医師によって行われます。

ここから先はできるだけ淡々と書きますが、それでも生々しい表現になります。苦手な方はこの項目を読み飛ばして下さい。

安楽死の場所は、自宅に往診してもらえるのか、それとも病院なのかは獣医師によって対応が違うようです。しかし、その前に、安楽死そのものを引き受けない方針の獣医師もいますので、確認が必要です。

安楽死を行うということになれば、次に具体的なことを決めなくてはいけません。

日程や立ち会う家族、その時は誰かが犬を抱いた姿勢で行うのか、または寝かせるのかなど、犬の見送り方について獣医師と話し合って最良の方法を決めます。

ただ、事故などで重傷を負い、緊急に安楽死の選択が迫られる場合などでは、じっくり話し合うことが不可能ということもあります。

安楽死の実際は致死量の薬剤を静脈注射することです。その為に獣医師があらかじめ犬の静脈にカテーテルを挿入して、薬剤注入用のラインを確保します。

安楽死の薬剤には、静脈麻酔薬であるペントバルビタールという、バルビツール酸系鎮静催眠薬が選択されます。

この薬剤は人の臨床でも使用される種類のものですが、過剰投与による致死性が最も高いと言われる睡眠薬です。

犬の静脈に挿入しているカテーテルから、獣医師がこの薬剤を迅速に注入します。

薬剤は速やかに作用して、中枢神経や心筋の機能を抑制するので犬は深い麻酔状態になります。さらに過剰投与することによってそのまま心停止に至ります。

死後には筋肉の収縮や弛緩があるので、足が動いたり息をしているようにも見えたりするかもしれません。また失禁も見られるでしょうし目も開いていることの方が多いようです。

安楽死の費用はその病院や犬の大きさ(必要な薬の量)、往診するかどうかによっても異なりますが、約1万円前後が相場です。

しかし人間に安楽死の条件があるように、犬の安楽死も、病気や障害でその犬がこのまま生き続けることが苦痛でしかなく、それを解消させるような治療法や手段が他にないという場合に行われる最終手段です。?

飼い主が安楽死を依頼し費用さえ払ったからと言って、安楽死の理由もないような問題のない健康な犬を死なせることを獣医師が引き受けるというのは、通常はありません。

飼い主が愛犬の安楽死を決心する時

ネット上では自分の愛犬を安楽死させた経験のある飼い主さんの書き込みも多数見つけられます。

また、安楽死を考えているけれど葛藤しているという内容のものもあります。

安楽死の選択は、飼い主さんが自ら考えた場合以外に獣医師からの提案の場合もあるようです。

●癌で余命宣告をされていて、今後、激しい痛みで食事もできなくなることが予測される。その時には安楽死という選択もあると獣医師に提案された。

●てんかん発作がひどく、てんかん発作の症状で夜中でも大きな声で鳴くので近隣に神経を使い、また寝不足で疲れ、イライラして精神的にも身体的にも限界になり安楽死を考えている。

●てんかん発作で痙攣している犬の姿を見ていられない。これ以上苦しませたくなく安楽死させた。

●てんかん発作の間隔がどんどん短くなり、発作がひどくなる一方で介護しきれずに病院に預けていたが、獣医師から提案されて安楽死を決めた。

●腎臓が悪くもう助からない状態で獣医師から安楽死を提案され決めた。

●闘病中に寝たきりになり、この先延命もできないという状態で安楽死を決めた。

●てんかん発作がひどく、薬で眠らせておくしかもう楽にする方法がない。発作で苦しそうな姿が辛く、安楽死させる覚悟を決めた。

●獣医師に安楽死のことを相談するのは非難されるのが恐く言い出せないでいるが、てんかん発作に対応しきれず安楽死させたい。時々病院で預かってもらえるなどのフォローがあればまだやっていけるかもしれないが、苛立って犬に八つ当たりをしていまう。

●てんかん発作がひどい犬の世話に疲れ、獣医師から安楽死を提案された。最終手段もあると考えると逆にもう少し頑張れる気になった。

●病気で余命宣告されても安楽死を選択できなかったが犬はとても苦しんで亡くなった。安楽死できなかった自分は、決断から逃げた卑怯者だと後悔している。

安楽死をさせてもさせなくても飼い主さんはそれぞれに葛藤して、愛犬にとって何が最良であるのかを必死で考えた時間があったことはたしかです。

ところが一方では、ただ犬種に飽きたから他の犬種に買い替えたいという、あり得ないような理由で、何の問題もない健康な犬を「安楽死させて欲しい」と会ったこともない獣医師に悪びれることもなく相談してくる飼い主がいる現実もあるようです。?

てんかんが犬の死因になることはあるか?

のてんかんは、その発作のほとんどが命に関わるわけではないと言われます。しかし、群発発作や重責発作は死因にもなるような危険な発作です。

【てんかん発作のパターンについての参考記事】

犬のてんかんの症状と対処法 危険な発作の2パターンとは

てんかんは、発作を繰り返すことによって脳がダメージを受け、それが度重なると発作が重症化する原因になると言われます。

それゆえに、てんかんの治療は、いかに発作を起こさないか、または起こしたとしても最小限の発作に抑えられるかが大事で、その為には薬を継続させうまくコントロールすることに尽きます。

てんかんの薬を使用している途中で、もう改善したからと勝手に判断して飲ませなかったり、内服が不規則になっていたり、または中断したりすることは、てんかんの離脱発作を起こす原因になります。そしてそれは命に関わるような発作に繋がるのでとても危険です。

【てんかん治療中の薬の中断と離脱発作について】

犬のてんかんの薬は中断禁忌!飲み忘れはどう対処する?

群発発作や重責発作と呼ばれるような激しいてんかん発作は、体温の急激な上昇を伴うので重度の熱中症を引き起こします。それが全身状態を悪化させる要因になるとされます。

また、てんかんは病名であると同時に一つの症状を表す言葉でもあります。てんかんの陰には脳炎や脳腫瘍という難病が本当の病名として隠れていることもあります。

脳の中の状態を知る為には画像診断が必要ですが、中にはMRIやCT検査まで至らないまま、てんかんとして治療している場合もあると思われます。

そのような病気の多くは進行性で、てんかんの治療薬だけでは症状を抑制できず、病気の進行と共にひどい発作や神経症状を表すようになって死亡します。

てんかん発作が抑制できず、重度に進行していく理由にはこのような病気の可能性もあるのです。

【てんかんと脳炎について】

犬のてんかんは脳炎の可能性も・脳炎は完治する病気?

犬のてんかんは安楽死の対象になるか?

犬の安楽死を考えた、または決定した理由の中には、ひどいてんかん発作があったというものも入っているようで、実際に重度のてんかん発作は安楽死の対象になることが多いそうです。

てんかん発作を起こしている犬を目の前にして、飼い主側にできることはほとんどなく、ただ発作中の安全を確保し、周囲の危険物を取り除き、もし発作時に指示されている薬があれば使用し・・・。あとはただ発作が治まるのを見守るしかないという無力この上ない時間になります。

もちろん重度のてんかん発作と判断すれば、少しでも早く医療機関に搬送し適切な処置をすべきですが、それが不可能な時もあるでしょう。

涎を垂らして失禁し、痙攣し、時に泣き叫ぶ、あまりに辛く可哀想な愛犬の姿に、せめて抱きしめたり撫でたりしたい。しかし発作中に体を触ることは、刺激を与えて発作を誘発することになるので逆効果になります。

結局何もできずに、もしかしたら死んでしまうのではないかという大きな不安と無力感に潰されそうで飼い主さんは辛いと思います。

コントロールの困難な発作を頻繁に起こすようになると、犬は体力を使い果たして弱り、さらに視力を失う、麻痺、立てない、動けない、飼い主を認識できない、など、脳神経系のひどいダメージを受けていることもあります。

止めることのできない発作がそれでも襲ってくるような時に、獣医師からの提案または飼い主自らがこの苦痛から犬を解放し楽にしてやりたいという思いで、安楽死という選択肢に行き着くことがあるようです。

てんかんという病気があるだけで安楽死の対象になるのではありません。てんかんそのものは決して珍しい病気ではありません。薬も治療方法もあります。実際に発作のコントロールが良好で病気と共存しつつ長寿の犬も多くいるのです。

てんかんは完治はしませんが、十分に良い状態を保って生きていける病気です。

発作さえ上手に抑制できれば、病気のない犬と同じように生活の質を維持できます。絶望的な病気というわけではありません。

安楽死に対する意識は日本と海外で大きく違う

安楽死に対しての考え方は日本と海外ではずいぶん違いがあると思われます。

欧米では、それまで愛情を注ぎ、家族同様に暮らして来た犬であっても、もう回復できるような状態ではないということを獣医師が判断した時点で、安楽死は普通に選択される処置なのです。

もちろん価値観や考え方は個人で違うものですから、全てを一括りにはできませんが、日本のように末期の状態の犬を最後まで介護するということの方が圧倒的に少ないようです。

そのような形で安楽死が選ばれる根底には、苦痛を動物に背負わせながら生かすことは、動物にとって無意味なことであるという考え方があるからと思われます。

犬(動物)には、不必要な苦しみの中から人間のように、それでも生きることの意味や精神的な学びなどを見出すわけではなく、ただ単純に苦痛は苦痛でしかない。

もしも自然のままに安らかにと言うなら、本当の自然界ではそのように弱った状態では生き延びることはできず淘汰されるため、そもそも苦痛が長く続くことはない。人間が介入するからこそ苦痛が続き、自然であることが苦しみの継続とも言える。

全く無用な苦しみを長く与え続けて生かすのは飼い主の満足であり、苦痛から早く解放し見送ることが本当の意味で救うことであり、それは飼い主の責任と愛情でもある。

このような考え方が根付いているのか、それは、冷たい人達とか薄情とかいうことでもなく、宗教や死生観の違いのようなものとでも言うのでしょうか。

しかし、日本人の場合、安楽死を決定することは、自分が愛犬の命を左右する、自分が命を奪うという重みに葛藤することの方が多いように思います。

犬はどんな状態でも常に前向きで生きようとする生き物であり、自分の意思で死にたいと思うことはないという考え方も確かに重要で、人間の安楽死には全て本人の意思が優先されます。

それを飼い主の決定で死なせることは、単に人間が苦しみを見たくないからというエゴなのではないか?という考え方があり、それも一理あるのかもしれません。

反対に、安楽死させずにいることは、その苦しみを知っていながら解放しようとせず、少しでも長く傍に置いておきたいという人間のエゴではないのか?という考え方もやはり一理あるといえるでしょう。

安楽死の選択は飼い主にしかできないこと

意思表示ができない動物の安楽死は、自然な姿に反していて殺すことにすぎないという否定的な意見があります。それに対し、苦痛を継続させ延命を強要することは極端に言えば虐待であるという意見もあります。この議論は尽きないと思います。

おそらく、何を選んだとしても、愛犬を失う哀しみの大きさに変わりはないのです。命の重みと引き裂かれたような痛みを抱え「もっとできることがあったのではないか」「この判断で良かったのか」と後悔するのだと思います。

そこにはそれぞれの人間と犬の絆の形があり、どの思いもどの決定も正しく尊重されるべきもので、これが正解という答は永遠にないのではないでしょうか。

愛犬の死を考えただけで辛い、苦しませたくない、死なせたくない、一分一秒でも長く一緒にいたい、助けたい、楽にしてやりたい・・・矛盾した思いが、安楽死の前には混在すると思います。?

しかし、安楽死という選択肢を前にしてどのような結論に至っても、愛犬に最善であるようにという思いの中で飼い主が選択したことならば、第3者が入り込む余地はなくそれが全てだと思います。

安楽死に対する感覚はとても個人的なものであると思います。

私は、自分自身には延命より安楽死を選びたいし意思表示できるならそうしたいですが、自分の大切な存在の安楽死は決断がとても難しいと思います。私には勇気がないかもしれません。ただ、安らかな時間の中でその瞬間を確実に自分が看取ることができると考えれば、それもあるのかとは思います。

私の犬もてんかんの持病があるので、発作を見るに堪えず苦痛から何とか解放してやりたいという飼い主さんの気持ちは他人事ではなくとてもよくわかります。

ただ、てんかんの犬の安楽死が多いということにやはり胸が痛みます。

まとめ

安楽死が目的ではなくとも、苦痛の緩和の為の薬剤を増やしていけば、結果的に死期を早めることもあります。それも消極的安楽死と言えるでしょう。

安楽死はあくまでも最終手段でありてんかん発作も最終手段の理由の一つになるということは現実のようです。

少なくとも十分に条件を検討されるはずの安楽死の選択ですが、世間には、病院ではなく保健所がしてくれるものと勘違いをして病気や高齢の犬を保健所に持ち込み、簡単に安楽死を希望する人も多く存在します。

飼い主による保健所持ち込みの犬の処遇は殺処分です。飼い主が死なせてくれと希望して連れてくれば、その犬は安楽死ではなく殺処分になります。

同じ時間を共有してきたパートナーである犬の最後が、信頼していた飼い主さんに連れられて保健所で殺処分というのはあまりにも哀れです。

何があってもどうかその命について真剣に考え、最後まで信頼できる飼い主さんでいてあげて欲しいと思います。それができるのはあなた以外にはいないのです。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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