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犬の認知症の症状「夜泣き」への対策と治療薬について

♦ストレス/脳神経
この記事は約10分で読めます。

犬の認知症の症状の中でも、「夜泣き」の症状は介護疲れや近隣トラブルなど何かと深刻になりやすい問題です。

介護を少しでも楽にして介護者が余裕を持つことは、よい関係を維持するためにも大事なことであり、それは介護の対象が人でも犬でも共通して言えることです。

夜泣き対策の1つとして安定剤のような薬を勧めてくれる獣医師もいます。

それに抵抗のある飼い主さんもいるでしょうが、私はそれもありと考えます。

夜泣きへの効果的な対応について、ここで情報整理し共有したいと思います。

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夜泣きは認知症の代表的な症状

認知症という病気については、下の記事を参考にされてください。

犬の認知症は、人間のアルツハイマー病と似た病変が脳にあることがわかってきました。

そして夜泣きは、認知症の症状に代表的なものです。

昼夜逆転現象があるため、普通なら寝ているような時間帯に起きていて夜泣きも起こります。

【夜泣きの特徴】

  • 何時間も泣き続ける
  • 断続的に鳴いてはやめるパターンを朝まで繰り返す
  • 遠吠えする
  • 唸る
  • ワンワンと吠え続ける
  • キュンキュンと甘え鳴きを続ける

そして夜間は起きて夜泣きし、昼間は熟睡している行動パターンになります。

夜泣きがまねくいくつかの問題

夜泣きの対処方法に悩んでいる飼い主さんは多いと思われます。

夜泣きが深刻な問題になってしまう理由は、以下のように大きく二つあります。

  1. 飼い主が不眠になり飼い主の生活リズムも崩れる
  2. 鳴き声が近隣とのトラブルの原因になる

犬の夜泣きがひどい場合、世話をしている飼い主さんも眠れなくなり日常生活に支障をきたしてしまうことが起こります。

昼間に仕事を持っている場合などは、昼間に仮眠するわけにいかないので、睡眠不足の日々が続くとかなり辛くなります。

 

近隣とのトラブルについては、日本の住宅事情が大きく関係しています。

認知症で夜泣きする愛犬を介護している飼い主さんが、近所からのクレーム対応にも疲れているというケースは珍しくないです。

中には、犬の夜泣きが騒音という扱いで訴訟を起こされかけるまでこじれてしまったご家庭もあるようで、本当に難しい問題です。

睡眠不足の疲労の上に近隣からのクレームという心労が重なると、飼い主さんの方がうつ状態になってしまうかもしれません。

最終的に夜泣きする犬を安楽死させるという、追い詰められたケースもあるようです。

しかし近隣の人も不眠に陥っているのであれば理解を求めるのは限界があります。

症状をコントロールできなければもう安楽死しかないと考えてしまうのも現実かもしれません。

夜泣きには理由がある

夜泣きはひとつの症状ですが、理由がないわけでもないです。

認知症は認知機能が低下していくのですが、たとえ意思疎通がうまくいかなくなったとしても、健全な感情も残っている可能性があることを理解してあげて欲しいです。

夜泣きの理由

1.寂しさや不安

認知症を発症する犬は老犬なので身体機能も低下しています。

耳が遠かったり、目が見えにくかったり、匂いが感じ取れなかったりします。

そのような理由で、周囲の様子がよくわからず不安になり、飼い主さんを探していることもあるのです。

実際に、飼い主さんが撫でたり匂いを嗅がせたりして傍にいることを確認させてあげると、夜泣きがおさまることも多いと言われます。

2.昼夜逆転による勘違い

認知症には見当識障害があります。

昼夜のサイクルが逆転して、昼間は熟睡し夜になると覚醒するというパターンにはまってしまいがちです

それで勘違いして、散歩に行こうと飼い主さんを呼んでいることも考えられます。

飼い主さんにしてみれば、こんな夜中に?という時間でも、犬にはそれが認識できていないのです。

3.不快感を訴えている

犬が自分で楽に動けない状態なら、時間ごとに体勢を変えてやることが必要になります。

同じ姿勢で長時間圧迫されると床ずれの原因になり、痛みがあって泣いていることも考えられます。

今の体勢は大丈夫でしょうか?

喉が渇いていませんか?

オムツをしているならば、汚れていて冷たいとか気持ちが悪いと言っているのかもしれないです。

犬は飼い主さんに何かのケアを求めて夜泣きしているのかもしれません。

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夜泣きに効果的な薬の検討

2022年現時点で犬の認知症を完治させる治療薬はありません。

でも症状を緩和する目的で使われる薬はあります。

犬の認知症の治療薬には次のようなものがあります。

塩酸セレギリン(商品名アニプリル)

人のパーキンソン病の治療薬にエフピー(商品名)という薬があります。

アメリカでは、それと同じ成分(塩酸セレギリン)アニプリル(商品名)という薬が犬の認知症の治療薬として認可されています。

でも日本では(2019年時点)まだ標準治療薬としての認可はされていません。

日本でこの薬を治療に用いているとすれば、同じ成分の人の薬エフピーを使っているのではないかと思われます。

この薬は、認知症の犬に対する実験で、その70%に症状の改善が認められたという結果が得られているようです。

アニプリルの成分塩酸セレギリンは、ドーパミンという脳内の神経伝達物質の分泌を刺激します。

ドーパミン濃度を高め、神経系を保護して脳の活性を高めます。

また、認知症を進行させるフリーラジカルを除去する働きも期待できるようです。

特に不安が強い症状などの治療には、この薬が有効であるとされます。

ドネペジル塩酸塩(商品名アリセプト)

アリセプトという薬は、人のアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の治療に使われる有名な薬で、服用している患者さんはとても多いです。

どちらの病気も、脳内神経伝達物質アセチルコリンが極端に減少し、それが病気の進行の原因になります。

この薬は、脳内のアセチルコリンがなくならないように働きます。

犬の認知症にこの薬を使用することで以下のような治療効果が報告されています。

このことから夜泣きに対する治療効果も期待できると考えられます。

犬痴呆の診断基準100点法」を用いて認知障害と判断した犬に,人のアルツハイマー型認知症治療剤であるドネペジル塩酸塩製剤(アリセプトR)投与した。その結果,2週間後にはスコア合計が改善し,特に「鳴き声」のスコアに軽減効果が著しかった。

出典元 https://www.jstage.jst.go.jp/article/dobutsurinshoigaku/19/3/19_3_91/_article/-char/ja/

トランキライザー

この薬は精神安定剤のことです。

マイナートランキライザーとメジャートランキライザーがあります。

一般的に前者は抗不安薬、後者は抗精神病薬を指します。

夜泣きに対しては

  • ベンゾジアゼピン系抗不安薬(マイナートランキライザー)アルプラゾラムなど
  • フェノチアジン系抗精神病薬(メジャートランキライザー):鎮静作用を持つクロルプロマジンなど

が催眠目的で処方されることがあります。

薬の形態は、内服薬だけでなく座薬などもあります。

その他の薬

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)という種類の抗うつ薬が使われることもあります。

また、漢方薬で抑肝散という薬があり、不眠やイライラの症状を抑える目的で人の精神科などで処方されることがありますが、犬の認知症にも応用されることがあります。

サプリメント

夜泣きに対しては、サプリメントにも多少の効果が期待できるとされます。

サプリメントは薬ではないので、気軽に導入しやすいのが利点です。

期待できるサプリは、不飽和脂肪酸であるオメガ3系脂肪酸や抗酸化成分などあります。

夜泣きへの対応の工夫

夜泣きする犬は昼夜逆転していることが多いので、それを正して生活リズムを整え夜間睡眠を習慣付けることが大事です。

昼間は日光浴などで自然光の明るさをしっかり感じさせ、体内時計を調整してやると効果的です。

体調を確認し、日中は可能な活動に誘導し、できるだけ昼間に長時間の熟睡をさせないようにしてあげて下さい。

日向ぼっこで気持良くまどろむのは良いですが、本格的に寝かせたままだと良くありません。

具体策

  • 散歩や日向ぼっこ(老犬の散歩は長時間の散歩ではなく、短時間を数回おこなう方が負担も少ない)
  • 撫でる、マッサージするなどして体に触れて刺激を与える
  • ご飯、水、おやつなどを少しずつ頻回に分けて与え、起きるきっかけを作る
  • 話しかける
  • 昼間と夜とで違う居場所を作りメリハリをつける
  • 犬のデイケアを利用する

 

 

夜は熟睡しやすいように、できるだけ静かでくつろげる環境を作ってあげて下さい。

犬が不安を感じないように真っ暗にしない、飼い主さんのにおいのする衣類などを寝床に入れてあげるのも効果があります。

できれば飼い主さんの傍で眠れるようにすると、犬も安心できるのではないかと思います。

寄り添って寝るようになったら夜泣きが止まったケースもあるようです。

 

近隣対策としては、部屋の防音の工夫をしてみてください。

防音カーテンや防音パネルなどはネットでも入手可能です。

期待するほど効果はないかもしれませんが、手軽に試すことができます。

 

どうしても昼夜逆転や夜泣きの解決が困難な時は、安定剤などのを試してみることを獣医師に相談してください。

そのためには、病状を何でも獣医師に相談できる関係を築いておきましょう。

このような薬は、どんなに安全な薬と言っても、やはり得られる効果には個体差があるし老犬にはリスクもあります。

獣医師も、普段診ていない犬や体力の弱い老犬にこの種類の薬の処方はできかねると思います。

薬の調整について相談できるように病院との連携はとても大事です。

薬で眠らせることに罪悪感を持つ飼い主さんもいますが、犬をそのままにしておくこともまた可哀想なことですので、薬は要所要所で上手に利用するものと割り切った方がいいです。

薬を使って症状が緩和し飼い主さん自身も休養が取れることは、犬の介護をしていく上ではよいことです。

そして、飼い主さんが疲れている時は、病院や老犬ホームなどに一時的に預けることも1つの手段です。

その為にも、いざとなったら柔軟に対応してくれる獣医師や施設などを前もって選び、確保しておくのがベターです。

最近は、介護が困難な老犬を対象にした入所施設も増えています。

どうしても自宅で介護できない時は、費用はかかるでしょうが施設に入れるという選択肢もあります。

保健所には今も認知症の老犬が多く収容されている現実があります。

そのようなことにならないよう、飼い主さんも追い詰められる前にできることを全て試してみて下さい。

人も犬も必ず年をとるのです。

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最後に

夜泣きは、犬の認知症の症状の中でも、飼い主さんが対応にとても苦労する現実があります。

私はまだこれからですが、老犬を看取った友人はやはり不眠の日々を過ごしていました。

まずはシンプルに「なぜ鳴いているのか?」と考えてみると、もしかしたら解決策もあるかもしれません。

人の介護と同様で、頑張りすぎて共倒れしないように。

老犬になった愛犬を愛しむ余裕をなくさずすむ対策を立てて、どうかうまく問題を解決していけますように。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

 

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