犬の認知症の症状「夜泣き」への対策と治療薬について

犬の認知症の症状は様々ですが、初期には、何となく老化で反応が鈍くなったという印象しかないかもしれません。

しかし認知症は進行性の病気であり、症状も次第に顕著になっていきます。

夜泣きは認知症の代表的な、そして深刻とされる症状の一つです。

今回は認知症による夜泣きとその対応方法、治療に使う薬などについて解説したいと思います。

犬の認知症は人の認知症と同じ?

認知症とは、一旦正常に発達した知能あるいは記憶、見当識などの認知機能が、後天的な慢性または進行性の脳疾患によって、持続的に低下した状態になり、性格の変化なども伴って日常生活に支障をきたす症候群のことを言います。

人の認知症は高齢化と共に増加し、一般によく知られていていますが、犬にも発症します。

犬の認知症の病態

認知症の犬の脳には、人のアルツハイマー病と類似した病変が認められることがわかっています。

アルツハイマー病は、人の認知症の原因の中では現在最も多いものですが、犬の認知症の原因もまた、人のアルツハイマー病に似た疾患が関わっていると考えられています。

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認知症に特徴的な症状・夜泣き

認知症の症状である夜泣きは、夜から早朝までの普通なら飼い主さんも寝ているような時間帯に起こります。

夜泣きが続く時間は犬によっても違い、何時間も継続して鳴くこともあれば、断続的に鳴いてはやめる、を延々と朝まで繰り返すパターンもあるようです。

遠吠えをすることもあれば、一本調子に低く唸るように鳴き続けてみたり、クンクン、キュンキュンという鳴き方やワンワンと単調に吠える場合もあります。

夜泣きの症状は昼夜逆転症状とセットになっていることがほとんどで、夜間覚醒して夜泣きする代わりに昼間は熟睡しているという行動パターンになりがちです。

夜泣きは対応困難になりやすい症状

認知症の多様な症状の中でも、夜泣きは問題行動に取り上げられやすく、犬の夜泣きの対処に悩んでいる飼い主さんは数多く存在します。

夜泣きが深刻な問題になる大きな理由は二つあり、その一つは飼い主さん自身も不眠で生活リズムが崩れることでしょう。

犬が夜泣きすると飼い主さんも睡眠が取れなくなり、日常生活に支障をきたしかねなくなります。例えば昼間に仕事を持っている場合などは、犬が寝ている時間に仮眠するというわけにいかず、そのような日常が続くとかなり辛いと思います。

深刻な理由のもう一つは、日本の住宅事情の問題で、犬の夜泣きが近隣とのトラブルの原因になる可能性があることです。

実際に、認知症で夜泣きが続く愛犬を介護されている飼い主さんが、近所からのクレーム対応に疲れているという例はいくつもあります。

中には、犬の夜泣きを騒音として訴訟を起こされかけているというところまでこじれてしまっている方もいらっしゃるようです。

飼い主さん自身も睡眠不足で疲れている上に、近隣からの夜泣きへのクレームという心労が重なり、飼い主さんの方がうつ病になってしまうこともあります。

また、夜泣きで犬を安楽死させる結果になった残念なケースもあり、犬の認知症の症状をコントロールできないということは、とても悲しいことですが、安楽死の選択理由にもなり得るという現実もそこにはあるようです。

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認知症の夜泣きに原因は存在する

認知症の夜泣きは、病状の進行時に見られやすい症状の一つですが、夜泣きの全てに意味がないわけではありません。

認知症は脳の病気が原因であり、認知機能障害は進行します。しかし、意思疎通がうまくいかなくなったとしても、健全な感情の部分が残されている可能性もあることを理解してあげて下さい。

◎寂しさや不安

認知症を発症するような年齢の犬は、身体の機能も加齢によって低下しています。音が聞こえにくかったり、目が見えにくかったり、または匂いが感じ取れなかったりもします。

そのような理由で周囲の様子がよくわからないことが大きな不安になり、飼い主さんを探して夜泣きをしていることがあります。

実際に、飼い主さんが傍に来て撫でたり、匂いを嗅がせて傍にいることを確認させてやると夜泣きが止まることも多いと言われます。

◎昼夜逆転による勘違い

認知症には見当識障害があり、昼夜のサイクルが逆転していることが多いので、昼間は熟睡し夜になると覚醒してしまいます。

そして、勘違いして散歩に行こうと飼い主さんを呼んで夜泣きしているのかもしれません。飼い主さんから見るとこんな夜中にという時間であっても、犬はそれが認識できなくて間違って起きているということが考えられます。

◎不快感を訴えている

自分で思うように動けない犬の場合は、時間ごとに体勢を変えてやらなければなりません。同じ部分が長時間圧迫されると床ずれの原因になりますし、痛みが生じて夜泣きしていることも考えられます。

今の体勢は大丈夫でしょうか?喉は渇いていませんか?もしオムツを装着しているのであれば、汚れていて冷たいとか気持ちが悪いということはありませんか?

夜泣きは犬が飼い主さんに何らかのケアを求めている場合もあります。

認知症の薬物療法・夜泣きに効果的な薬は?

犬の認知症を完治させる薬は、現時点ではありません。しかし、症状を緩和し、生活の質(QOL)を維持する目的で治療には薬が選択されます。

犬の医療分野で使用される薬は、動物専用の薬もありますが、人に使用される薬と同じ薬であることも多いです。

犬の認知症の治療に使われるには次のようなものがあります。

塩酸セレギリン(商品名アニプリル)

人のパーキンソン病の薬として、エフピー(商品名)という薬があります。それと同じ塩酸セレギリンという成分でできているアニプリル(商品名)という薬が、アメリカでは犬の認知症の治療の薬として認可されています。

アニプリルという薬は、日本では(2017年時点では)まだ犬の認知症の標準治療に用いる薬としては認可されていません。日本でこの薬を治療に用いているとすれば、同じ成分の人間の薬エフピーを使っているのではないかと思われます。

この薬は、認知症の犬に対する実験で、その70%に症状の改善が認められたという結果が得られているようです。

アニプリルという薬の成分の塩酸セレギリンは、ドーパミンという脳内の神経伝達物質の分泌を刺激し、ドーパミン濃度を高めて神経系を保護し脳の活性を高めます。

また、この薬には、認知症の進行を促進するとされるフリーラジカルを除去する働きも期待できるようです。

特に、認知症の不安が強い症状などの治療にはこの薬が有効であるとされています。

ドネペジル塩酸塩(商品名アリセプト)

アリセプトという薬は、人のアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症の治療に使われる有名な薬で服用している患者さんはとても多いです。

どちらの病気にも、脳内の神経伝達物質アセチルコリンが極端に減少することがわかっていて、それが病気の進行の原因になるのですが、この薬はアセチルコリンの分解を抑制して脳内に一定量を維持し、認知症の症状を緩和します。つまり、脳内のアセチルコリンがなくならないように働きます。

犬の認知症にこの薬を使用することで以下のような治療効果が報告されています。これは夜泣きに対する治療効果も期待できるのではないかと考えられます。

犬痴呆の診断基準100点法」を用いて認知障害と判断した犬に,人のアルツハイマー型認知症治療剤であるドネペジル塩酸塩製剤(アリセプトR)投与した。その結果,2週間後にはスコア合計が改善し,特に「鳴き声」のスコアに軽減効果が著しかった。

出典元 https://www.jstage.jst.go.jp/article/dobutsurinshoigaku/19/3/19_3_91/_article/-char/ja/

トランキライザー

この薬は精神安定剤のことであり、マイナートランキライザーメジャートランキライザーがあります。

一般的に前者の薬は抗不安薬、後者の薬は抗精神病薬を指しています。

夜泣きに対して、アルプラゾラムなどのベンゾジアゼピン系の抗不安薬(マイナートランキライザー)、あるいは、鎮静作用を持つクロルプロマジンなどのフェノチアジン系抗精神病薬(メジャートランキライザー)が催眠目的で処方されることがあります。

薬の形態は内服薬だけでなく座薬などもあります。

【鎮静に使用する薬についての参考記事】

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その他の薬

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)という種類の抗うつ薬を治療に応用することもあります。

また、漢方薬の中に、人の不眠やイライラの症状を抑える為に処方されることの多い抑肝散という薬がありますが、この薬はアルツハイマー病にも治療効果があるとされていて、犬の認知症の薬に応用されることがあります。

サプリメント

夜泣きに対し、サプリメントにも多少の効果が期待できるとされ、補助的に使用されることが多いようです。サプリメントは薬ではないので、気軽に導入しやすいところが利点です。

期待できるサプリとして不飽和脂肪酸であるオメガ3系脂肪酸や抗酸化成分などあります。サプリメントについてはまた別の記事で詳しく取り上げたいと思います。

認知症の夜泣きにどう対処すべきか?

認知症による夜泣きの根底には、犬が昼夜逆転現象に陥っていることが多いので、まず生活リズムを整え、夜間睡眠を習慣付けるということが重要になります。

その為には、昼間は日光浴などで自然光の明るさをしっかりと感じさせ、体内時計を調整してやることが必要です。身体が昼間には熟睡するようなリズムになってしまっているのに、夜間も同じように眠らせようとしてもそれは困難です。

この基本は人の認知症の対応と同様です。体調を確認しながら、日中はできるだけ、可能な活動に誘導し、長時間に渡って熟睡させてしまうことのないようにしましょう。

日向ぼっこで気持良くまどろむくらいはOK、でも本格的に寝せたままにはしないようにします。

日中の過ごさせ方の具体策として

  • 散歩や日向ぼっこ(老犬では散歩は短時間を数回に分けてする方が負担も少ない)
  • 撫でる、マッサージなどで体に触れて刺激を与える
  • ご飯、水、おやつなどを少しずつ頻回に分けて与え、起きるきっかけを作る
  • 話しかける
  • 昼間と夜とで違う居場所を作り、メリハリをつける
  • 犬のデイケアを利用する

【老犬の散歩の参考記事】

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また、夜は夜泣きせず熟睡できるように、できるだけ静かにくつろげる環境を作ってあげて下さい。犬が不安を感じないよう真っ暗にはしない飼い主さんのにおいのする衣類などを寝床に入れてあげるというのも効果的かと思います。

そしてできるだけ飼い主さんの傍で眠れるようにすると、犬も安心できるのではないでしょうか。寄り添って寝るようになってから夜泣きが止まったということもあるようです。

夜泣きによる近隣対策で部屋の防音の工夫をするのも良いかもしれません。

防音カーテンや防音パネルなどはネットでも手に入ります。期待するほど効果は得られないかもしれませんが手軽に試すことができます。

 

昼夜逆転や夜泣きがどうしても解決しない場合は、上記の安定剤などの薬を使う治療について獣医師と話し合ってみましょう。

その為には、現在の病状を何でも相談することが可能なかかりつけ獣医師が必要です。

このような薬は、安全な薬とは言え薬効を得られる量には個体差がありリスクも高いです。獣医師は、普段を診ていない犬、しかも体力の弱い老犬にこの種類の薬の処方はできかねると思います。

病状が進行した時に薬の調整も相談できるよう、病院とは必ず連携を取っておいて下さい。

また、夜泣きを薬で眠らせることに罪悪感を持つ方もいますが、その必要はないと思います。薬は、要所要所で上手に利用するものと割り切った方が良いと思います。

眠れず夜泣きして不安な犬をそのままにするのもまた可哀想なことです。対応が難しい場合は薬を選択肢に入れて考えてみて下さい。

薬を使って夜泣きが解決し飼い主さん自身も楽になることは、認知症の犬の介護をしていく上では大事なことです。飼い主さん自身も休養を取れるようにしなければなりません。

犬の夜泣きに飼い主さんが疲れている時は、病院に何日か預けることも対策の一つです。柔軟に対応してくれる獣医師や病院を選んでおくことがポイントになります。

まとめ

夜泣きは犬の認知症の症状の中で、飼い主さんが対応にとても苦労する現実があるように思われます。

犬の夜泣きは、飼い主さんも眠れないだけでなく、夜泣きで近所に迷惑をかけているのではないか?とひやひやし、実際に、夜泣きが迷惑だから何とかしろと苦情を言われているなど、近隣との関係に深刻なダメージをもたらすことが一番厄介かもしれません。

まずは夜泣きを認知症の症状と決めつけず、シンプルに「なぜ鳴いているのか?」と考えてみると、もしかしたら解決策も見えてくることもあります。

工夫しても夜泣きの改善がなければ、薬という手段もあります。薬のコントロールで双方が楽になりうまくいくケースもあるのです。

保健所に老犬が収容されているケースは多く、その中には認知症の犬も珍しくないです。どうかそのようなことにならないように、追い詰められる前にできることがあります。人も犬も必ず年をとるのです。

最近は、介護が困難な老犬を対象にした施設も増えています。どうしても自宅で介護できない時は、お金はかかるとは思いますが、最終手段で施設に預ける選択肢もあります。

人の介護と同様、介護者が頑張りすぎないようにしなければ共倒れになります。夜泣きにも余裕を持って対応するには、飼い主さんの精神衛生もとても重要です。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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