犬の椎間板ヘルニアとリハビリテーションの種類・期間について

人の医療ではどの分野においても、リハビリテーションは療養上欠かすことのできない重要な位置を占め、広く認識されています。

動物の場合も同じであり、治療の上でリハビリは大きな役割を持ちます。

今回は、犬の椎間板ヘルニアのリハビリとは、具体的にどのようなことをどのくらいの期間行うのか?ということについて、解説したいと思います。

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犬のリハビリテーションが目指すもの

動物リハビリテーションは、この20年ほどで発展し、本格的になってきた治療分野です。

犬が歩けなくなるということは、散歩やトイレの問題、皮膚のトラブル、ストレスなど、日常の様々な障害へと繋がり、犬のQOL(生活の質)を大きく落としてしまうことになります。

そして、それは飼い主側にとっても、犬の介護という問題に繋がっています。

犬のリハビリは、犬が抱えている障害を克服して、元気な時と同じように生活の質を向上させ、犬が残存機能を維持できることを目的に行われます。

リハビリテーションとは何か

リハビリテーションとは、単に機能回復によって完全に元の状態に戻すということが目的ではありません。「リハビリ」の語源はラテン語の「re(再び)」「habiris(適した)」にあります。

リハビリとは、何らかの理由で筋力低下や機能低下した状態を改善し、障害を克服して、その人らしく生きられるように近づけることを目的としたトレーニング全般を表します。

可塑性(かそせい)

神経の特徴を表す言葉で可塑性という言葉があります。

神経系は外界から受ける刺激により常に変化しうる性質を持っていて、失われた機能を代償するように機能回復が期待できるとされます。

つまり10本の神経線維のうちの半分が切れたとしても、残りの半分が機能を増大させるか、他の神経細胞がこれを補う形で再生して機能回復させようとする現象であり、リハビリの有効性を示すことにもなります。

椎間板ヘルニアにおけるリハビリの意義

犬のリハビリの対象には、椎間板ヘルニア以外にも膝蓋骨脱臼、骨折、関節炎などの疾患の手術後、または手術不適応な場合の機能改善、あるいは筋力低下の防止、高齢犬の健康維持目的などがあり、広い範囲で適応になります。

椎間板ヘルニアのリハビリでは脊髄神経の回復を目的とし、手術がうまくいっていても、麻痺がある場合の回復にはリハビリが重要になります。

また、リハビリはヘルニア手術後に限らず、保存的治療の場合でも、安静期間が終わった後には少しずつリハビリを進めていきます。

椎間板ヘルニアで後ろ足に麻痺がある犬の場合、脊髄歩行という歩行をリハビリによって目指すことができます。

脊髄歩行とは、前足を動かすことによって脊髄の反射で後ろ足もつられて動き始めることで可能になる歩行です。進行した椎間板ヘルニアで麻痺があったとしても、このように脳の指令を介さない歩行ができるようになる可能性があり、リハビリが有意義である理由の一つです。

【椎間板ヘルニアの症状と病態についてはこちら】

犬の椎間板ヘルニアの初期症状と進行レベルのグレード分類

【椎間板ヘルニアの保存的治療】

犬の椎間板ヘルニアの保存的治療 安静・薬・レーザーについて

【椎間板ヘルニアの手術について】

犬の椎間板ヘルニア手術にかかる費用と治療の成功率について

椎間板ヘルニアのリハビリの実際

マッサージ・ストレッチ(徒手療法)

マッサージは、リハビリ前のウォーミングアップ、リハビリ後のクールダウン目的で行われます。

マッサージの効果としては、①リラックス②血行・リンパなどの循環促進③筋緊張の緩和④むくみや疼痛の管理などがあります。

犬が体を触られることに慣れている場合はリラックスして受けることができますが、最初は嫌がることもあります。

また、素人が勝手に行うと症状を悪化させ危険なことがありますので、専門のスタッフに任せ、家で簡単なマッサージを行うには注意点などの指導を受けてからにしましょう。

マッサージやストレッチのリハビリで血行が促進され、筋肉や関節の固まりがほぐれ、治りが早くなったり動きが柔軟になって怪我の予防にも効果があります。

 

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関節可動域運動(徒手療法)

膝関節、股関節、足関節などの関節をゆっくりと伸ばしたり曲げたりするリハビリです。

麻痺があって自分で動かせない後ろ足なども、ゆっくりと屈伸をさせてやることで、筋肉の緊張がほぐれ、使われない関節の動きが固まってしまうことを予防できます。

また、悪い所をかばって健康な部位も正常な動きをしていないことがありますので、良いところも同じようにリハビリを行いケアする必要があります。

アイシング・温熱療法(物理療法)

アイスパックを使って患部を冷やす、またはホットパックや低周波レーザー、マイクロウェーブなどで患部を温めるリハビリです。

冷やす方は、腫脹、熱感、炎症の軽減に効果的で、術後のリハビリとして、またはリハビリ後のクールダウンに行われます。

温める方は、リハビリ前のウォーミングアップや慢性的な痛みの軽減、代謝促進、神経機能の活性化などを目的に行われます。

ハイドロセラピー(水中療法)

水中トレッドミル(水中歩行機)で温水の中を歩かせたり、温水プールで泳がせたりする運動療法です。

水の浮力や粘性、水圧、抵抗を利用することで関節への衝撃を少なくして、筋肉や腱、靭帯損傷のリスクを減らし、負担をかけることなくリハビリが行えます。

緩やかで楽な動きが可能で筋肉の強化も効率的にでき、椎間板ヘルニアに理想的なリハビリとされています。

鍼(はり)治療

東洋医学である鍼治療をリハビリとして取り入れている病院もあるようです。

鍼によって特定部位に刺激を与えることで、慢性の痛みや麻痺の改善をはかることができ、椎間板ヘルニアに有効な温存治療、または椎間板ヘルニアの手術後のリハビリの一環という位置付けで行われています。

ツボに刺した鍼に周波電流を流して相乗効果を狙った低周波パルス療法を行うこともあります。

リハビリの頻度と継続期間

椎間板ヘルニアの手術後の例では、犬の全身状態にもよりますが、術直後からアイシングが行われたり、経過が良好であれば術後1日目という短期間で、マッサージや関節可動域のゆっくりしたリハビリが開始になります。

リハビリはできるだけ早期に始めた方が良く、退院までの期間も積極的にリハビリスケジュールが組まれている病院もあります。

ヘルニアの保存的治療を行った場合でも、安静期間を過ぎてからはその状態と目的に応じたリハビリが開始されます。

リハビリは一定期間継続することが大事であり、病院でのリハビリと合わせて、通院から通院までの期間も自宅で継続していく必要があります。

リハビリの為の通院は、通常週1回くらいの頻度であることが多いようです。

自宅で過ごす期間のリハビリは、病院の専門スタッフからリハビリプログラムの指導を受けて取り組むことになるでしょう。そして通院時には、その期間の様子や効果などを確認しながら進行していきます。

リハビリを行う期間は目標の達成までです。椎間板ヘルニアで麻痺があり、歩行を目標とすれば、歩行可能になるまでの期間がリハビリ期間です。

リハビリ期間は1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月という期間ごとに評価され、短い期間で到達する場合もあれば、1年、2年という長い期間をかけて粘り強く取り組む必要がある場合もあります。

リハビリ期間中に、目標を変更することもあるかもしれませんし、リハビリプログラムの修正が必要になることもあるでしょう。

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自宅でできるリハビリと日常生活上の注意

体重

肥満は脊椎への負担が大きくなる為、椎間板ヘルニアでは体重コントロールが必要です。

しかし、ただ体重が軽ければ良いというわけではなく、体を支え脊椎への負担を減らすことのできるしっかりした筋肉を付けることが必要です。

良質な筋肉を付けられる栄養と、バランスのよい適度な運動によるコントロールが重要です。

環境

滑りやすいフローリングは犬の足や脊椎への負担がかかり、椎間板ヘルニア発症の誘因になることが多いです。床は滑り止め対策を行いずれないカーペットなどを敷きつめたりするのも良いと思います。

足裏の毛が伸びていると滑りやすくなりますので、こまめにカットして足裏のケアを怠らないことも大事です。

また、段差の昇り降りはさせない、段差は極力作らないようにしましょう。椎間板ヘルニアでは、階段やソファーがあれば、スロープ設置するなどの工夫が必要になります。ソファーは思い切って撤去するかローソファーに変えることもお勧めです。

基本的には、椎間板ヘルニアでジャンプや2本足立ちをさせてはいけませんので注意しましょう。

 

 

散歩

散歩は犬のストレスを生活の質を保つ為にも、また体重コントロールや筋肉の維持の為にも日常のよいリハビリになりますが、椎間板ヘルニアがある場合は注意すべきこともあります。

椎間板ヘルニアが頸椎にある場合は、首輪は負担になりますのでハーネスに変えて下さい。そして基本的にリードを強く引くような行為は危険ですので避けて下さい。

あまり興奮させると飛び跳ねたり回ったりするかもしれませんので、そのような動きをさせないよう、興奮させるような刺激をあまり与えないようにしましょう。

散歩の許可などは獣医師からの指導があると思いますが、散歩は短時間で切り上げるようにします。

長時間の散歩はヘルニアの発症の誘因になることがあります。一度に長時間の散歩をするよりも、短時間の散歩を何度か行う方が負担もかかりません。(一回10分程度で一日3回など)

散歩のコースも歩行しやすい道を考慮しましょう。足元の不安定な砂利道などは避け、滑らないこと、段差がないこと、芝生などのクッション性のある地面がやわらかいところなどを条件に選ぶと良いでしょう。

もしも犬が散歩を嫌がる時は無理強いしないようにして下さい。もしかしたら痛みがあるのかもしれません。椎間板ヘルニアの再発の可能性もありますので、安静にして様子を観察し、必要ならば診療を受けるようにして下さい。

自宅で温熱療法・水中療法・マッサージ

温熱療法として、自宅でも温タオルや市販のカイロなどを使ってホットパックのようなことができます。また、お風呂に適温のお湯を張ってゆっくり温浴をさせることも可能です。

小型犬であれば、浴槽やビニールプールを使って温水プールを作り、自宅で簡単なハイドロセラピーを行うこともできます。

マッサージも要領を覚えて毎日飼い主さんが行うことができます。

いずれも火傷事故などのないように注意し、きちんと指導を受けて、無理しない程度で行うことが大事です。また、急性期など温めてはいけない期間などもありますので注意が必要です。

抱っこ

犬を抱っこする時には抱き方に注意が必要です。抱き方によっては椎間板ヘルニアを誘発する原因にもなり得ます。

腋の下を手で支えてそのまま持ち上げて抱くというのは通常ありがちな抱き方ですが、基本的にこのようにして縦抱きしたり背中を丸めて抱いたりすることは避けて下さい。尻尾を引っ張るなども禁忌です。

椎間板ヘルニアの犬はできるだけ脊椎が床と水平になるよう横に抱いて体全体を下から腕で支えて安定させ、腰を包み込むようにしっかりと抱いて下さい。また、犬が飛び降りないように静かに床に降ろします。

カートセラピー(車椅子)について

カートセラピーと言っても聞き慣れないかもしれません。

犬の車椅子は、既製品からオーダーメイドまで実にたくさんの種類のものが存在しています。

車椅子と言えば、「歩けなくなった犬の最終手段、介護の道具」という印象しかないかもしれませんが、車椅子はリハビリ期間にも活用され、車椅子を使って行われるカートセラピーというリハビリは海外では普通に行われています。

カートセラピーの利点は、たとえ後ろ足が麻痺していても、車いすが歩行の補助をする為に①前足に負担がかからず②犬は行動範囲が広くなり③自然に筋肉を使うために筋力アップのリハビリになり④後ろ足を引きずることがないので怪我の予防ができ⑤後ろ足を正しい位置で安定させることで移動時の体の歪みを矯正できます。

何よりも犬が動きやすくなりストレスの発散ができます。また、体を自然に動かすことが麻痺した神経への良い刺激にもなります。

車椅子はそれに頼ってしまうという理由で推奨しない獣医師もいるようですが、歩行を諦めるということではなく、車椅子を導入するまでの期間に行っていたリハビリはカートセラピーと併用していきます。

ただ、車椅子導入のタイミングは考慮しなければならず、手術後、早すぎず一定の期間を置いてからの方が良いようです。

価格も開きが大きいですが、車椅子は素材や軽さ、フィット感などが重要なものなので、望ましいのはオーダーメイドだと思います。それも作成する事業者を比較、検討期間を設け、選んだ方が良いと思います。

車椅子の品質は、オーダーメイドでもずいぶんと差があったりするものです。

まとめ

犬の椎間板ヘルニアの治療には、大きく分けると保存的治療と手術がありますが、どのような治療を選択した場合でも安静期間が過ぎてからのリハビリは欠かせません。たとえ神経麻痺があり歩けない状態でも、リハビリ次第で歩行の可能性もあると言えるでしょう。

犬のリハビリの内容も近年は人の医療同様に幅広くなっていて、それを専門とする病院もあります。

しかし椎間板ヘルニアのリハビリは入院期間や通院時だけに行えばよいのではなく、自宅で過ごす期間にも継続して行われてこそ効果が得られるものです。

また、リハビリにはこの期間で終了というものはなく、目標を達成するまでの期間には個体差もあります。短期間で到達することもあれば長期間かかっても到達が難しいこともあり、その期間の過程で見直しをしていくことも必要です。

リハビリには、現在の機能を維持するという意味もあるので、長期間継続していくことに無駄はないと思います。

リハビリを難しくとらえるのではなく、ヘルニアに限らず、日常的に取り入れられる習慣として考えると良いのではないでしょうか。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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