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犬の椎間板ヘルニアとリハビリテーションの種類・期間について

♦整形外科
この記事は約10分で読めます。

人の医療ではどの分野においても、リハビリテーションは、療養上欠かすことのできない重要なものに位置付けられています。

動物に当てはめてもその意味は同じで、リハビリは、生活の質を維持する為に大きな役割があるのです。

今回は、犬の椎間板ヘルニアのリハビリの期間やその内容について解説します。

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犬のリハビリテーションが目指すもの

動物リハビリテーションは、この20年ほどで発展して本格的になってきた分野のようです。

日常生活動作がうまくいかないと、犬のQOL(生活の質)を大きく落としてしまいます。

そして、散歩・トイレ・皮膚のトラブル・ストレスなど、いろいろな問題へと繋がります。

飼い主さん側にとっては、犬の介護問題が出てくるということになります。

リハビリテーションとは

リハビリテーションとは、機能を回復させて完全に元の状態に戻す、ということが目的ではありません。

「リハビリ」の語源はラテン語の「re(再び)」「habiris(適した)」にあります。

リハビリは、病気やケガなどの理由で筋力や機能が失われた状態を改善して、その障害を克服しその人らしく生きられるように近づけることを目的にしたトレーニング全般を指しています。

リハビリは、元気な時と同じように生活の質を向上させ、残された機能を維持していけるようにおこなわれるものです。

可塑性(かそせい)

神経の特徴の表現で、可塑性という言葉があります。

神経には、外から受ける刺激によって常に変化するという性質があるので、失われた機能を補うように機能が回復することは、十分に期待できるのです。

例えば、10本の神経線維のうち、半分が切れてだめになったとしても、残りの半分が機能を拡大させてその分まで働くか、他の神経細胞がこれを補って機能を保とうとする現象で、ここにリハビリの意義があると言えます。

椎間板ヘルニアにおけるリハビリの意義

犬のリハビリ対象には次のようなものがあります。

椎間板ヘルニア・膝蓋骨脱臼・骨折・関節炎などの病気の手術後・手術不可能な状態の機能改善・筋力低下の防止・高齢犬の健康維持など

リハビリと言うと特殊なことという印象を持つかもしれませんが、リハビリは幅広く行われ、しかも生活に密着しています。

椎間板ヘルニアのリハビリの目的は、脊髄神経の回復です。

リハビリは、ヘルニア手術後だけとは限りません。

手術せずに保存的治療をした場合でも、安静期間が終わった後には少しずつリハビリを進めていきます。

椎間板ヘルニアで後ろ足に麻痺がある犬は、歩行することができません。

でも、リハビリによって脊髄歩行という方法での歩行を目指すことができます。

脊髄歩行とは、前足を動かすことによって、脊髄の反射で後ろ足もつられて動き始めることで可能になる歩行のスタイルです。

椎間板ヘルニアが進行して神経麻痺があったとしても、このようにして、脳の指令を必要としない歩行ができるようになる可能性があります。

これだけでも、リハビリが有意義であることを証明していると言えるでしょう。

【椎間板ヘルニアについての参考記事】

犬の椎間板ヘルニアの初期症状と進行レベルのグレード分類

犬の椎間板ヘルニアの保存的治療 安静・薬・レーザーについて

犬の椎間板ヘルニア手術にかかる費用と治療の成功率について

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椎間板ヘルニアのリハビリの実際

マッサージ・ストレッチ(徒手療法)

マッサージは、リハビリ前のウォーミングアップや、リハビリ後のクールダウン目的で行われます。

マッサージの効果は、

  1. リラックス
  2. 血行・リンパなどの循環促進
  3. 筋緊張の緩和
  4. むくみや疼痛の管理

などがあります。

素人が勝手に行うと症状を悪化させることもあるので、病状が安定してないうちは専門のスタッフに任せ、家でマッサージを行う時の注意点などを聞いておきましょう。

マッサージやストレッチで血行が促進され、筋肉や関節の固まりがほぐれて治りが早くなったり、動きが柔軟になるので怪我の予防にも効果があります。

【マッサージの参考記事】

犬もリラックスして免疫アップ!ドッグマッサージの素敵な効果

関節可動域運動(徒手療法)

膝関節・股関節・足関節などの関節をゆっくりと伸ばしたり曲げたりするリハビリです。

麻痺があって自分では動かせない後ろ足なども、ゆっくりと屈伸させてやることで、筋肉の緊張がほぐれ、使われない関節の動きが固まってしまうことを予防できます。

また、健康な部分までが悪い所をかばって正常な動きをしていないことがあるので、良いところも同じようにリハビリを行います。

アイシング・温熱療法(物理療法)

人のリハビリで、物療と略されるのは

  • アイスパックを使って患部を冷やす
  • ホットパックや低周波レーザー
  • マイクロウェーブなどで患部を温める

といった種類のリハビリのことです。

冷やす方は、腫脹、熱感、炎症を抑えるのに効果的で、術後のリハビリや、リハビリ後のクールダウンにも行われます。

温める方は、リハビリ前のウォーミングアップや、慢性的な痛みの軽減、代謝を促進する、神経機能を活性化させる、などを目的に行われます。

高齢者の人が「痛いので電気をあてる」というような言い方をするのを聞いたことがないでしょうか?

それはこのリハビリです。

ハイドロセラピー(水中療法)

水中トレッドミル(水中歩行機)で温水の中を歩かせたり、温水プールで泳がせたりする運動療法です。

水の浮力、粘性、水圧、抵抗といった特徴を利用して、関節への衝撃を少なくし、ケガのリスクを減らしながら負担をかけずにリハビリが行えます。

この方法は椎間板ヘルニアに理想的なリハビリとされています。

鍼(はり)治療

東洋医学である鍼治療をリハビリに取り入れている病院もあるようです。

鍼を使って刺激を与えることで、慢性の痛みや麻痺を改善させることを目的とします。

さらに、ツボに刺した鍼に周波電流を流し、低周波パルス療法を行うこともあります。

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リハビリの頻度と継続期間

椎間板ヘルニアの手術後は、直後からアイシングが行われることもあります。

経過が良好なら、術後1日目という短期間のうちにマッサージや関節可動域のゆっくりしたリハビリが開始になります。

リハビリは、できるだけ早期に始めた方が良いので、退院までの期間に積極的にリハビリスケジュールが組まれている病院もあります。

リハビリは一定期間継続することが大事で、病院でのリハビリと合わせて、通院から通院までの期間も自宅で継続していかなければなりません。

リハビリのための通院は、週1回くらいの頻度が多いようです。

通院から通院の期間のリハビリは、病院のスタッフからリハビリプログラムの指導を受けて、飼い主さんが取り組むことになると思われます。

そして通院時に、その期間の様子や効果などを確認しながら進めていきます。

リハビリを行う期間は目標の達成までです。

歩行を目標とするなら、歩行が可能になるまでの期間がリハビリ期間です。

リハビリ期間は1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月という期間ごとに評価することが必要です。

目標に、短い期間で到達する場合もあるでしょうけど、1年や2年という長い期間をかけて粘り強く取り組む必要があることもあります。

評価をしながら、リハビリ期間中に目標を変更することもあるかもしれません。

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自宅でできるリハビリと日常生活上の注意

体重

肥満は、脊椎にかかる負担が大きくなるので、体重コントロールは必須です。

それも、ただ体重が軽ければ良いというわけではなくて、脊椎への負担を減らし、体を支えることができる、しっかりした筋肉を付けることが大事なのです。

良質な筋肉を付けられる栄養と、適度な運動によるコントロールをしなければなりません。

環境

滑りやすいフローリングは、足や脊椎への負担がかかり、椎間板ヘルニア発症の原因になることが多いです。

床は滑り止め対策を行い、ずれないカーペットなどを敷きつめたりする工夫をして下さい。

足裏の毛が伸びていると滑りやすくなりますので、こまめにカットするなど足裏のケアを怠らないことも大事です。

また、段差は極力作らないようにしましょう。

階段やソファーがあれば、スロープ設置するなどの工夫が必要です。

ソファーは思い切って撤去するか、ローソファーに変えることもお勧めです。

椎間板ヘルニアでジャンプや2本足立ちをさせてはいけませんので注意しましょう。

 

 

 

散歩

散歩は犬のストレス発散や、体重コントロール、筋肉の維持の為に、日常のリハビリになります。

ただし、椎間板ヘルニアがある場合は注意点をチェックしておいて下さい。

  • 椎間板ヘルニアが頸椎にある場合は、首輪は負担になるのでハーネスに変える
  • リードを強く引く行為は危険なのでしない
  • あまり興奮させて飛び跳ねたりしないよう強い刺激を与えない
  • 散歩は短時間で切り上げる
  • 散歩のコースは歩行しやすい道を選ぶ

長時間の散歩はヘルニアの発症の誘因になることがあるので避けて下さい。

物足りないようであれば、一度に長時間の散歩をするのではなく、短時間の散歩を何度か行う方が負担がかかりません。(一回10分程度で一日3回など)

コースも足元の不安定な砂利道などは避け、滑らない、段差がない、芝生などのクッション性のある地面がやわらかいところなどを条件に選んであげると良いと思います。

犬が散歩を嫌がる時は、無理強いしないで様子を見て下さい。

もしかしたら痛みがあるのかもしれません。

椎間板ヘルニアが再発した可能性もありますので、安静にして様子を観察し、必要があれば診察を受けるようにして下さい。

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自宅で温熱療法・水中療法・マッサージ

温熱療法として、自宅でも、温タオルや市販のカイロなどを使ってホットパックのようなことができます。

また、恐がらないようなら、お風呂に適温のお湯を張ってゆっくり温浴をさせることも可能です。

小型犬なら、浴槽やビニールプールを使って温水プールを作り、自宅で簡単なハイドロセラピーもできます。

マッサージも要領を覚えて毎日飼い主さんが行うことができます。

ただ、急性期など温めてはいけない期間もあるので、事前に指導を受けて、できる範囲内で行うようにして下さい。

抱っこ

犬を抱っこする時には抱き方に注意が必要です。

抱き方によっては椎間板ヘルニアを誘発することがあります。

腋の下を手で支えてそのまま持ち上げて抱くというのは、通常ありがちな抱き方だと思います。

しかし、このようにして縦抱きしたり、背中を丸めて抱いたりすることは避けて下さい。

尻尾を引っ張るなども要注意です。

椎間板ヘルニアの犬は、できるだけ脊椎が床と水平になるよう横に抱いて、体全体を下から腕で支えて安定させ、腰を包み込むようにしっかりと抱いて下さい。

そして、犬が飛び降りないように静かに床に降ろします。

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カートセラピー(車椅子)について

カートセラピーと言っても、あまり聞き慣れない言葉ですが、車椅子を指します。

犬の車椅子は、既製品からオーダーメイドまでたくさんの種類があります。

車椅子と言えば、「歩けなくなった犬の最終手段、介護の道具」という印象しかないかもしれませんが、車椅子はリハビリ期間にも活用されます。

車椅子を使って行われる、カートセラピーというリハビリは海外では普通に行われています。

カートセラピーは、たとえ後ろ足が麻痺していても車いすが歩行の補助をするので、

  1. 前足に負担がかからない
  2. 犬は行動範囲が広くなる
  3. 自然に筋肉を使うために筋力アップのリハビリになる
  4. 後ろ足を引きずることがないので怪我の予防ができる
  5. 後ろ足を正しい位置で安定させることで移動時の体の歪みを矯正できる

といった利点があります。

何よりも、犬が動きやすくなってストレスの発散ができます。

また、体を自然に動かすことが、麻痺した神経への良い刺激になります。

車椅子は、それに頼ってしまうという理由で推奨しない獣医師もいるようです。

しかし、これは歩行を諦めるということではないのです。

車椅子を導入するまでの期間に行っていたリハビリは。カートセラピーと併用していきます。

車椅子導入のタイミングは考慮が必要で、手術後、早すぎず一定の期間を置いてからの方が良いようです。

価格も開きが大きいですが、車椅子は素材や軽さ、フィット感などが重要です。

やはり、高くてもオーダーメイドに限ると私は思います。

それも作成する事業者まで比較し、検討期間を設けてから選んだ方が良いと思います。

車椅子の品質は、オーダーメイドでもずいぶんと差があったりするのです。

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まとめ

犬の椎間板ヘルニアは、どのような治療を選択した場合も、安静期間が過ぎてからのリハビリは欠かせません。

犬のリハビリの内容も、最近では人の医療と同様に幅広く、それを専門とする病院もあるようです。

リハビリで、目標を達成するまでの期間には個体差もあります。

長期間かかっても到達が難しい場合、その期間の過程で見直しをしていくことも必要です。

リハビリを難しくとらえず、ヘルニアに限らず、日常的に取り入れられる習慣として考えると良いのではないでしょうか。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

 

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