『犬の十戒』~犬との約束~のページを開く

子犬を叩くしつけ方法が及ぼす悪影響  有効か虐待か

♦子犬のしつけ

子犬は言葉がわからないのだから叩くしつけ方法で覚えさせるとよいという考え方の飼い主さんがたまにいます。

しかし、近年は、犬のしつけで叩くという「体罰」はデメリットが大きいと広く知られるようになりました。

はっきり言えば叩くしつけ=体罰は虐待と紙一重、あるいはそのものと思います。

今回は、叩くしつけ方法が子犬にどのような影響を与えるのかについてまとめてみたいと思います。

スポンサーリンク

子犬を叩くしつけ方法・体罰の歴史的背景

根底にあるのはドミナンス理論

一昔前には、犬の行動を狼になぞらえて考えられたしつけ方法が主流だった時代がありました。

狼はその群れで「アルファ」と呼ばれるボスが絶対的な存在とされています。

その群れの関係は支配と服従で成り立っていて、低いポジションの狼は上位にいる狼に服従するのがルールです。

それと同じ理論を犬にも当てはめて、その関係性は人間と犬の間でも同様であると考えられていました。

つまり、犬をしつける為には人に犬を絶対服従させることが必要とされてきたのです。

飼い主という存在は、絶対的権力を持ったボス(アルファ)であるということを犬に教えこむことが重要であると考えられていたのです。

人間は犬よりも上位の存在であることを犬に認めさせるということを基本にしたしつけ方法です。

この基本は今でも混在しているようなので、お聞きになったことがある飼い主さんも多いのではないかと思います。

さらに、犬は人間と権勢を争いたがる生き物であるとされ(アルファシンドローム)、どちらが上かの認識を犬に勘違いさせることが第一の問題と言われてきました。

そうなるといくらしつけをしても指示を聞かず、問題行動を起こすようになると言われていたのです。

この考え方をドミナンス理論といいます。

この理論に基づいて、飼い主が上の位にあることを犬に知らしめる為には、犬を叩く体罰式のしつけも正当な方法とされてきました。

《体罰の方法》

手で叩く・棒などの物で叩く・蹴る・鼻をはじいて痛みを与える・粗相の後に犬の鼻を床に押し付ける・犬を無理やり仰向けにして抑えつける・マズルを掴んで頭を揺する・首輪で首を締め付ける

リードを引くと首にスパイクが食い込んで痛みを与える作りになっている首輪、チョークチェーンなど体罰式しつけ道具もあります。

そして、犬と人間の順位付けの為には、

  • 家から散歩に出る時は飼い主が先
  • 犬よりも飼い主が先に食事する
  • 人間の目線より高い位置に抱き上げてはいけない

など、日常の行動の順位の影響も細かく決められてきました。

飼い主が許可を出す前に食事に口をつけたら叩くことは容赦なく、犬が食事中にあえて途中で食べ物を取り上げたりするのです。

そして、その時に犬が唸ったら服従姿勢を強要するなどの方法も推奨されていました。

そのようなしつけ方法はまだ幼い子犬の頃から行う方が効果的とされ、早くからこのようにしつけて服従させることが理想とされていたのです。

叩くなどの体罰による支配と服従を教え込むしつけ方法は、1990年代くらいまでは正当とされて一般的なものだったようです。

子犬に対する体罰の効果と問題点

叩く体罰によるしつけ方法は、子犬にどのような影響を与えるものでしょうか。

効果と問題点を次に挙げてみます。

効果

  • 子犬の自主性に関係なく、犬は苦痛を感じるのが嫌なので痛みや恐怖を避けるべく命令に従うようになる。
  • 強制力があり結果が出るのが早い。
  • 母犬も子犬のマズル(鼻)を噛むことがあり、マズルをつかんだりするのは母犬と同じ方法でのしつけである。(犬と人間では同じ意味にはならないということがわかっています)

問題点

  • 自己防衛が強くなり、攻撃性を持ちながら成長してしまう。
  • 効果が出るのが早い反面、嫌々従っているに過ぎないのでしつけの効果は長続きしない。
  • 子犬と飼い主の関係を対立させてしまうことになり、修復は困難になる。
  • 恐怖の為に威嚇行動などの問題が表面化することがなくなり、問題ないようには見えるが、人間との信頼関係ができない。そのために相手やタイミングによって予告なくいきなり攻撃行動を起こす危険がある。

ハンドシャイ

人間の手で叩くことで痛みや恐怖を植え付けられた子犬は、人間の手に異常に恐怖を感じるようになります。

その現象をハンドシャイと呼びます。

叩くつもりはなくても、手を子犬の前に出しただけで子犬は構えて身をすくめるようになり、やがて恐怖に耐えられずに出された手に噛みつくようになることもあります。

子犬にとって、人の手は恐怖の対象になるのです。

目の前に出されなくても、人間の手が子犬の視界の中で動いただけで、叩かれる恐怖への防衛で威嚇するというような過剰な反応を見せることもあります。

人間の手は、本来、子犬にとっては自分を撫でてくれたり、ご飯やおやつをくれたりする優しくて信頼できるものであるはずです。

その手で叩く、抑えつけるなどの苦痛を与えるしつけをすれば、子犬の心の中には人の手に対する恐怖が育ってしまいます。

それは心の病気と言われるような状態にしてしまうこともあるのです。

しつけと虐待が紙一重になる

子犬が望ましくないような行動をした時に軽く叩くのは、嫌悪刺激というしつけ方法とも言えます。

しかし、嫌悪刺激の使い方はタイミングが難しく、たしなめたい行動の一秒以内に罰を行わなければ犬は行動と罰の関係性が理解できないと言われています。

つまり知識やテクニックもない人に無駄に叩かれたにすぎなくなります。

そもそも小さな子犬を叩く行為自体、しつけを通り越して虐待となりうると私は思います。

信じがたいことですが、しつけという大義名分で、無抵抗な子犬を叩く、殴る、蹴る、壁に叩きつけるなど、人間の感情を理不尽に子犬にぶつけているにすぎない飼い主もいます。

その結果、子犬が死んでしまったという話は聞くだけで胸が苦しく、しかも私の知る限り珍しいことではありません。

運よく命が助かっても小さな子犬の体は、叩くだけで容易に骨折などもするでしょう。

そして障害を残すなどして、将来的に大きなダメージを負わなければならなくなることにもなります。

たとえ体の傷が大きくなくても、心に大きなダメージが残る可能性もあり、心の病気を一生抱えることになるかもしれません。

叩くなどの虐待を受けてきた子犬は人間を信頼できなくなり、その後の扱い方も難しくなります。

人間のせいでそのようになってしまった犬が、結果的に捨てられてしまう話もまた現実にあるのです。

しつけ方法 現在の傾向は

かつて犬は狼の群れと同様の階級付けがあるとされ、それを人との関係に当てはめての服従に重点を置くしつけの歴史があることは事実です。

しかし現在はその理論自体、アメリカ獣医行動学会からも否定されているとのことです。

群れというのは実はそれぞれ家族の単位だったのではないかとの説の元に、子犬をしつけるのは基本的に親であることから、その主従関係も親子関係であったと考えられるようになりました。

また、「犬は番犬」という位置付けから時代と共に人と犬の関係性も変化し、そこにも家族という表現が用いられるようになりました。

そのような背景からも、子犬にとって飼い主は信頼のおける頼れる親のような存在として、子犬を健全に育み教育するしつけスタイルが望ましいというように変化してきたのです。

さらに犬には人間と権勢を争うという概念はないとされるようになりました。

犬は決して人間を支配しようとか権力を奪いたくて狙っているのではなく、ただ自分のルールで好きなように暮らしていたいだけと考えるのです。

なので、人もそれを理解した対応、つまり犬と自分のどっちが上だとか争う必要はなく、犬の本能に基づく行動や習性をうまく利用して導けば、しつけはスムーズにいきやすいというのが今の主流の考え方です。

子犬のしつけ方法として推奨されているのは、子犬の望ましい行動とそれで得られる結果を報酬という形で関連付けて繰り返し覚えさせ、子犬の自主的な行動を導く方法です。

しかし、犬の訓練士やトレーナーは統一された資格ではなく方針もそれぞれ違います。

今でも子犬のしつけは支配と服従の関係と解いているトレーナーもいますし、叩く方法が正統と推奨する訓練も見られます。

ただ、少なくとも叩くことは、効果より弊害の方が大きいことだけははっきりしているのではないでしょうか。

しつけという大義名分の陰に隠れた虐待に誰も気づかなかったとしたら、それはとても危険なことだし、犬を誰が守るのでしょうか。

喋ることもできない無力な子犬には、飼い主さんしか頼る存在はないのです。

その人が何十倍も大きな体で大きな手を振り上げて、自分を叩くことはどれだけの恐怖と不安でしょうか。

どんなに怖くても痛くてもそこから逃げることもできないのです。

しつけを解くものはたくさんありすぎて、どれが正しいのかわからなくなり、叩くのも効果があるのだと信じてしまうことがあるかもしれません。

でも、無理やり屈服させ強制する関係は信頼関係ではないし、継続性のあるしつけではないとやはり私も思います。

まとめ

子犬のしつけについては、基本が同じでも解釈が違うために方法も違ったものになることもあります。

体罰的なしつけが正当とされた時代があったのも事実で、しつけ方法の主流の交代はあっても、混在しているのが現実のようです。

ただ、叩くことが正しいと信じている飼い主さんがいるとしたら、それは違うということに今すぐに気づいて欲しいです。

しつけは子犬だけが学習するのではありません。

いかに望ましい行動を引き出せるのか、飼い主さん側も勉強する必要があります。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

【おすすめ記事】

子犬が来たら教えたい!しつけはいつから始められる?

犬のしつけ教室と預かり訓練 その違いと選び方について

コメント

テキストのコピーはできません。