犬の糖尿病の初期症状チェック 合併症はどんなもの?

♦内分泌(ホルモン)系

糖尿病は、人の生活習慣病でも代表的な病気ですが、犬にも人と同じように糖尿病があるのです。

糖尿病は合併症も多く治療が難航しやすいので、こじらせないよう早期発見・治療したいものです。

今回は犬の糖尿病の初期症状について解説しますので、チェックしてみましょう。

知っていれば気づきも違いますので、是非知っておいて下さい。

糖尿病は膵臓から分泌されるホルモンの異常

糖尿病と言えば、血糖値が高いということとは結びつくけど、どこがどう悪いのかわかりにくいかもしれませんね。

糖尿病は、膵臓の機能が関係する内分泌疾患です。

膵臓にあるランゲルハンス島と呼ばれる部位のβ細胞からは、インスリンというホルモンが分泌されます。

インスリンは、食べ物から摂り入れた糖のバランス(血糖値)を調整するホルモンです。

糖尿病はこのインスリンが不足し、血糖値のコントロールがつかなくなる病気です。

糖尿病には2つの型があります。

《糖尿病の型》

  • Ⅰ型糖尿病(インスリン依存型)
  • Ⅱ型糖尿病(インスリン非依存型)

Ⅰ型糖尿病は、インスリンの分泌機能が回復する見込みがなく、インスリンが絶対的に不足してしまいます。

ですのでこの型の糖尿病では、外部からインスリンを補給する治療が必要です。

もう一方のⅡ型糖尿病の方は、食習慣や肥満によって血糖の上昇が続き、インスリンの作用が追いつかなくなくなる状態です。

こちらの方は、習慣を改善したり血糖降下剤を内服したりすれば、インスリンの働きが改善することも期待できるので、必ずしもインスリン治療を必要とはしません。

人の糖尿病で言うなら、小児や若年性など、先天的にインスリン分泌機能に異常があるものはⅠ型で、中年以降に健診などで見つかるような生活習慣が原因のもののほとんどはⅡ型糖尿病です。

ところが、犬の糖尿病はほとんどがⅠ型糖尿病(インスリン依存型)と考えられています。

犬の糖尿病は、8歳以降でどちらかと言えば小型犬に発症しやすく、犬200頭に1頭程度の割合で発生します。

また、オスよりもメスの方が2倍多いと言われます。

これは、発情期の黄体ホルモンが関係しているようで、避妊手術することは糖尿病の発症の予防にも有効のようです。

糖尿病の発症の要因には次のようなものがあります。

  • 遺伝
  • 自己免疫反応
  • 膵炎・クッシング症候群・副腎皮質機能亢進症・甲状腺機能低下などの基礎疾患
  • ウイルス感染
  • 薬物
  • 肥満や運動不足
  • 食生活
  • 加齢
  • ストレス

【参考記事】

犬のクッシング症候群に併発した糖尿病 治療と予後

犬の尻尾がハゲてくる?甲状腺機能低下症とはどんな病気?

また、糖尿病の好発犬種もあります。

《好発犬種》

ダックスフンド・ビーグル・ミニチュアシュナウザー・プードル・ラブラドールレトリーバー・ゴールデンレトリーバー・ジャーマンシェパード・テリアなど

糖の代謝はインスリンなしではできない

食事から栄養素として体内に入ったブドウ糖は、血液中に流れ込み、体のいろいろな組織のエネルギー源として使われます。

この血液中のブドウ糖(血糖)は、インスリンによって一定の濃度に保たれています。

食事から糖が体内に取り込まれ、血糖値が上がると、膵臓からインスリンが分泌されます。

そして、血液中の糖はインスリンによって速やかに処理されるのです。

インスリンが不足すると糖の代謝が進まないので、血糖値は高い状態のままです。

その状態が続くと、次第に臓器がダメージを受けるようになります。

糖尿病の初期症状のチェックポイント

糖尿病の初期症状には、あまり目立つものがありません。

糖尿病を発症していても気づかずに過ごし、病気が進行して合併症が現れ、そこで初めて診断されるということが多い病気です。

人の糖尿病も、自覚症状がなく検診時などに血糖値の高さで引っかかり、それで発覚するパターンが多いですが、犬が検診を受ける機会は、飼い主さんが作らない限りはありません。

糖尿病の合併症である白内障の症状で医療機関を受診し、そこで初めて糖尿病があると発覚することもあるようです。

人の糖尿病の症状には、「多飲・多尿・多食・体重減少」という3大症状と呼ばれるものがあり、これは犬にも共通します。

腎臓は、インスリンに代謝されずに血液中に浮遊している増えすぎた糖を尿として体外に排泄しようとするので、多尿になります。

この尿をチェックすれば、尿中に糖がたくさん検出できます(尿糖)。

また、高血糖状態の血液は浸透圧が高いので(濃度が濃いので)、体はそれを薄めて補正しようとして水分をたくさん取り込みます。

このメカニズムによって、血糖が高くなると水分も必要になり、喉の渇きを強く感じるので多飲という症状が現れるのです。

そして多飲になるので尿の回数もさらに増えるという悪循環に陥ります。

ちなみに、犬の飲水量の目安は計算式もありますが、体重1kgあたり50ml~60ml/1日とざっくり覚えておくと便利ですよ。(季節や食事内容で変動します)

糖尿病と言えば肥満と関係が深い印象ですが、病気が進行していくほどにどんどん痩せていきます。

糖尿病はインスリンが働かないので、糖をエネルギー源に変えての有効活用ができません。

体の細胞がそれぞれ正常に機能するにはエネルギー源が必要です。

それで、体を構成している脂肪やタンパク質を分解して糖の代わりに利用し、それが体重減少という症状になるのです。

エネルギーとして活用されない糖は血液中に大量に余り、一方で体は常にエネルギーに飢えた状態です。

エネルギー不足で常に空腹感があり、その結果が多食という症状です。

食べても食べても、いくら糖を取り入れても、有効な栄養にならないので、体重は減り痩せていくのです。

糖以外のエネルギー源を分解して使うことは、本来の自然な代謝ではなく、体内には代謝産物である有害物質が増えます。

それが代謝性アシドーシス(ケトアシドーシス)という状態を起こす原因になります。

代謝性アシドーシスは、昏睡症状や最悪の場合は死に至ることもある危険で重篤な状態です。

もちろん、いきなりこのような重症になるわけではないですが、その過程に気づきにくいので、分かった時にすでに進行している可能性があるのです。

例えば、多食という症状は、健康で問題ないようにも見えてしまいます。

よく食べる、よく水を飲むというような症状は、極端に痩せるという異常が見られない限りは見過ごされることも多いと思われます。

糖尿病合併症の症状

糖尿病は、治療しなければ合併症を招き、いよいよ治療が難しくなります。

人の糖尿病で3大合併症といわれるものがあります。

  • 糖尿病性網膜症
  • 糖尿病性腎症
  • 糖尿病性神経障害

合併症は生活の質の低下や余命にも関わって来るので、治療の過程でも定期的なチェックが必要です。

しかし、犬の糖尿病には、この合併症の全ては当てはまりません。

その理由は、寿命の違いにあると言えそうです。

合併症の中には、糖尿病を発症してから10年ほど経過して起こるものもあります。

犬の糖尿病の発症年齢と寿命の関係から考えれば、人のように長い病歴を持つことはなく、そこに至ることはほぼないと考えられるからです。(合併症が出現する前に寿命に達する)

犬の糖尿病で見られる合併症では、次のようなものをチェックすべきでしょう。

糖尿病性白内障

白内障は、犬の糖尿病で最も多い合併症です。

高血糖の持続は、目の水晶体内部の浸透圧にも異常を生じさせ、急速に進行します。

症状としては、見えづらくなるなどの視覚障害が生じることですが、視力そのものは手術で回復可能です。

ただ、それに続発するぶどう膜炎や網膜症といった病気があり、それがあるかどうかで術後の成績は大きく変わります。

【参考記事】

犬の糖尿病に合併する白内障 その治療と手術について

水晶体誘発性ぶどう膜炎

目のぶどう膜炎は炎症性疾患で、その原因には、ウイルスや細菌感染、外傷性などいろいろありますが、糖尿病性白内障にも続発して起こります。

この病気があることで、白内障の手術の成功率も下がります。

目のぶどう膜の働きは、

  • 眼内組織へ血液を供給する
  • 免疫の調整を行う

などですが、ここに炎症が起こることによって機能障害が起こります。

視覚障害や、重度になると強い眼痛やまぶたの痙攣を伴います。

治療にはステロイドや非ステロイド性消炎剤の点眼や内服などが使われます。

全身性高血圧

犬の糖尿病では、高血圧症を伴うことも多いです。

血圧をチェックしながら、程度によっては、適宜、高血圧症の治療を行うことになります。

糖尿病性神経障害

神経障害は、糖尿病が長期に渡る場合に起こる合併症です。

  • 歩行異常
  • 反射の低下
  • ナックリング(足運びが悪くつま先を引きずって歩く、足の甲で歩くなどの歩行異常)

有効な治療法は特にないため、予防のためにも血糖コントロールが何より重要です。

糖尿病性腎症

初期はタンパク尿くらいでも、次第に進行し最終的には腎不全へと移行します。

血糖コントロールやその他対症的な治療になります。

人には多く、透析を受ける原因の第一位を占めているのがこの合併症によるものですが、長期経過によって起こる合併症なので、犬にはまれとも言われています。

【参考記事】

犬の腎不全と余命 検査数値と腎臓病のステージについて

犬の腎臓の重大な病気「尿毒症」末期症状にどう対処するか?

糖尿病性ケトアシドーシス

糖尿病に続発する、最も重要で重篤な病態です。

糖尿病を治療している経過中にも起こる可能性がありますが、糖尿病の初期症状に気づかないまま、このような重篤な症状になって初めて医療機関を受診することもあるようです。

ケトン体が過剰に増えると、体は極端に酸性(アシドーシス)に傾き、昏睡状態に陥って死亡することも多い、緊急を要する状態です。

【参考記事】

犬の糖尿病の検査方法と診断・治療にかかる費用について

他にも、メスの半数近くに尿路感染が見られ、膵炎、肝臓拡大、クッシング症候群の合併があることも多いです。

糖尿病の治療のポイントと震えの症状

犬の糖尿病に多いⅠ型(インスリン依存型)の治療は、インスリン療法が必須になります。

インスリン療法は、インスリンを注射で補う治療です。

インスリン開始時は、基本的には入院して血糖値の変動をチェックしながら、体に合う量を決めます。

そして、自宅で飼い主さんが注射を施行しなければなりません。

インスリン治療中は、低血糖症状のチェックも重要です。

インスリンを強制的に体外から補充するため、食事で入ってくる糖に比べインスリン量が過剰になる可能性もあります。

そうすると、血中の糖の濃度が下がりすぎて低血糖症状を引き起こし、重度では、痙攣や意識障害、昏睡、失明などが起こることもあるのです。

インスリン療法を行っている時は、血糖値のチェックは大変重要です。

《低血糖の症状》

  • 震え
  • 生あくび
  • 嘔吐
  • 元気がなくなる
  • ボーっとするなど

特に、震えなどは顕著に表れ、インスリン注射して3~6時間後までは低血糖が起こることがあるのでチェックが必要です。

震えなどの低血糖症状が認められる場合は、糖分を含むものを舐めさせるなどの応急処置をして医療機関を受診して下さい。

人の場合では、自宅で血糖チェックしている糖尿病患者さんは多いですが、犬の場合、自宅で可能なのは尿糖チェックくらいです。

血糖値を知ることはできないので、飼い主さんは症状から判断しなければならないでしょう。

低血糖の時には速やかな対応ができるように、ぶどう糖液などを準備しておくと良いと思います。

糖尿病は、血糖値をいかに良好に安定させるかということが、合併症予防の重要なポイントです。

 

まとめ

犬の糖尿病の初期症状は、目立たない為に気づきにくいことが多いです。

発症時には比較的高齢であることが多いので、人のように長い期間を患うことはないかもしれません。

しかし予後を良好に過ごすには、いかに合併症を予防するかであり、早期発見、早期治療開始が条件です。

犬の糖尿病は、治療が難しいと言われますが、コントロールは可能な病気です。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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