『犬の十戒』~犬との約束~のページを開く

犬のてんかんの薬と副作用 意識や食欲への影響について

♦ストレス/脳神経

犬のてんかん治療は、定期的な抗てんかん薬の服用です。

私の愛犬もてんかんですが、薬を長期に渡り毎日飲ませています。

でも普段は特に症状がなく副作用も恐いので薬は飲ませてないという飼い主さんも多いようです。

薬は確かに副作用もありますが、その必要性や薬の種類についてを人の看護師の立場からご説明したいと思います。

スポンサーリンク

犬のてんかん治療を症状がなくても続ける理由

犬のてんかんの症状の表れ方は様々で、発作にもいくつかのパターンがあります。

【てんかんの症状と発作の参考記事】

犬のてんかんの症状 危険な発作の2パターンと対処法

てんかんの犬は、普段は病気があるように見えずいたって元気でいることがほとんどですが、てんかん発作を起こすたびに脳はダメージを受けます。

発作が重なるほど脳は大きく傷つき、その影響で次の発作がひどくなるというスパイラルに陥ります。

てんかんの治療は、目立つ発作が起きた時だけ対応すればよいのではなく、発作を極力起こさないようにして脳を守る治療と言った方がわかりやすいかもしれません。

人のてんかん治療では、何も症状が現れてない時も普段から抗てんかん薬を服用してコントロールします。

てんかん発作を起こして救急に運ばれてくる患者さんは、薬の量などの調節がうまくいっていないか、不規則な飲み方をして指示が守られてない、あるいは薬を中断しているということも多かったです。

発作が出た時に治すのではなく、普段から起こらないように薬で抑える治療は犬のてんかんにも共通しています。

《犬の抗てんかん薬開始の目安》

  1. 月一回以上の発作があった
  2. 発作の間隔が3~4ヶ月以内
  3. 群発発作を起こした
  4. 重責発作を起こした
  5. 発作の頻度が増えた
 

通常、てんかんを発症してできるだけ初期に治療を開始する方が、何度も発作を起こしてから治療を開始するよりも発作のコントロールがうまくいくとされています。

それは「発作を繰り返すたびに脳がダメージを受ける」ことと関係しています。

発作のコントロールが早期の時点でうまくいけば、犬のその後の生活の質もよりよく保てるのです。

ただ、てんかん発作の原因に脳炎や脳腫瘍などの病気がある場合は、その病気の治療も必要です。

【参考記事】

犬のてんかんは脳炎の可能性も・脳炎は完治する病気?

見逃さないで!その症状は犬の脳腫瘍の進行かもしれない

「抗てんかん薬を飲み始めたらやめられない」の誤解

治療には抗てんかん薬がメインになります。

このことについて「抗てんかん薬を飲ませ始めるとずっとやめられなくなる」と考える飼い主さんがとても多いことをネット上で知りました。

抗てんかん薬を飲ませることが、もう治らない状況を作るという絶望的な意味に誤解しているのだと思います。

抗てんかん薬を飲ませることは治らない状況を作るわけではありません。

その前に、てんかんという病気は完治する病気ではない、と受け止めることが必要になります。

てんかんの治療は、薬を飲ませててんかん発作を抑え、脳の安定した状態を保って日々の暮らしの質を保てるようにすることなのです。

てんかんの重大な発作である重責発作や群発発作は、薬でしっかり抑制できなかった場合や薬を急に中断した時などに起こりやすくなります。

薬を一度飲み始めるとやめられない、というのは、抗てんかん薬はどこかでやめるわけではなく生涯継続する必要があるという意味では事実です。

例えば抗生剤のように、一定期間飲んだら止めるなどというわけにはいかないのです。

元気に見えても、てんかんという病気は爆弾を抱えているようなものなので、薬をいきなり中断すると、抑えられていた発作を誘発する(離脱発作)危険があります。

薬を飲み始めたせいで病気が悪くなってそうなるのではありません。

てんかん治療で使用される薬と副作用

犬のてんかん治療薬は人の薬と共通のものもありますが、人の薬ほど多くの選択肢はないようです。

♦フェノバルビタール

フェノバルビタールは、バルビツール酸系という種類の薬で、フェノバールという商品名で人の臨床でも有名です。

散剤(粉薬)・錠剤・注射薬があり、治療開始時にはまずこの薬を処方するという獣医師が多いようです。

この薬は中枢神経を抑制し興奮を鎮めるという効果があります。

人に対しては、睡眠薬や静脈麻酔薬としても長く使用されてきた歴史のある薬ですが、現在、人のてんかん治療では第一選択の薬ではなくなりました。

治療域と毒性域が近い、簡単に言えばほんのわずかな違いで薬にも毒にも転がるので、投与量の微調整がとても重要な薬です。

過剰投与で、深刻な肝障害が現れる危険があります。

なので、この薬を使い始めた後の血中濃度の測定という検査が必要です。

この薬は単独で使用され、血中濃度が十分あがっているのに効果が少ない場合は、それ以上にこの薬を増量できませんので、他の薬(臭化カリウム)を併用します。

血中濃度は、投与後4~5時間で最大まで上がります。

しかし効果が安定するまでに2週間ほどかかります。

<副作用>

飲み始めに見られる初期副作用と、長期服用中に出て来る長期副作用があります。

《初期副作用(投与して2週間くらい)》

抑うつ状態・ふらつき・鎮静・過眠傾向・動きが悪くうまく歩けない・足がもつれる

《長期副作用》

動きが鈍い・食欲の亢進・肥満・多尿・尿失禁・肝機能障害

食欲があるのは元気な印象もあるかもしれませんが、異常な食欲亢進は薬の副作用です。

肥満防止の為にも、犬の食欲と食事量のバランスをとってむやみに食事量を増やさないようにしなくてはなりません。

この薬は、肝障害を起こす危険がもっとも重大な副作用で欠点とも言えます。

食欲不振、黄疸や腹水などの症状が出るのは、肝障害を起こしている兆候です。

他の抗てんかん薬に変更し肝障害に対する治療が必要ですので、この薬を飲ませている時は注意して観察して下さい。

うちの犬も短い間でしたが最初はこの薬を使いました。

私の知っている犬もやはりこれで、とても一般的におこなわれる処方なのです。

飲み始めると明らかにボーっとなった印象はあると思います。

でも、むやみに怖がるのではなく、大事なことは、

  • 獣医師の指示に従って服薬を守ること
  • 副作用に気づいたら早く主治医に相談すること

です。

この薬には依存性もあり、急に中断すると離脱症状でひどい発作を起こす危険があります。

他の薬に変更する時も、獣医師の指示通り移行していかないといけません。

また、一緒に飲ませてはいけない薬もあります。

血中濃度が下がって効果が得られなくなることもあるので、勝手に止めたり与えたりせず、必ず獣医師の指示に従って下さい。

♦臭化カリウム

臭化カリウムは、人の抗不安薬や抗けいれん薬として使用されてきた安全性の高い薬です。

フェノバルビタールで効果が得られない時に、フェノバルビタールの量は増やさずに併用する薬として第一選択される薬です。

肝臓に問題があって、肝臓に負担のかかるフェノバルビタールを使えない時に臭化カリウムを単独で使用することもあるようです。

これは粉末の薬ですが、とても少ない量で管理が難しいので、普通は液剤にして処方されることが多いようです。

ただ、病院にもよるのか、私の身近にはこの薬を粉のまま処方されていて、吹けばなくなるほどに少ないのでちゃんと体に入っているのか不安になると言っている飼い主さんがいました。

この薬を追加すると効果が上がると期待でき、肝臓に負担もかからない安全な薬ですが、効果が現れるまでにはかなり時間がかかるようです。

<副作用>

嘔吐・胃粘膜刺激・食欲の亢進・多尿

♦ゾニサミド(コンセーブ)

ゾニサミドは、商品名エクセグランとして人の抗てんかん薬にも使用されます。

また、この成分を使用したトレリーフという商品名の薬は、人のパーキンソン治療薬です。

ゾニサミドは日本で開発された薬で、海外に先駆けて1989年に日本で発売されました。

それまで主流だったフェノバルビタールでは、難治性のてんかんは発作のコントロールがつかないことも多かったようです。

しかし、ゾニサミドでよい結果が得られるようになり、何よりもこの薬の利点は副作用が殆ど出現しないことです。

私の犬はゾニサミドを長年使っています。

血中濃度の測定も可能ですので、濃度を確認しながら治療することができます。

動物医療で使用する薬には人間用の薬をそのまま使用することも多いですが、ゾニサミドは現在、コンセーブという名前で犬用抗てんかん薬として発売されています。

うちは、人用のままの「エクセグラン」として処方を受けています。

獣医師の好みもあるのか、「コンセーブ」を処方する病院もありますが、成分はどちらも同じゾニサミドです。

薬価は、「コンセーブ」の方がいくらか高いかもしれないです。

犬用抗てんかん剤「コンセーブ®錠 25mg/100mg 」

DSファーマアニマルヘルス株式会社

■組成
コンセーブ錠 25mg は、1 錠中にゾニサミド 25mg を含有する。
コンセーブ錠 100mg は、1 錠中にゾニサミド 100mg を含有する。

通常ゾニサミドとして、初回投与量は、体重 1kg 当たり、2.5~5mg を 1 回量とし、1 日 2 回、およそ 12時間間隔で経口投与する。

以後、臨床徴候により必要に応じて漸増する。なお増量後の用量は、通常 10mg/kg/回までとする。

出典元 https://animal.ds-pharma.co.jp/pdf/20141017_consave.pdf

ゾニサミドは、単独でてんかん治療が可能です。

この薬を追加薬として使用できますが、フェノバールとの併用はできません。

<副作用>

過敏症・嘔吐・軽度の鎮静・ふらつき・部分的な振戦(ふるえ)・食欲が低下する・骨髄抑制による再生不良性貧血や無顆粒球症など

しかしこれらの副作用は、服用開始して数日以内に消失することが多いと言われます。

うちは実際にこの薬を長年継続していますが、ゾニサミドの副作用を感じることはほとんどありません。

依存性や重篤な肝障害を起こす危険も少ないので、長期に服用させる薬としては安全と考えられます。

薬は基本的に、使い方次第で毒にもなる物質なので全く何の影響もないとは言えないですが、うちの場合はこの薬でうまくいっています。

♦ジアゼパム

セルシンやホリゾンという商品名で知られている薬で、人の臨床でも鎮静薬としてなじみのある薬です。

胃カメラの時の前処置などに眠くなる注射薬してよく使われてきた薬です。

この薬はベンゾジアゼピン系抗不安薬という種類で即効性が期待できます。

錠剤・注射薬・座薬という形態があり、病院でてんかん発作時の緊急の注射薬に使用されるのもこの薬です。

また、自宅で発作時に使う屯用の座薬として処方されるダイアップ座薬もこれなのです。

【参考記事】

犬のてんかん発作時の座薬の入れ方・タイミング・ 副作用について

<副作用>

鎮静・ふらつき・呼吸抑制

長期に渡っての継続使用では、依存性や耐性が生じやすいので、短期的に使用される薬です。

♦クロナゼパム

商品名はリボトリールやランドセンで、ジアゼパムと同じ系統のベンゾジアゼピン系抗てんかん薬に入ります。

ジアゼパムよりも作用時間が長いですが、やはり長期継続使用すると依存性や耐性といった副作用を生じる点も似ています。

抗てんかん薬を他のものに変更する時などに、移行時の調整のために一時的に使用する、というような使い方をされることがあるようです。

♦フェルバメート

薬でのコントロールが困難な難治性てんかんに有効と言われますが、発売後まもなく、人間において重大な肝毒性の副作用が問題となった薬です。

しかし、犬の安全域は広いとされます。

薬剤としては高価で、あまり使用頻度の高い薬ではないようです。

♦ガバペンチン

吸収がよく、血中濃度があがりやすく(有効化されるのが早い)治療抵抗性のてんかんに使用されます。

しかし、作用が切れるまでの時間も短いので、頻回な投与が必要になるのが難点です。

プレガバリンという、これの類似薬の方は、半減期がこの倍くらいある(効果の持続時間が長い)ようです。

<副作用>

鎮静化が起こり意識レベルが低下

♦レベチラセタム

レベチラセタムは、イーケプラという商品名の抗てんかん薬です。

イーケプラは、他の薬で効果が得られない時に併用、または、部分発作に単独使用で効果的であるとされる薬です。

この薬の利点は効果が現れるのが早いことです。

通常、薬の血中濃度が安定するまでには日数がかかります。

血中濃度が安定し、効果が得られるようになるまでに

  • フェノバルビタール10~14日
  • ゾニサミド10日程度
  • 臭化カリウム2~3ヶ月

と言われます。

しかし、レベチラセタムは、1日の服用で効果が安定しますので、すぐに作用して欲しい時などに単発的に使用することもできる画期的な薬です。

私は、発作時は座薬を使い、レベチラセタムを3日間追加で内服させるように指導されておりこの薬もストックしています。

<副作用>

嘔吐・流延(よだれ)・軽い鎮静

抗てんかん薬の副作用による食欲の変化について

抗てんかん薬の副作用でわかりやすいのは、フェノバルビタール服用中の変化ではないかと思います。

副作用が出ると、反応が鈍くなり、活発さが薄れてあまり動かなくなり、食欲だけは増進して水もがぶがぶ飲むという状態です。

そんな姿を見て、病気で犬が変わってしまったとショックを受けるかもしれませんが、犬が変わったのではなくこれは副作用です。

私の愛犬がフェノバルビタールを使用したのは短期だったので、あまり参考になりませんが、寝てばかりなのに食欲だけはあるという感じでした。

最近になって、知人の犬がてんかんになりフェノバルビタールが処方されていましたが、やはりそれまでと違ってボーっとなった印象でした。

ただ、発作の影響とか後遺症とかいう場合もあるので、副作用との区別は必要です。

そしてもちろん個体差はあるとは思います。

私が感じることは、薬の副作用で不調に陥るよりてんかん発作の不調の方がはるかに大きいということです。

副作用を恐れ、なるべく薬を使わないようにと考える飼い主さんは多く、その不安もわからないでもありません。

しかしてんかんで何よりも大事なことは、発作を起こさせないことです。

発作の連続が結果的に大きな発作を招いて、生命が危険にさらされたり、重大な後遺症を残すこともあります。

そうなることの方が副作用よりもっと深刻だと思います。

ここで挙げたのは、特発性てんかんで使う薬のことですが、脳炎や脳腫瘍など、てんかんを起こす病気が他にあれば、その治療薬であるステロイドがメインの処方になると思われます。

ステロイドについては、↓の記事を参考にして下さい。

【ステロイドについての参考記事】

犬のアレルギー治療薬の種類・ステロイドなどの特徴や副作用

てんかん薬の服用中は、定期的に血中濃度や肝機能を調べて副作用をチェックしますが、飼い主さん自身でも、食欲や症状、行動の変化などを記録しておくと役に立ちますよ。

そうすることで、獣医師にも効率よく時系列で情報を伝えることができます。

 

まとめ

犬のてんかんの治療は、発作を予防する為に薬を使用します。

てんかんの治療薬は、人のてんかん治療薬と共通していて、薬ですのでもちろん副作用もあります。

それでも、脳を発作から守る為に薬はあるのです。

どうか必要に応じて薬を受け入れてあげて下さい。

犬は自分で治療を選べません。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

【おすすめ記事】

犬のてんかんの薬は中断禁忌!飲み忘れはどう対処する?

デメリットも調べよう!ペッツベストのペット保険・口コミ評判

コメント

テキストのコピーはできません。