犬のてんかんの薬と副作用 意識や食欲への影響について

犬のてんかんの発作はいつ起きるかわかりません。

しかし、発作がなければ、普段は特に問題もなく過ごしていることが多いので、抗てんかん薬などで治療はしていないという飼い主さんもいるようです。

犬のてんかん治療に使う抗てんかん薬は何種類もあり、副作用も様々です。

今回は、犬の抗てんかん薬の種類と、意識や食欲に影響する副作用について解説します。

犬のてんかん治療が必要な理由

犬のてんかんの発作にはいくつかのパターンがあります。

その発作の原因になっているものにもよりますが、ほとんどの発作は5分ほどで自然に回復し、そして、発作の後には何事もなかったかのように元に戻ることも多いようです。

【てんかんの症状と発作のパターンについて】

犬のてんかんの症状と対処法 危険な発作の2パターンとは

普段は病気があるようにも見えず、発作以外はいたって元気に過ごしている犬もたくさんいます。

ただ、普段も何らかの異常行動が現れることがあります。

私の愛犬にも時折見られるものがありますが、例えば

  • 何か恐怖を感じている様子で隠れる
  • 何かを探し回るような落ち着かない徘徊(探索行動)
  • 舌を何度もペロペロと出す
  • 何か噛んでいるようにくちゃくちゃと口を動かす

というような意味のない動作が、短時間ですが繰り返されることがあります。

このような異常行動自体が部分発作である可能性もあります。

または、全般発作の前兆(前駆症状)であるとみなすこともできます。

しかし、異常行動が軽いものであれば、単にその犬の癖のようなものとしてあまり気にされないことも多いかもしれません。

てんかんは、発作の時だけ対応すれば、普段の治療は不要、というわけではありません。

脳はてんかん発作を起こすたびにダメージを受けているのです。

今回起きたてんかん発作は、前回の発作の結果である、と考えることができます。

発作が起こるたびに脳には何らかのダメージが残ります。

そして発作が重なる分だけダメージも重なり、そのせいで次の発作がひどくなるというスパイラルに陥ることになるのです。

てんかんの治療は、発作を極力起こさないようにさせる治療です。

人のてんかん治療では、何も症状が現れてなくても、普段から抗てんかん薬を使い発作が出ないようにコントロールすることを目的としています。

発作が出たら治すというのではなく、起きないように薬で抑えるということは、人も犬も共通です。

犬のてんかんの治療は、

  1. 月一回以上の発作があった
  2. 発作の間隔が3~4ヶ月以内
  3. 群発発作を起こした
  4. 重責発作を起こした
  5. 発作の頻度が増えた

というようなことを基準にして治療の開始が検討されます。

一般的に、てんかんを発症した初期に治療を開始する方が、何度も発作を起こしてから治療を開始するよりも治療がうまくいくとされます。

それは、「発作を繰り返すたびに脳がダメージを受ける」ためです。

発作のコントロールがうまくいけば、その犬のQOL(生活の質)もよりよく保つことができます。

ただ、てんかん発作を起こしている原因に脳炎や脳腫瘍などの病気がある場合、その病気の治療をしない限りはてんかん発作の改善は期待できないので、治療開始の基準や方法もまた変わってきます。

【参考記事】

犬のてんかんは脳炎の可能性も・脳炎は完治する病気?

見逃さないで!その症状は犬の脳腫瘍の進行かもしれない

てんかん治療の薬の重要性

てんかんの治療方法は、抗てんかん薬の内服です。

しかし、「抗てんかん薬を飲ませるようになってしまったらずっとやめられなくなる」と考える飼い主さんは多いです。

抗てんかん薬を飲ませることは、もう治らない状況を作ってしまうという絶望的な意味と誤解している飼い主さんもいるのではないでしょうか。

抗てんかん薬を飲ませることが絶望的な状況を作るわけではありません。

てんかんという病気は完治する病気ではないので、てんかんの治療が目指すところは、病気をいかにコントロールし日々の暮らしの質を保てるようにするかということです。

薬を飲ませることで発作を抑え、脳の安定した状態を維持するのです。

特に、てんかんの重大な発作パターン、重責発作や群発発作は、薬でしっかりと発作を抑制できなかった場合や、薬を急にやめたりした時に起こりやすく、大変危険です。

薬を一度飲み始めるとやめられなくなる、というのは、発作を抑制するには薬の継続が必要という意味では事実です。

例えば抗生剤のように、一定期間飲んだら止めるというわけにはいかないからです。

発作のない元気な状態に見えても、それは爆弾を抱えているようなもので、発作を抑える薬が常時必要なのです。

抗てんかん薬をいきなり中断すると、抑えられていた発作を誘発する(離脱発作)危険があり、勝手にやめるということもできません。

しかしそれは、薬を飲み始めたせいではないのです。

てんかん治療に使用される薬と副作用

犬のてんかん治療薬は何種類かあります。

人のてんかん治療にも使用されている薬と共通しているものもありますが、人間の治療薬ほど選択肢が多くはありません。

犬のてんかん治療に使われている薬と薬の副作用を順に挙げていきましょう。

♦フェノバルビタール

フェノバルビタールは、バルビツール酸系の薬で、フェノバールという商品名で犬の抗てんかん薬に選択される頻度の高い薬です。

散剤(粉薬)・錠剤・注射薬があります。

治療開始時には、まずこの薬を処方するという獣医師が多いようです。

この薬は、中枢神経を抑制して興奮を鎮めるという効果があります。

人の薬としては、抗てんかん薬以外にも睡眠薬や静脈麻酔薬として長く使用されてきた薬ですが、現在はてんかん治療の第一選択薬ではなくなりました。

治療域と毒性域が近く、投与量の微調整がとても重要です。

過剰投与になると、深刻な肝障害が現れる危険があるので、投与後の血中濃度測定も重要になります。

この薬は単独で使用されますが、血中濃度が十分であるにもかかわらず効果が少ない場合は、この薬を増量せずに他の薬(臭化カリウム)を併用します。

血中濃度は経口投与後では4~5時間で最大となります。

しかし、薬の効果が安定するまでには2週間ほどかかります。

<副作用>

飲み始めに見られる初期副作用と、長期服用中の長期副作用があります。

投与し始めて2週間くらいの間は、抑うつ状態、ふらつき、鎮静などがあり、過眠傾向や動きが悪くうまく歩けない、足がもつれている、などの異変が見られます。

しかし初期の副作用に関しては、2週間くらいで薬に慣れてくると言われます。

服用し続けていくうちに、今度は長期副作用が現れるようになります。

長期副作用も同じように、動きが鈍く、また食欲の亢進が見られ、多尿になり、そのせいで尿失禁などが見られることもあります。

また、食欲が増して運動機能が低下するという悪循環で太りやすくなることもあります。

食欲があると元気な印象かもしれませんが、異常な食欲亢進の場合は薬の副作用です。

肥満防止の為にも、犬の食欲に合わせながら食事量の適正を守り、むやみに増やさないようにする注意が必要です。

薬の量が多すぎて、血中濃度が高い状態が続いた場合、肝障害を起こす可能性があることが、この薬の一番重大な副作用であり欠点と言えます。

過剰投与は、そのような重大な副作用に繋がる恐れがあることを知っておきましょう。

食欲不振、黄疸や腹水などの症状が出るのは肝障害を起こしている兆候で、急遽、他の抗てんかん薬に変更して肝障害に対する治療が必要になります。

依存性もあって、急に薬を中断すると離脱症状としてひどい発作を起こす危険がありますので、この薬をやめて他の薬に変更するなどの時も、獣医師の指示通りに慎重に行わなければなりません。

また、併用してはいけない薬もあります。

禁忌薬と一緒に服用すると、血中濃度が下がって効果が得られなくなるので、基本的には勝手に薬を止めたり与えたりするのではなく、必ず獣医師の指示に従うようにして下さい。

私の身近にこの薬でてんかん治療をしている犬がいますが、やはり少し活動性が抑えられているのか、ボーっとしておとなしくなった印象はあります。

しかし、起こりうる副作用を理解し、指示を守れば、過剰に不安になることはないと思います。

♦臭化カリウム

臭化カリウムは、人の抗不安薬や抗けいれん薬として使用されてきた、安全性の高い薬です。

フェノバルビタール治療で効果が得られない時に、フェノバルビタールの量はそのままに、併用する薬として第一に選択、追加される薬です。

また、肝臓に問題があって、肝臓に負担のかかりやすいフェノバルビタールを使用できない場合などは、臭化カリウム単独で使用されることもあります。

粉末ですが、微量で管理が難しくなるので、普通は液剤にして処方されることが多いと思います。

この薬を追加することで効果が上がることは多く、肝臓に負担もかからない安全な薬です。

ただ、効果が現れてくるまでにはかなり時間がかかるようです。

<副作用>

嘔吐、胃粘膜刺激があります。

また、フェノバルビタールと同様に、食欲の亢進と多尿があります。

♦ゾニサミド(コンセーブ)

ゾニサミドは、商品名エクセグランとして人の抗てんかん薬としても使用されます。

また、同じ成分を使用した商品名トレリーフとして、やはり人のパーキンソン治療薬としても使用されています。

ゾニサミドは日本で開発された薬であり、海外に先駆けて1989年に日本で発売されました。

それまで主流だったフェノバルビタールでは、難治性のてんかんは発作のコントロールがつかないことも多かったようです。

しかし、ゾニサミドでよい結果が得られるようになり、何よりも、この薬の利点は副作用が殆ど出現しないことです。

私の愛犬はゾニサミドを使っています。

血中濃度の測定も可能ですので、有効な濃度を確認しながら治療することができます。

動物医療で使用する薬には、人間用の薬をそのまま使用することは多いですが、ゾニサミドは現在、コンセーブという名前で犬専用の抗てんかん薬も発売されています。

うちの場合は、人用の「エクセグラン」の処方を受けていますが、「コンセーブ」を処方する病院もあり、獣医師によって異なりますが、成分はどちらも同じゾニサミドです。

薬価としては、「コンセーブ」の方がいくらか高いかもしれません。

犬用抗てんかん剤「コンセーブ®錠 25mg/100mg 」

DSファーマアニマルヘルス株式会社

■組成
コンセーブ錠 25mg は、1 錠中にゾニサミド 25mg を含有する。
コンセーブ錠 100mg は、1 錠中にゾニサミド 100mg を含有する。

通常ゾニサミドとして、初回投与量は、体重 1kg 当たり、2.5~5mg を 1 回量とし、1 日 2 回、およそ 12時間間隔で経口投与する。

以後、臨床徴候により必要に応じて漸増する。なお増量後の用量は、通常 10mg/kg/回までとする。

出典元 https://animal.ds-pharma.co.jp/pdf/20141017_consave.pdf

普通はゾニサミド単独で十分にてんかん治療が可能です。

また、この薬を追加薬として使用することも可能ですが、フェノバールとの併用はできません。

犬のてんかん治療にはこの薬がメインになると予測されています。

<副作用>

ゾニサミドはスルホンアミド系という種類の薬剤ですが、その種類の薬剤に対する過敏症があります。

嘔吐、軽度の鎮静、ふらつき、部分的な振戦(ふるえ)なども挙げられます。

また、食欲が低下するという副作用もあります。

しかしこれらの副作用は、服用開始して数日以内に消失することが多く、副作用らしい副作用は見られないことの方が多いです。

フェノバルビタールの副作用のように、依存性が生じやすいことや重篤な肝障害を起こす危険は少ないので、長期に服用させる薬としては問題が少ないと思われます。

こちらの薬に切り替える価値は十分あると私は感じています。

ただ、ゾニサミドは骨髄抑制を起こす可能性があり再生不良性貧血や無顆粒球症などの副作用が出現するというリスクはあります。

また、肝臓で代謝されるので、それを阻害する種類の薬は併用禁忌です。

♦ジアゼパム

セルシンホリゾンという商品名で知られている薬で、人の医療でも鎮静薬として広く使用される薬です。

胃カメラの時の前処置として、注射すると眠くなる薬としてもよく知られている薬です。

この薬はベンゾジアゼピン系の抗不安薬であり即効性が期待できます。

錠剤・注射薬・座薬があり、てんかん発作時の緊急の注射薬として、病院で使用されるのもこの薬です。

また、自宅での発作時に屯用の座薬として処方されるダイアップ座薬もこの薬です。

私もダイアップ座薬は常備しています。

【参考記事】

犬のてんかん発作時の座薬の入れ方・タイミング・ 副作用について

<副作用>

副作用として鎮静、ふらつき、そして特に呼吸抑制に注意が必要な薬です。

長期に渡り継続使用では依存性や耐性が生じやすいために、短期的に使用されることが多いです。

♦クロナゼパム

商品名はリボトリールランドセンで、ジアゼパムと同じ系統のベンゾジアゼピン系抗てんかん薬に入ります。

ジアゼパムよりも作用時間が長いのが特徴で、やはり長期継続使用すると依存性耐性といった副作用を生じる為、短期的に使用されます。

抗てんかん薬を他のものに変更する時などに、移行時の調整のために一時的に使用するというような使い方をされることもあります。

♦フェルバメート

薬でのコントロールが困難な難治性てんかんに対して有効性が高いと言われますが、発売後まもなく人間において重大な肝毒性の副作用が問題となりました。

しかし、この薬は、犬の安全域は広いとされます。

薬剤としては高価で、あまり使用頻度の高い薬ではないようです。

♦ガバペンチン

吸収がよく、血中濃度があがりやすく(有効化されるのが早い)治療抵抗性のてんかんに使用されます。

しかし、作用が切れるまでの時間も短いので、頻回な投与が必要になるのが難点です。

プレガバリンという、これの類似薬の方は、半減期がこの倍くらいある(効果の持続時間が長い)ようです。

<副作用>

鎮静化が起こる薬であり、意識レベルが低下しボーっとなってしまうことが多いです。

♦レベチラセタム

レベチラセタムは、イーケプラという商品名の抗てんかん薬です。

イーケプラは、他の薬で効果が不十分な場合に併用、または、部分発作に対する単独使用で効果的であるとされる薬です。

この薬の利点は効果が現れるのが早いことです。

通常、薬の血中濃度が安定するまでには日数がかかります。

血中濃度が安定し効果が得られるようになるまでに

  • フェノバルビタールで10~14日
  • ゾニサミドは10日程度
  • 臭化カリウムだと2~3ヶ月

と言われます。

しかし、レベチラセタムは1日の服用で効果が安定しますので、速やかに作用して欲しい時などに単発的に使用することもできます。

私は、愛犬にもし発作があれば、座薬を使用することとレベチラセタムを3日間追加内服させるように指導されていて、この薬もストックしています。

<副作用>

嘔吐、流延(よだれ)、軽い鎮静

てんかんの薬の副作用による食欲の変化について

抗てんかん薬の副作用ですぐにわかるものは、フェノバルビタール服用中の食欲を始めとする変化ではないかと思います。

反応が鈍くなり、活発さが薄れ、あまり動かなくなり、それでも食欲だけは増進して水もがぶがぶ飲むということが起こりやすいです。

そんな姿を見て、犬が変わってしまったと悲しく思うかもしれませんが、決して犬が変わったのではなく、これは副作用なのです。

私の愛犬がフェノバルビタールを使用したのは短期だったので、あまり参考になりませんが、過眠傾向になって食欲だけは増進しました。

ゾニサミドに変更し、もう何年も使っていますが、副作用とされる食欲の低下を感じることはありません。

もちろん個体差はあるとは思います。

それよりも、私が感じることは、薬の副作用で不調に陥るより、てんかん発作の不調の方がはるかに大きいということでした。

副作用をやみくもに恐れ、なるべく薬を使わないように、と考える飼い主さんは多く、その不安もわからないでもありません。

しかしてんかんで何よりも大事なことは、発作を起こさせないことです。

発作の連続が結果的に大きな発作に繋がって、生命が危険にさらされ、重大な後遺症を残すこともあります。

その方が副作用よりもっと怖いのではないでしょうか。

脳炎や脳腫瘍などの原因がわかっているてんかん発作については、ステロイドが処方に加わることが多いです。

ステロイド処方時は、その副作用である食欲の異常亢進などが目立つと思います。

【ステロイドについての参考記事】

犬のアレルギー治療薬の種類・ステロイドなどの特徴や副作用

てんかん薬の服用中は、定期的に血中濃度を測定し、肝臓の機能をチェックする為の血液検査で副作用をチェックしていきます。

自宅でも、食欲を含め犬の症状や変化を飼い主さん自身で記録しておくことをお勧めします。

そうすることで獣医師に効率よく簡潔に、そして時系列で情報を伝えることができるのです。

 

まとめ

犬のてんかんの治療は、発作を予防する為に薬を使用するのです。

てんかんの治療に使用する薬は、人の薬とも共通するものがあり、何種類かの中からメインの薬が選択されますが、副作用もあります。

しかし、薬は、脳を発作から守る為にあるので、どうか必要に応じて薬を受け入れてあげて下さい。

犬は自分で治療を選べません。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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