犬の椎間板ヘルニア手術にかかる費用と治療の成功率について

犬の椎間板ヘルニアの治療方法には、内科的(保存的)治療と外科的治療があり、外科的治療とは椎間板ヘルニアの手術のことです。

脊椎は重要な神経が通っている部位であり、手術が難しいという印象があり後遺症の不安も大きいのではないでしょうか。

今回は、ヘルニアの手術の成功率、また、費用はどの程度かかるのかなどについて解説したいと思います。

犬の椎間板ヘルニアの手術適応

犬の椎間板ヘルニアは、その重症度で5段階のグレード分類されます。

治療方法の選択は、グレード分類を基準に、ヘルニアの型、犬の年齢や他に病気はないかなどの条件を総合して検討されることになります。

一般的には、グレード2までの比較的軽度の椎間板ヘルニアでは内科的治療が選択されることが多く、グレード3以上の中等度~重度の場合に手術が検討されることが多くなります。しかし、軟骨異栄養犬種と分類される犬種などでは、病状の進行が急激であることも多く、注意が必要です。

内科的治療は、症状安定までの一定期間、絶対安静と薬物治療が中心になります。

内科的治療を開始しても症状の改善がない、または進行が早いなどでは、急遽、手術適応になることもあります。

【犬の椎間板ヘルニアの症状とグレード分類について】

犬の椎間板ヘルニアの初期症状と進行レベルのグレード分類

また、グレード5の重度の椎間板ヘルニアでは、神経麻痺症状の出現を認めてから極力早期に手術が必要であるとされ、緊急手術の対象になることがあります。

【治療方法の選択と内科的治療について】

犬の椎間板ヘルニアの保存的治療 安静・薬・レーザーについて

椎間板ヘルニアの手術の実際

どのような手術か

椎間板ヘルニアは、何らかの理由によって潰された椎間板物質が突出、または脱出して脊髄神経を圧迫する為に、痛みを始めとした神経症状が表れる病気です。

内科的治療では、炎症を抑える薬や安静によって椎間板物質や周囲の炎症の回復を待つことになりますが、手術による外科的治療とは、脊髄神経を圧迫している椎間板物質を直接取り除くことです。

手術の方法やどこから切開してアプローチするかなどは、椎間板ヘルニアの部位がどこであるか、頸椎なのか胸椎または腰椎なのかなどによっても異なって来ます。

頸椎椎間板ヘルニアの手術では、仰向けの姿勢で腹側(喉)から切開を行う腹側減圧術(ベントラルスロットVentral Slot Decompression)という術式がもっとも多く選択されます。

また、胸・腰椎椎間板ヘルニアの手術では、うつ伏せの姿勢で背中側から切開を行う片側椎弓切除術(ヘミ・ラミネクトミー Hemi laminectomy)という術式が一般的です。

椎間板ヘルニアの手術の術式には他にも、ラブ法・背側椎弓切除術(ドーサル・ラミネクトミー:Dorsallaminectomy)・予防的開窓術 (フェネストレーション:Fenestration)などがあります。

また、近年は動物医療でも再生医療が導入されるようになり、そのような治療を行っている医療機関もあるようです。

再生医療では、犬の手足の骨髄細胞を採取し、それを約2週間培養して、脊髄神経細胞を作り出すことが可能な幹細胞を犬に移植する(体内に戻す)という治療を繰り返します。

手術に必要な検査

椎間板ヘルニアの手術が検討される場合は、ヘルニアを起こしている病変部の状況を正確に特定する必要があります。

その為、症状の確認や単純レントゲン検査だけではなく、CTやMRI、脊髄造影レントゲン検査などの画像検査が必須です。脊髄造影は手技的に難しくリスクの高い検査であるので、最近ではCTやMRIが手術前検査として選択されることが多いようです。

このような画像検査は、人の場合は手軽に受けられるのですが、犬は検査中動かないということはできないので、全身麻酔下で行う必要があります。

また、椎間板ヘルニアの病変だけでなく、全身状態をチェックする為の血液検査や心電図などのスクリーニング検査が行われ、手術可能かどうかの判断材料になります。

手術に必要な入院期間

椎間板ヘルニアの手術はヘルニアの原因を取り除く根治治療であり、手術が効果的な犬の場合、手術後にはすっきりと症状が改善することが期待できます。

入院に必要な期間は、病院ごとに設定があり、また、その犬の経過や性格によっても多少違ってくるのですが、4~7日間くらいとされています。

その間、手術後出血などに注意しながら経過観察し、また、状態がよければ手術後のリハビリも早期に少しずつ開始されます。

抜糸は退院時に病院から指定された日数で外来受診し、創部の確認をしながら行われます。

手術・検査・通院にかかる費用

検査にかかる費用

椎間板ヘルニアの主な検査として、手術に必須な画像検査の費用については次のようになります。

◇単純レントゲン検査

一般的に「レントゲン」と言えばこの検査のことで、椎間板ヘルニアに特異な検査というわけではなく、単純撮影ではヘルニアは写りませんので、確定診断にはなりません。

しかし、骨の変形や骨折の有無など、他に痛みの原因となっている病変がないか確認することができ、それを目的として行われます。

短時間で撮影でき、結果もすぐにわかります。費用は大体4000円~8000円くらいになります。

◇脊髄造影レントゲン検査

脊椎間に穿刺針を刺し、造影剤をクモ膜下腔に注入してレントゲン撮影で造影剤の流れを確認する検査で、椎間板ヘルニアの病変部が確認できます。

全身麻酔が必要で、検査に約1時間を要し、費用は20000円~30000円くらいになります。

◇CT検査

状況に応じて麻酔が必要な時もあり、無麻酔での撮影も可能な検査です。短時間で病変部が確認でき、脊髄造影と組み合わせて行われることもあります。

10~15分の検査で、費用は30000円~50000円くらいです。

◇MRI検査

磁器を利用した画像診断で、神経系の評価にとても有効な検査です。椎間板ヘルニアだけでなく他の病変も確認することができます。

費用は麻酔も含めて50000円~100000円と、検査機関によっても費用の開きが大きく、安いところでも高額な費用がかかる検査ですが、詳細な結果が得られとても優れた検査です。

【検査にかかる費用について】

犬のてんかん治療に必要な検査や薬 かかる費用の目安は?

手術にかかる費用

椎間板ヘルニアの手術にかかる費用については、手術を行う病院によってかなり違いがあるようです。

動物医療については人のように保険診療制度があるわけではなく、あくまでも自由診療ですので、手術費用の設定は医療機関によるところです。

手術費用20万円~50万円の範囲で、中にはそれ以上の高額な費用の設定になっている病院もあるようです。

費用の内訳は、手術に必要な麻酔費用、検査費用、入院費用も含まれている場合が殆どですが、一見、費用が安くてもMRI検査などの費用は別に徴収される場合もあるようです。

高度医療センターなどの医療機関では、手術費用は高めになっていることが多いようです。もちろん、手術費用は検討しなければなりませんが、それ以上に、費用が割高であったとしても、手術に慣れていて確実な技術を持っている病院を選ぶことが重要になると思います。

ちなみに、再生医療では、1回の移植費用が10万強、2回目以降が少し安くなるといったところのようです。

通院にかかる費用

退院後は定期的に通院が必要です。

手術費用の中には抜糸までの費用が含まれるところも多いと思います。

通院では、再診料1000円前後に検査があればその費用、術後、再発防止のためのレーザー治療を行うこともあり、それは一回1000円~4000円ほどの費用がかかります。

また、手術後に通院でリハビリを行うことが多く、マッサージや関節可動域運動などのリハビリの費用が一回1000円~1500円程度の費用、水中トレッドミルを行う場合は一回3000円~5000円程度の費用がかかります。

重度の椎間板ヘルニアでは手術やリハビリでも機能回復できないこともあり、車いす作成費用が必要になる場合もあります。

椎間板ヘルニア手術の成功率

外科的治療である手術は、ヘルニアの原因になっているものを直接取り除くことができるという反面、あらゆるリスクも伴い、それが成功率を下げる原因にもなります。

手術のリスク

手術そのものもですが、手術前には詳細な画像検査が必須であり、どのどちらにも全身麻酔が必要ですので、全身麻酔によるリスクがあげられます。

全身麻酔は、少なからず呼吸器系、循環器系、肝機能、腎機能などへの負担がかかります。

その為に、まれに呼吸障害や血圧の低下によるショック、腎障害、肝障害、心停止などの重大な合併症が起こる可能性もあります。そして、それは特に高齢や元々何らかの内臓疾患などを持っている場合にリスクが高くなります。

また、ハンセン2型のヘルニアでは、脊髄の変性が慢性的に進行している為、手術によるダメージでかえって残っている脊髄機能を悪化させる可能性もあるので、こちらの型は基本的には手術適応でないとされます。

手術が成功しても、術後の合併症で脊髄周辺の出血が起こることがあり、大変重要です。術後出血は、脊髄を圧迫し状態急変の可能性があります。

そのような合併症が起こらないとしても、術前より症状が悪化するといったこともあります。一時的な悪化のこともありますが、後遺症として麻痺などが残る可能性もあります。

また手術成功であっても、別の部位にもヘルニア再発の可能性はあります。

手術による治療成功率

椎間板ヘルニア治療では、早期であるほどに成功率は高くなります。

内科的治療と外科的治療を比較すると、グレードが低く軽症のものに関しては、成功率にそれほど違いがありませんが、グレードが高い重症のヘルニアについては、手術による治療の成功率が保存的治療の成功率を大きく上回ります。

グレード別の治療成功率

グレード1:内科療法3週間の治療成功率100%、手術による治療成功率100%

グレード2:内科療法6週間の治療成功率84%、手術による治療成功率100%。

グレード3:内科療法9週間の治療成功率100%、手術による治療成功率95%(回復まで1週間)

グレード4:内科療法12週間の治療成功率50%、手術による治療成功率90%(回復まで2.5週間)

グレード5:内科療法治療成功率7%、手術(48時間以内)による治療成功率50%(回復まで2週間)

(ただしグレード5での48時間を越えての手術は治療成功率6%)

情報の出典元:Davies and Sharp 1983 Lineberger and Kornegay

しかし、グレード5においては、治療成功率に大きな期待はできず、その半数は歩行可能にならず、さらに48時間以内に手術を行えるかどうかで治療成功率は極端に変わります。

グレード5で深部痛覚まで消失し完全麻痺となったヘルニアでは、手術も時間勝負であり、椎間板ヘルニアはいかに早期で治療に結びつけるかが予後に影響します。

椎間板ヘルニアは、重度でなければ治療成功率は高く、手術によって痛みや麻痺の症状改善に期待ができます。

反対に重度になるほど、手術に高い技術が必要であり、それでも成功率は低くなります。

まとめ

犬の椎間板ヘルニアでは、グレード分類の低いものに対しては、内科的治療も外科的治療もその治療成功率についてはそれほど差がありませんが、グレードが高くなるにつれて、手術が有効であると言えるでしょう。

しかし、重度になるとたとえ手術を行っても機能回復に期待ができなくなり、成功率は極端に低くなります。

どのような病気であっても同じことが言えるとは思いますが、椎間板ヘルニアの手術も、できる限り早期に行うことで神経症状も高い確率で改善可能となり、その後の犬のQOLを良好に保つことができるようになります。

しかし手術を選択しても再発の可能性は変わらず、術後の生活管理は大事です。

椎間板ヘルニアはどの犬種にも起こりうる病気ですが、この病気と関わりの深い犬種の存在もあり、それを踏まえて普段から発症を誘発しないような日常生活の工夫が必要でしょう。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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