犬のアレルギーでは、皮膚の症状を悪化させないためにも、かゆみのコントロールが重要です。
かゆみは痛みと並んで大変苦痛な症状です。
かゆみを掻けば掻くほど、ひどくなってくるように感じることがありますよね。
そもそも、かゆみはどうして起こるのでしょうか?
掻くことをやめるのは人間でも難しいのに、犬に掻くことをやめさせることはもっと困難です。
今回は、犬のアレルギーのかゆみ症状への対処について、みなさんと情報を共有したいと思います。
皮膚症状の典型「かゆみ」が起こるメカニズム
かゆみを専門的に説明すると、掻きたい欲求を誘発する皮膚粘膜の不快症状のことです。
かゆみには、皮膚の表皮と真皮の間にある、C線維という知覚神経が関与しているとされています。
人の皮膚の感覚は、触覚、温覚、冷覚、痛覚、痒覚を基本として成り立っています。
犬の皮膚は、温覚についてはやや鈍いと言われますが、人とほぼ同じと考えられます。
かゆみは、痒覚という感覚です。
表皮から刺激を受けたC線維がそれを脳に伝え、皮膚の刺激がかゆみとして認識されます。
その刺激がアレルギーによって発生している場合、かゆみとヒスタミンという物質の関わりが大きくなります。
かゆみは表皮からの刺激以外でも起こる症状です。
胆汁の影響で起こるかゆみ(黄疸に伴うかゆみ)、腎不全によるかゆみ(老廃物の蓄積でヒスタミン物質が増えることによるかゆみ)などの内臓の病気から起こる全身性のかゆみもあります。
モルヒネなどの麻薬投与により、かゆみが生じることもあります。
中枢性のかゆみには、内因性オピオイドという物質が関与しています。
上記したモルヒネはオピオイド鎮痛剤であり、モルヒネの副作用として起こるかゆみはオピオイド受容体刺激由来のものです。
ちょっと難しい話になってしまいましたが、かゆみという症状はとても複雑で奥が深いです。
食物やハウスダストが原因のⅠ型アレルギーでは、アレルゲンが皮膚の表面にある肥満細胞のIgE抗体と結合することで起こります。
この刺激で、細胞内のヒスタミンが細胞外に多量に放出されます。
ヒスタミンの刺激が、先述したC線維から脳に伝えられ末梢性のかゆみとして認識されるのです。
ヒスタミンのような刺激物質はアレルギーの型によっても異なりますが、さらにややこしい話になるのでここでは省略しますね。
健康で正常な皮膚は水分や油分を十分に蓄えることができるので、ハリや艶があり、強いです。
そのような皮膚ならば、外部からの刺激や異物から皮膚をガードする能力も高いのです。
でも、乾燥肌になると、その能力が不十分となり、外部からの刺激にも弱くなってしまいます。
刺激から皮膚をガードする能力のことをバリア機能と呼んでいます。
バリア機能が落ちている皮膚の表皮は、刺激物質が簡単に通り抜けてしまいます。
そしてかゆみ症状を起こすのです。
ある研究で、かゆみ症状には、掻くことで快感を感じる報酬系という脳の部位が関わっていることが明らかになりました。
痒いところを掻くと快感が生じます。しかしながら、その脳内メカニズムは不明でした。
今回、自然科学研究機構生理学研究所の望月秀紀特任助教授、柿木隆介教授は、掻くこと(掻破)によって生じる快感に報酬系と呼ばれる脳部位(中脳や線条体)が関係することを明らかにしました。
気持ちよいからもっと掻いてしまうことがよくあります。特に、アトピー性皮膚炎患者など痒みで苦しむ人々にとっては、掻破による快感は深刻な問題です。なぜなら、過剰な掻破が皮膚を傷つけ、それが原因で痒みがさらに悪化してしまうからです。
今回の発見により、快感に関係する脳部位が特定できました。この部位の活動を上手にコントロールできれば、過剰掻破を抑えることができます。そのような掻破の制御を目的とした新たな痒みの治療法開発につながることが期待されます
掻く行為には深い意味がある
かゆみを掻く行為は自然な行為ですが、実は
- かゆみの原因となる寄生虫を排除して、寄生虫が媒介する病原体の感染を防御する
- 刺激物質を払い落として皮膚がダメージを受けることを回避する
などの意味があります。
それは、種が生き延びて行くために無意識におこなっている本能的行為であるとも言えるのです。
掻いてもかゆみ症状が改善しない時、「掻けば掻くほどかゆくなる」という感覚は正しいです。
掻くという刺激は、かゆみの原因のヒスタミンのさらなる誘発を促すからです。
そして、「かゆみはますますひどくなる」という悪循環に陥ってしまうのです。
掻き続けると、皮膚表面は傷つき、バリア機能はますます低下します。
バリア機能の低下⇒皮膚刺激に対する過敏性を高める⇒さらにかゆみを引き起こすという深刻な状況に繋がってしまいます。
アレルギー性皮膚炎の代表的な症状である
アレルギー性皮膚炎は、アレルゲンに対する免疫反応(抗原抗体反応)から起こる皮膚炎です。
犬のアレルギーは、食物アレルギーと環境アレルギーに分けられます。
アレルゲンは、食物や薬剤、ハウスダストも有名ですがノミアレルギーなども抗原抗体反応の一種です。
いずれの場合でも、アレルギーの症状として最も起こりやすいものは皮膚の症状であり、中でも代表的なものがかゆみです。
アレルギーによる皮膚のかゆみは、発疹や脱毛症状を伴うことも多く、犬には大きな苦痛です。
かゆみのある部位を一心不乱に舐めたり噛んだりしているうちに、皮膚炎が悪化して細菌感染を起こしてしまうこともあります。
アレルギーとは区別が必要な場合
皮膚にかゆみ症状を起こす原因には、細菌やウイルス、寄生虫などであることもあります。
アレルギーとは治療が全く異なるので、正確な診断が大事です。
かゆみ症状の原因の一つになる疥癬(かいせん)は、インセンコウヒゼンダニというダニの寄生で起こります。
皮膚の角質層にトンネルを作ってその奥に寄生し、強いかゆみ症状のある皮膚炎を起こします。
また、脱毛や皮膚の肥厚、痂皮などの症状も伴います。
ヒゼンダニは、他の同居動物や人間にも感染するとても厄介な寄生虫ですのでご注意下さい。
駆虫と環境の改善を一気におこなわなければ、寄生の繰り返しで拡大していくので、診断は早期であることが本当に重要です。
ノミの寄生も同様の対策が必要です。
他にも、細菌、真菌(カビ)などの皮膚炎もあります。
かゆみの症状は、一日も早く正しい治療を始めるために正確な診断を早期に受けて下さい。
犬にとっては大きなストレスになる
かゆみは人間にもかなり辛いものなので、想像してみると犬にとっても大きなストレスであるとわかりますよね。
不眠・精神不安定・犬が神経質になり攻撃性が現れるなどの原因にもなるのです。
【かゆみ症状が考えられる犬の動作】
- 食事中や散歩中などでも頻繁に皮膚を掻いている
- 赤くなる、発疹がある、フケが多い、血がにじむなどの皮膚の異常
- 抜け毛が多く地肌が見える、被毛がべたつく、においが強いなど被毛の異常
- しきりに手足や肉球を舐める
- 耳や目を掻きむしったり床にこすりつけたりする
- 落ち着きがなくイライラしている、不眠、攻撃性など性格の変化
このような症状があれば、まずは病院で診断をしてもらって下さい。
皮膚炎によるかゆみで、それがアレルギー性であれば、何のアレルギーかを突き止めていくことになります。
アレルギーによるかゆみ症状への対処方法
【アレルギーへの対策】
- アレルゲンになる物質をできる限り避ける
- アレルゲンの付着を予防し、速やかに除去する
- 環境を整える
- 体のコンディションを良好に保つ
環境を整える
犬の環境を清潔に保ちましょう。
フケや抜けた被毛などがあると、ダニ(疥癬の原因のヒゼンダニとは種類が違い、ほこりの中などに成育するダニ)が繁殖しやすくなります。
ダニの死骸によるハウスダストは、犬のアレルギーの原因としても多いものです。
マメに掃除し、おもちゃやぬいぐるみなども定期的に洗濯しましょう。
室温や湿度は適切に保ちましょう。
高温多湿、あるいは乾燥がひどい部屋などは、皮膚の状態を悪化させ、かゆみ症状が強くなります。
被毛・皮膚のケア
アレルゲンを洗い流して皮膚を清潔に保つのに、シャンプーも治療の一つです。
ただ、シャンプーをし過ぎるとバリア機能が低下し逆効果になります。
皮膚のタイプが違うアレルギーもあり、どのタイプなのかで適したシャンプーも全く違うものになります。
シャンプー選びはとても大切です。
普段からの丁寧なブラッシングなどの皮膚のケアも必要です。
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栄養バランス
皮膚や被毛の健康には必須脂肪酸、特にオメガ3オイルが効果的であることはよく知られています。
私も、愛犬の皮膚の状態が悪かった時に効果を実感した経験があり、それ以降はオメガ3オイルを食事に足しています。
オメガ3オイルは、犬にも必要な栄養素であり、効果は皮膚だけではありません。
アレルギーを起こす食材は排除しなければなりませんが、栄養不足にならないように食事内容の配慮も必要です。
また、腸内環境を整えることも効果的です。
適切な薬の使用
かゆみの治療薬もいろいろな種類があります。
症状を緩和する為に、量や回数を守ってきちんと使ってあげて下さい。
【アポキル】
症状に選択的に効いてアレルギーによるかゆみを緩和する薬
ストレスへの対応
運動不足などで犬にストレスがある時も、心理的な要素がかゆみを一層強める原因になります。
ストレスを発散させ、十分にコミュニケーションを取ってあげましょう。
まとめ
犬のかゆみ症状の原因はアレルギーだけではないので、まずは正しい診断が必要です。
そして早く治療に結びつけてあげて下さい。
かゆみの症状は、犬の精神状態を左右するほど不愉快で苦痛なことです。
早く気づいて、早くその症状を取り除いてあげて欲しいと思います。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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