マラセチアによる犬の病気 皮膚病・外耳炎と免疫力の関係

犬の皮膚病の原因は実にたくさんのものがあります。皮膚のトラブルは些細なことで起こりやすく、また治りにくいものもあり、犬の病気で定期的な通院の理由に多いものです。

皮膚病、あるいは耳のトラブルで「マラセチア」という名前をお聞きになったことはないでしょうか?わかりにくいですがこれが原因になっていることは多いです。

今回は、マラセチアによる犬の皮膚病、外耳炎について解説したいと思います。

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マラセチアはカビの一種

マラセチアと言われても聞き慣れない名前ですので、何のことかよくわからないという感じもあるかもしれません。

マラセチアは、いわゆるカビの一種である真菌の一つです。俗に言う「水虫」なども白癬菌という真菌が原因であり、つまりはカビの一種なので同じ仲間に入ります。

マラセチアは普段から皮膚に常在している

正しくはマラセチア酵母菌と呼ぶのですが、これは特別にどこかから来る菌ではなく、普段、皮膚病などがない健康な皮膚にも少数常在している「常在菌」です。

犬にはもちろんですが私達の皮膚にもいます。

しかし、普段は数が増殖するようなこともない為に、皮膚病を起こすわけでもなく、ただおとなしく共存しているだけです。しかし何らかの原因によってこの菌が増え、皮膚病などの原因になることがあります。

検査ですぐに見つかる

マラセチア皮膚病を起こしている部位からテープで採取した表皮に特殊な染色を施して顕微鏡で見ると、落花生のような(よくボーリングのピンとも表現される)形に見える菌が発見できます。それがマラセチアです。

病気になっていない表皮からも発見することができるのですが、数が圧倒的に違い、通常は顕微鏡の視野中に5個以下しかありません。

マラセチア皮膚炎の発症は免疫力と関係がある

マラセチアは、健康な皮膚に常在していても数が少ない為に普段は病気を引き起こしたりしません。

しかし、体調が悪いなど身体の免疫力が落ちた時や、アレルギーにより皮膚のバリア機能が低下しているなど、それまで保っていたバランスが悪くなった時に、マラセチアが過剰に増殖して皮膚病の原因になります。

反対に、マラセチア皮膚炎になったことから、身体の免疫力の低下が起こるような基礎疾患があることも考えられるのです。

マラセチアが増殖すると、単独で皮膚病を起こすだけでなく、同じように健康な皮膚に常在するブドウ球菌と共に、皮膚病の症状をより悪化させるパターンに陥ることも多いです。

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マラセチアによる皮膚病は慢性化することもある

どんな犬にも発生する皮膚病

マラセチアは犬の年齢関係なく、どの犬であっても発症する可能性があります。

しかし、マラセチアは皮膚にある皮脂を好んで餌にしているので、特に皮脂の多い部位に皮膚病が好発しやすいです。例えば、腋の下、足の指と指の間、肛門周囲、腹部などに好んで症状を引き起こします。

そして、マラセチアの増殖そのもので皮膚病が起こるだけでなく、少しややこしいのですがマラセチアに対する身体のアレルギー反応が起こることによって、皮膚病を起こしている可能性もあります。

マラセチアによる皮膚病は表皮がべたべたしやすくなり、それがさらにマラセチアの住みやすい環境を作ることになって増えるという悪循環を招きます。

どんな犬でも条件が整えば発症はしますが、特に皮脂が多い犬は注意が必要で、シーズーや柴犬に多いとされています。

激しい痒みを伴う

マラセチアによる皮膚病の犬の皮膚は強い痒みがあり、皮膚を掻きむしる傾向にあります。皮膚は赤くなり、脂っぽくベタベタして独特なにおいがあり、フケや脱毛などの症状が現れます。

慢性的にマラセチア皮膚病が続くと、次第に皮膚が肥厚して象の皮膚のようになり、また黒ずんで来ます。

治療は困難になることも

マラセチアそのものに対しては、場合によっては抗真菌剤を用いるとか薬浴などで治療を行いますが、いずれにしても増殖する元となっている基礎疾患を治療しなければなりません。

また、アレルギー性皮膚炎などで皮膚の状態が悪く皮脂が過剰になっている場合などは、マラセチアが増殖しやすい条件である為に、まず皮膚のバリア機能を改善することが必要になってきます。

マラセチアによる皮膚病を繰り返し治療が長期に渡ることもあります。

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マラセチアは耳の病気の原因にもなっている

耳の中はマラセチアが繁殖しやすい

は、外側から鼓膜までの部位を外耳と呼び、その奥には中耳や内耳が存在しています。

人の外耳道はまっすぐですが、犬の耳はもともと外耳道が途中でL字型になって曲がっているので、外耳炎が起こりやすいのです。

犬の耳の構造

出典元 http://itabashichuo.itabashichuo-ah.com/?eid=5&imageviewer&image

耳の中は湿気があってジメジメし、しかも餌になる脂性の耳垢が豊富な為に、マラセチアにはとても住み心地の良い環境です。

その為、マラセチアが原因の外耳炎が起こりやすくなります。外耳炎の70~80%にはマラセチアが関与しているとも言われているのです。

垂れ耳の犬は特に注意

犬の耳にはいろいろな形がありますが、耳が垂れている種類の犬は特に、耳に蓋をしているようなものなので耳の中が蒸れやすくなります。立ち耳の犬と比べて通気が悪い分、マラセチアが増殖する環境が揃っているので、特に外耳炎を起こすリスクが高くなります。

耳を痒がる

マラセチア外耳炎になると、犬はとにかく耳を痒がります。しかし、犬は指を入れて耳の中を掻くこともできませんので、後ろ足で首を掻くとか頭を振るなどの動作を繰り返します。

飼い主さんも最初は耳が痒いということには気づきにくいかもしれません。

犬は、痒いけれども自分では耳に届かないので、床や壁に耳をこすり付けて掻くこともあります。そして耳には濃い茶色~黒色のベタベタした耳垢が溜まり、悪臭がするようになります。

外耳炎を放置すると

掻き壊して耳の皮膚を傷つけてしまうと細菌の二次感染が起こり、症状がひどくなります。耳の中が爛れて血液が溜まる耳血腫という状態にも移行しやすく、治療も大変になって、切開するなどの手術が必要なこともあります。

治った後も耳が変形したまま元に戻らなくなってしまいます。

また、耳は内耳から脳へと繋がっている為、炎症が中耳、内耳と次第に奥の方まで進行し脳に及んでしまう危険性もあります。

初期であればマラセチア外耳炎の治療だけで良かったものが、治療困難な状態になって時間もかかり、犬にかかるストレスも大きくなります。

また、重症になってしまうと痛みが出て来るので、耳に触られることに強い抵抗を示すようになり、治療がスムーズにいかない可能性も出て来ます。

早期なら点耳薬だけで治療可能

マラセチア外耳炎がまだ早期の場合は、抗真菌薬入りの点耳薬を使う治療により1ヶ月くらいで軽快します。抗生剤やかゆみ止めとしてステロイド剤が処方されることもあります。

症状が重ければ、耳洗浄の処置が必要なこともあります。

マラセチア外耳炎は再発しやすい病気ですので、治っても耳の状態を普段からよく把握しておくことも大事です。

私の愛犬もマラセチア外耳炎にかかったことがあります。症状が軽度のうちに治療を始められたので治るのは早かったです。点耳薬に加えて、念の為に抗生剤とステロイド剤を処方され10日間ほど飲ませました。

中途半端な治療をするよりも、指示通り初期にきっちりと治療することがベストです。

マラセチア対策

マラセチアはどこかから感染するわけではなく、普段から体にいる菌で、均衡が保てていれば病気を引き起こすことはありません。マラセチアが増殖しなければ良いということなので、増殖させない工夫が必要です。

室温や湿度

高温多湿の環境を作らないということが大事です。

日本の気候は高温多湿で、特に梅雨時はマラセチアの増殖に危険な季節と言えますが、季節を問わずエアコンの調整をして高温多湿にならない環境を整えましょう。

高温多湿は室内だけの問題ではなく、耳の中もそのような環境にならないようにしなければなりません。自宅でシャンプーをした後や雨の日の散歩の後などは耳の中に湿気がこもりがちになり特に要注意です。

耳の中に水分やシャンプーが残存しないように、きちんとすすいだ後に丁寧に拭き取って乾燥させるようにしましょう。雨の日の散歩後も濡れた状態で放置しないようにしなければなりません。

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生乾きや自然乾燥は湿度がこもり、マラセチアの増殖の原因になるので注意が必要です。

基礎疾患のコントロールと免疫力

マラセチアによる皮膚病や外耳炎を繰り返したり、あるいは治療がうまくいかない場合は、何か免疫力に関係する病気がある可能性があります。

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全身性の病気が隠れていることが考えられるので、検査をしてみることも必要かもしれません。免疫低下の原因になっている基礎疾患がある場合は、そのコントロールが必要になります。

また、食生活の改善やストレスの解消により日常から免疫力のアップを図りましょう。

アレルギー性皮膚炎の改善

マラセチアはアレルギー性皮膚炎に関連していることが多く、アレルギーを改善し、皮膚のバリア機能を正常に保てるようにすることが重要です。

体質的に皮脂の多い場合は、皮脂の分泌が多くなる脂肪分の高い食事や酸化しやすいフードなどは気を付けなければなりません。

アレルギー用の良質なフードを選び、そのアレルギーに合わせたシャンプーで身体を清潔にして皮脂をコントロールし皮膚の状態をよくすることが第一です。

アレルギーのある犬には、マラセチアもアレルゲンになりやすく、マラセチアに対するアレルギー反応としての皮膚病や外耳炎を起こしてしまう可能性もあります。

耳掃除について

マラセチア外耳炎では、状態によっては耳洗浄の処置が必要です。しかし、普段の耳掃除というものは本来、ほとんど必要ないという獣医師の意見もあります。

耳には自浄作用が備わっているので、もし耳が健康な状態であれば耳垢(汚れ)は少しずつ表に運ばれて出てきて、犬がブンブン頭を振ると排出できると言われます。

そのような機能があるのに、耳掃除で綿棒などを入れて刺激をすることによって外耳を傷つけ、皮膚表面のバリア機能が失われたり、汚れを奥に押しやってしまったり、それがかえってトラブルの元になるのでしない方が良いという意見です。

耳掃除はいらないとまでは言わなくても、慣れない飼い主さんが自宅でしない方が良いという獣医師もいます。

しかし、マラセチア外耳炎が発症しやすい犬では耳がべたつきやすく、清潔にするということも必要になります。どうしたら良いのでしょう?

耳掃除は、トラブルのない状態であれば必要はないと考えても良さそうです。ただ異常なにおいや黒っぽい耳垢などがないかの観察は普段からしましょう。犬の耳の皮膚はとても傷つきやすく、人の感覚で耳掃除をしてしまうと傷つけてバリア機能が崩れ、かえってトラブルの元になります。

外耳炎をおこすリスクの高い犬の場合でも、獣医師の指示などが特にない限りは、クリーナーなどでお手入れを月一度程度行えば十分なようですが、もし自信がなければ病院に任せる方が堅実です。

間違っても綿棒を耳の中に入れてこするようなことはせず、もし汚れが付いていれば耳の入り口周囲だけ、コットンに洗浄剤を含ませて力を入れずに優しく拭く程度のお手入れをして下さい。

まとめ

マラセチアは常在菌なので、完全に除菌するというわけにもいきません。

普段、免疫力や皮膚の状態などのバランスが取れている時には犬の病気の原因にはなりませんが、そのバランスが崩れ、増殖して優位になると病気を引き起こしてしまいます。このような形で起こる病気は日和見感染症と呼ばれ、原因になるこのような常在菌は他にもたくさんあります。

高温多湿の環境、全身性の病気からの生体の免疫低下、アレルギーによる皮膚のバリア機能低下がマラセチアによる皮膚病や外耳炎のハイリスクになります。

清潔にすることは重要な対策ですが、犬の皮膚はとてもデリケートであり、特に耳の手入れは注意が必要です。過剰な手入れにより、かえってリスクを高めるようなことのないようにしましょう。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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