『犬の十戒』~犬との約束~にGo!
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マラセチアによる犬の皮膚炎と外耳炎 病気の発症と免疫力の関係

♦皮膚/アレルギー
この記事は約10分で読めます。

犬の皮膚のトラブルはほんの些細なことで起こりやすいです。

そして治りにくいものが多く、通院も長期に渡ることが多くあります。

マラセチア」という病名をお聞きになったことはありますか?

これは、犬の皮膚炎や耳の炎症の原因になっていることがとても多いものです。

この記事では、マラセチアとはどんな病気で、どんな対策があるかについてお伝えしますね。

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マラセチアはカビの一種

マラセチアは、真菌の1つ、いわゆるカビの一種です。

俗に言う「水虫」なども白癬菌という真菌が原因なのですが、マラセチアもそれと同じ仲間です。

正しくは、「マラセチア酵母菌」と呼びます。

マラセチアは普段から皮膚に常在している

マラセチアは、急にどこかからやって来る菌ではありません。

普段、皮膚病などがない健康な皮膚にも、少数存在している「常在菌」です。

犬だけでなく、実は私達の皮膚にもいるのです。

でも、普段はマラセチアの数が異常増殖するようなこともないので、皮膚病を起こしたりせず、ただおとなしく共存できています。

ところが、何らかの原因により、この菌が異常に増えてしまった時、皮膚炎などの病気を起こします。

検査ですぐに見つかる

マラセチア皮膚炎を起こしている部位からテープで表皮を採取します。

それを特殊な染色をして顕微鏡で見ると、落花生のような(よくボーリングのピンとも表現される)形に見える菌が確認できます。

それがマラセチアです。

常在菌なので、病気になっていない表皮からも発見することはできるのですが、数が圧倒的に違います。

通常は、顕微鏡の視野中に5個以下しかありません。

マラセチア皮膚炎の発症は免疫力と関係がある

マラセチアは、健康な皮膚に常在していても、数が少ないので病気を引き起こしたりしません。

しかし、体調が悪いなどにはマラセチアが過剰に増殖し皮膚病の原因になります。

例えば、身体の免疫力が落ちた時や、アレルギーにより皮膚のバリア機能が低下している時など、保っていたバランスが悪くなった時です。

だから、逆に考えれば、マラセチア皮膚炎になったということは、身体の免疫力の低下が起こるような基礎疾患がある可能性もあります。

マラセチアが増殖すると、単独で皮膚病を起こすだけではありません。

同じように、健康な皮膚に常在するブドウ球菌と一緒になって、皮膚病の症状をより悪化させることも多いです。

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マラセチアによる皮膚病は慢性化もある

どんな犬にも発生する皮膚病

マラセチアは、犬の年齢等に関係なく、何歳のどの犬種の犬にも発症がありえます。

皮脂が多い犬は特に注意が必要で、シーズーや柴犬に多いようです。

皮脂はマラセチアの餌になります。

だから、特に皮脂の多い部位に皮膚病が好発しやすいです。

《好発部位》

腋の下・足の指と指の間・肛門周囲・腹部

単純にマラセチアの増殖で皮膚炎が起こるだけではありません。

マラセチアに対する身体のアレルギー反応というものがあり、それによって起こる皮膚炎もあります。

マラセチアによる皮膚炎は、表皮がべたべたしやすくなります。

それはマラセチアにとって住みやすい環境であり、より増殖を繰り返すという悪循環を招きます。

激しいかゆみを伴う

マラセチア皮膚炎を起こした犬の皮膚は強い痒みがあります。

そのため、犬は皮膚を掻きむしる傾向があります。

皮膚は赤くなり、脂っぽくベタベタして、独特なにおいフケ・脱毛などの症状が現れます。

マラセチア皮膚炎が続いて慢性的になると、皮膚が象の皮膚のように肥厚して、色も黒ずんで来ます。

治療は困難になることも

マラセチアそのものに対しては、抗真菌剤や薬浴などの治療が行われます。

同時に、それを招いた基礎疾患などがあれば、それも治療しなければなりません。

もともとアレルギー性皮膚炎があり皮膚の状態が悪く、皮脂分泌が過剰になっている場合などは、マラセチアも増殖しやすい環境です。

マラセチアを改善させるには、皮膚のバリア機能を改善することも必要です。

マラセチア皮膚炎は繰り返すことも多くて、治療が長期に渡ることもあります。

マラセチアは耳の病気の原因にもなる

耳の中はマラセチアが繁殖しやすい

は、外側から鼓膜までの部位が外耳、その奥に中耳や内耳が存在しています。

人の外耳道はまっすぐですが、犬の耳の外耳道は途中でL字型に曲がっていて、外耳炎が起こりやすい構造です。

【犬の耳の構造】

出典元 http://itabashichuo.itabashichuo-ah.com/?day=20150312

耳の中は湿気があってジメジメし、脂性の耳垢が豊富な為に、マラセチアには餌が豊富でとても住み心地の良い環境なのです。

ですので、マラセチアが原因の外耳炎も起こりやすいです。

外耳炎の70~80%にマラセチアが関与しているとも言われるくらいに多いのです。

たれ耳の犬は特に注意

犬の耳はいろいろな形がありますが、耳が垂れている犬は耳に蓋をしているようなものなので、耳の中が蒸れやすくなります。

立ち耳の犬と比べて通気が悪い分、マラセチアが増殖する環境が揃っているわけで、外耳炎を起こすリスクも高いのです。

耳をかゆがる

マラセチア外耳炎になると、犬はとにかく耳を痒がります。

どんなに痒くても、犬は指を入れて耳の中を掻くこともできないので、後ろ足で首を掻く・頭を振る・床や壁に耳をこすり付けて掻くなどの動作を繰り返します。

飼い主さんも、その動作が耳が痒いせいとは、最初はわからないかもしれません。

やがて、耳には濃い茶色~黒色のベタベタした耳垢が溜まり悪臭がするようになります。

さすがに、耳が臭うことで異変に気づく飼い主さんは多いのではないかと思います。

外耳炎を放置すると

掻き壊して、耳の皮膚を傷つけてしまうと、細菌の二次感染が起こり症状がひどくなります。

こうなると、耳の中が爛れて、血液が溜まる耳血腫という状態に移行しやすいです。

治療も大変になり、切開などの手術が必要になることがあります。

そして治った後も耳の変形などを招いてしまいます。

また、耳は内耳から脳へと繋がっています。

耳の炎症が中耳~内耳と奥の方まで進行すれば、脳に及んでしまう危険もあるので要注意なのです。

初期で治療していればマラセチア外耳炎の治療だけですんだものが、放っておくと治療困難な状態になって、時間もかかり、犬にかかるストレスや危険も大きくなります。

重症になると痛みも出て来るので、犬も耳に触られることに強い抵抗を示すようになり、治療がスムーズにいかない可能性もあります。

早期なら点耳薬だけで治療可能

マラセチア外耳炎の初期であれば、抗真菌薬入りの点耳薬を使う治療で、1ヶ月くらいで軽快します。

抗生剤やかゆみ止めとしてステロイド剤が処方されることもあります。

症状が重ければ、耳洗浄の処置が必要なこともあります。

マラセチア外耳炎は再発しやすい病気ですので、治っても耳の状態を普段からよく把握しておくことも大事です。

私の愛犬もマラセチア外耳炎にかかったことがあります。

よく見れば、耳の中に茶色の耳垢があり、悪臭がありましたが、まだひどくなかったので私は気づけませんでした。

定期の通院時に獣医師に発見してもらい、幸い軽度で治療を始められたので、治るのは早かったです。

点耳薬が中心で、念の為に抗生剤とステロイド剤を処方され10日間ほど飲ませました。

中途半端な治療をするのではなく、指示通りにきっちりと治療することがベストです。

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マラセチアの予防対策

マラセチアは、普段から体にいる菌なのでゼロにすることはできません。

でも、健康状態との均衡が保てていれば、増殖することもなく病気を引き起こすことにはなりません。

要はマラセチアが増えなければ問題ないのですから、増殖させない対策が必要です。

室温や湿度

まず、高温多湿の環境を作らないということが大事です。

日本の気候は高温多湿で、特に梅雨時はマラセチアの増殖に危険な季節と言えます。

季節を問わず、エアコンの調整をして高温多湿にならない環境を整えましょう。

高温多湿は室内だけの問題ではなく、耳の中の環境もそうです。

自宅でシャンプーをした後や雨の日の散歩の後などは、耳の中に湿気がこもりがちになるので要注意です。

耳の中に水分やシャンプーが残らないように、きちんとすすいで丁寧に拭き取って乾燥させてあげて下さい。

生乾きや自然乾燥は、湿度がこもりマラセチアの増殖の原因になります。

基礎疾患のコントロールと免疫力

マラセチアによる皮膚病や外耳炎を繰り返したり、あるいは治療がうまくいかない場合は、免疫力に関係する病気があることもあります。

全身性の病気が隠れていないか、検査が必要かもしれません。

免疫低下の原因になっている基礎疾患がある場合は、そちらのコントロールが必要になります。

このあたりのことは主治医の先生とよく話し合って下さいね。

また、栄養状態の改善やストレスの解消など、日常からの免疫力アップも心がけて下さい。

アレルギー性皮膚炎の改善

マラセチアは、アレルギー性皮膚炎にで皮膚の状態が悪くなっているところに発症していることも多いです。

アレルギーを改善し、皮膚のバリア機能を正常に保てるようにすることは重要な対策になります。

体質的に皮脂が多い場合、皮脂の分泌を高める脂肪分の高い食事・酸化しやすいフードなどは気を付けなければなりません。

アレルギー用の良質なフードとそのアレルギーに合わせたシャンプーで身体を清潔にして皮脂をコントロールし、皮膚の状態をよくすることに努めていきましょう。

アレルギーのある犬には、マラセチアがアレルゲンにもなりやすいです。

マラセチアに対するアレルギー反応として皮膚病や外耳炎を起こしてしまうこともあります。

アレルギーとマラセチアは相互で悪影響となり、それぞれを治りにくくする要因になるのです。

耳掃除について

マラセチア外耳炎は、状態によっては耳洗浄の処置が必要です。

しかし普段の耳掃除は、本来ほとんど必要ないという獣医師の意見もあります。

耳には自浄作用が備わっているので、耳が健康な状態であれば耳垢(汚れ)は少しずつ表に運ばれて出てきて、犬がブンブン頭を振ると排出できるということです。

それなのに、耳掃除で綿棒などを入れて刺激をすると外耳を傷つけます。

そして、皮膚表面のバリア機能が失われたり、汚れを奥に押しやってしまったりして、かえってトラブルの元になるため、しない方が良いという意見です。

これは人の耳鼻科の医師の意見も同様です。

また、耳掃除はいらないとまでは言わないが、慣れない飼い主さんが自宅でするのはやめた方が良いという獣医師もいます。

だけどマラセチア外耳炎が発症しやすい犬は耳がべたつきやすく、清潔にすることが重要なはずで、それならどうしたら良いのでしょう?

まず、耳掃除はトラブルのない状態であれば必要ないと考えて良さそうです。

そして、異常なにおいや黒っぽい耳垢などがないかの観察を普段からしておきましょう。

犬の耳の皮膚はとても傷つきやすく、人の感覚で耳掃除をしてしまうと傷つけてバリア機能が崩れ、かえってトラブルの元になります。

外耳炎をおこすリスクの高い犬も、獣医師の指示が特にない限りは、クリーナーなどでのお手入れを月一回程度行えば十分で、自信がなければ病院に任せましょう。

間違っても綿棒を耳の中に入れてこするようなことはしないで下さい。

もしも汚れが付いていれば、耳の入り口周囲だけ、コットンに洗浄剤を含ませて力を入れずに優しく拭く程度のお手入れをして下さい。

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まとめ

マラセチアは常在菌なので、完全に除菌するわけにはいきません。

そして、普段、免疫力や皮膚の状態などのバランスが取れている時には病気の原因にはならないのです。

でもそのバランスが崩れ、増殖してマラセチア優位になると、犬の皮膚炎や外耳炎を引き起こしてしまいます。

このような形で起こる病気は日和見感染症と呼ばれ、原因になる常在菌は他にもたくさんあります。

清潔にすることは重要な対策ですが、犬の皮膚はとてもデリケートで、特に耳の手入れは注意が必要です。

過剰な手入れにより、かえってリスクを高めるようなことのないように気を付けて下さいね。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

 

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