それまで特に問題がなかった犬に粗相が見られるようになった時、改めて犬の年齢を意識してみて下さい。
老犬と呼ばれる年齢であれば、粗相の原因がそこにあるかもしれません。
今回は、老犬の粗相の理解と対策についての情報を共有したいと思います。
老犬と粗相は関係が深い
犬は人間の4~7倍の速さで年をとっていくと言われます。
私達にはたった一日でも犬には一週間ということ、それを知ると犬との時間は本当に無駄にできないです。
犬の年齢の数え方は、実は大型犬と小型犬で少し違います。
犬の年齢を人間に換算するには以下のような計算方法があります。
《大型犬の年齢計算》
- 生後1年で人年齢の12歳
- 1年目以降は、12+(現在の犬年齢-1)×7=人年齢の目安
《小型犬の年齢計算》
- 生後2年で人年齢の24歳
- 2年目以降は、24+(現在の犬年齢-2)×4=人年齢の目安
犬の場合、だいたい7歳が老犬(シニア期)の区切りとされています。
大型犬の方が少し早くシニア期、つまり老犬と呼ばれる年齢になります。
7歳前後の犬で粗相が増えてきた場合は、老化が原因になっている可能性も高いのです。
犬も老化していくことは人間と同じです。
膀胱の柔軟性がなくなり、若い時のようにおしっこをたくさんためることができなくなるのでおしっこの回数が増えます。
おしっこをしたいと感じる神経の伝達も鈍くなっていきます。
筋力が低下しているので、トイレまでの移動にも時間がかかります。
その結果、トイレに間に合わないので粗相が起こりやすくなります。
それはうんちの時にも影響します。
いきむ力が弱くなるので、完全に出してしまえないことも多くなります。
肛門括約筋は緩くなり、自分の意志と関係なくもらしてしまうこともあります。
人間も高齢になれば排泄の問題は起こりやすくなります。
紙パンツやおむつが必要になることがありますが、犬も老化により同じことが起こるのです。
また、犬にも認知症がありますが、そんな病気が粗相に関係してくるかもしれません。
まずは病気がないか考えてみて
老犬の粗相が多く見られるようになった時は、まず病気の可能性を考えてみて下さい。
老犬は、腎機能の低下などの内臓の問題があることも多いです。
また、おしっこが膀胱内に残りやすく、膀胱内は菌が繁殖しやすい条件になり、若い時以上に膀胱炎を起こしやすくなります。
膀胱炎になると、少しずつしかおしっこを出せず回数は頻回になるので、ますます粗相しやすい状況になるのです。
老化で全身の抵抗力も落ちている老犬は、そのような病気も治りにくく、治ったとしても再発しやすくなります。
認知症になっていれば、その症状が粗相の原因かもしれません。
トイレの場所がわからなくなって家の中で迷い、間に合わなくなるのです。
老犬では、身体的な病気があることは大いに考えられます。
急な変化ではなくても、何となく様子がおかしいと感じるならば、それは大抵、飼い主さんの勘が正しいと思います。
まず獣医師に相談してみて下さい。
粗相の具体的な対策
トイレの対策
トイレに間に合わないことが多くなれば、単純にトイレの数を増やすという対策もあります。
しかし新しく増えたトイレを覚えることもまた難しいと言えます。
そこで、トイレシーツをトイレの周囲にも敷きつめて、トイレの面積を広げる対策にしてみましょう。
犬の動きが鈍くても、多少ヨロヨロすることがあっても、トイレが広くなるとはみ出しにくくなるし老犬には使いやすくなります。
ただし、シーツが滑りにくいようにテープなどで固定する対策もした方が良いと思います。
室内環境の対策
トイレの場所は、老犬のいつもの場所からあまり遠くない方が移動も楽ですね。
犬は本来、トイレが寝床の近くにあることを好みません。
でも、移動そのものに時間がかかったり迷ったりするようになったら、やはり、遠からず、動線の障害物をなくす工夫も必要になります。
もちろん老犬の運動機能は維持したいので、移動が難しくない距離に調整してあげて下さい。
室内を大きく模様替えしてしまうと、老犬は新しい配置がなかなか覚えられず、粗相が増えてしまうかもしれません。
模様替えする時も、老犬が暮らし慣れている室内環境をできるだけ保つ工夫をしてあげて下さい。
クッションやマットなどは粗相が起こりやすい場所です。
粗相されると洗濯に困る物や不要な物ならば、移動させた方が良いと思います。
また、床には撥水加工のタイルカーペットなどを敷いておくと便利だと思います。
粗相があっても汚れた部分だけはずして洗えるので、掃除対策に役立ちますよ。
老犬は、足腰の筋肉も衰え、滑りやすくもなるので、タイルカーペットなどは滑り止め対策にもおすすめします。
散歩の対策
おしっこは外派、外でしかおしっこしない犬は結構多いようです。
その場合、トイレも頻回になってくるので、できれば散歩時間の間隔を短くしてあげましょう。
そして回数を増やすという散歩対策が必要です。
この先、体の具合が悪くて散歩に出られない時が増えてくるかもしれません。
老犬に限らず、そういう時の為にも、室内トイレにも変更できる対策を考えておきましょう。
なるほどと思ったのは、やはり外でしか排泄できない犬のために、飼い主さんが室内トイレに外の雰囲気を作って演出していたことでした。
室内トイレの近くに植物などをレイアウトし、外の草むら風にしていたのです。
その分、スペースは必要でしょうが、外派の犬を少しずつ室内トイレに慣らすのにはよいかもしれません。
おむつでの対策
粗相がひどくなり、どうしてもコントロールが難しくなってきたら、犬用のおむつでの対策も必要になってくるでしょう。
犬の体格によっては、人間の赤ちゃん用のおむつの方がピッタリと使いやすいこともありますよ。
人間用のおむつを使う時は、尻尾を出す部分を切ってあげる必要があります。
犬用のおむつのちょうどいいものがない時など、試してみてもよいかもしれません。
おむつを着けると、人の方は掃除の手間が省けるようになるかもしれません。
それならおむつが手っ取り早い?
いいえ、おむつはずっと着けっぱなしにはできないです。
おむつは不潔になり菌の繁殖の温床になります。
感染症対策には、おむつ装着時こそ定期的に交換して清潔に保たなければならないのです。
長時間おむつを着けていると皮膚が蒸れて皮膚病も発生します。
どんなに優秀なおむつでも着けたままはできません。
おむつを着けてない時以上に気遣いが必要なのです。
もう一点、老犬の「自分でトイレに行く」という能力を完全に奪ってしまうのはよくありません。
簡単におむつにしてしまわず、飼い主さんができる範囲だけでもおむつをはずしてあげて、老犬のやむを得ない時の粗相対策として必要最小限の使用がよいと思います。
その他
老犬が寝たきりに近くなり、介護度が高くなって自力でおしっこを出すことができなくなるかもしれません。
腹部を圧迫しておしっこを出してやるような介助が必要になるかもしれません。
寝たままでうんちを出せるようにする対策も必要になるかもしれません。
こういう介助が必要な場合は、正しい手技が必要です。
知識がないのに自己流でむやみやたらに圧迫すると、膀胱破裂などを起こす危険もあるのです。
排泄の介助が必要な時は、病院で正しい指導を受けて下さい。
老犬の粗相を怒らないで
老犬に限らないことですが、粗相には理由があります。
どうか決して感情的に犬を怒らないで下さい。
飼い主さんに怒られ続けると排泄の我慢に繋がり、膀胱炎や腎臓病などの病気をこじらせてしまうかもしれません。
「犬も人間同様に年を取る。老犬に粗相は当たり前。」くらいの気持ちで、優しく受けとめてあげましょう。
粗相は、犬が老犬になり介護が必要になってきた兆候のひとつです。
老犬のお世話はこれからが大変になるかもしれませんが、犬の方も変化していく体調に不安を感じることはあると思います。
老化によって記憶も曖昧になり、基本的なしつけも忘れてしまうかもしれません。
それなら、老犬が動けるうちはトイレのしつけを継続してあげましょう。
老犬の粗相は、子犬のようにこれから自立させていくという種類のものではありません。
でも、一緒に楽しみながらしつけを続けることは、精神面へのよい働きかけにもなりますよ。
そして、老犬がトイレでおしっこできたなら、子犬のようにしっかり褒めてあげて下さい。
まとめ
老犬の粗相に疲れてしまったら、一緒に過ごしてきた昔のことなどを思い出してみませんか?
こんな時間さえも、永遠には続かないのです。
あとどのくらい残されているのか考えてみて下さい。
きっと、一緒にすごす時間の大切さや愛しさが思い出されるのではないでしょうか。
犬はどんな時もあなたを信じて、老犬になるまであなたに寄り添ってきたのです。
最後まで共に幸せに過ごせるよい対策が見つけられますように。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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