犬の脳腫瘍の手術・放射線治療にかかる費用と完治の可能性

犬の脳腫瘍は、進行するまでわかりづらく、診断がついたとしても、腫瘍の場所によっては治療が困難を極める病気です。

完治を目指す為には腫瘍を全て取り除く手術がもっとも有効ですが、腫瘍の種類や場所によっては、放射線治療も有効な治療方法になります。

今回は、犬の脳腫瘍に対するこれらの治療方法にかかる費用について解説したいと思います。

犬の脳腫瘍は珍しい病気ではない

犬の脳腫瘍は、希少な病気ではありません。

脳腫瘍の成り立ちには、最初から脳に発生する原発性脳腫瘍と、体の他の部位にできた悪性腫瘍が脳に転移した転移性脳腫瘍があります。

また、良性腫瘍悪性腫瘍があります。

原発性脳腫瘍は、人では10万人に10~15人とされますが、犬は発生率がその5倍とも言われ、増加していることも指摘されています。

その要因の一つには、動物医療における画像診断の発展という側面もありますが、少なくとも犬の脳腫瘍は決して珍しい病気ではありません。

参考サイト

 https://www.mmc.funabashi.chiba.jp/neurosurgery/files/BT-30.pdf

http://www.eug.jp/elms/subject/index_brain_tumor.html

https://www2.vetmed.ucdavis.edu/Neurology/Disorders/Brain%20Tumor%20Info.html

犬に多い脳腫瘍の種類

脳腫瘍には実に多くの種類があり、人間と犬の脳腫瘍は全く同じではないものの、共通している腫瘍もあります。

犬の脳腫瘍で、もっとも発生頻度の高いものは、髄膜腫という種類の脳腫瘍で、これは脳を覆う髄膜という表面の膜が腫瘍化してしまった脳腫瘍です。

次に多いのが、神経膠腫(グリオーマ)という種類の脳腫瘍で、これは脳の中にあるグリア細胞という細胞が腫瘍化した脳腫瘍で、正常な脳組織内に深く入り込んでいることが多い腫瘍です。

脳腫瘍は、7歳以降の高年齢の犬で発症することが多く、9~10歳前後が最多であり、性別による要因はないとされます。

しかし、グリオーマは、比較的若年齢の犬にも発生する脳腫瘍です。

そして、グリオーマの半数は、いわゆる短頭種(頭蓋骨の幅に比べて鼻の長さが短い)と呼ばれるボクサー、ブルドッグ、ボストンテリアなどの犬種に発生するなど、好発犬種があると言えるようです。

脳腫瘍は比較的緩やかに進行し、腫瘍が大きくなって周辺の脳を圧迫するようになり、その影響で様々な神経症状が現れるようになります。

もっとも多く、そして異変に気づきやすいのがてんかん様の痙攣発作であり、それでもこの時点で「てんかん」として経過観察になることも多く、脳腫瘍はCTやMRIなどの画像検査をするまでは確定診断には至りません。

脳に何も所見が見当たらないのに痙攣発作を起こす「特発性てんかん」という病気もありますが、犬が痙攣発作を起こしたら、その原因は何であるのかを可能な限り追及した方が良いと私は考えます。

【参考記事】

>>犬のてんかんの症状と対処法 危険な発作の2パターンとは?

>>犬のてんかんは脳炎の可能性も・脳炎は完治する病気?

>>見逃さないで!その症状は犬の脳腫瘍の進行かもしれない

脳腫瘍の手術の適応・リスクと費用

脳腫瘍は、手術を行うことにより、脳腫瘍という病変を完全に切除できれば完治も可能です。

または、全ての病変を除去できなかったとしても、脳腫瘍を大幅に縮小させることもできるので、並行して行う他の治療方法の効果を上げやすくなります。

また、その腫瘍がどのような性質のものなのかを直接検査することができるので、その後の治療方法の検討がしやすくなります。

脳腫瘍を完全切除または縮小できると、それまで脳腫瘍が脳を圧迫していた為に現れていた症状も緩和することができます。

しかし、脳腫瘍の摘出手術は簡単ではなく、しかもかなりリスクが高い手術で、脳腫瘍の発生している場所によっては全く手が出せないものもあります。

その中で、脳の表面の髄膜に発生する髄膜腫は、比較的摘出しやすい為、手術適応のある脳腫瘍です。

髄膜腫は、悪性腫瘍の場合もありますが、良性腫瘍であることがほとんどであるとされ、手術で取りきれると完治できる可能性もあります。

ただ、良性であっても、犬の髄膜腫は周辺に浸潤(広がる)しやすく、腫瘍と脳との境界を慎重に区別して切除するのに高度な技術を要する手術のようです。

脳腫瘍は、仮に切除できたとしても、その後にてんかんや神経系の後遺症が残るかもしれないことも考えておく必要があります。

脳は、柔らかくて傷つきやすく、大変複雑で重要な組織です。

それを守る為に、脳は3層の膜で保護され、さらに一番外側を硬い頭蓋骨に覆われています。

その頭蓋骨を一部開けて、中にできた腫瘍を切除するということは、少なからず脳に何らかの影響を与える可能性があります。

脳腫瘍の手術にかかる費用

脳腫瘍の手術は、当然のことですが全身麻酔下でおこなわれます。

他の手術と同様に、術前には血液検査や心電図など、安全に手術をおこなうために全身の検査が必要です。

手術後は、脳圧が上昇しないように薬でコントロールする必要があります。

その脳腫瘍が良性なのか悪性なのか、手術のあとの治療スケジュールや全身状態によっても違うとは思いますが、入院は2週間~1ヶ月というように、開きも大きいです。

脳腫瘍の手術にかかる費用は、その病院の設定にもよりますが、50万円~70万円程度はかかるようです。

その費用には大抵、検査、麻酔、薬剤、入院費も含まれているようですが、高額になることは間違いないです。

脳腫瘍の放射線治療の適応・リスクと費用

放射線治療とは

放射線治療とは、腫瘍を狙い、強い放射線を体外から照射することによって、その腫瘍細胞の分裂や増殖を食い止め、腫瘍を死滅させることを目的とした治療です。

レントゲン検査も放射線を使ったものですが、治療に用いられる放射線には様々な種類があることと、検査と比較してかなり強いです。

放射線には、細胞にあるDNAを傷つける作用があり、DNAを傷つけられた細胞は分裂や増殖ができなくなります。

悪性腫瘍の細胞もまた、急速に分裂し増殖していくものなので、放射線でその成長を妨げようという理屈です。

放射線治療は、手術することができない、脳の深部に発生した脳腫瘍や、腫瘍が大きすぎるとか周囲に浸潤があって全摘が不可能な脳腫瘍で、手術では取りきれない部分に対する治療法になります。

放射線は、癌細胞のような分裂や増殖の著しい細胞には効果的であり、反対にその周囲の正常な細胞に対してはそれほどダメージを与えないとされています。

しかし、体の表面にある皮膚や粘膜は、常に新生している細胞ですので、ダメージを受けます。

放射線治療の副作用

放射線治療の副作用には、治療を開始してすぐに表れる急性障害と、年数が経過してからそのダメージが明確になってくる晩発障害があります。

急性のものは、治療開始1ヶ月以内に、皮膚や粘膜が新生できなくなることで炎症を起こし、火傷のような経過をたどりますが、照射が終われば、再生して自然に回復することができます。

それに比べ、晩発障害は、正常な組織に対するダメージです。

放射線治療を受けて数か月~数年経った頃に、脳、神経、骨、肺、心臓などの臓器が壊死や機能低下を起こす深刻な副作用です。

放射線治療では、このような副作用を回避する為にも、放射線量と照射位置などのコントロールを慎重にしなければならないのです。

脳腫瘍の放射線治療にかかる費用

放射線治療は、総線量を分割して、週1回~週5回を1ヶ月ほどかけて完了を目指す方法が一般的におこなわれますが、1回の線量を小さく分割せずにトータル1~3回で多方面から狙った腫瘍に総線量を照射して終了するという治療方法もあります。

後者は、定位手術的照射(SRS)と呼ばれるもので、人の脳腫瘍の放射線治療でガンマナイフと呼ばれるものがありますが、それはこの照射法です。

放射線治療には、全身麻酔が必要です。

手術のように長時間ではないですが、麻酔のリスクというものも考える必要があります。

放射線治療の費用は、分割照射でその都度25,000円~×照射回数というようにされている場合もあります。

1ヶ所に1クール照射するトータルの費用としては、15万円~60万円といった費用になるようです。

いつも書いていることですが、動物医療は自由診療ですので、かかる費用は病院によってもかなり違います。

また、放射線治療は、麻酔やその照射方法によっても異なると思われます。

手術後にさらに放射線治療を併用していくことになると、脳腫瘍の治療にかかる費用は合計100万円ほどにもなりうることがわかります。

脳腫瘍の完治の可能性

脳腫瘍は、発生部位がどこなのかによっても予後が大きく違ってくると言えるでしょう。

脳の深部には生命を維持する機能があり、そのような場所に発生した脳腫瘍は、摘出することも不可能であり、腫瘍が増大するにつれて、生命を脅かすような深刻な症状へ繋がるようにもなります。

幸いにして手術可能な部位にあれば、手術で完全に切除できる見込みがあり、その場合は完治ということもあるでしょう。

また、手術が無理であっても放射線治療に反応のよいタイプの脳腫瘍であれば、まだ完治の可能性もあるかもしれません。

しかし、種類によっては放射線に反応の悪い脳腫瘍もあり、例えば脳の表面にできる髄膜腫は手術で摘出はしやすい腫瘍ではあるものの、放射線には反応が悪く、全摘ができずに残った場合の治療は困難になってしまいます。

手術も放射線治療も局所療法で、抗癌剤治療は全身療法であり、脳腫瘍ではそれらの治療方法を併用していきますが、脳腫瘍の治療は難しいというのが現実です。

完治を目指さなくとも、延命という方向で治療することもできると思いますが、脳腫瘍は急変して一気に悪化するという可能性も高い病気であり、シビアですが、飼い主さんの覚悟も必要かもしれません。

まとめ

犬の脳腫瘍には、手術、放射線、化学療法という3つの治療方法があり、その腫瘍の種類や部位、大きさ、そして犬の年齢や体力などから治療方法の組み合わせ、選択されます。

脳腫瘍は、種類も発生部位も様々で、それによって完治が可能かどうか、予後は大きく分かれるというのが現実でしょう。

摘出できたとしても脳の手術は複雑であり、後遺症が残ることは避けられないかもしれません。

また、脳腫瘍の治療にかかる費用は一般的に高額になると考えた方がよいようです。

費用のことも含めて、きちんと相談でき納得できる獣医師の元で、後悔のない治療を選択して下さい。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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