犬の口の中にできる良性腫瘍と口腔癌の種類について

先日、口腔内メラノーマ(悪性黒色腫)という腫瘍について書きましたが、犬の口の中にできる腫瘍の種類は他にもあります。

良性腫瘍もありますが、悪性腫瘍、いわゆる口腔癌はメラノーマだけではありません。

口腔は、犬が食事をするために必要で重要な器官であり、そのQOLを保つ為にも早期の治療が望まれます。

今回は、犬の口の中の腫瘍の種類について解説します。

犬の口の中にできる良性腫瘍の種類

犬の口の中にできる腫瘍で、生命に影響のない、良性に分類される腫瘍も複数種類あります。

口の中にできる良性腫瘍で代表的なものは次の2つです。

  1. エプリス
  2. 乳頭腫(ウイルス性)

エプリス

このうち、最も多く見られる良性腫瘍はエプリスで、口腔内腫瘍の30%近くを占めるとされています。

エプリスは歯肉腫のことで、発生する部位はその名の通り、歯肉にできる良性腫瘍です。

特に7歳以上の高齢の短頭犬種に多く、歯周病との併発や歯石が蓄積しているなど口腔内の状態が悪いパターンが多いことから、口腔内の炎症による刺激なども誘因になると考えられています。

エプリスは、さらに詳細に、線維性エプリス・骨性エプリス・棘細胞性エプリスの3つの種類に分類されていました。

しかし、この3種類の中で、棘細胞性エプリスだけはその病態が他と大きく異なる腫瘍です。

棘細胞性エプリスは、転移などはないものの、周囲の組織に浸潤し(広がり)骨を溶かしていくという進行の形を取る腫瘍です。

進行することで、顎骨も変形させ、良性でありながら悪性腫瘍に似た経過を示す、要注意の腫瘍なのです。

棘細胞性エプリスは、他の2種類のエプリスと比較して成長も早く、再発も多く見られるので、その治療も、広範囲に顎骨や歯を切除する必要があります。

このような特殊性から、近年は、エプリスの中の1つというよりも「棘細胞腫性エナメル上皮腫」という名称で、エプリスとは別に分類されるようになりました。

乳頭腫

乳頭腫とは、皮膚乳頭腫と呼ばれる小さなイボのことで、そのイボの原因はイヌパピローマウイルスです。

イボは、ピンク色~肌色の目立たない小さなものから、それが大きくなり集合体になって形状がカリフラワー状になるものもありますが、通常はせいぜい1㎝以下の大きさです。

乳頭腫は免疫力との関係があり、幼犬や病気療養中で免疫が弱っている犬、老犬に発生することが多いですが、老犬にはウイルス起因以外のイボも多く発生し、また、老犬は悪性腫瘍の発生の可能性も高いので要注意です。

乳頭腫は、口腔内や唇、まぶた、頭、背中、足など、皮膚や粘膜のどこにでも発生します。

パピローマウイルスは、様々な動物の中に存在する、ありふれたウイルスであり、人の種類では「ヒトパピローマウイルス」です。

そしてヒトパピローマウイルスの中にも、150種類以上の型があって同じではなく、そのうちの一部の型が子宮頚がんの原因として、現在は広く知られるようになりました。

ヒトパピローマウイルスは他にも、性行為感染症の1つである尖圭コンジローマと呼ばれるイボを発生させる原因になります。

イヌパピローマウイルスは、ヒトパピローマウイルスとは別の物であり、人への感染を起こすようなことはありません。

しかし、犬同士の間では感染するウイルスなので、乳頭腫が口にできている犬と何もない他の犬では、フードボウルを共有させない、おもちゃを共有させないなど、感染予防の為に接触に注意する配慮も必要です。

乳頭腫は良性腫瘍であり、対処せずともイボが自然に消失することもあります。

しかし、多発して食事をする時に妨げになったり、稀に悪性の扁平上皮癌であるという場合もあるので、その大きさや色の変化に十分注意しながら観察することが必要で、切除手術がおこなわれることもあります。

犬の口の中にできる悪性腫瘍・口腔癌

犬の口腔癌は、口~顎にかけてできる悪性腫瘍を指し、次のようなものがあります。

  1. メラノーマ(悪性黒色腫)
  2. 扁平上皮癌
  3. 線維肉腫

それぞれの名称は、その癌がどの細胞から発生したのかによって分類されています。

メラノーマ(悪性黒色腫)

口腔癌の中で、発生頻度の最も高い悪性腫瘍は、メラノーマ(悪性黒色腫)です。

メラノーマは、皮膚の色素を作るメラノサイトという細胞由来の、悪性腫瘍=癌で、口腔以外にも眼球にも発生します。

しかし、特に口腔にできるものは悪性度が高いとされ、治療が困難になり予後が悪いとされている、ハイリスクの口腔癌です。

【メラノーマ(悪性黒色腫)について参考記事】

犬の口や眼球の腫瘍 メラノーマ(悪性黒色腫)の症状と余命

扁平上皮癌

扁平上皮癌は、扁平上皮細胞から発生した癌です。

扁平上皮細胞は、皮膚を構成する細胞の1つであり、皮膚だけでなく粘膜組織の中にも散在し、身体中に分布して口腔内にも見られる細胞です。

扁平上皮癌は、メラノーマの次に発生の多い悪性腫瘍です。

扁平上皮癌は歯肉部に好発しますが、舌、扁桃などの口腔内の奥の部位にも見られ、扁桃に発生した扁平上皮癌はリンパや他の臓器への遠隔転移も高率で起こる為、早期の治療が望まれます。

発生した部位にしこりのような腫瘤ができ、爛れたり、潰瘍になったりと口内炎のように見えることもあります。

線維肉腫

線維肉腫は、線維芽細胞から発生した癌です。

線維芽細胞は、創傷の治癒やコラーゲン生成に関与する細胞で、やはり全身に分布しています。

口腔内では、歯肉部に多く発生し、しこりとして確認できます。

しかし、腫瘍の成長は早く、急速に大きさを増して上顎まで拡大し、高い確率で骨浸潤(広がる)していきます。

線維肉腫の遠隔転移は少ないとされますが、広範囲に広がりやすく、手術による切除も顎を含めて広範囲になることが多い癌です。

口の良性腫瘍と口腔癌・症状の区別は難しい

口腔内腫瘍は、腫瘍が口の奥の位置にある場合は、その形状を正確に確認することは困難であることが多いと思います。

特に、扁桃や軟口蓋(上顎)などにある場合、また、大きさもそれほど目立たない初期などは発見しにくいのではないかと考えられます。

しかし、腫瘍が大きくなるにつれて、食べにくい・食べるのが遅い・流延(よだれ)・飲み込みが悪い・口臭が強い・出血などといった症状があらわれるようになります。

この症状は、良性も悪性も同様のものです。

獣医師によって、腫瘍が肉眼的に確認できれば、その形状から、良性腫瘍か悪性腫瘍か推測はできたとしても、両者が似ている場合もあり、外観だけで判別に至ることはありません。

悪性腫瘍か良性腫瘍かを鑑別診断するには、切除して病理検査をおこなう必要があります。

口腔癌であっても、飼い主さんが早期に発見するのは困難かもしれません。

出血や口臭などの症状が出現しても、歯周病でもそれと同じ症状があるために、歯の問題と間違ってしまう可能性もあります。

しかし、口腔癌は悪性度の高い腫瘍であることが多く、予後が悪いパターンも多いので、できるだけ初期に発見されることが望まれます。

良性腫瘍は、癌と異なって進行も遅かったり、転移なども見られないのですが、犬のQOLを低下させたり、腫瘍に感染が起こったりすることもある為、やはり症状を放置すべきではありません。

口腔の腫瘍の治療は良性でも切除する

口腔内の腫瘍が悪性の場合、その根治治療は早期の切除手術が基本です。

口腔の悪性腫瘍=口腔癌は悪性度の高いものが多く、骨への浸潤や肺など多臓器への遠隔転移も起こります。

再発を予防し、その余命を延ばす為には、できるだけ早期のうちに病巣を摘出し、その後に放射線治療や化学療法(抗癌剤)治療を併用して治療しなければなりません。

扁平上皮癌は、同じ口腔内でも、口先に近い場所に発生した腫瘍の方が、切除さえできれば予後も良いと言われています。

また、扁平上皮癌は、放射線治療の効果もあがりやすい癌の1つでもあるようです。

骨浸潤の多い線維肉腫は、顎まで切除の対象になる場合があります。

メラノーマ(悪性黒色腫)は、遠隔転移やリンパ節転移の多い、悪性度の高い癌です。

手術をするとしても、骨までの切除が必要なことも多く、発見時はすでに手術困難になっていることも少なくありません。

悪性腫瘍の場合、転移の有無にもよるのですが、いずれも進行して発見された場合、例え骨や顎まで大きく切除したとしても予後は深刻になります。

一方、口腔内腫瘍が良性の場合、やはり、外科的に切除手術がおこなわれることが多いです。

口腔は、食事に関わる器官であり、腫瘍の数が多かったり、大きかったり、または発生場所によっては、食べることの妨げになっていることもあり、切除することで犬も楽になるのです。

ただ、良性腫瘍は、転移や浸潤がない為、腫瘍そのものを局所的に摘出する手術で十分なことも多いです。

良性腫瘍は、口腔癌のような早い成長はないですが、腫瘍が大きくなってしまってからでは切除も大がかりになるので、やはり早期に切除できる方が犬に負担もかかりません。

しかし、良性とされながら、広範囲に浸潤するという、悪性腫瘍のような病態を表す棘細胞腫性エナメル上皮腫に限っては、顎まで広範囲に切除するような手術が適応になります。

良性腫瘍でも、摘出した後に再発することもあり、その場合、再発した腫瘍が前回と同じものとは限りません。

良性腫瘍ではなく、癌を発症している可能性もあり、術後も観察を継続していかなければなりません。

 

まとめ

犬の口腔内腫瘍は、その犬の体力にもよりますが、基本的には良性腫瘍も口腔癌も摘出するという治療が選択されることが多いようです。

腫瘍の種類は同じではなく、それぞれに特徴もありますが、口腔内はその外観を正確に把握しにくく、また、症状は良性腫瘍も口腔癌も似ています。

特に、初期症状では気づかず、健診などで偶然に発見されることもあるそうです。

口を触られるのを嫌がる犬も多いですが、日常的に口腔ケアをすることで気づくこともあるので、普段から口腔ケアで口を触り慣れておくことは有意義なことになります。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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