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犬の歯周病の予防 歯石取りの麻酔の問題や費用について

♦眼/口/耳/鼻/呼吸器

犬の歯周病は、年齢とともに罹患率も高くなります。

歯周病の予防の最善策は、普段からの歯磨きなどの口腔ケアです。

歯石がたくさんあり歯石取りが必要な場合、処置は全身麻酔とセットになります。

そこで麻酔なしを売りにしているサロンなどに連れていく飼い主さんも多いようですが、それはちょっと待って下さい。

今回は、犬の歯石取り時の麻酔の問題や費用について、皆様と情報を共有したいと思います。

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歯の健康は寿命に影響する

人も、高齢になって健康を維持するには、自分の健康な歯でしっかりと食べることが重要と言われています。

厚生労働省と歯科医師会が中心となって推進している8020運動というものがあって、80歳になっても自分の歯を20本維持しようという目標を掲げています。

1989年(平成元年)より厚生省(当時)と日本歯科医師会が推進している「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。20本以上の 歯があれば、食生活にほぼ満足することができると言われています。そのため、「生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえるように」との願いを込めてこの運動 が始まりました。楽しく充実した食生活を送り続けるためには、妊産婦を含めて生まれてから亡くなるまでの全てのライフステージで健康な歯を保つことが大切 です。ぜひ「8020」を目指してください。

出典元 https://www.jda.or.jp/enlightenment/8020/

歯の健康が体の健康に繋がることは犬も同じです。

歯を失うことは、生命維持のための「食べる」という大事な動作が保てなくなってしまうからです。

犬が歯を失う原因は、ほとんどが歯周病によるものです。

歯周病を放置してはいけない

歯周病は、歯の周辺組織の炎症であり感染症です。

でも歯周病を口腔内だけの問題ととらえては危険です。

治療せずに放置しておくと、歯周病はどんどん進行し、やがて歯を支える歯槽骨という深部の骨まで溶かしてしまうのです。

支えが溶けてなくなった歯は抜け落ちてしまい、歯を失うことになります。

歯を失うと、「食べる」ということに支障が出て栄養状態に影響してきます。

さらに歯周病の進行は全身にも影響します。

歯周病菌が繁殖すると、血液中に血栓を作りやすい環境になるのです。

その血栓が脳や心臓に詰まり、脳梗塞などの原因になります。

誤嚥もしやすくなり、誤嚥性肺炎などを起こしやすくなります。

血液中に菌が入り込むと、敗血症という状態になり命の危険にもつながります。

 

口腔内を健康に保つには普段のケアから

歯周病を予防し口の中の健康を保つには、犬も普段からのケアが必要です。

口腔内には食べ物のカスなどが溜まりやすいですが、それが歯垢(プラーク)になって歯に付着します。

歯に付着した歯垢(プラーク)は細菌の塊になり、これが歯周病の原因になります。

歯垢をそのまま放置しておくと、結晶して歯石という石を作り歯にこびりついてしまいます。

歯垢の段階では柔らかいので、歯磨きや拭き取ることによって取り除くことができます。

でも歯石になってしまうと、普通の口腔ケアではもう落とせません。

犬の口腔内のPHは人と違い、犬の歯垢は早くに歯石に変化するのです。

そして歯石の付着したところには、また歯垢が溜まりやすくなるのです。

つまり、歯周病の予防は、普段から歯垢を除去することが重要です。

歯磨きやクリーナーなどを使って口腔ケアの習慣を作り、歯垢を溜めないことが第一の歯周病の予防対策です。

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犬の歯石は病院で歯石取りをする

いくら歯磨きが理想的であるとわかっていても、犬の歯磨きは結構難しいものです。

最近はおとなしく歯磨きに応じている犬の動画などもよく見るようになりました。

口の中を自由に触らせてくれる犬は、子犬の頃からそのような習慣を付けてきた犬だと思います。

そしておそらくそれを嫌がる犬も多いと思われます。

うちの犬も歯ブラシはNGで、歯磨きシートやペーストで何とか対応している状態です。

歯の表面は触ることができても、奥や歯の裏側までじっくり観察しながら歯磨きさせてくれる犬はそれほど多くないでしょう。

歯磨きではなく、飲み水に滴下するだけで歯石が付きにくくなるケア用品や、歯磨きガムなどを使っている場合もあると思います。

口腔ケア自体、行っていないという犬も多いかもしれません。

高齢になり歯周病を発症する、あるいは、特に問題はなかったけれどたまたま病院で歯石を指摘され、歯石取りをすることになるのもよく聞く話です。

歯石取りは技術が必要で、家でできる処置ではなく病院で獣医師に任せる処置になります。

歯石取りには、

  • ハンドスケーリング
  • 超音波スケーリング

の2通りの方法があります。

どちらもスケーラーという歯石取り専門の道具を使うことに変わりはなく、手動であるか、超音波の機械であるかという違いです。

さらに、全身麻酔をかけるか、麻酔なしで行うかという違いになります。

全身麻酔による歯石取り

病院での歯石取りは、一般的には超音波スケーリングです。

歯石は歯の表面に付着しますが、目に見えている表面だけではなく、歯と歯茎との間の歯周ポケットと呼ばれる場所や歯の裏側にも付着します。

歯周病予防は、このように表に見えない場所の歯石こそしっかり取らなければ意味がありません。

超音波スケーリングは、超音波の振動で行う方法です。

機械は高熱を発するので、それを冷却するために水を出しながら機械は動きます。

先端は鋭くて、処置時には痛みもあります。

スケーリング中に動くとケガをさせてしまう恐れもあります。

冷却水や取り除いた歯石は同時に吸引しながら行います。

ちょうど私達の歯科の治療をイメージしてもらえばわかりやすいと思います。

私達の歯科の処置は、口腔内に吸引機の先端を入れておき、水を出しながら歯の処置をし、水は吸引していると思います。

このような歯石取りの処置を行う為には、犬に全身麻酔をかける必要があります。

麻酔なしでは不可能です。

歯周病が進行していて歯がぐらついていた場合なども、抜歯などの治療も同時におこなわれます。

患部の骨などを確認する為に、レントゲン撮影やCT撮影が必要になることもあります。

つまり、病院においては、歯周病の治療と予防を目的として徹底した歯石取りが行われるので、全身麻酔が前提になってくるのです。

無麻酔による歯石除去

麻酔下で行う歯石取りに対し、抵抗のある飼い主さんや麻酔そのものが無理な犬もいるでしょう。

そもそも歯石取りを必要とするのは大抵が高齢の犬です。

全身麻酔をかけるリスクが高くなり、それを不安に思うことももっともなことです。

そこで最近は、無麻酔での歯石取りというメニューを作っている病院も増えています。

ただし、超音波スケーラーの機械は麻酔なしでは使用が無理ですので、無麻酔だとハンドスケーリングになります。

ハンドスケーリングで除去できる歯石は、上の歯の表側が主体となります。

どんなにおとなしくて口を触ることに抵抗をしない犬でも、やはり歯の裏側の歯石取りまではかなり難しいのです。

つまり、麻酔なしでの歯石取りは、ハンドスケーリングで主に歯の表面などの一部分に限られるということになります。

また、無麻酔では、犬が人のようにその処置に従ってくれなければまず無理なので、協力的な犬でない場合この方法は実施できません

歯周病が進行している犬の場合、患部にはすでに痛みがあり、それを犬に我慢してもらって行うことはできないので、無麻酔は無理です。

基本的に、無麻酔のハンドスケーリングでは、歯石を完全に取り除くことはできないので、歯周病予防という目的には適していないと言えます。

美容目的であれば、外から見える部分の歯石取りは意味もあるのかもしれません。

ただ、無麻酔での歯石取りで恐怖感を植え付けてしまうかもしれません。

そうなると、その後、家で歯磨きを始めとする口腔ケアができなくなってしまう可能性があり、そうなるとまさに本末転倒です。

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海外では獣医師以外の無麻酔スケーリングは違法行為

最近は、無麻酔スケーリングを謳っているサロンなどが増えています。

それは動物病院ではないので、処置を行うのも獣医師ではありません。

このような行為は、実は獣医師の間では海外でも日本でも問題視されているのです。

犬の歯石取りなどの口腔内への処置行為は、歯科処置という医療行為です。

単なる爪切りなどとは異なるものなのです。

アメリカ獣医歯科学会 American Veterinary Dental College(AVDC)のHP https://avdc.org/about/#pos-stmts

アメリカとカナダでは、獣医師の資格を持たない人が歯科処置を行ったり、監督下で訓練された動物看護士が、獣医のライセンスのない施設で診療行為をすることは、法律で禁じられ、罰則が科せられます。

日本語訳の出典元 http://sa-dentalsociety.com/news/dental%20scaling.pdf

アメリカ獣医歯科学会のページでは、このような行為がいかに危険であるか、その弊害について説明されています。

近年、表面には歯石がなくて一見きれいに見えるのに、歯周病が進行していてほとんどの歯を抜歯しなければならない状態の犬を連れた飼い主さんが診療に訪れるそうです。

その原因が、このような病院以外での無麻酔の歯石取りによるものであると考えられています。

スケーリングは、歯の表面を傷つけないようにするための技術も必要で、スケーリングの後にポリッシングと呼ばれる、表面を磨いてなだらかにする処置が必要です。

このような処置も正しくできていなければ、歯の表面についた見えない傷には、これまで以上に歯垢が付着しやすくなってしまうのです。

日本でも、歯周病予防を目的としていない、病院以外で行われる歯石取りはグレーゾーンと理解した方がよいと思います。

単なる見た目ではなく、歯石取りの本来の目的を考えて、どこに依頼すべきかを考える必要があります。

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病院での歯石取り費用の目安

歯石取りは大まかに

  • 術前検査
  • 麻酔
  • 歯石除去
  • 研磨(ポリッシング)

という内容の合計で費用が計算されます。

動物の医療費は病院によっても差がありますが、重度の歯周病などの治療を伴わないケースならば、一回の歯石取りの費用は2万円~5万円くらいの範囲が多いようです。

ちなみに費用の差には、犬の体重(大きさ)なども関係しています。

オプションの処置として、抜歯・レーザー治療・レントゲン撮影・根管治療などがあります。

それぞれ施行した場合、2000円~5000円ずつが加算されていきます。

重度の歯周病がある場合、5万円~8万円程度の費用がかかるようです。

医療保険に加入している場合、美容のための歯石取りは保険対象ではありません。

でも歯周病があり、その治療として歯石取りが必要な場合、保険対象になることもあります。

適用されるかどうかは加入している保険会社によって免責事項が違うので、よく確認してみて下さい。

一方で、無麻酔の歯石取り(病院)は、麻酔費用がかからない分だけ安価です。

1万円以内で済むことが多いようですが、先述したように、無麻酔で可能な歯石取りはかなり範囲が狭いです。

肝心な歯周ポケットや歯の裏側、奥などは施行できませんので、歯周病予防としての効果は薄くなります。

 

まとめ

歯石取りは、見える部分をきれいにすることが目的ではありません。

見えない歯周ポケットにある歯石まで取り除いて、歯周病を予防することが目的です。

本格的で効果的な歯石取りに全身麻酔は不可欠なのです。

動物の麻酔は、安全性が高まったとは言えリスクがあり、踏みとどまる気持ちもよくわかるし、持病があればかけられないこともあります。

けれども重度の歯周病もまた、健康を大きく損なう原因になります。

十分に説明を受け相談できる獣医師の元で、よく話し合い、納得のいく答を出して下さい。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

 

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