犬のてんかんは脳炎の可能性も・脳炎は完治する病気?

犬のてんかんは一つの病名でもあると同時に、てんかんという症状でもあります。

てんかんの症状が、脳炎という重大な病気から起きているものであるにもかかわらず、時にその診断に至っていない場合もあります。

私の愛犬はその反対で、初めから脳炎と診断されましたがそうではありませんでした。

今回は私の経験も混ぜながら、脳炎という病気のことや完治はありえるのかについて解説したいと思います。

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てんかんの種類と治療

てんかん発作を引き起こす病気はいくつもあります。治療もそれぞれに異なりますが、そのわかりにくさのために、てんかんを一括りのものととらえている飼い主さんは多いかもしれません。

脳の病気や症状はとても複雑であり、まだ解明されていないことの多い未知の領域でもあってとても難しいです。

てんかんには、あれこれと検査をしても特に原因になるものが判明せず、ただ、脳波検査をすればてんかん特有の異常波形が認められるという特発性てんかんと、脳に何か器質的な問題があり(先天性の奇形や外傷、脳腫瘍、炎症性疾患など)、それが原因になって2次的にてんかん発作を引き起こす症候性てんかんがあります。

他にも内科的な疾患が原因で、てんかんに似た意識消失や痙攣発作を起こすこともあります。

てんかんの診断は、検査を順次おこなっていって、それらの病気との鑑別が必要になります。

【てんかんの症状や発作について】

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検査所見から、脳由来の症状ではないものに対しては、それぞれに合う治療で完治を目指します。脳由来のてんかん発作ということがわかれば、次に脳のどこに原因があるかを追求する為、画像診断(MRIやCT)が欠かせない検査です。

【てんかんの診断までの流れ】

犬のてんかん治療に必要な検査や薬 かかる費用の目安は?

しかし、そのような画像診断に至らないまま、特発性てんかんとみなして治療をしている犬は少なくないようです。てんかんの治療とは、発作を起こさない、あるいは最小限度に抑える為の薬でのコントロールになります。

てんかん発作をたびたび重ねていくと、脳はそれだけダメージを受けてそのダメージは脳の傷のようなものになります。脳の傷は次の発作の誘因になり、発作のたびにまたダメージが増えるのです。

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脳炎もてんかん発作を起こす病気のひとつ

血液検査や心電図などで、内科的に問題がなく脳由来の症状であることの見当がついて、次のステップとして画像診断や髄液検査に進む時に、個人のクリニックではその検査に対応できないことも多いです。

その為に検査は改めて大学病院や設備のある病院への紹介という形になります。

しかし、検査にかかる費用は決して安価ではなく、予約の調整が必要で、検査に行きつくまでの時間もかかります。それを受けるかどうかの飼い主さんの判断も様々、獣医師の方針も様々です。

画像検査までせず、その時点でてんかんだろうという予測を立てて治療が開始されることは珍しくはありません。

ところが、そのてんかん発作の陰に脳炎という病気が潜んでいることがあります。脳炎は、特に小型犬に多い進行性の病気であり、抗てんかん薬だけでは治療はできません。

脳炎には、ウィルスや細菌による感染性脳炎と(有名なものにジステンバーウイルス脳炎)、免疫異常が原因と考えられている特発性(免疫介在性)脳炎があります。

特発性脳炎はどの年齢でも発症しますが、特に若い年齢の犬に多いと言われます。

また、特発性脳炎はどの犬種にも起こりうる病気ですが、好発犬種があり、その犬種特有とされる脳炎(パグ脳炎が代表的)もあります。

好発犬種:チワワ、マルチーズ、ヨークシャーテリア、ミニチュアダックスフンド、パピヨン、シーズー、ペキニーズ、柴犬など

てんかん発作も脳炎の症状の一つです。しかし、病気は進行する為に発作も抗てんかん薬では制御困難になり、たびたびてんかん発作を起こすと同時に他の神経症状も見られるようになります。

出現する神経症状は、運動失調、歩行異常、視覚異常(見えていない)、念転斜頸(首が傾く)、起立不能、意識障害(ボーっとしている)などで、抗てんかん薬の副作用と類似しているために、判断を誤りかねないものもあります。

脳炎は、早期発見、早期治療開始すれば、致命的な病変の広がりの前に進行を止めることも可能ですが、治療ができなければ発症後1年以内に亡くなることも多いです。

また、初回のてんかん発作から短期間のうちにてんかん重責発作を起こし、そのまま亡くなることもあります。

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脳炎の種類と治療・予後

感染性脳炎

感染性脳炎の原因には、外傷や内耳、副鼻腔からの細菌感染、ジステンバーなどのウイルス、クリプトコッカスなどの真菌、トキソプラズマなどの原虫があります。

診断にはMRIと脳脊髄液検査を併用します。(頭蓋内圧が高い場合の脳脊髄液検査はできません)

感染性脳炎の治療は、それぞれの病原体に対する薬剤投与で完治を目指し、その病原体が薬剤への反応が良好な場合は完治も期待できます。

細菌性脳炎では、抗菌剤などがうまく効けば完治する可能性もあります。また、完治の可能性は治療開始時期が早ければ早いほど高くなります。

しかし、ウイルス性脳炎は完治はなく、予後も不良です。

ジステンバー脳炎ではワクチン接種が有効であり、ワクチン済みで免疫力のある犬がジステンバーウイルスに感染した場合は、無症状、または軽い呼吸器症状程度で完治します。

しかしワクチン未接種の犬の完治は期待できず、ウイルスは神経系に入り込みます。そして脳脊髄炎によるてんかん発作や神経症状を表しながら進行し、死という転帰をとることの多い病気です。

特効薬はなく、かろうじて完治したとしても、その殆どが脳神経系の重大な後遺症を残します。

特発性(免疫介在性)脳炎

非感染性の特発性脳炎には次のような種類があります。

①壊死性髄膜脳炎(NME)

大脳~脳幹部に多く、急性に進行し早期に死亡することが多い。パグ脳炎と呼ばれていたもの。

②壊死性灰白質髄膜脳炎(NLE)

間脳と大脳に同時に病変が出現する。ヨークシャーテリアに多い脳炎。

③肉芽腫性髄膜脳炎(GME)

壊死性のものとの違いは病変の特徴であり、肉芽腫が脳にできるという腫瘍に類似した脳炎。視神経の症状から発症する眼型は進行性網膜委縮などの疾患との鑑別が困難である。

これらの脳炎は、てんかんとして治療されている犬の中に混じっていることがあるということです。脳炎の進行を食い止める治療がなされなければ、予後は不良です。

診断がつけば、抗てんかん薬とともに免疫抑制剤、ステロイド剤などによる治療がおこなわれます。しかし、元々、発生の原因が不明で根本的な治療が確立されてない病気なので、完治はありません。

また、脳神経系疾患専門の獣医師でなければ診断や治療が難しい病気です。

当時、私の愛犬は、同じ動作を繰り返す、ちょっとした癖のように見える行動がありました。

それがてんかんの部分発作かもしれないということから、脳を確認するために画像検査を行い、その獣医師から脳炎と診断された経緯があります。

そして私の愛犬の寿命は、良くて2年ほどかもしれないと告知され、それなりに多いステロイド剤やできるだけ脳を安静にする目的で安定剤が投与開始になりました。

ステロイドの副作用が目立つようになり、私は飲水量や尿量をチェックしていました。しかし、治療方針を確認しても曖昧な獣医師に釈然としなかった私は、他の病院を探してセカンドオピニオンを求めることにしました。

そして別の医療機関で再度、画像検査を受けた結果、脳神経専門の獣医師によって脳炎の所見なしと診断されました。

最初の病院で画像検査まで受けたのに、ないはずの完治しない重病が何故「ある」と判断されることになったのかは不明のままです。でもその病名の元に受けていた、不必要な薬剤治療は早急に中止の必要がありました。

そして新たな獣医師によって、ステロイドの離脱症状を防ぐ為に時間をかけて徐々に薬を減量し、止めることができました。

【ステロイドについての参考記事】

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私のパターンは多分珍しく、これと反対にてんかんに隠れて脳炎が見逃されていることの方が多いのではないかと思います。脳炎は、特にその疾患に理解のある獣医師に診断を委ねた方が、的確な答を得られると思います。

脳炎は、完治はできなくても、早期の治療開始で進行をうまく止められるならば、生活の質を保ちながら普通に暮らすことも可能です。

私の知っている犬で、一時期は命の危険があったけれど治療が順調にいき、何年も元気にしているパターンもあります。

脳炎とてんかんの完治について

てんかんという病気に完治を期待する飼い主さんも多いですが、特発性てんかんと呼ばれる、そもそも原因不明のてんかんの場合は、原因に対する根本治療というものが不可能な為、完治はないと考えられます。

その発作を薬で制御することに成功して、長期に渡りてんかん発作を起こすことがなくなったとしても、その薬の継続は必要でありそれを完治とは言いません。

基本的にてんかんは完治しないものととらえ、治療を継続していく必要があります。

しかし、症候性てんかんの場合は原因が判明しているもので、脳炎もその原因になる疾患のひとつです。

この場合は、原因になっている疾患さえ完治すれば、その疾患から起こるてんかんも完治するという理屈になります。

脳炎そのものはどれも重病ですが、完治の可能性のある細菌感染性の脳炎などでは、根本の疾患が見事に完治して脳組織にダメージが残らなければ、てんかんの完治も望めるのかもしれません。

しかし、脳炎の発生原因がよくわかっていない自己免疫性脳炎には完治はなく、したがってそれが原因で起こる症候性てんかんも完治はないと考えられます。

治療がうまくいき、病気と共存しつつ安定してコントロールできているものは、完治ではなく寛解という表現を使います。

脳炎もてんかんも、完治はないが寛解はある、と考える方が良いと思います。

まとめ

病気に対して完治を望むのは当然のことで、完治はもっとも理想的な治療の結果です。

しかし、てんかんや脳炎など原因不明の難病の完治については、薬を継続しつつも苦痛な症状がなく安定してすごすことができれば、薬をやめられる状態にそこまでこだわらなくて良いのではないでしょうか?

完治ではなく寛解が最大の治療の効果ととらえてよいと思います。完治がないことを悲観するより、良好な状態で寛解することを受け入れる方が大事です。

犬の脳炎、特に完治のない自己免疫性脳炎は増えていると言われます。その理由の一つは、動物医療で画像診断が発達し、このような病気が多く発見されるようになったこと、もう一つは好発犬種である小型犬の飼育数が増えていることなどが挙げられています。

てんかんと見当をつけて治療をしても発作の改善がなく、重責発作で亡くなってしまったという例では、脳炎が進行していたということが結構あるのではないかと思われます。

てんかんの治療においても、獣医師によっては定期的な内服治療はせずに発作時の薬だけというような場合もあるようです。

それぞれの獣医師、それぞれの飼い主さんによって、治療方針は違うということでしょう。それが限界やリスクも納得した上での選択であれば、第3者が何も言うことはないかもしれません。

しかし、積極的に完治を求めている飼い主さんと、全く沿わないような治療がおこなわれていることもあるのではないかと思います。医療レベルはどこの病院、どの獣医師でも同じではありません。

私の愛犬はセカンドオピニオンを受けた病院でその後てんかん治療に繋がりました。あのままだったら必要のない薬剤の副作用で命を失くしたかもしれません。しかし、無事に正しい治療に結びついたことを救われたと考えることにし、前医には何も言いませんでした。

たとえ完治しない病気でも、全て信頼し委ねることになる獣医師との関係は、病気を持つ犬の飼い主としてはもっとも重要なものです。完治はない病気と承知の上、より良い治療を受けるには、獣医師を信じられるかどうかが鍵になります。

今回はてんかんに脳炎の可能性を取り上げましたが、自分の犬に完治しない病気があるとわかった時、どこまでの医療をどの獣医師に委ねるか、後悔のないように、よりよいものを選択してあげて下さい。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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