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犬の脳腫瘍の手術・放射線治療にかかる費用と完治の可能性

♦ストレス/脳神経
この記事は約8分で読めます。

脳腫瘍は進行するまで症状がわかりづらく、診断がついても場所によっては治療が困難な病気です。

特に簡単にMRIなどの検査ができない犬は、人よりも発見がしにくいと思います。

完治させるには手術による摘出が有効ですが、放射線治療が有効な種類のものもあります。

また、犬の脳腫瘍の治療費用は大変高額になります。

今回は犬の脳腫瘍の治療と完治の可能性、それにかかる費用について情報を共有したいと思います。

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犬の脳腫瘍は珍しい病気ではない

脳腫瘍には、

  • 最初から脳に発生する原発性脳腫瘍
  • 他の部位の悪性腫瘍が脳に転移した転移性脳腫瘍

があります。

そして、良性腫瘍と悪性腫瘍があります。

原発性脳腫瘍は、人では10万人に10~15人とされますが、犬は発生率がその5倍とも言われ、増加しているとも言われています。

その一つは、動物医療における画像診断の発展があり、発見できるようになったことが挙げられます。

とは言え、少なくとも犬の脳腫瘍は決して珍しい病気ではありません。

《参考サイト》

犬に多い脳腫瘍の種類

脳腫瘍と言っても多くの種類があり、人間と犬の脳腫瘍では共通している種類もあります。

犬の脳腫瘍で、もっとも発生頻度の高いのが、髄膜腫という種類の脳腫瘍です。

これは、脳を覆う髄膜という表面の膜が腫瘍化してしまったものです。

次に多いのが、神経膠腫(グリオーマ)という種類です。

これは脳の中にあるグリア細胞という細胞が腫瘍化し、正常な脳組織内に深く入り込んでいることが多い腫瘍です。

脳腫瘍は、7歳以降の高年齢の犬で発症することが多く、9~10歳前後が最多であり、性別は関係ないとされています。

しかし、グリオーマにいたっては比較的若年齢の犬にも発生する脳腫瘍です。

そしてグリオーマの半数は、短頭種(頭蓋骨の幅に比べて鼻の長さが短い)と呼ばれるボクサー、ブルドッグ、ボストンテリアなどの犬種に発生し、好発犬種があると言えるようです。

脳腫瘍は比較的緩やかに進行します。

腫瘍が大きくなって周辺の脳を圧迫するようになるとその影響で様々な神経症状が現れるようになります。

もっとも多くて異変に気づきやすい症状がてんかん様の痙攣発作ですが、それでもこの時点で「てんかん」として経過観察になることも多いと考えられます。

脳腫瘍はCTやMRIなどの画像検査をするまでは確定診断に至りません。

脳に何も所見がなくて痙攣発作を起こす「特発性てんかん」という病気もありますが、犬が痙攣発作を起こした時はその原因が何であるのか可能な限り追及した方が良いと私は考えます。

【参考記事】

犬のてんかんの症状と対処法 危険な発作の2パターンとは?

犬のてんかんは脳炎の可能性も・脳炎は完治する病気?

見逃さないで!その症状は犬の脳腫瘍の進行かもしれない

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脳腫瘍の手術の適応・リスクと費用

脳腫瘍は、手術で脳腫瘍を完全に摘出できれば完治も可能です。

全てを摘出できなかったとしても、脳腫瘍を大幅に縮小させることができれば、その後に他の治療方法での効果も上げやすくなります。

また、手術中にその腫瘍がどのような性質のものか直接検査することができるので、その後の治療方法の検討もしやすくなります。

脳腫瘍を完全切除または縮小できれば、それまで脳腫瘍が脳を圧迫して出ていた症状も緩和されます。

手術には以上のようにメリットが大きいですが、脳腫瘍の摘出手術は簡単ではなく、脳を扱うことはかなりリスクが高いです。

そして、脳腫瘍の発生している場所によっては全く手が出せないものもあります。

その中で髄膜腫は、脳の表面の髄膜に発生するので比較的摘出しやすく、手術適応のある脳腫瘍です。

髄膜腫は、悪性腫瘍の場合もありますが良性腫瘍であることがほとんどで、手術で取り去りさえすれば完治できる可能性が高いです。

ただ、犬の髄膜腫は周辺に浸潤(広がる)しやすく、腫瘍と脳との境界を慎重に区別して切除しなければならず、かなり高度な技術を要する手術になります。

また、脳腫瘍は、仮に切除できても、その後にてんかんや神経系の後遺症が残るかもしれないことも考えておく必要はあるでしょう。

脳は、柔らかくて傷つきやすく大変複雑で重要な組織です。

それを守る為に脳は3層の膜で保護され、さらに一番外側を硬い頭蓋骨が覆っています。

その頭蓋骨を一部開けて中にできた腫瘍を切除するということは、少なからず脳に何らかの影響を与える可能性があると考えて下さい。

脳腫瘍の手術にかかる費用

脳腫瘍の手術は、当然のことですが全身麻酔下でおこなわれます。

他の手術と同様に術前には血液検査や心電図など、安全に手術をおこなうために全身の検査が行われます。

さらに手術後は、脳圧が上昇しないように薬でコントロールする必要があります。

手術のあとの治療スケジュールや全身状態によっても違ってきますが、入院期間は2週間~1ヶ月と開きも大きいです。

脳腫瘍の手術にかかる費用は病院の設定にもよりますが、一般的に50万円~70万円程度はかかるようです。

その費用に大抵、検査・麻酔・薬剤・入院費も含まれているようです。

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脳腫瘍の放射線治療の適応・リスクと費用

放射線治療とは

放射線治療とは、強い放射線を体外から腫瘍を狙って照射することで、その腫瘍細胞の分裂・増殖を食い止め、腫瘍を死滅させることを目的とする治療です。

レントゲン検査も放射線を使ったものですが、治療に用いられる放射線には様々な種類があり検査と比較してかなり強いです。

放射線には、細胞にあるDNAを傷つける作用があり、DNAを傷つけられた細胞は分裂や増殖ができなくなります。

悪性腫瘍も急速に分裂して増殖する細胞なので、放射線でその成長を妨げようという理屈です。

放射線治療の適応は

  • 手術不可能な脳の深部に発生した脳腫瘍
  • 腫瘍が大きすぎる・周囲に浸潤があるなど全摘困難

など手術では取りきれない腫瘍に対する治療法です。

放射線は、癌細胞のような分裂や増殖の著しい細胞には効果的ですが、その周囲の正常な細胞に対してはそれほどダメージを与えないとされています。

ただ、体の表面にある皮膚や粘膜は常に新生している活発な細胞ですので、放射線のダメージを受けます。

放射線治療の副作用

放射線治療の副作用には、治療を開始してすぐに表れる急性障害と、年数が経過してからそのダメージが明確になってくる晩発障害があります。

急性のものは、治療開始1ヶ月以内に表れます。

皮膚や粘膜が炎症を起こし火傷のような経過をたどりますが、照射が終われば再生して自然に回復します。

それに比べて、晩発障害は正常な組織に対するダメージです。

放射線治療を受けて数か月~数年経った頃に、脳、神経、骨、肺、心臓などの臓器が壊死や機能低下を起こす深刻な副作用です。

放射線治療は、このような副作用を回避する為にも、放射線量と照射位置などのコントロールを慎重にしなければならないのです。

脳腫瘍の放射線治療にかかる費用

放射線治療は、総線量を分割し、週1回~週5回を1ヶ月ほどかけて完了を目指す方法が一般的におこなわれますが、1回の線量を小さく分割せずにトータル1~3回で多方面から狙った腫瘍に総線量を照射するという治療方法もあります。

後者の短期で終わらせる方法は、定位手術的照射(SRS)と呼ばれるものです。

人の脳腫瘍の放射線治療で、ガンマナイフと呼ばれるものがありますが、それはこの照射法です。

放射線治療をする場合、その都度全身麻酔が必要になります。

ですので、手術のように長時間ではないにしろ、麻酔のリスクも考える必要があります。

放射線治療にかかる費用は、分割照射でその都度25,000円~×照射回数という設定になっている病院もあります。

1ヶ所1クール照射するトータルの費用は、15万円~60万円といったところになるようです。

いつも書いていることですが、動物医療は自由診療ですのでかかる費用は病院によってもかなり違います。

また放射線治療は、麻酔や照射方法によっても異なると思われます。

手術してさらに放射線治療を併用していくことになると、脳腫瘍の治療すべてにかかる費用は合計100万円ほどになりうることがわかります。

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脳腫瘍の完治の可能性

脳腫瘍は、発生部位がどこなのかによっても予後は大きく違ってくると言えるでしょう。

脳の深部には生命を維持する重要な機能があります。

そのような場所に発生した脳腫瘍は摘出することも不可能で、腫瘍が増大するにつれて、生命を脅かす深刻な症状に繋がるようになります。

幸いにして手術可能な部位なら、手術で完全に切除できることも見込まれるので、その場合は完治ということもあると思います。

たとえ手術が無理でも、放射線治療に反応のよいタイプの脳腫瘍であれば、まだ完治の可能性はあるかもしれません。

しかし、例えば脳の表面にできる髄膜腫は、手術で摘出しやすい腫瘍ではあるものの放射線には反応が悪く、全摘できずに残った場合の治療は困難になるなどの難しさがあります。

手術も放射線治療も局所療法です。

それに比較して抗癌剤治療は全身療法です。

脳腫瘍は、それらの治療方法をいくつか併用していくのですが、犬の脳腫瘍の治療は難しいというのが現実だと思います。

完治を目指さなくとも、延命という方向の治療もできると思いますが、脳腫瘍は急変して一気に悪化する可能性の高い病気であり、シビアですが、飼い主さんの覚悟も必要かもしれません。

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まとめ

犬の脳腫瘍には、手術、放射線、化学療法という3つの治療方法があり、組み合わせて選択されます。

脳腫瘍は種類も発生部位も様々で、完治や予後も大きく分かれるというのが現実でしょう。

摘出できても脳の手術は複雑で、後遺症が残ることは避けられないかもしれません。

また、脳腫瘍の治療にかかる費用は一般的に高額になると考えた方がよいです。

費用のことも含めてきちんと相談できる獣医師の元で、後悔のない治療を選択して下さい。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

 

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