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犬の首まわりのしこりは悪性の病気?リンパ腫の症状と余命

♦癌/腫瘍
この記事は約10分で読めます。

犬の体のしこりは、できた場所によって発見しやすいものとしにくいものがあります。

首まわりなどは触られる事を嫌がる犬や毛ぶきのいい犬などでは発見しにくいかもしれません。

でも、犬の首まわりのしこりは、余命に関わる重度な病気、リンパ腫の症状の1つでもあるので気を付けておきたいものです。

今回は、犬に多いリンパ腫の症状や治療について情報共有したいと思います。

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犬の首のしこりは良性と悪性がある

しこりには硬いもの、柔らかいものなど、触り心地の全く異なる種類のしこりがあります。

そしてしこりは、良性もあれば悪性もあります。

触り心地だけでは、どちらが良性または悪性なのか区別はできません。

柔らかければ良性、硬いしこりは悪性と言われることもありますが、必ずしもそうとは限らず、柔らかい悪性腫瘍もあるのでそれだけで判断はつかないのです。

一般的には、良性腫瘍はしこりと周囲の組織との境界が明瞭で、急激に大きくなることはないと言われます。

一方、悪性腫瘍はしこりと周囲組織の癒着などがあることが多く、その為に境界不明瞭で形がいびつであると言われます。

しかし、正確な診断の為には、針生検などでその細胞を採取して検査する必要があります。

針生検は、針を直接しこりに刺して、しこりの細胞の一部を吸引で採取する方法です。

吸引して採取した細胞を検査すれば、それが悪性なのかどうかわかります。

ただ、針生検をおこなったとしても、採取できるのは吸引できたほんの一部分です。

そこには悪性所見がなくとも、残った細胞にあるかもしれないという可能性は考えておかなければなりません。

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首のしこりの種類

首にできるしこりで、代表的なものを次に挙げてみます。

脂肪腫

首のしこりで、余命に関わる種類ではない良性腫瘍に、脂肪腫と呼ばれるものがあります。

脂肪腫は、首まわりに好発しますが、首に限らず、腹部や四肢など全身の皮下のどこにでもできる良性腫瘍です。

正確には、皮下組織にできる浅在性脂肪腫と、筋膜下・筋肉内・筋肉間にできる深在性脂肪腫の2種類があります。

柔らかいしこりとして、単発でできることが多いですが、複数できることもまれにあります。

脂肪腫は、通常は痛みなどの症状はないとされています。

余命を左右するような腫瘍ではないですが、大きさによっては生活の上で支障をきたすこともあるために、治療としては外科的切除になります。

唾液腺嚢腫(だえきせんのうしゅ)

唾液腺嚢胞(だえきせんのうほう)とも呼び、唾液を分泌する器官である唾液腺が腫大したものです。

唾液腺には、

  • 耳下腺
  • 舌下腺
  • 下顎腺
  • 頬骨腺

という腺が、それぞれ1対ずつ両側にあって口腔内に開いています。

これらの大きな唾液腺とそれ以外の小さい唾液腺で唾液が作られ、口腔内に唾液が分泌されています。

唾液腺嚢腫は、この大きな唾液腺が何らかの原因で腫れあがった状態です。

嚢腫は、ガンに代表されるような細胞の異常増殖とは違い、細胞が細胞外の異物を包み込んでできた袋状のものです。

唾液腺嚢腫の中には、通常は唾液が溜まっています。

嚢腫が好発するのは下顎腺で、その場合は首というよりも下顎に柔らかいしこりができます。

ただ、どこの唾液腺にも発生するので、発生した唾液腺によってしこりの場所も変わって来ます。

この原因になるものは、唾石・外傷・遺伝的などとされています。

このような原因で唾液腺が詰まり、唾液が順調に流れることができず溜まっていき、溜まった唾液を包み込んで嚢腫を形成するのです。

そこには、炎症が起きていることもあれば起きていないこともあり、炎症がなければ特に痛みはないとされます。

甲状腺腫瘍

甲状腺は、首の前方の喉の部分の、第6~7気管軟骨を挟んで両側に位置し、代謝に関わる甲状腺ホルモンを分泌している重要な組織です。

【参考記事】

犬の尻尾がハゲてくる?甲状腺機能低下症とはどんな病気?

その甲状腺にできるしこりが甲状腺腫瘍であり、良性のものではしこりも小さく、基本的には変化は見られません。

ただ、甲状腺腫瘍の多くは悪性度の高い甲状腺がんであり、要注意です。

甲状腺がんは、甲状腺の片側性両側性の2パターンがありますが、両側性の発生の方が甲状腺がん全体の60%と高確率です。

両側性甲状腺がんはリンパや他臓器への転移の確率も高く、片側性と比較して、16倍もの転移率とされています。

甲状腺がんは、最初はそれほど大きくない、硬いしこりとして発生しますが、進行して大きくなるのも早く、大きさが増すにつれて転移リスクも上がります。

皮膚肥満細胞腫

肥満細胞腫は悪性腫瘍です。

その半数は腹部~下腹部に発生しますが、頭部や首にも発生します。

また、皮膚だけでなく、肝臓や腎臓など内臓にできる肥満細胞腫もあります。

肥満細胞腫は、肥満細胞という名前の細胞に関係しているからこの名称であり、肥満しているかしていないかと関係ありません。

注意したいのは、同じ肥満細胞腫でも全く見た目の違うしこりが発生するということです。

《肥満細胞腫のタイプ》

  1. 境界明瞭な3㎝前後の硬いしこりで、表面が爛れて痒みを伴うもの
  2. 柔らかいしこりで表面は何ともないもの

柔らかいしこりのタイプの方は、一見、良性の脂肪腫と似ているので要注意です。

リンパ腫

リンパ腫は、首のしこり、あるいは喉のしこりとして発見されることの多い病気で、悪性リンパ腫と一括りにされていた病気です。

しかし、リンパ腫の中にも種類の異なるものがあり悪性度はその種類によっても違うので、悪性リンパ腫と呼ばずにリンパ腫と表記するようになりました。

ただ、やはり、悪性の経過をたどって、余命も短いことの方が多い病気とは言えるようです。

喉には顎下リンパ節がありますが、喉のしこりはそこにリンパ腫ができていることが考えられます。

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リンパ腫は血液の病気

リンパ腫とは、血液の白血球に属するリンパ球という細胞が腫瘍化(がん化)したものです。

リンパ球のがんには次の二つがあります。

  • リンパ腫
  • リンパ性白血病

今回ここで取り上げるのはリンパ腫の方で、しこりができるという症状が特徴です。

一方、リンパ性白血病の方は、腫瘍化した細胞が血液中や血液を作る骨髄で増えるのですが、しこりを形成する症状はありません。

リンパ球は体内の循環に乗って全身を巡るので、腫瘍は発見された1ヶ所のしこりに留まることなく、全身に広がっているということが考えられます。

犬のリンパ腫は、犬の腫瘍性疾患の中でも多く、人の2倍という確率で発症し、6~9歳の犬に好発します。

リンパ球はどんな役割をするのか?

リンパ球は免疫に関わる細胞で、体外からの細菌やウイルスなどの感染源や変質した自分自身の細胞(腫瘍化した細胞)を攻撃・排除し、生体を守る役割を担っています。

リンパ節は、そのリンパ球が流れているリンパ管の途中にある関所のようなものです。

リンパ節にしこりができる原因には、リンパ腫などの腫瘍の他に、感染症アレルギー反応、がんの転移などがあります。

《体表のリンパ節のある部位(左右1対)》

  • 下顎:下顎~首の境目
  • 浅頸:人の鎖骨の位置 首~胸の境目
  • 腋窩:前肢付け根の腋の下
  • そけい:後肢付け根の内側
  • 膝窩:膝の裏側

好発犬種

リンパ腫はどの犬種にも発生する病気ですが、この病気にかかりやすいハイリスクの犬種も指摘されています。

好発犬種と言われるのは次のような犬種です。

ゴールデンレトリーバー・プードル・シェパード・ボクサー・シェルティ・シーズー・ビーグルなど
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リンパ腫は種類によって症状が異なる

リンパ腫は、発生する部位により分類されます。

そして、その種類によって症状の表れ方も違います。

多中心型リンパ腫

犬のリンパ腫のうち80%はこの多中心型リンパ腫のタイプです。

体の表面から触れることができるリンパ節にしこりが発生するのはこの型です。

リンパ節のしこりが1ヶ所だけのこともあれば、何ヶ所にも多数のしこりが見られることもあります。

症状はしこりだけでなく、食欲不振、元気消失、嘔吐、下痢、散歩に行きたがらないなどの全身症状を伴います。

しこりが増大するにつれ、気道を圧迫するようになり、呼吸困難などの症状を起こすことがあります。

消化器型リンパ腫

消化管の中で、腸や腸間膜リンパ節に発生します。

食欲不振、体重減少、嘔吐、治療しているのに治らない慢性下痢を症状として、腸内で増殖してイレウス(腸閉塞)を発症することもあります。

縦隔型リンパ腫

胸腔内にあるリンパ組織にできるリンパ腫です。

胸水が溜まりやすくなり、咳、呼吸困難、チアノーゼ(酸素不足で舌が紫色になる)などの症状が出現します。

その他のリンパ腫

皮膚炎を引き起こし感染を伴う皮膚型リンパ腫や、割合としては少ないにしても、眼球、脳、脊髄、骨、腎臓などのあらゆる部位でリンパ腫は発生します。

また、症状の中には、腫瘍随伴症候群という高カルシウム血症、それによって起こる多飲多尿、血小板減少による出血傾向などが出現することもあります。

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リンパ腫の治療は抗がん剤

リンパ腫は循環系に乗って広がる全身性の病気であり、しこりの部分を外科的に切除するというような治療ができません。

リンパ腫の治療は、抗がん剤による化学療法が主な治療方法です。

リンパ腫は、比較的抗がん剤への反応が良いとされていて、治療効果に期待ができることも多いのです。

ただし、抗がん剤の選択、また他の薬の組み合わせなどは、その悪性度や進行度のステージ分類によって違います。

リンパ腫の悪性度は

  1. 低悪性度
  2. 中間悪性度
  3. 高悪性度

に分類されます。

リンパ腫は抗がん剤に対しての耐性を作ってしまうこともあるので、抗がん剤は1種類ではなく多剤併用療法で治療するのが一般的です。

ただ、抗がん剤の副作用も重要で、それが出現することによって治療の継続が難しくなることもあります。

進行度のステージは1~5までに分類されます。

当然ながらステージが低い方が余命も長く、ステージが進行していれば余命は短いとされます。

~WHOによる犬のリンパ腫のステージ分類~

《ステージ1》1つのリンパ節または単一リンパ系組織に限局している

《ステージ2》複数のリンパ節に限局した病変(扁桃を含むまたは含まない)

《ステージ3》全身のリンパ節浸潤を認める

《ステージ4》肝臓および/または脾臓に浸潤(ステージ3を含むまたは含まない)

《ステージ5》血液、骨髄および/または他の臓器へ浸潤を認める(ステージ1~4を含むまたは含まない)

《サブステージ》各ステージはさらに全身症状の有無によりサブステージa(症状なし)またはb(症状あり)に分けられる

抗がん剤の効果があり、リンパ腫が小さくなったとしても、リンパ腫は「完治」という表現はしません。

何故なら、症状が消えたとしても腫瘍細胞は存在していて、リンパ腫に完治はないと考えられるからです。

化学療法によって効果が得られ、元気になった状態は「完解」と呼ばれ、それはいずれ「再燃」する危険性も秘めているということになります。

再び腫瘍が増殖してリンパ腫の症状が現れるようになれば、それはリンパ腫の「再燃」を意味していて、また治療を再開して「再完解」を目指すことになります。

リンパ腫の化学療法は、週1回ごとの抗がん剤投与として、1クールが半年ほどかかる治療です。

抗がん剤1回の費用は、その病院の診療費設定によっても幅はありますが、高価なところでは3万近くかかるようです。

長期に渡っての治療や観察が必要になる病気ですので、犬だけでなく飼い主さんも負担が少なくなく、一緒に乗り越える覚悟も必要です。

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リンパ腫の余命について

リンパ腫は進行が早い悪性疾患です。

しこりとして発見し、他には特に症状がなかったとしても、悪性度が高い場合はその時点で治療を開始する必要があります。

治療しなければその余命は極端に短くなり、余命1~2ヶ月と言われるように進行が早いのです。

しかし、リンパ腫の種類でもっとも多い多中心性リンパ腫では、抗がん剤は高い効果を上げて完解率は90%と言われており、余命も1年を目標として伸ばすことができます。

1年の余命と聞けば、治療してもそんなものなのかと感じるかもしれません。

それだけリンパ腫はシビアな病気だということです。

2年経過できれば、それは治療がかなりうまくいったケースとも言えるのです。

ただ、悪性度が低い場合は、進行もそれほど早くなく、3年以上の余命が期待できることもあるようです。

一方で、型の異なる消化器型リンパ腫などは、抗がん剤の反応がかなり悪くなります。

たとえ治療を開始しても、余命は平均して3ヶ月~数か月と、リンパ腫の型や悪性度によって余命はかなり差があると言えます。

 

まとめ

犬のリンパ腫は、犬の悪性腫瘍の1つです。

そして、犬の悪性腫瘍=がんの中では比較的多い疾患です。

首のしこりを発見し、他に症状がなかったとしても、リンパ腫はリンパの流れによってすでに全身を巡っている可能性もあり、進行は早いです。

治療は抗がん剤を使い、病型によってはその効果が期待できますが、リンパ腫はあくまでも完治ではなく、完解と延命を目標にすると言った方がよいかもしれません。

犬の首のしこりは、他にも考えられる病気があります。

自己判断で様子を見て手遅れになることのないよう、異常を発見した時点ですぐに獣医師に判断してもらうようにしましょう。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

 

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