『犬の十戒』~犬との約束~にGo!
PR

子犬を叩くしつけ方法が及ぼす悪影響  体罰は不適切な虐待

♦子犬のしつけ
この記事は約8分で読めます。

子犬のしつけをする時には、言葉が通じないのだから叩くしつけ方法も必要だという考え方の飼い主さんもいます。

近年は、犬を叩く「体罰」はしつけ方法として望ましくないと言われています。

私個人の意見を言わせてもらうなら、叩くしつけ=体罰は、虐待と紙一重またはそのものに該当すると思います。

今回は、叩くしつけ方法が子犬に与える影響についてまとめてみました。

スポンサーリンク

叩くしつけ方法=体罰の歴史的背景

根底にあるのは「ドミナンス理論」

一昔前、犬の行動を狼になぞらえて考えるしつけ方法が主流だった時代がありました。

狼は、その群れの中に「アルファ」と呼ばれるボスがいて、その存在は絶対的なものです。

その群れの関係は、支配と服従で成り立っています。

低いポジションの狼は、上位にいる狼に服従するのがルールです。

 

その理論を犬に当てはめて、その関係性は人間と犬の間でも同様と考えられました。

犬をしつける為には、飼い主に犬を絶対服従させることが必要とされたのです。

つまり、飼い主という存在は、絶対的権力を持ったボス(アルファ)でなければならず、それを犬に教えこむことが重要と考えられるようになりました。

人間が犬より上位の存在であることを犬に認めさせるのがしつけ方法の基本でした。

この基本は、今もしつけの理論が語られる中に混在していて、それを支持しているトレーナーもいます。

なので、そのように信じている飼い主さんも多いのではないでしょうか。

 

この考え方の中では、犬は人間と権勢を争いたがる(アルファシンドローム)生き物であるとされます。

ですので、どちらが上位かの認識を犬に勘違いさせることは、もっともまずいことと言われます。

いくらしつけをしても指示を聞かせることができず、問題行動を起こすのは、上下関係を犬が認識していないからという理屈です。

この考え方をドミナンス理論といいます。

この理論に基づき、飼い主が上位にあることを犬に知らしめる為には、犬を叩く体罰式のしつけも正当な方法であるとされてきたのです。

 

dominance (ドミナンス)の意味:

  1. 支配;権威;優勢(な状態)
  2. (遺伝形質の)優性
  3. 《生態》(動物の群れにおける)優位  3a.(植物群落での)優占度

goo辞書より

 

   《体罰の方法》

手で叩く・棒などの物で叩く・蹴る・鼻をはじいて痛みを与える・頭を押さえ犬の鼻を床に押し付ける・無理やり仰向けにして抑えつける・マズルを掴んで頭を揺する・首輪で首を締め付ける・痛みを与える体罰用の首輪など

 

犬と人間の順位付けの為に、守らなくてはいけないこともありました。

日常の行動の順位の影響も細かく決められていたのです。

たとえば、

  • 玄関から出る時は飼い主が先
  • 犬より飼い主が先に食事をする
  • 人間の目線より高い位置に抱き上げない

 

許可を出す前に犬が食事に口をつけるなどすれば、叩くことも容赦なく、犬が食事中なのにあえて途中で食べ物を取り上げたりします。

そんな試すようなことをして、もしも犬が唸ったら、服従姿勢を強要するなどのしつけ方法がよいとされてきました。

飼い主がどんな嫌なことをしてきても、犬は絶対服従しなければならないと刷り込むのです。

そして、このようなしつけ方法は、幼い子犬の時期から早く行う方が効果的とされていました。

体罰により支配と服従を教え込むしつけ方法は、1990年代くらいまでは正当とされて飼い主の中でも共有されていました。

 

スポンサーリンク

子犬に対する体罰の効果と問題点

叩くなどの体罰によるしつけ方法は、子犬にどのような影響を与えるのか、効果と問題点を次に挙げてみます。

効果

  • 子犬の自主性に関係なく、犬は苦痛を感じるのが嫌で、痛みや恐怖を避けるために命令に従うようになる。
  • 強制力があるので結果が出るのが早い。

問題点

  • 自己防衛が強くなり、攻撃性が育つ。
  • 効果が出るのが早い反面、嫌々従っているに過ぎず、しつけの効果が長続きしない。
  • 子犬と飼い主の関係を対立させ、修復困難になることもある。
  • 威嚇行動などが抑えられ問題ないように見えるが、人間との信頼関係ができない。そのために相手やタイミングによって予告なくいきなり攻撃行動を起こす危険がある。

ハンドシャイ

人間の手で叩くことで痛みや恐怖を植え付けられた子犬は、人間の手に異常に恐怖を感じるようになります。

その現象をハンドシャイと呼びます。

手を子犬の前に出しただけで、子犬は構えて身をすくめるようになり、やがて恐怖に耐えられずに出された手に噛みつくようになることもあります。

子犬にとって人の手は恐怖の対象になるのです。

目の前に出されなくても、人間の手が子犬の視界の中で動いただけで、叩かれる恐怖への防衛で威嚇するというような過剰な反応を見せることもあります。

 

人間の手は、本来子犬にとって、撫でてくれたり、ご飯やおやつをくれたりする優しくて信頼できるものと認識されるはずなのです。

その手で、叩く・抑えつけるなどの苦痛を与えるしつけをすれば、子犬の中に人の手に対する恐怖が育つのは当然のことです。

そのことが、心の病気と言われるような状態を招いてしまうこともあります。

スポンサーリンク

しつけと虐待が紙一重

子犬が望ましくない行動をした時に軽く叩くのは、嫌悪刺激というしつけの方法です。

嫌悪刺激の使い方はタイミングが難しく、たしなめたい行動の直後(一秒以内)に罰を行わなければ、犬は行動と罰の関係性が理解できないと言われます。

効果的な使い方でなければ、ただわけもわからず叩かれたにすぎないのです。

 

そもそも小さな子犬を叩くような体罰は虐待ではないでしょうか。

しつけという大義名分で、無抵抗な子犬を叩く、殴る、蹴る、壁に叩きつけるなど、人間の感情を理不尽に子犬にぶつけている飼い主もいます。

その結果、子犬が死んでしまったという話は聞くだけで胸が苦しくなります。

そのような話は幾度か耳にしたことがあります。

たとえ命が助かっても、小さな子犬の体なんて叩くだけで容易に骨折などの大怪我をするでしょう。

障害を残し、大きなダメージを負うことだってあります。

体の傷が軽くても、心に大きな傷が残るかもしれません。

虐待を受けてきた子犬は人間を信頼できず、扱いも難しくなります。

人間のせいでそのように傷ついた犬が、結果的に捨てられてしまう話もたくさんあるのです。

スポンサーリンク

現在のしつけ方法の傾向

かつて犬は狼の群れと同様の階級付けがあるとされ、それを人との関係に当てはめての服従に重点を置くしつけの歴史があることは事実です。

しかし現在はその理論自体、アメリカ獣医行動学会からも否定されているとのことです。

群れというのは実はそれぞれ家族の単位だったのではないかとの説の元に、子犬をしつけるのは基本的に親であることから、その主従関係も親子関係であったと考えられるようになりました。

また、「犬は番犬」という位置付けから時代と共に人と犬の関係性も変化し、そこにも家族という表現が用いられるようになりました。

そのような背景からも、子犬にとって飼い主は信頼のおける頼れる親のような存在として、子犬を健全に育み教育するしつけスタイルが望ましいというように変化してきたのです。

さらに犬には人間と権勢を争うという概念はないとされるようになりました。

犬は決して人間を支配しようとか権力を奪いたくて狙っているのではなく、ただ自分のルールで好きなように暮らしていたいだけと考えるのです。

なので、人もそれを理解した対応、つまり犬と自分のどっちが上だとか争う必要はなく、犬の本能に基づく行動や習性をうまく利用して導けば、しつけはスムーズにいきやすいというのが今の主流の考え方です。

子犬のしつけ方法として推奨されているのは、子犬の望ましい行動とそれで得られる結果を報酬という形で関連付けて繰り返し覚えさせ、子犬の自主的な行動を導く方法です。

しかし、犬の訓練士やトレーナーは統一された資格ではなく方針もそれぞれ違います。

今でも子犬のしつけは支配と服従の関係と解いているトレーナーもいますし、叩く方法が正統と推奨する訓練も見られます。

ただ、少なくとも叩くことは、効果より弊害の方が大きいことだけははっきりしているのではないでしょうか。

しつけという大義名分の陰に隠れた虐待に誰も気づかなかったとしたら、それはとても危険なことだし、犬を誰が守るのでしょうか。

喋ることもできない無力な子犬には、飼い主さんしか頼る存在はないのです。

その人が何十倍も大きな体で大きな手を振り上げて、自分を叩くことはどれだけの恐怖と不安でしょうか。

どんなに怖くても痛くてもそこから逃げることもできないのです。

しつけを解くものはたくさんありすぎて、どれが正しいのかわからなくなり、叩くのも効果があるのだと信じてしまうことがあるかもしれません。

でも、無理やり屈服させ強制する関係は信頼関係ではないし、継続性のあるしつけではないとやはり私も思います。

スポンサーリンク

まとめ

子犬のしつけについては、基本が同じでも解釈が違うために方法も違ったものになることもあります。

体罰的なしつけが正当とされた時代があったのも事実で、しつけ方法の主流の交代はあっても、混在しているのが現実のようです。

ただ、叩くことが正しいと信じている飼い主さんがいるとしたら、それは違うということに今すぐに気づいて欲しいです。

しつけは子犬だけが学習するのではありません。

いかに望ましい行動を引き出せるのか、飼い主さん側も勉強する必要があります。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

 

コメント

テキストのコピーはできません。