『犬の十戒』~犬との約束~にGo!
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子供が犬アレルギーを発症したとき・犬との共存は可能?

♦犬を囲む問題
この記事は約13分で読めます。

子供の成長過程で犬を迎え入れるご家庭は多いでしょう。

一緒に暮らせばきっときょうだいのように仲良しになり、命を慈しむという大切な感情も育まれるに違いありません。

ただ、犬は人のアレルギーの原因になることもあり、それが大変深刻な場合もあります。

今回は、子供が犬アレルギーを発症した時、犬との暮らしを継続するにはどうしたらよいのかについてお伝えしたいと思います。

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犬が原因になるアレルギーは多い

犬アレルギーとは、犬がアレルゲンそのものになる、人間に発症するアレルギーです。

 

 

動物アレルギーの原因は犬だけに限ったことではありません。

でも、犬は人間の近くで暮らしていることが多いためか、動物アレルギーの中でも頻度が高く、代表的なものになっています。

 

アレルゲンは犬の毛と解釈されがちなのですが、厳密には違います。

アレルゲン物質は、犬の体内で作られている、唾液腺由来のCanf1(Canis familiaris allergen 1(Can f1)という物質(タンパク質)です。

 

Canf1は、犬の唾液中にあり、毛づくろいなどによって被毛やフケに移り、空中に飛散して環境下に広がり長時間漂い続けます。

毛に触れることや、空中のこの物質を吸入してしまうことでアレルギー症状が起こります。

 

Canf1は、大変小さな粒子であり、細い気管支にも簡単に入り込むことができます。

そして、子供の喘息発作を引き起こす原因になります。

アレルギーの症状は、喘息発作以外にも、目の腫れや蕁麻疹、アレルギー性皮膚炎による皮膚の激しいかゆみなどがあります。

重症度も、軽いものから、重症のアトピーで全身の皮膚が発赤し剥がれ落ちる「紅皮症」や、高熱、呼吸困難など、全身性の重篤なものまであります。

 

寒冷地の国では、その気候のためにダニが生育できないので、ハウスダストというものは少ないそうです。

その代わりに喘息の原因は、犬や猫も含めた動物であることがほとんどだそうです。

日本においては、アレルギー疾患の患者の43%がペット飼育中11.2%が過去にペットを飼育した経験があるというデータがあります。

 

<アレルギー患者家庭における10年間のペット飼育の変遷>

1337名のアレルギー患者について調査した。およそ43%の患者が現在、11.2%の患者が過去にペットを飼育していた。眼, 鼻, 喘息および皮膚症状がペットにより悪化することを自覚している患者は10%である。 ペットを飼育している4人に1人は鼻炎,、喘息を持つ家族がいる。

出店元 https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/48/1/48_KJ00001611341/_article/-char/ja/

 

また、乳幼児のアトピー性皮膚炎は犬アレルギーとの関係が考えられています。

 

<乳幼児アトピー性皮膚炎における犬アレルギーの検討>

2歳以下のアトピー性皮膚炎患児368名について自宅及び自宅外での犬の飼育の有無と皮膚症状,検査所見の関係を検討した。

犬皮屑に対するRAST陽性率は,自宅で飼育していれば高かったが父母の実家で飼育されているときにも高いことがわかった。室内飼育の場合、室外飼育よりも陽性率が高かったが自宅と父母の実家で有意差はなかった。

室内飼育の場合、陽性率は生後3カ月以内に高値となりそれ以後陽性率は有意に上昇しなかった。室内飼育の場合、実家を訪れる回数に比例して陽性率が上昇していた。

皮膚症状は室内で飼育した場合、室外で飼育した場合と飼育していない場合に比して有意に重症であり、室内犬を室外に隔離するだけで症状が改善する可能性があると考えられる。

出典元 https://ci.nii.ac.jp/naid/110002406935

犬アレルギーの治療は症状のコントロール

犬アレルギーは、アレルゲンとの接触さえ避けられれば症状の予防は可能です。

薬でアレルギーの症状を緩和することもできます。

どんな症状なのかによって治療も異なりますが、一般的には、抗ヒスタミン薬やステロイド剤などを使用します。

 

子供の犬アレルギーは、症状のコントロールが治療であり、アレルギーそのものを治療することはできません。

 

アレルギー治療の方法には、あえて少量のアレルゲンを体内に入れ、その量を次第に増やして慣らし、過敏な免疫反応を軽減させていく治療法=減感作療法(脱感作療法)というものがあります。

しかし、この治療法は犬アレルギーには効果が薄いと言われているのです。

犬アレルギーを根本的には治せないので、アレルゲンを遠ざけ、症状をコントロールする対策しかないのです。

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発症した時はとりあえず検査をしてみる

子供に皮膚や呼吸器の症状が出て、アレルギーが疑われるならば、アレルゲン物質を知る目的で検査を受けさせてあげて下さい。

かゆみや喘息の症状はとてもつらいものですが、幼齢の子供や乳児はこの症状のつらさを正確に表現することができません。

子供のアレルギー症状は、周囲の大人がいち早くそのことに気付いて状況をコントロールすることが重要です。

 

アレルギーの検査には、腕の内側の皮膚にわずかなアレルゲンを針で刺して、その反応を見るプリックテストと呼ばれる検査と、血液を調べる検査があります。

プリックテストは幼齢の子供にも手軽に行なえて、15分ほど待てばその日のうちに結果が出ます。

ただ、抗原(アレルゲン)を用いた検査なので、強い免疫反応アナフィラキシーショックを起こす危険もあり、それがデメリットです。

 

血液検査の方は、あらゆる抗原(アレルゲン)に対する抗体(特異的IgE)を調べる検査で、IgE-RAST法というものがあります。

こちらは結果が出るまでに1週間ほどかかります。

RAST値という、それぞれのアレルゲンに対してアレルギーの起こりやすさを数値にしたものを知ることができます。

犬に対するアレルギーがあれば、この検査結果は犬に対する数値が高く出ます。

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犬アレルギーの子供が犬と共存する為の工夫

昔は、犬を外に繋いで飼育するスタイルが日本でもよくある光景でした。

現在は室内での飼育が一般的になってきています。

温暖化の影響もあり、外での飼育は犬にも大変過酷です。

ただ、子供と犬の生活スペースを分けるために、屋外飼育も選択肢の1つではあります。

もちろん、屋外と言っても雨や風をよけることができ、気温の調節ができる環境があればという前提です。

また、それができる犬種や健康状態かどうかということも考慮されなければなりません。

人の都合で室内飼育からいきなり屋外に出されるのも犬には大きな負担です。

犬を外に出せばすむということではありません。

 

まずは日常的に工夫できることもありますので、次に挙げてみます。

 

【犬アレルギーの子供の犬対策】

1.室内で犬のいる場所を限定し、犬が出入りしない(アレルゲン物質が飛散しない)部屋を作る。特に子供の寝室には入れない。

2.部屋の換気や掃除をそれまで以上に徹底する。床に落ちている、アレルゲンの付着した被毛や空中に飛散している物質を極力、室内に滞らせない、放置しないということを心がける。

3.カーペットやクッション、その他の布製のものは、ほこりやフケ、被毛などが付着しやすくダニの温床になりやすいので、除去するか減らす。特にカーペットは取りはずすと効果がある。

4.部屋全体の家具や物を最小限にして、常に掃除がしやすいようにすっきりさせる。

5.拭き掃除を週1回は行う。壁も拭くと効果がある。カーテンも週一回洗濯する。コロコロも活用。

6.掃除機はHEPAフィルター使用製品が望ましい。同様にHEPAフィルター使用の空気清浄機のファンをONにして設置する。

7.犬のブラッシングやシャンプーを定期的におこない、清潔にする。

(注意:犬のシャンプーは、頻繁にしすぎると犬の皮膚の皮脂を取り去ってしまい、皮膚のバリア機能が壊れて皮膚炎の原因になります。

あくまでも人間の都合でのシャンプーに過ぎません。

しかも洗っても抗原物質=アレルゲンはすぐに元に戻ります。

シャンプーしなくても温タオルや専用ウェットタオルなどで表面を撫でるように拭くと効果はあります。)

.子供が犬に触れる時にはマスクや手袋、被毛が付着しにくく落としやすい素材の服を着用し、触れたあとには着替えて手洗いする。

9.服薬により子供のアレルギー症状を抑える。また、子供がショック症状に陥った時に対応できるように備える。

 

犬のシャンプーについては↓の記事が参考になります。

 

《HEPAフィルターとは?》

HEPAフィルターとは、空気清浄が求められる分野で使用される高性能フィルターで、High Efficiency Particulate Air Filterの略。

素材は直径110μm以下のガラス繊維のろ紙でできており、JIS規格で『定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルター』と規定されている。

HEPAフィルターはクリーンルームやクリーンブース用の精密空調機器、製造装置の組込み用のファンユニットに使われ、クリーン度クラス10010,000までに対応し、高いクリーン度を要求されるような半導体や液晶、医薬品や食品などに適している。また空気清浄機やエアコンなど家電の排気フィルターとしても搭載されている。

出典元 https://www.weblio.jp/content/high-efficiency+particulate+air+filter

 

《HEPAフィルター使用の空気清浄機》

空気清浄機 コンパクト 花粉 バルミューダ ザ・ピュア

 

《HEPAフィルター使用の掃除機》

Miele ミーレ 掃除機 紙パック式 掃除機紙パック 

努力しても改善しない・深刻な場合はどうすべきか?

どんなに頑張っても、やはり子供のアレルギー症状がひどくて改善しないこともあるかもしれません。

アレルギー症状は個人差があります。

 

アレルギーは、我慢して乗り越えるように頑張ればいつかは慣れるとか治るとかいうものではなく、時に生命に関わるようなこともある病気です。

 

皮膚に蕁麻疹が出ている時には、内臓の粘膜にも同じ現象が起こっていると考えられ、これが気道粘膜に起これば、気道が塞がり呼吸ができなくなります。

喘息発作の最も重度である大発作は、呼吸停止することもあります。

 

子供のアレルギーが重度で、努力しても軽快しないなら、共存について改めて検討すべきかもしれません。

 

子供に薬を飲ませ、症状をだましだまししながらも、犬を手放さずに暮らしているご家庭もあります。

一方で、努力もなされないまま、子供のアレルギーを理由に、犬を迷惑な不要品のように放棄する人もいます。

でも、一緒に暮らしたいからと無理をするのが正しいわけでもありません。

 

犬は一日中ケージから出られず、子供は犬に一切近づくことができず、それはお互いにとって幸せと言えないのではないでしょうか。

犬に肩身の狭い生活をさせるより、いっそ新たな里親さんに託した方がよいという考え方もあると思います。

のびのびできる居場所を作ってあげた方が犬も幸せになれるし、子供も楽になるという発想の転換も必要かもしれません。

これは、当事者以外、どちらが悪い、何が正しいと評価することはできない問題です。

 

私は看護師ですが、呼吸器専門外来で勤務をしていた時、猫アレルギーを持ちながら猫と暮らしている喘息の患者さんが通院されていました。

医師は、その人が体調を悪くするたびに「もう猫を手放した方がいいのでは?」と助言していました。

その人はきちんと内服を守り、指導は素直に受け入れるけれど、猫を手放すことだけには耳を傾けませんでした。

でも、過去に喘息の大発作で呼吸停止して生死を彷徨った経験があり、本当にシビアな問題でした。

医療機関では、動物アレルギーが発覚した時にこのような指導をされることは多いと思います。

その動物を手放すことでおそらく症状は改善します。

このままではいつまでも症状が治らず、生命の危険があるかもしれないという理由で医師も助言するのです。

それは医療者としては当然のことです。

 

ただ、その動物の行き先まで一緒に考えてくれるわけではありません。

 

たしかに、「子供が生後1歳までに2匹以上の犬または猫に接触することにより、その後のアレルギー発症のリスクが低下する」という研究結果もあります。(情報の出典元 https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/195228

このような結果を見れば、将来的に子供のアレルギーにもプラスになるのではないかという希望も持てそうには感じます。

しかし、今、アレルゲンになっている犬を近づけるがよいのか離すがよいのかの決定的な答はなく、個々で判断するしかないのです。

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犬を手放す決断をした時には約束して欲しい

犬との共存を諦める結論にたどり着いて、手放す選択をしたとしても、当事者ではない者がそれを責めることはできません。

なぜ、何度もこういうことを書くかと言えば、そういう人がSNSなどで目につくのです。

子供のアレルギーで切実に里親探しをしている人に、

「子供のためにもなぜもっと頑張らないのか」

「子供のアレルギーは犬を手放す理由にならない」

「薬を飲ませとけばいいではないか」

「自分は治ったからそのうち治るはずなのに無責任だ」

「アレルギーくらい我慢させろ」

などと非難している第三者を見かけることがあります。

 

子供を理由にした飼育放棄があまりにも多いので、どんな事情があろうが捨てるなと責めたくなる気持ちも理解できます。

でも里親探しをしている人は少なくとも責任感があるのではないでしょうか。

子供の病状の深刻さは他人にはわかりません。

 

ただ、犬を手放すのならば、その犬を必ず次の幸せに結びつけて欲しいです。

保健所や愛護センターは、飼育に関するアドバイスができても、里親を見つけてくれるわけではありません。

殺処分を回避すべく職員が全力で取り組んでいる自治体もありますが、飼い主自ら放棄した犬は、基本的に譲渡の道は開かれていないのが現状です。

つまり殺処分の対象になります。

 

あなたの犬は一度はあなたが家族として迎えた犬です。

手放さざるを得ないとしても、安易に保健所に捨てないで下さい。

幸せにその命を全うできるように、里親を見つけて託して下さい。

それが犬を迎えたことへの責任だと思います。

 

まとめ

念願の犬を迎えたのに、子供のアレルギーがわかって飼えなくなったという理由は日常的にあります。

頑張ってみたけど改善できず、途方に暮れている人を責めることは誰にもできません。

よい里親さんを見つけて、その犬の幸せを託す選択も決して間違っていないと思います。

いずれの場合でも、犬も子供も幸せになれる道を家族全員で真剣に検討して欲しいと思います。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

 

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