子供が犬アレルギーを発症したとき・犬との共存は可能?

♦犬を囲む問題

犬との暮らしは本当に楽しいものです。

犬を通して学ぶことも多く、子供が成長していく過程で犬を迎え入れることを推奨する意見もよく耳にします。

犬はよきパートナーになり、命を慈しむという大切な感情を自然に育ててくれる存在になることでしょう。

しかし、犬が人間のアレルギーの原因になるという予期せぬ事態に陥ってしまう話も実に多く、そのアレルギーが大変深刻な場合もあります。

犬アレルギーとはどういうものか、子供が発症した時に犬との暮らしの継続は不可能なのか、継続するにはどうしたらいいかについて考えてみたいと思います。

犬が原因になるアレルギーは多い

犬アレルギーとは、犬がアレルゲンそのものになる、人間に発症するアレルギーです。

【アレルギー反応の参考記事】

犬の目が腫れるのはアレルギー症状?目が腫れる原因と対処法

【かゆみ症状のメカニズム】

犬もつらいアレルギーのかゆみ症状 発症メカニズムと対処法 

動物アレルギーの原因は犬だけに限ったことではありませんが、特に犬は人間の近くで暮らしていることが多いためか、動物アレルギーの中でも代表的なものになっています。

アレルゲンは犬の毛であると解釈されることも多いようですが、厳密に言うとアレルゲン物質は、犬の体内で作られている、唾液腺由来の“Canf1(Canis familiaris allergen 1(Can f1)”という物質(タンパク質)です。

Canf1は、唾液中から毛づくろいなどによって犬の被毛やフケにも移り、空中に飛散してその環境下に広く存在します。

アレルゲン物質が含まれている毛に触れることや、空中に長時間漂い続けるこの物質を吸入してしまうことによりアレルギー症状が起こります。

Canf1は、大変小さな粒子である為に細い気管支にも簡単に入り込むことができます。

そして、呼吸器系のアレルギー症状である、子供の喘息発作を引き起こす原因になります。

アレルギーの症状は、喘息発作の他にも目の腫れや蕁麻疹、アレルギー性皮膚炎による皮膚の激しいかゆみなど様々です。

その重症度も、局所的で軽いもの、アトピーが重症化して全身の皮膚が発赤し剥がれ落ちる「紅皮症」、高熱、呼吸困難などの全身性で重篤なものまであります。

寒冷地の国では、その気候でダニが生育できないのでハウスダストというものは少なく、その代わりに喘息の原因は犬や猫も含めてこのような動物であることがほとんどだそうです。

日本においては、アレルギー疾患の患者の43%がペット飼育中であり、11.2%が過去にペットを飼育した経験があるというデータがあります。

<アレルギー患者家庭における10年間のペット飼育の変遷>

1337名のアレルギー患者について調査した。およそ43%の患者が現在、11.2%の患者が過去にペットを飼育していた。眼, 鼻, 喘息および皮膚症状がペットにより悪化することを自覚している患者は10%である。 ペットを飼育している4人に1人は鼻炎,、喘息を持つ家族がいる。

出店元 https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/48/1/48_KJ00001611341/_article/-char/ja/

また、乳幼児のアトピー性皮膚炎には犬アレルギーの関わりが指摘されているようです。

<乳幼児アトピー性皮膚炎における犬アレルギーの検討>

2歳以下のアトピー性皮膚炎患児368名について自宅及び自宅外での犬の飼育の有無と皮膚症状,検査所見の関係を検討した。

犬皮屑に対するRAST陽性率は,自宅で飼育していれば高かったが父母の実家で飼育されているときにも高いことがわかった。室内飼育の場合、室外飼育よりも陽性率が高かったが自宅と父母の実家で有意差はなかった。

室内飼育の場合、陽性率は生後3カ月以内に高値となりそれ以後陽性率は有意に上昇しなかった。室内飼育の場合、実家を訪れる回数に比例して陽性率が上昇していた。

皮膚症状は室内で飼育した場合、室外で飼育した場合と飼育していない場合に比して有意に重症であり、室内犬を室外に隔離するだけで症状が改善する可能性があると考えられる。

出典元 https://ci.nii.ac.jp/naid/110002406935

犬アレルギーの治療は症状のコントロール

犬アレルギーも他のアレルギーと同様で、子供とアレルゲンとの接触さえ避けられれば症状の出現を予防することは可能です。

さらに薬でアレルギーの症状を緩和することもできます。

子供のアレルギーがどのような形でどんな症状を表すのかによって治療も異なりますが、一般的には抗ヒスタミン薬やステロイド剤などが使用されます。

犬の医療は人の医療と共通していて、同じ薬が使われることが多いです。

【アレルギー治療薬の参考記事】

犬のアレルギー治療薬の種類・ステロイドなどの特徴や副作用

子供の犬アレルギーは症状のコントロールの為の治療であって、アレルギーそのものを治療することはできません。

アレルギーの治療の中には、あえて少量のアレルゲンを体内に入れ、その量を次第に増やして慣らしながら、アレルゲンに対する過敏な免疫反応を軽減させていく治療法=減感作療法(脱感作療法)というものがあります。

しかし、この治療法は犬アレルギーには効果が薄いと言われています。

犬アレルギーを治す治療方法はないので、アレルゲンを遠ざけ症状をコントロールする対策しかないのです。

子供が犬アレルギーを発症した時はとりあえず検査を

子供に皮膚や呼吸器の症状などが出てアレルギーが疑われる時は、その原因のアレルゲン物質を特定する為に検査を受けさせて下さい。

かゆみや喘息の症状はとてもつらいものですが、幼齢の子供や乳児はこの症状のつらさを正確に表現することができません。

子供のアレルギー症状は、周囲の大人がいち早くそのことに気付いて状況をコントロールすることが重要です。

アレルギーの検査には、前腕の内側の皮膚にわずかなアレルゲンを針で刺して、その反応を見るプリックテストと呼ばれる検査と、血液を採取して調べる検査があります。

プリックテストは幼齢の子供にも手軽に行なえ、15分ほど待てばその日のうちに結果が出るのがメリットです。

ただ、抗原(アレルゲン)を用いた検査なので、強い免疫反応であるアナフィラキシーショックを起こす危険があり、それがデメリットです。

血液検査の方は、あらゆる抗原(アレルゲン)に対する抗体(特異的IgE)を調べる検査で、IgE-RAST法というものがあります。

こちらは結果が出るまでに1週間ほどかかり、RAST値という、それぞれのアレルゲンに対してアレルギーの起こりやすさを数値にしたものを知ることができます。

検査の結果、犬に対するアレルギーが判明した場合、アレルゲンである犬との距離を十分とり接触を避けるということが早急な対処方法になります。

犬アレルギーの子供が犬と共存していく為の工夫

昔は、犬を外に繋いで飼育することが日本のよくある光景でしたが、現在は室内での飼育が推奨されそれが一般的になってきています。

温暖化の影響もあって、昔と比較し外での飼育は現実的には犬に大変過酷な環境でもあります。

それでも、幸いにして、あまり外気の影響を受けない、屋内にも繋がるような屋根付きスペースがある場合、そのような屋外飼育も子供のアレルギーを回避する方法の一つではあります。

ただ、それはあくまでも雨や風や強い陽射しを避けることができ、犬が落ち着ける清潔な小部屋を確保できる、犬の健康に配慮できるということが条件と考えて下さい。

そもそも室内飼育すべき犬をいきなり屋外飼育に変えるのは酷であり、犬には大きなストレスになります。

屋外飼育はまず不可能というような犬種や健康状態の犬もいますし、近年の異常気象は、過去に屋外で飼育されていたような犬種でも耐え難い環境であると思われます。

犬を外に出せばすむということではないと認識しておいて下さい。

子供の犬アレルギーに対して、日常的に工夫できること、すべきことを挙げてみます。

【犬アレルギーの子供と犬が暮らすための対策】

1.室内で犬のいる場所を限定し、出入りしない(アレルゲン物質が飛散しない)部屋を作る。特に子供の寝室には入れない

2.部屋の換気や掃除をそれまで以上に徹底する。床に落ちている、アレルゲンの付着した被毛や空中に飛散している物質を極力、室内に滞らせない、放置しないということを心がける。

3.カーペットやクッション、その他の布製のものは、ほこりやフケ、被毛などが付着しやすくダニの温床になりやすいので除去する、あるいは減らす。特にカーペットは取りはずすと効果がある。

4.部屋全体の家具や物も最小限にして、常に掃除がしやすいようにすっきりさせる。

5.拭き掃除を週1回は行う。壁も拭くと効果がある。カーテンも週一回洗濯する。コロコロも活用。

6.掃除機はHEPAフィルター使用製品が望ましい。同様にHEPAフィルター使用の空気清浄機をファンをONにして設置する。

7.犬のブラッシングやシャンプーを定期的におこない、清潔にする。

注意:犬のシャンプーに関しては、あまり頻繁にすると犬の皮膚の皮脂を取り去ってしまい、皮膚のバリア機能が壊れて皮膚炎の原因になります。

あくまでも人間の都合でのシャンプーであり、洗っても抗原物質=アレルゲンはすぐに元に戻るものです。

シャンプーしない時は温タオルや専用ウェットタオルなどで表面を撫でるように拭くと良いです。)

8.子供が犬に触れる時にはマスクや手袋、被毛が付着しにくく落としやすい素材の服を着用し、触れたあとには着替えて手洗いする。

9.服薬により子供のアレルギー症状を抑える。また、子供がショック症状に陥った時に対応できるように備える。

犬のシャンプーについては↓の記事が参考になります。

アレルギー体質の犬におすすめシャンプー!皮膚に優しい6品

 

《HEPAフィルターとは?》

HEPAフィルターとは、空気清浄が求められる分野で使用される高性能フィルターで、High Efficiency Particulate Air Filterの略。

素材は直径110μm以下のガラス繊維のろ紙でできており、JIS規格で『定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルター』と規定されている。

HEPAフィルターはクリーンルームやクリーンブース用の精密空調機器、製造装置の組込み用のファンユニットに使われ、クリーン度クラス10010,000までに対応し、高いクリーン度を要求されるような半導体や液晶、医薬品や食品などに適している。また空気清浄機やエアコンなど家電の排気フィルターとしても搭載されている。

出典元 https://www.weblio.jp/content/high-efficiency+particulate+air+filter

 

《HEPAフィルター使用の空気清浄機》

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《HEPAフィルター使用の掃除機》

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努力しても改善しない・子供の犬アレルギーが深刻な場合はどうすべきか?

犬アレルギーの子供と犬が共存できるようにどんなに頑張っても、やはり子供の症状がひどくて改善しないこともあるかもしれません。

アレルギー症状は個人差があります。

アレルギーは、我慢して乗り越えるように頑張ればいつかは慣れるとか治るとかいうものではなく時に生命に関わるようなこともある病気です。

子供のアレルギーは決して軽視できません。

子供の目が腫れ、皮膚に蕁麻疹が出ている時には、内臓の粘膜にも同じ現象が起こっていると考えられます。

これが気道粘膜に起こると、気道が塞がってしまい呼吸ができなくなります。

喘息発作も、最も重度である大発作は呼吸停止に陥ります。

子供のアレルギーが重度のもので、努力しても症状が軽快しないならば、共存できるのかについて改めて検討すべき時かもしれません。

子供に薬を飲ませ、症状をだましだまししながらも、犬を手放さずに暮らしているご家庭もあります。

一方では努力も特になされないまま、子供のアレルギーを理由に、犬を迷惑な不要品のように手のひらを反して放棄する人もいます。

一緒に暮らしたいからと無理しすぎても、その為に犬は一日中ケージから出られない生活を強いられ、子供は犬に一切近づけず、それはお互いに幸せと言えないのではないかと思います。

犬に肩身の狭い思いをさせるより、いっそ新たな里親さんに託し居場所を作ってあげた方が、犬も幸せになれるし子供も楽になるという考え方もあると思います。

当事者以外が、どちらが悪い、何が正しいと評価することはできない問題なのです。

私は看護師ですが、呼吸器専門外来の勤務をしていた時、猫のアレルギーを持ちながら猫と暮らしている喘息の患者さんが通院されていました。

医師は、その人が体調を悪くするたびに「もう猫を手放した方がいいのでは?」と助言していました。

その人はきちんと内服を守り、それ以外の指導は素直に受け入れるのに、猫を手放すことだけには耳を傾けませんでした。

でもその人は、過去に喘息発作で呼吸停止して生死を彷徨った経験があるので本当にシビアな問題なのです。

医療機関では、動物アレルギーが発覚した時にこのような指導を受けることは多いと思います。

その動物を手放すことでおそらく症状は改善するし、このままでは生命の危険もあるかもしれないという理由で医師は助言するのです。

それは当然の指導だと思います。

ただ、その動物の行き先まで一緒に考えてくれる人はいません。

たしかに子供が生後1歳までに2匹以上の犬または猫に接触することにより、その後のアレルギー発症のリスクが低下するという研究結果もあります。(情報の出典元 https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/195228

このような結果を見れば、共存していれば将来的に子供のアレルギーにもプラスになるのではないかという希望も持てそうには感じます。

しかし、アレルゲンである犬を近づけるがよいか離すがよいかの決定的な答はなく、病状に合わせての個々の判断をするしかありません。

犬を手放す決断をした時に約束して欲しいこと

検討後に、犬との共存を諦める結論にたどり着いて手放す選択をしたとしても、それを第三者が責めることはできません。

時々、子供のアレルギーで切実に里親を探している飼い主さんに向かって、「子供のためにもなぜもっと頑張らないのか」

「子供のアレルギーは犬を手放す理由にならない」

「自分はアレルギーがあったが治った。あなたは無責任」

などと非難している第三者を見かけます。

子供を理由とした飼育放棄があまりにも多いゆえに、個別の事情など聞く気にもならず、簡単に捨てるなと物申したくなる気持ちも理解できます。

でもよく考えれば、里親探しをしているということは責任感があるからとも言えるのではないでしょうか。

そして子供の病状の深刻さは他人にはわかりません。

ただ、犬を手放す決心をしたならば、その犬が必ず次の幸せに結びつくようにして欲しいのです。

保健所や愛護センターは、飼育に関してアドバイスを受けることができても、そこが里親を見つけてくれるわけではありません。

殺処分を回避すべく、職員が全力で取り組んでいる自治体もありますが、飼い主自ら放棄した犬は基本的に里親への譲渡の道が開かれていないのが現状です。

つまり殺処分の対象になるのです。

あなたの犬は、一度はあなたが家族として迎えた犬です。

手放さざるを得ないとしても、安易に保健所に捨てるのではなく、幸せにその命を全うできる里親を探し譲渡して下さい。

それが犬を迎えたことへの責任だと思います。

【保健所収容犬の参考記事】

殺処分の現状と保健所の引き取りの理由 飼育放棄される犬達

まとめ

念願の犬を迎えたにもかかわらず、子供のアレルギーが判明して飼えなくなったという理由はめずらしくありません。

そして重度のアレルギーは子供が生命の危険にさらされることもあります。

共存できるに越したことはないですが、手を尽くしても改善できず、途方に暮れて犬を手放す人を責めることは誰にもできません。

良心的で愛情深い里親さんを見極め、その犬の命を託すという選択も決して間違っていないと思います。

犬も子供も幸せになれる道を真剣に検討して欲しいと思います。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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