卵は、食べ物が豊富にない時代の大事な栄養源でとても高価な食べ物だったということですが、今ではそんなことは想像もつかないですね。
卵はどこでも簡単に手に入るし、どんな料理にでも応用できる便利な食材です。
でも、最近はアレルギーで卵を食べられない人が多く、アレルゲンとしても有名です。
実は私もそういう印象が拭えなくて、犬の食べ物にはあまり取り入れていません。
実際のところ犬に卵は良いのか?を私も知りたく、調べてみましたので、その情報を共有したいと思います。
卵は完全栄養食品
卵は良質な蛋白源、アミノ酸スコアが最高値の100というとても優れた食べ物です。
アミノ酸スコアとは
必須アミノ酸のバランスを数字で表したもの。この数字が高いとアミノ酸のバランスがよく、良質な蛋白源となる。上限は100。
アミノ酸は、体を構成し維持していくのに大事な栄養素です。
必須アミノ酸の一つであるシスチンは、卵に多く含まれていて、免疫力を高めるのにも重要です。
それだけでなく、卵には食物繊維とビタミンC以外の栄養素が全て含まれるのです。
卵は完全栄養食品と呼ばれますが、その理由はここだったわけですね。
卵の脂質レシチンの中には、コリンという物質があるのですが、これは、認知症予防に大きく関与する物質です。
ちょっと話が逸れますが、アルツハイマー病はアセチルコリンという神経伝達物質の不足が大きく関与します。
アセチルコリンの元になるのが、コリンという物質なのです。
アルツハイマーの場合は、このコリンをアセチルコリンに変える酵素が減るのが原因ではあるのですが、コリンを不足することなく摂ることは、脳に必要なことで、コリンのサプリメントまであるくらいです。
レシチンはコレステロールを除去する働きもあり、動脈硬化や心疾患、脳梗塞などを予防します。
また、その他に、卵には鉄分やカルシウムも豊富です。
卵は、黄身と白身を合わせて、全卵として使用することが多いので、栄養素も全卵として考えるのが一般的ですが、卵の黄身、卵の白身、と分けた場合、栄養素は違ってきます。
卵の黄身の栄養素
卵の栄養素のほとんどは、卵の黄身の部分にあります。
卵の黄身は、前述したコリンが多く含まれている部分です。
卵の白身の栄養素
卵の白身の構成は、水分以外のほとんどがタンパク質です。
卵の白身には、リゾチームという物質が多く含まれています。
塩化リゾチームという名前、何となく聞き覚えはないでしょうか?
これは、風邪薬の成分なのですが、実はこの塩化リゾチームは、卵の白身から作られるのだそうですよ。
リゾチームという物質には、菌の繁殖を抑制する作用や、免疫力を高める働きがあります。
そしてリゾチームが、卵そのものを腐敗させずに一定期間保つ役割もしているというからすごいですね。
ところで、生卵を食べる時に、ドロッとした部分、カラザを取り除いていませんか?
私は、何となく食感が嫌なので、きれいに取り除いてしまうのですが、ここに含まれるシアル酸という物質が卵の重要な部分だったのです。
このシアル酸は、
- 免疫力を高める
- ウイルスから体を保護する
- ガンが広がるのを抑制する
などの作用がある物質で、実は捨てたらもったいない!のでした。
ですので、私もこれからはいちいち取り除かずに使おうと思います。
コレステロールの問題
卵=コレステロールというイメージがずいぶん長いことついて回っていたのですが、近年はそれも訂正されています。
これまでは、卵はコレステロールが高いので人が食べるのは1日1個までが推奨でした。
完全栄養食ではあるけど食べすぎると健康が気になる食べ物でした。
でも、その基準は2015年より突然変わり、健常者では(病気がある場合は除く)、食事によるコレステロールの制限はしないという、これまでと全く違うことが発表されました。
2015年2月に米国農務省USDAから一般国民向けに発表されたガイドライン作成委員会レポート[3]において、ACC/AHA同様、食事中コレステロールの摂取と血中コレステロールの間に明らかな関連を示すエビデンスがないことから、これまで推奨していたコレステロール摂取制限を無くすことが記載された。
我が国の「2015年日本人の食事摂取基準」[4]では、健常者において食事中コレステロールの摂取量と血中コレステロール値の間の相関を示すエビデンスが十分ではないことから、コレステロール制限は推奨されておらず、日本動脈硬化学会も健常者の脂質摂取に関わるこの記載に賛同している。
ただし、このことが高LDLコレステロール血症患者にも当てはまる訳ではないことに注意する必要がある。
出典元 日本動脈硬化学会 http://www.j-athero.org/outline/cholesterol_150501.html
コレステロールそのものは、嫌われがちですが悪さをするだけではなく、細胞膜を作るなど、体には必要な成分です。
卵は、コレステロールも含みますが、それを除去する働きのあるレシチンも多く含んでいますので、よほど大量に食べすぎなければ、もう神経質にならなくてよい食べ物になりました。
犬の食べ物に卵は大丈夫?
卵は栄養価の高い食べ物で、結論から言えば、犬の食べ物にしても大丈夫のようです。
ただし、注意点がありました。
アレルギーの問題
卵は人間のアレルゲンとしても有名ですが、タンパク質ですので、やはり犬のアレルゲンになることも多いようです。
卵の黄身には、ビオチンというビタミンが豊富に含まれています。
ビオチンと言えば、最近、人の美容の面でも注目されているビタミンHとも呼ばれるビタミンです。
美肌目的でビオチンの注射とかを外来でやっているところがあるようですしね。
ビオチンは、アレルギー皮膚炎の改善、皮膚や被毛を健康に保つという作用があります。
アレルギーによい成分なのですが、卵アレルギーがあった場合、この恩恵は得られません。
犬も卵アレルギーがあるということを念頭に置き、嘔吐や下痢、皮膚の異常などのアレルギー反応には十分に注意して下さい。
【アレルギー症状についての参考記事】
アビジンの問題
アビジンは、ちょっと聞き慣れない名前ですが、卵の白身を生で食べさせた時に問題となるものです。
アビジンは、上記のビオチンと結合してその吸収を阻害します。
それが続くと体内のビオチンの不足が起こります。
ビオチンが不足すると、ビタミンバランスが崩れ、アミノ酸の代謝に影響して、皮膚炎や消化器症状を起こしたりします。
ただ、これは、卵の白身だけを生食する場合の問題です。
卵の黄身にはビオチンが豊富なので、全卵にするとお互いの成分で打ち消し合い、身体には影響しません。
また、加熱すれば、アビジンはビオチンと結合しません。
犬が白身だけ生食することは、まずないと思いますが、消化の点や食中毒の予防の点からも、卵を犬の食べ物にする時は加熱を原則にして下さい。
卵の消化で一番良いのは、半熟ゆで卵の状態だそうで、固ゆでになるとなぜか消化が悪くなるようですので、ゆですぎない方が良いようです。
加熱しても、卵の黄身のビオチンや卵の栄養素はしっかり残っているので大丈夫です。
卵は1個90Kcalくらいあります。
アレンジしやすくて便利ですが、小さいわりにカロリーも高いので、量にも注意が必要です。
卵の殻にも栄養がある?
卵の殻はそのまま捨ててしまうと思いますが、卵の殻にはカルシウムが豊富で、卵の殻の内側の膜にはコラーゲンなどが豊富です。
それで卵の殻をサプリがわりにする飼い主さんもいるようです。
卵の殻は、食中毒の原因になるサルモネラ菌などの付着の危険性もあり、衛生面が気になりますが、一般に販売されているものは、特殊な洗浄後に店頭に並びます。
下手に家で洗ったりすると、表面の層が剥がれて菌が中に入りやすくなり、かえって保存ができなくなるので、使う直前までは洗ったりしない方がよいとのことです。
卵の殻をカルシウムのサプリにするのであれば、
- 使用後の卵の殻を集めてよく洗う
- 干してお湯で5分ほど煮沸消毒
- 乾燥させた後にすり潰して粉にする
- 根気よく濾して破片などを取り除く
- なめらかなパウダー状にする
といった、大変な手間がかかります。
市販品で、手軽に卵の殻成分を抽出したサプリがあるのを見つけました。
これはどうやらアレルギーに効果が期待できるサプリのようです。
《PROBiO CA(プロバイオCa) 顆粒 犬猫用》
まとめ
卵は犬にとっても栄養価の高い良い食べ物のようです。
でもやはりアレルギーのリスクは高そうな印象もあります。
だけどそれさえクリアすれば、犬の食べ物にも活用はしやすそうです。
私は、卵焼き(もちろん味付けなし)にしてみました。
小さくてもカロリーも高いのでたくさんはあげられませんが、例えばゆで卵を刻んでトッピングとか、そんなふうに使うことはできそうです。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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