犬のアレルギー症状がひどい場合、治療にはやはり薬が欠かせません。
アレルギー治療薬で代表的なものにステロイドがありますが、効果に期待しつつも副作用が不安と抵抗がある飼い主さんも多いように感じます。
そこで今回は犬のアレルギー治療薬の種類や副作用の情報を共有したいと思います。
また、副作用がないことで評判の画期的な治療薬「アポキル」についても調べてみましたので、それも合わせてご説明しますね。
犬のアレルギーの治療に薬がなぜ必要?
この記事は、人に発症する「犬アレルギー」の話ではなく、犬に発症するアレルギーの治療薬の話です。
犬のアレルギーは、大きく分けて食物と環境の2種類があります。
わかりやすい症状は皮膚症状で、かゆみとして現れる症状が最も多いというところも人間のアレルギー疾患と違いはありません。
アレルギー症状が犬の身体のどこにどのように出やすいか、下の記事の中に図解がありますので、宜しければ参考にされて下さい。
【アレルギー症状が出現しやすい部位】
生体には、細菌やウイルスなど、外から入って来る有害なものから体を守る、免疫反応というシステムがあります。
アレルギーとは、本来は有害ではない物質であるアレルゲン(抗原)に対して免疫反応システムが過剰に働いてしまい、不利益をもたらす反応のことを言います。
アレルギーは、出現してしまうと基本的に完治はできないとも言われますが、症状が出ないようにコントロールすることは可能で、問題なく暮らしていくこともできます。
その時の体調や免疫力などもアレルギー症状を誘発する要素なので、健康状態を良好に保つことは大事なことです。
アレルギーの治療薬の種類は何種類もあり、それぞれ違う働き方を持っています。
特に、アレルギー治療では、激しいかゆみ症状をいかにコントロールできるかがとても重要です。
かゆみは、犬にとってとても苦痛な症状です。
それは人に置き換えて考えると想像がつくのではないかと思います。
掻けば掻くほど皮膚のダメージは大きくなり、そこにできた傷から二次感染を起こしたり、更なるかゆみを誘発したりして悪循環です。
かゆみを掻くことでよけいにかゆくなり、掻くことをやめられないという経験をされたことはないでしょうか?
そして症状はますます悪化し、治療が難しくなってしまうのです。
【かゆみを掻くことの悪影響】
このような症状をコントロールするために、治療には薬が必要なのです。
《アレルギー治療のポイント!》
- アレルゲンを除去する
- 薬による治療
- 適切な皮膚のケア
アレルギーの治療を開始する前の検査
アレルギーの治療を開始するにあたり、どの種類の薬が適切なのか、皮膚の状態を知る為のいくつかの種類の検査が必要です。
まず、今ある症状が本当にアレルギー起因の種類のものかどうかの鑑別診断が必要です。
次に、アレルギー症状を引き起こしている抗原(アレルゲン)の種類が何であるかを追及しなければなりません。
それによって、普段の生活の中でもそのアレルゲンをどうやって遠ざけるかの対策を立てなければならないからです。
また、アレルギーのある犬は、甲状腺ホルモンの低下が要因の一つであることもあります。
ですので、全身の健康状態のチェックも必要です。
【参考記事】
アレルギーがあると判明した場合、単純にアレルギーだけの症状ではなく、何らかの感染症が合併している可能性もあります。
アレルギー薬だけでなく、抗生剤や抗真菌剤という種類の治療薬が必要になるかもしれません。
検査の種類には
- 血液検査
- 皮膚掻爬検査による検鏡や培養
- 食物アレルギーの除去食試験
などがあります。
特に、アレルゲンを特定する為の血液検査は、費用も高額になりがちです。
必要な検査の種類や費用、治療計画については、獣医師からよく説明を受けて下さい。
民間のペット保険などに入っている場合、どこまでが保険対象になるかを確認した方が良いと思います。
【アレルギー検査の費用の目安の参考記事】
ペット保険の種類によって、保険がおりる範囲も違っていることがあるからです。
犬のアレルギー治療薬の種類
ステロイド剤
ステロイドというのは、誰でも耳にしたことがある薬の名前ではないでしょうか?
漠然と、副作用が強い薬というイメージがあるわりに、実はどんな薬かよくわからないのもこの薬なのではないかと思います。
ステロイド剤とは、元々、生体にある「副腎」という器官から分泌される、副腎皮質ホルモンと呼ばれるホルモンの一つ「糖質コルチロイド」の成分を人工合成して作られた治療薬です。
ステロイド剤は、アレルギー治療以外にも広い範囲の治療に使われる薬です。
とても強力な抗炎症作用、免疫抑制作用があります。
人の医療でもとても使用頻度の高い薬です。
重度の喘息・ネフローゼやリウマチなどの自己免疫疾患・ある種類の重度感染症・悪性腫瘍・臓器移植後の拒絶反応防止など、注射薬や経口薬などとして、多くの治療に使用される薬です。
重度アレルギーによるアナフィラキシーショックにも使われる薬で、その効果の素晴らしさに医療従事者の中で「魔法の薬」などと呼んだりもしていました。
経口薬のステロイド剤は、プレドニンやプレドニゾロンという商品名のものが多く出回っていると思われます。
ステロイド剤は、使用方法さえ間違えなければその効果は抜群に高く、治療に大きな期待ができる優れた薬なのですが、問題にされるのは長期にわたる使用による副作用の出現です。
~ステロイドの副作用で重要なもの~
消化性潰瘍・糖尿病・骨粗鬆症・クッシング症候群・肝機能の悪化・免疫抑制作用による重症感染症など
ステロイド剤は、犬のアレルギーの治療にも処方されることが多いと思います。
《ステロイドを使用する時の注意》
- 獣医師の指示を守って服用させる
- 服用中の副作用チェックの検査をきちんと受ける
- 勝手に中断したり量を変えたりしない
このようなことを守るのはとても大事なことになります。
ステロイド剤を長期服用していて、いきなり中止してしまうと、副腎機能が元に戻りきれずに離脱症候群という状態に陥りやすくなって危険です。
ですので、中止する時も、医師の指示通りに減量しながら止めるという手段を取ります。
つまり、使い方もやめ方も自己判断せず、医師の指示を仰ぐことが重要な薬です。
外用ステロイド剤
外用ステロイド剤、つまり塗り薬ですが、弱めのものから強力なものまで多くの種類があり、内服薬のように全身性の副作用がないことがメリットです。
しかし、被毛がある犬には塗りにくいので治療に使いづらいです。
そして、病変が広範囲の場合、それに使用するのは困難であり、大きな治療効果が期待できるとも言えません。
外用薬も、やはり長期使用すれば、局所的な脱毛や皮膚が薄くなったり剥がれるというような副作用の可能性もあります。
その為、同じ部位に長く塗り続けるような使い方はできません。
シクロスポリン
シクロスポリンは免疫抑制剤です。
難治性アトピー性皮膚炎の治療に有効な薬で、ステロイドを減量する時に併用されることがある薬です。
この薬は、血中濃度が安定して治療効果が出るまでには少し時間がかかるのが欠点です。
そして、カプセルなので飲ませにくいという難点もあります。
免疫抑制剤ですので、ステロイドと同様に感染症にかかりやすくなるなどの副作用もあります。
でも、長期間の使用が可能な種類の薬なので、ステロイド剤よりも使いやすいと言えます。
インターフェロン
インターフェロンは、インタードッグという商品名のイヌインターフェロンγ製剤注射薬があります。
インターフェロンは、免疫機能を活性化させて免疫系のバランスをとり、アレルギー症状を緩和させて治療する薬です。
安全性が高くて副作用が少ないのが特徴ですが、注射薬なので皮下注射が必要なこと、通常は治療が4週間にわたり、注射のために通院する必要があることなどが欠点になります。
抗ヒスタミン剤
ヒスタミンはかゆみの原因となる物質です。
このヒスタミンをブロックすることで、症状を緩和するのが抗ヒスタミン薬です。
人間のアレルギー治療薬としてもポピュラーな薬だと思いますが、残念ながらこの種類の薬は、人と違って犬に対する治療効果は少ないと言われています。
そのため、犬のアレルギーの治療にこの種類の薬だけを処方することはないようです。
他の薬と組み合わせ、血中濃度を安定させることができれば治療効果もあげられるようです。
その他の種類の治療薬
感染がある場合などは抗生剤や抗真菌剤が処方されます。
さらに必要に応じて甲状腺ホルモン剤、ビタミン剤などの薬が使用されます。
分子標的治療薬・話題のアポキルとは?
アポキル(成分名:オクラチニブ)は、2016年7月に日本でも発売になった薬です。
アポキルの作用は特徴的で、犬のアレルギーの治療においてかゆみという症状だけに選択的に効果を発揮する薬です。
アポキルは、アレルギーに関与する種類の違う複数の物質に対して、その伝達経路を阻害する「ヤヌスキナーゼ阻害剤」という種類の薬です。
その作用によってかゆみを早期に緩和し、即効性があって副作用も少ないという画期的な薬として評価されているようです。
アポキルのような、特定の部分だけに選択的に効果をもたらす薬は、分子標的治療薬と呼ばれ、このような種類の薬は、ガン治療薬の分野でも研究されているのです。
欧米では、日本よりも早い時期から動物医療の臨床で使用されていました。
海外では高い評価を得ていますが、まだ新しい種類の薬であるために長期にわたるデータが十分ではなく、未知の部分も多いかもしれません。
アポキルは、現在、副作用がない薬としてアレルギー性皮膚炎の治療で注目を浴びています。
しかし、アポキルは、アレルギーそのものを治療するという種類の薬ではありません。
薬ですから副作用も全くないというわけではなく、嘔吐や下痢などの症状が現れることもあるようです。
ただ、アレルギー性皮膚炎の治療でもっとも重要なかゆみのコントロールが優れているという点が、今後の治療にますます期待できる薬ではないかと思われます。
かゆみ症状を効果的に緩和できれば、掻くことによる皮膚のダメージが予防でき、患部の安静を保てることでバリア機能の再生が図れるようになるからです。
《アポキルを詳しく見る》
薬を上手に飲ませるコツ
犬に薬を飲ませるのも慣れないと難しいものです。
病院などでは、基本に従った飲ませ方で、あざやかに手早く飲ませてくれますが、家ではなかなかそうはいきません。
《基本の薬の飲ませ方》
- 犬を座らせて顎を持って上を向かせる
- 鼻と上顎を持って開口させてから素早く喉の奥に薬を入れる
- 口を閉じて喉を撫で、ごくんと飲み込ませる
言葉にすると簡単そうですが、口の中や喉の奥に入れること自体がなかなかうまくいかないことが多いのではないでしょうか。
手間取っていると、犬に警戒されてしまい、「薬を飲まされることは不愉快なこと」というイメージを植え付けてしまいます。
フードに混ぜて、気付かず一緒に食べてもらえるような種類の薬だと良いのですが、薬だけが目立つようだと、それをよけて残したりするので確実な服薬にはなりません。
比較的うまくいくのが、犬が好きな味のペースト状のおやつや、缶詰などの柔らかいものに薬を包んで食べさせる方法ではないかと思います。
私は愛犬にこの方法を使っていて、最初はサツマイモやかぼちゃを潰したものを活用していました。
最近では、おもちゃに詰めるペーストタイプのチーズやヨーグルト味のオヤツに包むと、喜んで何の抵抗もなく食べてくれます。
でもペーストが少なすぎたり包み方が不十分だと、薬だけを吐き出してしまうこともあるのでコツが必要です。
粉薬だと、少量の水に溶いてシリンジやスポイトで口に入れるという方法もありますが、少量のヨーグルトや蜂蜜に混ぜて舐めさせるという方法で与えている飼い主さんも多いようです。
ただ、薬の種類によっては、勝手に錠剤を砕いたり、カプセルから出してはいけない薬もあるので、服用方法について、事前に獣医師に確認を取って下さい。
《簡単・確実な投薬補助トリーツ》
こちらは犬用の投薬補助トリーツで、やわらかい形状で簡単に薬を包みこみ、隠すことが可能です。
犬が喜んで食べる味になっているので、気づかれずに投薬も簡単にできるようです。
このようなものを利用するのも一つの手段だと思います。
まとめ
犬のアレルギー性皮膚炎の治療では、かゆみのコントロールが大変重要でそのために薬が必要です。
ステロイドあるいはシクロスポリンという、免疫を抑制する薬が使われることが多いですが、そこにアポキルのような薬が新たに加わると、治療のバリエーションが広がることにも期待ができそうです。
かゆみは本当につらい症状なので、飼い主さんがアレルギーに早く気づき、犬が一日も早くかゆみから解放されるようにしてあげて下さい。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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