犬のてんかんの治療の目的は発作を予防することです。
私の愛犬もてんかんを持っており普段から薬を継続していますが、発作の可能性は0ではありません。
いざという時、自宅で対処できるようにうちは発作止めの座薬を処方してもらっています。
座薬の入れ方やタイミング、副作用など、慌てないように確認しておいた方が良いので、今回は発作時の座薬の使い方についてここで情報共有したいと思います。
犬のてんかんの治療の基本は発作の予防
犬のてんかんは二通りあります。
発作の原因になる病気や外傷などがはっきりとしている二次的な症候性てんかんと、検査をしても発作の原因が特定できない特発性てんかんがあります。
他にも、てんかん発作に似た意識消失・痙攣などの症状を表しながらも脳には異常がない内科的な病気もあります。
てんかん発作を起こしたら、その症状は本当に脳から起こるてんかん発作なのか?てんかん発作であれば脳のどこに原因があるのか検査し、治療を開始することになります。
【犬のてんかんの診断までの流れと費用など】
犬のてんかん治療は人間の治療薬ほどは選択肢がないですが、何種類の薬の選択ができます。
薬の効果を見る為の「血中濃度」という検査や、副作用を調べる肝臓の検査などを定期的に行いながら、症状や体質に合う薬を見つけ、長期にわたって継続しながら発作を予防していきます。
てんかんの薬を飲み始めると二度とやめられなくなるから飲ませない、副作用が強いからできるだけ薬を飲ませない、という飼い主さんも多いようなのですが、それは誤った認識です。
副作用を恐れてできるだけ薬を使いたくない気持ちもわかりますが、てんかんは発作を起こした頻度や発作のレベルがその後の病状を左右します。
薬をやめられないと言われる本当の意味や、そもそもなぜ薬を継続する必要があるのかについて、是非、正しく理解して頂ければと思います。
犬のてんかん治療は日々の確実な内服が基本ですが、どんな薬でも副作用は完全に避けられるものではないです。
そもそも薬とは、使用方法によっては毒にもなる物質です。
それでも、犬に穏やかな時間を過ごさせる為に最も大事なことは、決して自己判断せずに正しく薬を使うということです。
【薬の中断のリスクについて】
てんかん治療に使う座薬とその効果について
薬の種類と量が体に合い、薬の血中濃度が安定してくると、大部分の犬は発作がほとんど見られなくなるか、その頻度が減ると思います。
それでも発作を起こしてしまうことはあるのです。
その時にすぐに病院に運ぶことができて、即効性のある注射薬を使用できればよいでしょうが、病院まで距離があるとか病院が開いてない時間ということもあるでしょう。
てんかんを持つ犬の飼い主さんにとって、それは共通の不安の種ではないかと思います。
てんかん発作そのものは、大抵、短時間で自然におさまることが多いです。
でも、それを何度も繰り返したり(群発発作)、おさまりきれないまま長時間に渡る発作(重責発作)に発展していくなど、深刻で危険な発作もあります。
このようなパターンの発作は脳へのダメージが大きく、その後に後遺症を残すこともあれば、命が危険にさらされることもあります。
【犬のてんかんの危険な発作の種類について】
自宅でそのような発作を起こした時、病院のように即効性のある注射薬が使用できません。
なので注射薬と同じ成分の座薬で対応するのです。
発作のタイミングで使用する座薬は、一般名がジアゼパム、商品名はダイアップという座薬です。
獣医師に処方してもらってストックしておき、入れ方や使うタイミングなどを覚えておくと、飼い主としてはいくらかでも安心できると思います。
ダイアップ(ジアゼパム)は、ベンゾジアゼピン系抗不安薬・催眠鎮静剤に分類される薬です。
この薬は、人用としてもセルシンやホリゾンという名前で注射薬や内服薬があります。
その成分でできたダイアップ座薬は、人の臨床でも実に広い範囲で使用されている薬であり、特に小児のてんかん発作や熱性けいれんといったタイミングで使用される薬です。
座薬は直腸から素早く吸収されるので、内服薬に比べて効果の出現が早く、ダイアップ座薬を使用して15分~30分で鎮静効果が期待できるようになります。
これは人の場合の入れ方の参考ですが、ダイアップ座薬を1回入れた後、8時間後に2回目のダイアップ座薬を入れることで、効果の継続が24時間以上得られると言われています。
【てんかんの治療薬と副作用の参考記事】
座薬を使用するタイミング
この座薬は、いくら効果が早いとは言え注射薬のような即効性は残念ながらありません。
たとえ発作が始まったタイミングで座薬を入れることができても、その効果が得られる頃には、普通の発作であれば大抵はもうおさまっていると思われます。
それに、てんかん発作の最中は痙攣で体動も激しく、便失禁などもあるので、座薬の入れ方もタイミングを見つけるのもかなり難しいと思います。
発作時に座薬を入れようとして抑えつけたりするのは、よけいな刺激を与えることになるので好ましくないことです。
発作時の座薬の入れ方ではおそらく難航すると思います。
もしも無理と判断した場合、格闘することはしないで少しタイミングを待った方が良いです。
発作が鎮まるタイミングを見計らって座薬を使うことも、決して無意味なことではないのです。
このタイミングで座薬を使う意味は、もう鎮まりかけたその発作に対しての効果ではなく、その後に続けて起こる発作(群発発作)や重なって起こる大きな発作(重責発作)を予防するのに有効になるのです。
もちろん、座薬を使うべきかどうかは飼い主さんの判断によります。
今の発作がおさまった後にも続けて起こるかもしれないという予測ができるのならば、予防的な座薬の入れ方は懸命だと思います。
私は、愛犬が発作を起こした時には迷わずに座薬を使います。
座薬の入れ方のコツ
ダイアップ座薬には、4mg・6mg・10mgと、含有量の違うものがあります。
犬の体重によって使用量が違い、一回量や入れ方、タイミングについては処方時に指示があるはずなので改めて確認して下さい。
小型犬の一回の使用量は、一番少ない量の座薬の半分という指示になるかもしれません。
もし、1/2個という指示の時は、外包を開けずにそのままの状態ではさみで切る方が、表面が滑ることがなくて切りやすいです。(抵抗なく簡単に切れます)
そして外包を開けて中身を出して下さい。
座薬は、中身を出して手に持っているうちに、体温で表面が溶けて柔らかくなり、ぬるぬるして持ちにくくなって来ますので滑って落とさないように気を付けて下さい。
使い捨てのビニール手袋をはめておいた方が、座薬を持ちやすく、入れ方もスムーズになります。
通常、1個の状態で使用する時の入れ方は、先端の丸くなっている方から入れます。
半分に切ったものは入れやすい方(持ちやすい方)からの入れ方で大丈夫です。
入れる方の先端を手で軽く擦り、体温で表面を溶かしてなめらかにするか、オリーブオイルやベビーオイルを先端に少量つけると潤滑剤になり、入れ方もスムーズになります。
または少し水で濡らしても良いです。
座薬の入れ方は、差し入れてからもう少し奥に押し入れる、というイメージで、肛門の入り口より気持ちだけ深く入れます。
そして、座薬が出てこないように肛門をしばらく押さえておきます。
この、押さえておくというのがなかなか難しいのですが、コツは押さえるというよりも、肛門の左右を指で軽くつまみ寄せて、肛門が開かないようにしばらく塞いでおくという感じです。
無理をして、肛門部を爪などで傷つけないようくれぐれも気を付けて下さい。
入れ方はうまくいったとしても、てんかん発作で全身に力が入り、便失禁と一緒にすぐ出てきてしまうということもよくあることです。
その時は、改めてタイミングを見計らって入れてみて下さい。
座薬が溶けて吸収され始める30分くらいは、入れ方はうまくいっても気づいたら押し出されていたということもあるので、気を付けて観察していて下さい。
私も愛犬の発作で座薬を使った時は失禁で押し出されてスムーズにいかなかったことがあります。
それは「早く入れなくては」という焦りもあるからです。
この発作を止めようとすると焦りますが、そうではなく、次の発作を抑えるのが目的というように考えると、少し冷静になれると思います。
最近はほとんどないのですが、てんかん発作の前兆ではないかと判断した時に、速やかに予防的目的で座薬を使うようにしています。
座薬の副作用と使用にあたって注意すること
ダイアップ座薬の成分であるジアゼパムは、比較的安全な薬とされて使いやすい薬です。
量については制限がある薬で、1日1mg/Kgを越えて使用しないようにしなければなりません。
使用量については、獣医師の指示を守り、その指示を越えて使用することのないようにして下さい。
この薬の一般的な副作用としては、眠気やふらつき、朦朧状態、興奮などが挙げられています。
その他にも、ジアゼパムの副作用には依存性があります。
ただ、ダイアップ座薬に関しては、継続的な使用をするわけではなく、発作時のタイミングという単発的な使用になるので、依存性という副作用が問題になることはまずないと思われます。
ダイアップ座薬は、筋肉の収縮を抑制する効果がありますが、それが副作用にもなるもので、効きすぎて呼吸が抑制されるという副作用は重要になります。
呼吸抑制は呼吸がしにくくなることで重要な副作用なので、ダイアップ座薬を使用した時には呼吸状態に十分注意して下さい。
また、座薬は冷所保存であることが多いので、冷蔵庫で保存されるお宅がほとんどではないかと思います。
ダイアップ座薬の場合、一応、遮光が必要ですが、室温保存OKです。
しかし、極端に高温になるような場所では、たとえ遮光していても、室温OKでも、やはり変質・変形してしまいます。
ダイアップ座薬は50℃以上で溶けます。
間違っても車の中に置いたりしないように気を付けて下さい。
遮光とは、箱やアルミホイルなどに包んで光を避けることです。
室温というのは、1~30℃の範囲と考えて下さい。
もし適切な場所がないようであれば、やはり冷蔵庫保存が確実です。
私は冷蔵庫のドアポケットに保管しています。
まとめ
犬のてんかんは、どんなに治療をおこなっていても、いつ発作を起こすかわからないという不安が尽きないと思います。
夜間にも対応してもらえる医療機関などをチェックしておくと共に、発作時の座薬を処方してもらい、タイミングや入れ方、副作用も覚えておくと飼い主さんの安心にも繋がります。
発作のタイミングで座薬を入れることは、飼い主さん側にも焦りが生じたりして思ったより難しいです。
普段から、頭の中でシュミレーションしておき、座薬を入れる際の必要物品を取りやすいように揃えておくことをお勧めします。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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