しこりとは皮膚の一部が盛り上がり硬くなっている状態のことです。
しこりは、正体がわかるまであまりいいイメージのものではないかもしれません。
でも、しこりの原因について多少でも知識があれば、いたずらに不安な気持ちを抱くことなく対処できるのではないでしょうか。
今回は、犬の尻尾のしこりの原因について情報共有したいと思います。
しこりは腫瘍の可能性が大
犬のしこりで考えられるものはざっくりと次のようなものです。
- 表皮嚢胞(ひょうひのうほう)
- 老化によるイボ
- ウイルス性や紫外線など外的刺激による
- 腫瘍
表皮嚢胞とは、皮膚の下に袋状のできものができ、そこに皮脂などが溜まってくるもののことを言います。
これは人にも多い粉瘤と呼ばれる腫瘤のことで、外科や皮膚科で局所麻酔で摘出されることも珍しくありません。
しこり=腫瘍と捉えるのが一般的だと思いますが、その種類は実に多いです。
《上皮細胞系の腫瘍》
乳頭腫・扁平上皮癌・基底細胞腫・腺癌
《真皮・脂肪組織の腫瘍》
線維腫・線維肉腫・肥満細胞腫・脂肪腫
そして腫瘍は、良性のものと悪性のものに分類されます。
悪性の腫瘍はガンのことです。
- しこりの色や大きさ
- 触った時の硬さや可動性(動くものか固定されて動かないか)
- いつからできてどんな経過か
診察では、以上のような情報から、どのような腫瘍かの大まかな検討がつけられますが、それだけではしこりが悪性か良性かという確定診断はできません。
でも飼い主さんが一番気になるのは、まさにそこなのではないかと思います。
しこりが悪性であるかどうかをはっきりさせるために、細胞診という検査があります。
細胞診は、しこりに直接細い針を刺し、細胞を吸い上げて少量採取します。
採取した細胞を薬剤で染めて、顕微鏡下で確認すると、良性か悪性かの診断がつきます。
ただし、採取することができる細胞も、針を刺した一部分だけですので、それがたまたま正常な部分であれば良性ということになってしまいます。
そのようなことを考えるとこの検査も100%ではないのですが、悪性かどうかを確認する有効な検査の1つです。
尻尾にできる特徴的なしこりは肛門周囲腺腫が多い
犬のしこりの中には、特定の場所に好発するものもあります。
肛門や尻尾の周辺に好発するしこりには、ある病気が関係しています。
その病気は肛門周囲腺腫と言う病気です。
肛門周囲腺腫は良性の病気
肛門周囲腺腫とは、肛門周囲、尻尾の付け根、包皮外側などに、硬いしこりとして散在してできる良性腫瘍です。
でも、この病気にとても似ていて見分けがつきにくい悪性の肛門周囲腺ガンという病気があるので要注意です。
良性の肛門周囲腺腫の方は、男性ホルモンが関与するしこりであり、未去勢のオス犬に多く発生することがよく知られている病気です。
去勢しているオス犬やメス犬にはほとんど発生することがなく、大部分が未去勢の8歳以上の高齢のオスに発生する病気として有名です。
ちなみに、メス犬の肛門周囲や尻尾の付け根に同じようなしこりができた場合、こちらは良性腫瘍ではなく、悪性腫瘍である可能性が高く、肛門嚢アポクリン腺ガンという病気に注意が必要です。
肛門周囲腺腫の症状
肛門周囲や尻尾の付け根、または尻尾に、黒っぽいつるんとしたしこりとして発見されます。
しこりは一ヶ所だけでなく、肛門から尻尾までで同時に数か所発生することもあります。
肛門周囲腺腫それ自体は良性のものではありますが、大きくなってくると、しこりの表面に潰瘍ができたりそこから出血することもあります。
しこりが破れたところに感染を起こしたり、大きくなりすぎて肛門を塞いでしまったり、肛門括約筋の機能を障害してしまうことなどもあります。
悪性ではなくてもそのようになってしまうと、排便障害など二次的にいろいろな影響が起こるようになるので、治療は必須です。
治療
肛門周囲腺腫の治療は、基本的に外科的に切除をおこなうことになります。
ただ、肛門周囲の皮膚は伸び縮み可能な余裕が必要な部位でもあり、大事な肛門括約筋があるので、大きく切除することはできないのです。
尻尾の皮膚も見ての通りで伸縮する余裕がほとんどなく、大きなしこりになってしまうと切除して縫い合わせることも困難です。
尻尾や肛門周囲のしこりは、大きくなるほど切除が難しく、肛門括約筋を傷つけてしまうリスクも上がります。
ですので、しこりは小さいうちに切除した方がよいと言えるでしょう。
また、男性ホルモンの影響を受けるので、再発の可能性もあります。
その為、これを機に去勢手術をおこなうことも多いようです。
悪性腫瘍が尻尾に発生することもある
悪性腫瘍=ガンは、周辺の組織に癒着していることが多く、広がる時も周囲に浸潤しながら広がっていきます。
ガンは良性腫瘍と違って形がはっきりせず、腫瘍の境目が不明瞭という特徴があります。
悪性腫瘍は全身のどこにでもできますし、もちろん尻尾も例外ではないです。
さらにガンは短期間で大きくなります。
細胞診は診断の指標にはなりますが、先述したように完璧な検査というわけではありません。
ガンを本当に正確に診断するには、組織を摘出切除して検査しなければわからないのです。
腫瘍は、たとえ良性でも大きくなることはあるし、腫瘍の性質によっては、今が良性であっても長い年月のうちにガン化する可能性があるものもあります。
しこりが悪性である可能性が疑われる場合、発見された時点で、治療は早期の摘出手術になると思います。
悪性らしきしこりが尻尾にある場合、しこりの部分切除が難しく、尻尾そのものを切断しなくてはいけないようなこともあるようです。
摘出手術が根治術ではあるけど、その犬の年齢や体調によっては麻酔がかけられないなどもあるでしょう。
他の治療としては、放射線や抗がん剤治療、免疫療法、緩和治療などになり、どの治療を選ぶかは、最終的に犬にとってベストな選択のできる飼い主さん次第です。
いずれの場合も、しこりの正体をはっきりさせるためには早めの検査が大事です。
参考:鼻のしこりが特徴的な病気
参考ですが、尻尾以外で、しこりを特徴的症状とした病気もあります。
クリプトコッカスという真菌(カビ)が犬に感染して起こる病気では、鼻にしこりができるのが特徴です。
この真菌は、鳩の糞の中などに多く存在していて、空気中などにも普通に存在しています。
犬が健康な場合、この病気を発症することはありません。
でも、犬の体調が悪い時、免疫低下の病気などがある時などは、ちょうど風邪のような症状で発症することがあります。
そして重症化した場合、肺炎などを起こして全身状態が悪くなり、失明や痙攣、麻痺といった重篤な症状が現れることもあるので、注意しなければなりません。
まとめ
犬の尻尾のしこりは、良性の場合、悪性の場合があります。
良性でも悪性でも、しこりは大きくならないうちに対処する方が治療しやすく、犬の体のダメージも少なくてすみます。
尻尾のしこりが悪性腫瘍だった場合、切断もやむを得ない場合があり、対応が遅れると選べる治療方法も狭くなります。
異変に早く気づくためには、やはり普段から犬の体を触って健康な状態を把握しておくということが何よりも効果的な健康診断だと思います。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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