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【犬の口の中にできる腫瘍】良性腫瘍と口腔癌の種類について

♦眼/口/耳/鼻/呼吸器
この記事は約8分で読めます。

犬の口の中にできる腫瘍には、良性も悪性も含め複数の種類があります。

口は食事をするのにとても重要な器官です。

犬のQOL(生活の質)を保つためにも、早期治療が望まれます。

今回は、犬の口の中の腫瘍について、皆さんと情報を共有したいと思います。

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犬の口の中にできる良性腫瘍の種類

犬の口の中にできる腫瘍には、生命に影響のない「良性腫瘍」もあります。

口の中の良性腫瘍で頻度が高く代表的なものは、次の2つです。

 

  1. エプリス
  2. 乳頭腫(ウイルス性)

 

エプリス

最も多く見られる良性腫瘍はエプリスです。

口の腫瘍の中の30%近くがこの腫瘍とされています。

 

エプリスは歯肉腫のことで、その名の通り歯肉にできる良性腫瘍です。

 

7歳以上の高齢の短頭犬種に多く、歯周病の併発や歯石が蓄積しているなど口の中の状態が悪いパターンが多いことから、口腔内炎症なども誘因になると考えられています。

 

エプリスはさらに詳細に

 

  • 線維性エプリス
  • 骨性エプリス

 

という種類に分類されます。

 

もう1種類、棘細胞性エプリスというものがありますが、これは他と大きく病態が異なります。

 

棘細胞性エプリスは、転移などはないものの、周囲の組織に広がり骨を溶かしていきながら進行する腫瘍です。

進行によって顎骨は変形し、良性でありながらも悪性腫瘍に似た経過を示す要注意の腫瘍です。

棘細胞性エプリスは他の2種類のエプリスと比較して成長が早く、再発も多く見られます。

治療では、広範囲に顎骨や歯を切除する必要もあります。

 

このような特殊性から、近年はエプリスの中の1つというよりも「棘細胞腫性エナメル上皮腫」という名称でエプリスとは別に分類されるようになりました。

乳頭腫

乳頭腫とは、皮膚乳頭腫と呼ばれる小さなイボのことです。

イボの原因はイヌパピローマウイルスです。

 

イボは、ピンク色~肌色の目立たない小さなものから、大きくなり集合体になってカリフラワー状になるものもありますが、通常はせいぜい1㎝以下の大きさです。

 

乳頭腫は免疫力との関係があり、幼犬・病気療養中で免疫が弱っている犬・老犬に多く発生します。

しかし老犬にはウイルス起因以外のイボもできやすく、悪性腫瘍の可能性も高いので注意しなくてはいけません。

 

乳頭腫は、口の中や唇、まぶた、頭、背中、足など、皮膚や粘膜のどこにでも発生します。

パピローマウイルスは、様々な動物の中に存在するありふれたウイルスで、人では「ヒトパピローマウイルス」がこれに当たります。

そしてヒトパピローマウイルスの中には150種類以上もの型があります。

そのうちの一部の型が子宮頚がんの原因ということは、今は広く知られていますね。

ヒトパピローマウイルスの中には、他にも性行為感染症の1つである尖圭コンジローマというイボの原因になるものもあります。

 

イヌパピローマウイルスはヒトパピローマウイルスとは別の物で、人への感染を起こすことはありません。

しかし犬同士の間では感染するウイルスです。

 

乳頭腫が口にできている犬と何もない他の犬は、

 

  • フードボウルを共有させない
  • おもちゃを共有させない

 

など感染予防の為、接触に注意することが必要です。

 

乳頭腫は良性腫瘍です。

対処せずともイボが自然に消失することもあります。

しかし、多発して食事がしにくくなったり、稀に悪性の扁平上皮癌である場合もあります。

大きさや色の変化に十分注意して観察する必要があり、切除手術の対象になることもあります。

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犬の口の中にできる悪性腫瘍・口腔癌

犬の口腔癌は、口~顎にかけてできる悪性腫瘍を指します。

口腔癌には次のような種類があります。

 

  1. メラノーマ(悪性黒色腫)
  2. 扁平上皮癌
  3. 線維肉腫

 

その名称は、癌がどの細胞から発生したのかによって分類されています。

メラノーマ(悪性黒色腫)

口腔癌の中で発生頻度の最も高い悪性腫瘍は、メラノーマ(悪性黒色腫)です。

メラノーマは、皮膚の色素を作るメラノサイトという細胞由来の悪性腫瘍=癌で、口だけでなく眼球にも発生します。

特に口腔にできるものは悪性度が高いとされ、治療が困難で予後が悪いハイリスクの癌です。

 

 

扁平上皮癌

扁平上皮癌は、扁平上皮細胞から発生した癌です。

扁平上皮細胞は皮膚を構成する細胞の1つで、皮膚だけでなく粘膜組織の中にも散在し、身体中に分布していて、口腔内にも見られる細胞です。

 

扁平上皮癌は、メラノーマの次に発生の多い悪性腫瘍です。

扁平上皮癌は歯肉部に好発します。

その他、舌や扁桃など口の奥にも見られます。

扁桃に発生した扁平上皮癌は、リンパや他の臓器への遠隔転移も高率で起こるのが要注意で、早期治療が望まれます。

発生した部位には、しこりのような腫瘤ができ、爛れたり潰瘍になったりして口内炎のように見えることもあります。

線維肉腫

線維肉腫は、線維芽細胞から発生した癌です。

線維芽細胞は、創傷の治癒やコラーゲン生成に関与する細胞で全身に分布しています。

口腔内では、歯肉部に多くしこりとして発生します。

 

腫瘍の成長は早く、急速に大きくなり上顎まで拡大、高い確率で骨浸潤(骨まで広がる)します。

 

線維肉腫の遠隔転移は少ないとされますが、広範囲に広がりやすく、手術による切除では、顎を含めて広範囲切除が必要になる癌です。

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口の良性腫瘍と癌の区別は難しい

口腔内腫瘍は、腫瘍が口の奥にある場合などは特に確認することが困難です。

扁桃や軟口蓋(上顎)などにあって大きさも症状も目立たない初期など、なかなか発見しにくいのではないでしょうか。

腫瘍が大きくなるにつれてあらわれるのは、次のような症状です。

 

《症状》

食べにくい・食べるのが遅い・流延(よだれ)・飲み込みが悪い・口臭が強い・出血など

 

この症状は、良性も悪性も共通しています。

なので、症状だけではどちらかはわかりません。

もし腫瘍が肉眼で確認できるのなら、その形状から良性腫瘍か悪性腫瘍かの推測は可能かもしれませんが、両者が似ている場合もあり外観では判別できません。

 

悪性腫瘍か良性腫瘍か鑑別するためには、切除して病理検査をおこなう必要があります。

 

出血や口臭などの症状は、歯周病でも同じ症状があります。

なので、歯の問題と考えてしまう可能性が高く、飼い主さんが早期に口腔癌を疑うのも難しいと思います。

 

口腔癌は悪性度の高い腫瘍です。

できる限り初期に発見することが望ましいです。

 

良性腫瘍の方は、癌とは違って進行も遅く転移などはないですが、食事の妨げになってQOLを低下させたり、腫瘍に感染が起こることもあります。

 

症状があれば良性であっても改善してあげて下さい。

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口腔腫瘍は良性でも切除手術する

口の中の腫瘍が悪性の場合、根治治療は切除手術です。

 

口の悪性腫瘍=口腔癌は悪性度が高いものが多いです。

骨への浸潤や肺などの多臓器への遠隔転移も起こしやすいです。

できるだけ早期のうちに病巣を摘出し、放射線治療や化学療法(抗癌剤)を併用した治療が基本です。

 

扁平上皮癌の場合、切除さえすれば、口先に近い場所に発生した腫瘍の方が予後が良いと言われています。

さらに扁平上皮癌は、放射線治療の効果があがりやすい癌の1つでもあるようです。

 

骨浸潤の多い線維肉腫は、顎までが切除の対象になることもあります。

 

メラノーマ(悪性黒色腫)は、遠隔転移やリンパ節転移が多く悪性度の高い癌です。

手術は骨までの切除が必要になることが多く、発見時にはすでに手術困難であることも少なくありません。

 

悪性腫瘍の場合は転移の有無にもよりますが、進行していれば例え骨や顎まで大きく切除したとしても予後はよくないです。

 

口の中にできた腫瘍が良性であっても、切除手術がおこなわれることが多いようです。

口腔は食事に関わる器官であり、腫瘍の数や大きさ、発生場所によっては、良性であっても食べることの妨げになります。

切除することで犬も食事が楽にできるのです。

ただし良性腫瘍は転移や浸潤がないので、腫瘍そのものを摘出すれば十分でしょう。

良性腫瘍は口腔癌のように急速に成長しませんが、腫瘍が大きくなってしまってからでは切除も大がかりになるので、やはり早期に切除した方が負担も少なくてすみます。

 

広範囲に浸潤し悪性腫瘍のような病態を表す棘細胞腫性エナメル上皮腫に限っては、顎まで広範囲に切除する手術が必要です。

 

良性腫瘍でも、摘出した後に再発することはあります。

しかし再発した腫瘍が前回と同じものとは限りません。

癌が発症している可能性もありますので、術後も観察が必要です。

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まとめ

犬の口の中の腫瘍は、良性腫瘍も口腔癌も基本的に摘出する治療です。

口の中の異常は発見しにくく、初期症状では気づかず健診などで偶然に発見されることもあるそうです。

我が家の愛犬もそうなのですが、口を触られるのを嫌がる犬は多いです。

普段から口腔ケアなどで口を触られることに慣らしておくことは、本当に大事だと思います。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

 

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