犬は発情期になると、雄も雌も子孫を残すためにひたすら本能に従った行動をとります。
その様子はいつもの愛犬と違い、飼い主さんも対応に困ることがありますよね。
特に雌犬の発情期ははっきりしていて、避妊手術をおこなっていない場合は決まった周期でやってきます。
特徴的な行動も見られるので、雌犬の飼い主さんはそれを理解した上で上手にその時期を過ごせるようにしてあげて下さい。
雌の発情期は3段階に分かれている
犬の初回の発情期は、生後6~7ヶ月くらいから見られます。
中には1歳を越えてようやく迎える犬もいます。
気候が温暖な方が発情期も早く起こりやすいと言われますが、最近は気温の安定した室内で暮らす犬が多くそれほど季節は関係なさそうです。
雌の発情期はヒートとも呼ばれ、発情前期・発情期・発情後期の3つの期間に分かれています。
雌の発情期に見られる特徴的な行動
発情期が近くなると、雌の体には特徴的な変化が現れます。
陰部が通常の3倍近くも膨らむこともあり、その時期が近いのがわかります。
陰部の膨らみを見て、何か異常があるのでは?とびっくりする飼い主さんもいるようです。
私も、うちの犬が避妊手術をする前のヒートの時は大変心配しました。
気を付けて観察していると、発情期は予測ができると思います。
陰部からの発情出血は、犬が自分で舐めてしまうと思います。
小型犬の場合などは量も少ないので、飼い主さんが出血そのものになかなか気づかないこともあるかもしれません。
ただ、しきりに陰部を舐めるという行動は目立つはずです。
また、おしっこの回数が多くなります。
普段はきちんとトイレのしつけができているのに、別な場所で粗相をするというような行動もこの時期は見られがちです。
その他にも次のような行動があります。
- ソワソワして落ち着きがなくなり神経質になる
- 食欲が異常に亢進する、あるいは食べなくなる
- 興奮し吠える、鳴き叫ぶような声を上げる
- 雄犬がいるとその近くに行こうとする行動
- 気性が荒くなり反抗的で飼い主の指示を聞かない、威嚇するなどの行動がある
- 不安そうで元気がなく散歩を嫌がる
- 飼い主に甘えてくる
- クッションや人間の手などにマウンティング(腰振り行動)する
- 偽妊娠、想像妊娠と呼ばれる行動
このうち偽妊娠以外の行動は発情前期~発情期にかけて見られやすいです。
偽妊娠は本来の妊娠期間である発情後期に見られます。
偽妊娠はホルモンバランスによるもの
偽妊娠という行動は、俗に想像妊娠とも呼ばれることが多く誤解されがちです。
でも、人間のように犬が妊娠を強く望むことで起こるのではありません。
犬も妊娠を望んでいるという、擬人化した解釈をしている飼い主さんもいるようですが、これはホルモンのアンバランスによるものです。
ですので、想像妊娠というのは適切な呼び名ではありません。
偽妊娠は、妊娠していない雌が、発情後期の妊娠期にまるで妊娠しているかのような行動をとることを指しています。
犬は、おもちゃやぬいぐるみ、人の靴下などをまるで自分の子供のように見立て、衣類などを集めて巣作りのような行動をします。
子供に見立てたものを自分のベッドに運んで大事に抱いていたり、慈しむように舐めたりして、その行動はまるで子育てをしているかのように見えます。
そこに飼い主さんが手を出して取り上げようとすると、犬はキュンキュンと切なく鳴いたり、抱え込んだものを守ろうとして威嚇することもあります。
また、実際にお乳が張ってきて母乳が出ることもあり、つわりのような症状やお腹が膨らんでくるなど、本当に妊娠しているのではないかと思わせるような現象を起こすことがあります。
これは、この時期の雌の体に、妊娠に必要なホルモンの量が増えることによって起こる現象です。
妊娠していなくても、この時期は妊娠した状態を保つためのホルモンの分泌があるのです。
子育てのような行動は、そのホルモン=プロラクチンの影響によるものです。
こういう行動が明らかに表れる犬もいれば、それほどでもない犬もいます。
そして発情後期が終われば、ホルモンは減少しこのような行動も大抵落ち着いて来ます。
でも、あまりにも偽妊娠の症状が激しい場合、ホルモンの分泌過剰と考えられ、身体への負担も大きいと思われます。
さらに、妊娠しているわけではないのに、そういう現象に振り回されている犬のストレスはかなり高い状態と言えるでしょう。
ホルモン分泌過剰の傾向があり、発情期のたびにこのようなことを繰り返していくと、子宮内膜が充血した状態が多くなるということです。
それが重なると子宮蓄膿症を発症しやすくなります。
また、乳腺炎や乳腺腫瘍も引き起こしやすくなります。
偽妊娠の兆候が強く見られる犬の場合は特に、このような雌特有の病気の発症リスクが高いと考え注意が必要です。
繁殖の予定がないのであれば、避妊手術も検討した方がよいかもしれません。
雌の発情期の対策
清潔
雌犬の発情期は、発情出血で体が汚れやすくなっていることに加え、体の免疫力も落ちている時期で、感染なども起こりやすいです。
清潔に保ってあげることは大切なことで、汚れた被毛などは柔らかい温タオルなどで傷つけないようにそっと拭いてあげましょう。
生理用のパンツやパットを使用する場合は、蒸れて感染の原因になりやすいです。
皮膚が炎症を起こしたりする危険もあるので、絶対に長時間着けたままにしないようにして下さい。
床やシーツ類などが多少汚れることもあるかもしれませんが、可能な限りはオムツを着けたりせずそのままで過ごす方が、ヒート中のストレスと重ならずに犬も楽に過ごせます。
おしっこの回数も増えるので、パットなどを装着しておしっこを我慢しているようなら膀胱炎の危険もあります。
できれば、犬が室内を汚さないように神経を使うより、室内が汚れない対策を取った方がよいと思います。
汚れると困るようなものは片付けておき、洗えるカバーリングなどを使って汚れても構わないように対策し、パッドやパンツなどはできるだけ最小限にしましょう。
小型犬などはほとんど自分で舐めて処理してしまい、出血としてわかるものは本当に少量です。
反対に出血がいつまでもあって分泌物が多かったり、においや色がおかしい時は何か感染が起きているかもしれません。
病気の可能性もありますので、おかしいと思ったら獣医師の診察を受けて下さい。
ヒート中のシャンプーは、体調が悪くないようでしたら特に制限はないのですが、サロンに任せることは慎重に検討して下さい。
雄犬は、雌犬の発情期の匂いに刺激されて発情します。
もしサロンに雄が預けられていた場合、発情期の雌がそこにいると迷惑をかけることになると思います。
雌によって発情させられた雄は制御が難しく、トリミング中に思わぬ事故や交配の危険もあるからです。
発情期の雌をサロンに預けることは、飼い主のモラルとして遠慮して下さい。
どうしてもサロンに出す必要があるなら、サロンに必ず事前に相談をして下さい。
それが雌の安全を守ることにもなります。
散歩
発情期の雌の行動の目的は子孫を残すことです。
雌の匂いに誘われて発情する雄もまた同じです。
いつもは安全な散歩コースであっても、その時期の犬はどのような行動をとるかわかりませんので、アクシデントもありえます。
ヒート中の散歩は控えめにして、できるだけ他の犬に遭遇しないように注意し、周囲に犬がいないか気を配って下さい。
犬が集まる公園などの場所は避け、時間帯にも工夫が必要です。
ドッグランやカフェ
犬が集まる場所では、ヒート中の雌は入れないというところが多いはずです。
たとえ禁止でなくても、飼い主としてのマナーであると認識して下さい。
去勢してない雄が発情期の雌に遭遇すると、その行動は制御不可能になることが多いです。
刺激を受けた雄犬同士での喧嘩がその場で始まることもあります。
混乱を招きトラブルになることを避ける為にも、ヒート中の雌を連れてそのような場所への出入りはしないようにしましょう。
マウンティング
マウンティングは、雄の交尾の性的な意味だけでなく、雌にも見られる行動です。
特に発情期には、興奮してストレスも高まっているので、こういう行動をとる雌犬は多いようです。
マウンティングには、犬同士の順位付けの行動という意味もありますが、ストレスが高い時に表れる行動でもあります。
この時期の雌のマウンティングは、後者に当てはまる行動と考えられます。
これも発情期が終了すると次第に落ち着く行動と言えますが、人間にそのようなことをする場合は行動が習慣化してしまうこともあります。
そうさせない為にも、マウンティングしてきてもうまくかわしながら、できるだけ相手にしないようにしておいて下さい。
避妊手術という選択
避妊手術に対しては賛否両論あると思います。
決定できるのはその犬の飼い主さんだけなのは間違いないです。
繁殖の予定がなければ、子宮や乳腺の病気の予防のためにも避妊手術は選択肢のひとつです。
避妊手術は決していいことばかりではなく、手術ですから当然リスクもあります。
戸惑う飼い主さんがいることも当然だし、十分理解できます。
私の愛犬の場合
うちの経験を話したいと思います。
私の愛犬は偽妊娠の兆候が激しく、ホルモン過剰の傾向がありました。
私は元々は避妊手術を受けさせるつもりでいました。
でも、愛犬にてんかんという持病が発覚し、体格も小さかったことなどが不安要素となり、手術を躊躇していました。
発情期も遅く、発育が遅いのかなと思っていたのですが、いざその時期を迎えると、偽妊娠の行動が激しく現れました。
ぬいぐるみのおもちゃを抱いてケージ内に閉じこもり、私が近づくと唸ります。
気が立っていて、唸ったり鳴いたりしながらおもちゃを咥えて移動する場所を探してうろうろしたり、本当に子育てしているようでした。
そして、自分のご飯を食べることにもなかなか集中できないようでした。
このままでは子宮や乳腺の病気のリスクも高まるだろう、そして発情期のたびに偽妊娠のストレスがかかれば、持病のてんかんにも悪影響があるだろうと思われました。
主治医とも話し合い、2歳の時に避妊手術の決心をしました。
避妊手術を受けてからは、周期的に不安定な状態に陥ることがなくなったので本当に良かったと思っています。
また、愛犬はシニアになって心臓病が発覚しました。
てんかんに麻酔は可能ですが、心臓病ではハイリスクなのでもう麻酔をかけることは不可能かもしれません。
もし、生殖器の病気になっても、手術をするなら命がけになるでしょう。
早い時期に避妊手術をしてよかったと今は改めて感じています。
繁殖コントロールは飼い主の役割
避妊手術は、発情期を避けて行わなければなりません。
時期なども含め、不安なことを納得いくまで相談できる、信頼のおける獣医師を是非見つけて下さい。
ちなみに、繁殖は素人が安易に手を出すべきではないと私は思っています。
愛犬の子供が見たい、女性として子供を産ませてやりたいと考える飼い主さんは少なくありません。
でも、犬は決して安産ではないです。
まして小型犬は、親も子も命がけであることが多く、無事に産まれたとしても健康な子犬であると限らないのです。
出産で愛犬を失うかもしれない、障害を持った子犬が産まれるかもしれない、そのようなケースも多いのです。
愛犬が命を落としても後悔はないのか、重大な病気や障害を持って産まれた子犬でも最後まで医療にかけて、責任持って育てられるのかなども考えないといけないと思います。
そもそも、健全なブリーディングの為には、何代も遡って遺伝病の有無など調べる必要があります。
最低限の知識も覚悟もなしに、出産に適しているかも考えずに、ただ可愛いから子犬を産ませるというのは無責任と言えます。
または、増やすつもりはなかったのに、繁殖制限をしなかった為に増えてしまい、飼いきれなくなった話もあちらこちらにあります。
飼育できずに多頭崩壊というケースも多いです。
そういう犬達は、増えすぎてひしめき合うように暮らし、ろくに食べ物にありつけない、健康状態も悪いです。
その中で共食いが起こったり、命を落とす犬もいます。
それは自然で幸せな犬の姿でしょうか?
人に飼われている犬の繁殖のコントロールは飼い主の責任です。
まとめ
雌犬の発情期は1年で2~3回あります。
発情期は避けて通れる問題ではありません。
何がベストかは、愛犬の体を一番よくわかっている飼い主さんにしか答は出せないと思います。
どうぞよい方法を選んであげて下さい。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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