雌犬の発情期(ヒート)における特徴的な行動と対策法

犬は発情期になると、雄も雌も子孫を残すべく、本能に従った行動をとるようになります。

その様子はいつもの見慣れた愛犬と違い、まるで犬が変わったかのようで、飼い主さんが対応に困ることもあるようです。

特に雌犬の発情期ははっきりしていて、避妊手術をおこなっていない場合は決まった周期でやってくるものなので、その時期だけの特徴的な行動への上手な対策をしましょう。

今回は、雌犬の発情期の行動の特徴について解説したいと思います。

雌の発情期は3段階に分かれている

犬の初回の発情期は、生後6~7ヶ月くらいから見られますが、中には1歳を越えてようやく迎える犬もいます。

大型犬の方がやや遅い傾向にありますが、体格だけでなく、環境などによっても個体差はあります。

気候が温暖な方が発情期も早く起こりやすいと言われるのですが、最近は気温の安定した室内で暮らす犬も多いので、季節はそれほど関係ないようです。

雌の発情期はヒートとも呼ばれ、発情前期・発情期・発情後期の3つの期間に分かれています。

発情前期

期間は7~10日ほど続きます。

この期間には、陰部が大きく膨らみ、発情出血(一般的には生理と呼ばれる出血)が見られるようになります。

発情期

期間は10日前後続きます。

やがて出血の量は減り、この時期には排卵が起こり、雄を受け入れるようになります。

この期間は、雄を拒否するようになるまでの期間です。

発情後期

期間は60~80日続きます。

発情期が終了して、妊娠期間に入ります。

交尾をしていない雌も、この時期はホルモンの内容が変化します。

体は受精卵を着床させる準備を整える時期であるため、雄を受け入れることはなくなります。

【発情期についての参考記事】

>>犬のオスとメスの発情期はいつ?その違いと期間について

雌の発情期に見られる特徴的な変化と行動

発情期が近くなると、雌の体にも特徴が現れ、陰部が通常の3倍近くも膨らみ、その時期が近いとわかることもあります。

陰部の膨らみを見て、何か異常があるのでは?とびっくりする飼い主さんもいるようですが、確かに外見的にかなり特徴があるので、気を付けて観察すると予測はできると思います。

陰部からの発情出血は、犬が自分で舐めてしまい、小型犬などの場合は量も少ないので、飼い主さんが出血そのものになかなか気づかないことはあるかもしれません。

ただ、しきりに陰部を舐めるという行動は目立つと思います。

また、おしっこの回数が多くなり、普段はきちんとトイレのしつけができている犬でも、別な場所で粗相をするというような行動も見られることがあります。

発情期の雌の特徴的な行動としては、その他、以下のようなものがあります。

  • 落ち着きがなくなり、ソワソワし神経質になる
  • 食欲が異常に亢進するか、または食べなくなる
  • 興奮し吠える、鳴き叫ぶような声を上げる
  • 雄犬がいるとその近くに行こうとする行動が見られる
  • 気性が荒くなり反抗的になって、飼い主の指示を聞かない、威嚇などの行動がある
  • 不安そうにして元気がなく散歩を嫌がる・飼い主に甘えてくる
  • クッションや人間の手などにマウンティング(腰振り行動)する
  • 偽妊娠、想像妊娠と呼ばれる行動

このうち、偽妊娠以外の行動は、発情前期~発情期にかけて見られやすく、偽妊娠は本来の妊娠期間である発情後期に見られます。

偽妊娠はホルモンバランスが原因

偽妊娠という行動は俗に想像妊娠とも呼ばれることが多いですが、人間のように犬が妊娠を強く望むなどの心理的影響でそのようになるのではありません。

犬も妊娠を望んでいるという、擬人化した解釈をされる飼い主さんもいるようですが、これはホルモンの関係によるもので、想像妊娠というのは適切な呼び名とは言えません。

偽妊娠は、妊娠していない雌が発情後期の妊娠期に、まるで妊娠しているかのような行動をとることを指します。

犬は、おもちゃやぬいぐるみ、人の靴下などを自分の子供のように見立て、衣類などを集めて巣作りのような行動をすることがあります。

子供に見立てたものを自分のベッドに運んで、大事に抱いていたり、慈しむように舐めたりして、その行動はまるで子育てをしているかのように見えます。

そこに飼い主さんが手を出し、取り上げようとすると、犬はキュンキュンと切なく鳴いたり、抱え込んだものを守ろうとして威嚇することもあります。

また、実際にお乳が張ってきて母乳が出ることもあり、つわりのような症状があることや、お腹が膨らんでくることもあり、本当に妊娠しているのではないかと思わせるような現象も起こります。

これは、この時期の雌の体に、妊娠に必要なホルモンの量が増えることによって起こる現象で、妊娠していなくても、この時期においては妊娠した状態を保つためのホルモンの分泌が続きます。

子育てのような行動は、そのホルモン=プロラクチンの影響によるものとされます。

こういう行動が顕著に出る犬もいれば、それほどでもない犬もいて、いずれにしても発情後期が終わればこのような行動も大抵は落ち着いて来ます。

しかし、あまりにも偽妊娠の症状が激しい場合は、ホルモンの分泌が過剰なのであり、身体への負担も大きくなると考えられます。

また、妊娠しているわけではないのに、そういう現象に振り回されている犬のストレスは、かなり高い状態と言うことができます。

ホルモン分泌量が過剰の傾向があり、発情期のたびにこのようなことを繰り返していくことは、子宮内膜も充血した状態が続く為、それを重ねると子宮蓄膿症などを発症しやすく、また、乳腺炎や乳腺腫瘍も引き起こしやすくなるのです。

偽妊娠の兆候が強く見られるような犬の場合は、このような雌特有の病気の発症リスクへの注意が必要で、繁殖の予定がないのであれば、避妊手術を検討した方がよいと思われます。

【参考記事】

>>犬の胸のしこり・オスにも発生?乳腺腫瘍の手術と費用について

雌の発情期の対策

清潔

雌犬の発情期は、発情出血で体が汚れやすくなっていることと同時に、体の免疫力も落ちている時期なので、感染なども起こりやすい状態です。

清潔に保ってあげることは大切なことですので、汚れた被毛などは、柔らかい温タオルなどで傷つけないようにそっと拭いてあげましょう。

生理用のパンツやパットを使用する場合は、蒸れて感染の原因になったり、皮膚が炎症を起こしたりする危険があるので、絶対に長時間着けたままにしないようにして下さい。

床やシーツ類などが多少汚れることもあるかもしれませんが、可能な限りはオムツなどを着けたりせず、そのままで過ごす方がヒート中のストレスと重ならずに犬も楽でいられます。

おしっこの回数も増えるため、パットなどを装着していておしっこを我慢してしまうようなことになると、膀胱炎などを起こしやすくなるのです。

それよりも、室内を汚さないようにする対策を取ってあげた方がよいと思います。

汚れると困るようなものは片付け、その期間は洗えるカバーリングなどで汚れても構わないように対応し、パッドやパンツなどはできるだけ最小限にしてあげた方が良いです。

犬の体格などにもよりますが、小型犬などではほとんど自分で舐めて処理してしまい、出血としてわかるものも少量です。

出血がいつまでもあり、分泌物の様子がおかしいと感じる場合は、何か感染が起きていたり病気によるものかもしれませんので、その場合は獣医師の診断を受けて下さい。

ヒート中にシャンプーすることは、犬の体調が悪くないようでしたら特に制限はないのですが、サロンに任せることについて、慎重に検討する必要があります。

雄犬の方は、発情期の雌の匂いに刺激されて発情します。

もしサロンに雄が預けられていた場合は、発情期の雌の存在は迷惑をかけることになりかねません。

雌によって発情させられた雄は制御が難しくなり、トリミング中に思わぬ事故や交配の危険もあるからです。

発情期の雌をサロンに預けることは、このような理由からも避けるべきでしょう。

どうしてもサロンに出す必要があるのでしたら、できるだけ発情期の終わり頃など、時期を考えて他の犬へ配慮し、サロンにも必ず事前に相談をして下さい。

それが雌の安全を守る為でもあるのです。

散歩

発情期の雌の行動は、全て本能に従っていて、目的は子孫を残すことです。

雌の匂いに誘われ、発情する雄もまた同じです。

いつもは安全な散歩コースであっても、その時期の犬がどのような行動をとるかわかりません。

どんなアクシデントがあるかわかりません。

ヒート中の散歩は控えめにして、できるだけ他の犬に遭遇しないように注意し、周囲に犬がいないか気を配りましょう。

他の犬が集まる公園などの場所は避け、時間帯などにも工夫が必要です。

ドッグランやカフェ

犬が集まる場所ではヒート中の雌は入れないというところも多いようですが、たとえ禁止でなくてもこれは飼い主としてのマナーであると意識しておきましょう。

去勢してない雄は、発情期の雌に遭遇すると、その行動は制御不可能になることが多いです。

刺激を受けた雄犬同士での喧嘩が、その場で始まることもあります。

混乱を招いてトラブルを引き起こすことを避ける為には、ヒート中の雌を連れてのそのような場所への出入りは遠慮して下さい。

マウンティング

マウンティングは、雄の交尾の性的な意味だけでなく、雌でも見られる行動です。

特に発情期には、興奮してストレスも高まり、こういう行動をとる雌犬も多いようです。

マウンティングには、犬同士の順位付けの行動という意味もありますが、ストレスが高い時に表れる行動でもあり、この時期の雌のマウンティングはそれに当てはまる行動と考えられます。

これも発情期が終了すると次第に落ち着く行動なのですが、人間にそのようなことをする場合は、習慣化した行動になってしまうこともあります。

そうさせない為にも、マウンティングしてきてもかわしながら、相手にしないようにしましょう。

【雌犬のマウンティングについての参考記事】

>>発情期の雌犬 人の足へのマウンティングをやめさせるには

避妊手術という選択肢

避妊手術に対しては賛否の考えがそれぞれあり、決められるのはその犬の飼い主さんだけです。

もし繁殖の予定がないのであれば、子宮や乳腺の病気の予防のためにも避妊手術は選択肢のひとつです。

避妊手術は決していいことばかりではなく、手術ですから当然リスクもあり、戸惑う飼い主さんがいることも理解できます。

私の経験ですが、私の犬は偽妊娠の兆候が激しく、ホルモン過剰の傾向がありました。

それによって子宮や乳腺の病気のリスクも高まること、そしてそのストレスは、元々持っているてんかんという持病へも悪影響を及ぼすことが想定されました。

私はそれまでに、その持病のことや、当時は体格が小さいことなどが不安要素になり、避妊手術を躊躇していました。

しかし、偽妊娠の症状が強く現れたことにより、主治医の勧めで手術をする決心がつきました。

避妊手術によって、周期的に不安定な状態に陥ることがなくなったのは良かったと思っています。

もし、避妊手術を受ける際は、発情期の間は避けるべきですので、時期なども含めて、不安に思うことを納得いくまで相談できる、信頼のおける獣医師を見つけましょう。

そして、繁殖に関してですが、素人が安易に手を出すべきではないと私は思っています。

愛犬の子供が見たい、女性として子供を産ませてやりたいと考える飼い主さんもいるようです。

しかし、犬は決して安産ではなく、まして小型犬などは、親子共に命がけであることが多く、無事に産まれたとしても健康な子犬が産まれるとは限らないのです。

出産で愛犬を失うかもしれない、障害を持った子犬が産まれるかもしれない、そのようなケースは多いのです。

愛犬が命を落としても後悔はないのか、重大な病気や障害を持って産まれた子犬も最後まで医療にかけて責任を持てるかなどを考えなくてはなりません。

そして健全なブリーディングの為には、何代も遡って遺伝病の有無など調べる必要があります。

そのような知識も持たずにただ子犬を産ませようとするのは無責任です。

一方で、増やすつもりはなかったにもかかわらず、繁殖制限をしなかった為に増えてしまい、飼いきれなくて困っているというような話もあちらこちらで耳にします。

増えすぎてひしめき合うように暮らす犬達は、それでも自然で幸せな姿なのでしょうか?

【参考記事】

>>犬の去勢のメリットとデメリット メスの発情期のオスの対策

>>メス犬の発情期(ヒート)と避妊手術・費用や術後管理について

まとめ

犬の発情期は雌が主導し、その周期は半年前後であり、つまり一年で2~3回はこのような行動が起こる可能性があるということになります。

犬の本能を擬人化して考えるべきではないし、発情期は避けて通れる問題ではありません。

犬にとってどうすることが幸せなのか、愛犬の体を一番よくわかっている飼い主さんにしか答は出せません。

どうぞベストな方法を選んであげて欲しいと思います。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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