メス犬の発情期(ヒート)と避妊手術・費用や術後管理について

犬の発情期はオスとメスで大きく違い、オスの発情期は全てメスの発情(ヒート)によって誘発されます。

発情期の犬は、子孫を残すための本能のままに行動しようとし、想定外の事故や望まない繁殖に繋がる可能性もあります。

去勢や避妊手術はそのような危険を防止できる選択肢の一つです。

今回は、メスの避妊手術の費用や術後管理について解説します。

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発情期は犬が本能に翻弄される時期

オスの発情期にはいつと決まった時期はなく、メスの発情期によってリードされます。

ヒート中のメスが放出するフェロモンの匂いでオスは発情し、交配が可能になります。

メスの発情期は一定の周期で起こり、その犬の個体差にもよるのですが、年2~3回くらいはあると考えられます。

メス犬の発情期(ヒート)には陰部からの出血が見られるようになるので、人の女性の月経と同様のものと勘違いされることがあるようですが、人とはしくみが異なります。

犬のヒートの出血は、発情期の真っ只中にあることを意味し、その時期にメス犬が出すフェロモンの匂いが2km四方まで届くほど、オス犬にとって刺激になるのです。

オスもメスも、その時期は子孫を残そうとして必死であり、それは犬の本能です。

その本能が叶わないことは、オスにもメスにも大きなストレスであり、そのストレスはメス犬のヒートの周期に伴って繰り返され、その都度、性ホルモンが無駄に分泌されていることになるのです。

不必要なホルモンの分泌は、犬の体に悪影響を与える要因にもなります。

メス犬の場合は、性ホルモンに深い関係のある子宮や卵巣、乳腺の病気が多く存在しているのです。

【参考記事】

犬のオスとメスの発情期はいつ?その違いと期間について

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メス犬の避妊手術にはメリットもデメリットもある

メス犬に避妊手術を行うことにより、メス犬特有の性ホルモン由来の病気を予防することができ、避妊手術をすることの最大のメリットはこれでしょう。

また、ヒートのたびに大きなストレスにさらされることがなくなる為、精神的に安定することもできます。

しかし、避妊手術は全て良いことばかりではなく、メリットもあればデメリットもあるものです。

避妊手術によるメリットとデメリットを次に挙げてみることにしましょう。

避妊手術によるメリット

  • 望まない繁殖を確実に防止することができる
  • 性ホルモンが関係する乳腺腫瘍、子宮腫瘍、卵巣腫瘍、子宮蓄膿症といった病気を予防できる
  • 妊娠や出産のリスクとしてのブルセラ症(性感染症)や糖尿病、子宮破裂、妊娠中毒症などを避けられる
  • 身体的に繁殖の準備があるにもかかわらず交配がかなわないことの欲求不満は動物にとって多大なストレスになるとされており、避妊手術によってそのストレスから解放される。

乳腺腫瘍は、その約半数が悪性腫瘍であると考えられています。

避妊手術と乳腺腫瘍の関わりは深く、初回の発情前に避妊手術をおこなえば、未避妊の犬と比較して0.5%、2度目の発情期前の避妊手術では8%、2回の発情期を見送ってからでは26%の発症率と言われます。参考:アイ動物クリニック http://www.i-animalclinic.org/fujita.html

避妊手術の時期が遅くなれば発症率は高くなりますが、それでも未避妊の犬と比較すれば避妊手術が有効であることは確かと言えるでしょう。

子宮蓄膿症に至っては、避妊手術を受けていないメス犬の場合は10歳までに25%が発症するとされ、高年齢になるにつれて治療のための手術リスクも高くなります。

避妊手術をして子宮を摘出していれば、当然ですが子宮の病気にかかることはありません。

避妊手術によるデメリット

  • 創部の炎症や感染症などの術後合併症
  • 血管肉腫、膀胱や尿管、尿道の移行上皮癌の発生率の上昇
  • 術後の尿失禁
  • 肥満や糖尿病の発生
  • 麻酔によるショック
  • 卵巣遺残症候群による再手術
  • 手術に使用する糸のアレルギー
  • 避妊手術をした犬はドッグショーに出場資格がない

避妊手術に限らずですが、手術時の麻酔事故はどんなに安全に留意して行われたとしても、起こる可能性があります。

また、手術そのものが成功したとしても、術後の創部あるいは全身の感染症、炎症などが起こることもあります。

これは術後管理が不十分であったことや、あまりにも若齢での手術(12週齢以前)ではリスクが高くなるとされています。

そして、避妊手術を受けたことで性ホルモン由来の病気は予防できたとしても、他の病気のリスクが高まるデメリットの報告論文もあるようです。

尿失禁については小型犬に比較して大型犬の方が多く、5~30%と高率です。

これはホルモン反応性の尿失禁とも呼ばれ、卵巣摘出後にエストロゲンというホルモンを失うことが原因であるとも言われます。

【尿失禁の参考記事】

犬のお漏らしは病気のサイン?知っておこう!原因と対策

卵巣遺残症候群は、卵巣子宮摘出術の手術を行ったにもかかわらず、数か月~数年経過して再びメス犬の発情期の兆候がある場合などに、検査で卵巣の取り残しが認められる状態で、手術での取り残しミスによるものです。

これを放置してしまうと、性ホルモンの作用が継続することになるので、再手術を行わなければならなくなります。

傷口を小さくすることにこだわりすぎると、術中の卵巣の確認がしにくい為、卵巣遺残のリスクは高くなります。

避妊手術はその個体に合わせた時期を選んで

避妊手術に適した時期については初回のヒートの前のなるべく早い時期が良いとされ、生後6ヶ月を目安に推奨している意見が多いです。

その一方で、初回のヒートが終わってからの方が臓器も成長していて安全であり、性格も落ち着いていて手術に適しているという意見もあります。

また、中には、もっと早期の半年に満たない子犬であっても手術が可能であり、むしろそれが推奨というものもあれば、あまり早期に避妊手術すると術後合併症の危険が高まるという意見もあります。

これらのことを総合的に考えると、現在のところ、生後半年~1年以内の時期が一般的に推奨される避妊手術のタイミングであると考えられそうです。

しかし、避妊手術の時期の選択はその犬によると考えた方が良いと思います。

一般的な基準は基準として、特に慌てなくても、犬の成長具合や体調を見てから決心すればよいのではないでしょうか。

私の愛犬の場合は1歳を過ぎてからおこないました。

私の犬は、幼い時から病気の誤診があって病院を変更したり、病状が不安定なために薬を調整しながら経過観察していたので、避妊手術にベストとされる時期を過ぎてしまった都合もありました。

でも何よりも、そんな健康状態では私も避妊手術に踏み切れませんでした。

迷っているうちに、発情期のホルモンの影響は顕著に現れ、そのストレスがかえって持病に悪影響を与えることに納得でき、避妊手術の決心がつきました。

こちらの記事にも書いていますのでよろしければ参考にして下さい。

雌犬の発情期(ヒート)における特徴的な行動と対策法

私は避妊手術に賛成派ですが、これは強制ではないし、いいことばかりではありません。

飼い主さんが納得しているのかが一番大事なことであり、その上で時期を決めれば十分であると私は思います。

せっかく避妊手術を受けるのなら、もちろん将来的な病気の発生への効果が高い時期が良いに決まってはいますが、自分の犬に無理がないと飼い主さんが決めた時が手術に適した時です。

ただ、注意したいのは、ヒート中やヒート直後はホルモンが不安定ですので、この時期の避妊手術は避けなければなりません。

日程の細かいことについては、獣医師ともよく相談するようにして下さい。

避妊手術は入院が必要

オス犬の去勢手術は日帰りが多いようですが、メス犬の避妊手術は全身麻酔下での開腹手術になるので、基本的に1~2日程度での入院が必要です。

【参考記事】

犬の去勢のメリットとデメリット メスの発情期のオスの対策

避妊手術の方法は2通りです。

  1. 卵巣摘出術
  2. 子宮卵巣摘出術

1の卵巣だけを摘出する方法では、子宮を残してしまうので、将来的な子宮の病気の予防にならないのでは?と感じるかもしれません。

しかし、卵巣がなければ性ホルモンの分泌はなくなるので子宮も自然に委縮し、本来の機能はなくなると考えられています。

つまり、ホルモン由来のメス特有の生殖器の病気はこれでも予防できるとされ、この術式で避妊手術を行う病院もあるようです。

卵巣だけを摘出するメリットとしては、子宮を摘出しないので傷口も比較的小さめですむということですが、裏を返せばそれはデメリットで、卵巣の取り残しのリスクが高いということに繋がります。

上記項目で書いた卵巣遺残症候群の危険性が高まるということです。

また、その方法で子宮の病気(子宮蓄膿症)の予防は確実か?についてデータが少ないようで、日本では2の子宮卵巣摘出術が確実な術式として選択する病院が多いと思われます。

最近は、腹腔鏡下にて手術を行う病院もあるようで、そのメリットは傷口が小さくてすむということですが、それはやはり卵巣遺残症候群のリスクとなります。

人の手術で、胆のう摘出術などでは腹腔鏡もポピュラーな手術方法ですが、熟練した医師でないと難しく、摘出できずに途中で開腹手術になる場合もあります。

その病院ではどのような術式になるのかについても詳しく説明を受け、信頼できる獣医師を選択して下さい。

術前の準備

避妊手術の前日までは特に普段と変わりなく過ごしていてかまいません。

食事は、前日の夕食を食べさせて、それ以降は絶食でおやつもだめですが、水分だけはOKです。

当日の朝からは食事も水分も不可になります。

ただ、手術の開始時間や前処置など、病院によってスケジュールが決められているはずですので、それに従うようにして下さい。

事前に手術の説明を受ける時、そのようなパンフレットが渡されると思います。

術後の過ごし方

避妊手術の傷口には縫合糸がついていますので、舐めたりしないように抜糸まではエリザベスカラーを装着させます。

家に連れて帰ったら、傷口が開かないように安静に過ごさせますが、あとは普段と特に変わりなく、ただシャンプーは禁止です。

普段からジャンプすることが好きな犬や激しい遊び方をする犬は、傷が治るまでは激しい動きをさせないように気を付けておいて下さい。

また、傷が濡れるようなことや汚れるようなことは、術後の感染を引き起こす危険があるので要注意です。

散歩については、その病院の考え方によると思いますが、たとえ許可があってもいつもと同じではなく、走る、傷が汚れるような場所、長歩きなどは避けるようにしましょう。

抜糸

抜糸は、術後10日前後でおこないます。

抜糸の後も、傷口が離開していないか、しばらくは注意して観察して下さい。

傷口がジュクジュクしてなくて乾燥しているようでしたら良好な状態ですが、そこを犬が舐めたり噛んだりしないように気を付けて下さい。

抜糸してもすぐにシャンプーするのは避けて下さい。

シャンプーの許可なども、病院ごとに、また傷や術後の経過などによって違いますので、獣医師にその都度確認してからにして下さい。

手術にかかる費用

避妊手術の費用は、薬剤の量の違いなどから犬の体格によって異なります。

また、住んでいる地域の相場やその手術の術式によっても異なるので、統一ではありません。

基本的に動物の医療は自由診療であり、保険点数で定められているわけではないので、その病院ごとに多少費用の設定が変わって来ます。

そして、もし犬の医療保険に入っていたとしても、避妊手術は保険適用にはなりません。

ただ、補助金制度がある自治体もありますので、その点は確認した方が良いです。

助成金は2000円~1万円くらいの範囲で自治体により差があり、それぞれに条件があります。

犬の避妊手術の費用は、2万円~5万円くらいはかかると考えておきましょう。

また、その費用にどこまでの処置が含まれているのかということを確認しておきましょう。

例えば、1泊入院での費用のところ、2泊した場合はその差額費用は別に発生することになります。

抜糸までの全ての費用なのか、費用の中に術前検査は含まれているのかなど、病院ごとにセット内容の規定があるはずです。

一見安くても費用が加算されていくシステムの場合もあれば、高くても全てその費用の中に含まれる場合もあると思います。

 

《術後服☆エリザベスカラーの代わりに!》

まとめ

犬の発情期は人が考えている以上に、犬の心身に負担がかかるものです。

それが自然な姿であると考える飼い主さんもいらっしゃると思いますが、人と暮らしている犬の環境は人に合わせたものであり、すでに自然な姿ではないと考えることもできます。

繁殖させる予定がない場合、犬の発情期を理解してそのストレスを最小限にする為にも避妊手術の検討は有意義であると思います。

近年の災害が多発している中においては、避難先や迷子中に望まない交配で犬の体が危険にさらされることもあるかもしれません。

考えればきりがないですが、そのような可能性も含め、飼い主さんが最善と思われる対策をしてあげて下さい。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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