保健所や愛護センターという場所に収容されている犬猫達のことをご存じでしょうか?
保健所に引き取りされた飼い主のいない犬猫達は、法令に基づき、里親に譲渡される、または殺処分されます。
人に飼われていた犬猫が何らかの理由でその飼い主に飼育放棄され、持ち込まれるパターンも多いです。
今回は、保健所での殺処分の現状について考察してみたいと思います。
犬猫の殺処分数の推移は年々減少傾向にある
犬猫は以下の法令に基づいて各自治体にある保健所が引き取りし、収容することが義務付けられています。
犬及び猫の引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置について
第1-2.
都道府県知事等は、所有者から犬又は猫の引取りを求められたときは、終生飼養、みだりな繁殖の防止等の所有者又は占有者の責任の徹底を図る観点から、引取りを求める相当の事由がないと認められる場合にあっては、法第35条第1項ただし書の規定に基づき、引取りを行わない理由を十分説明した上で、引取りを拒否するよう努めること。
ただし、生活環境の保全上の支障を防止するために必要と認められる場合については、引取りを求める事由、頻度及び頭数に応じて、飼養の継続及び生殖を不能にする不妊又は去勢その他の措置に関する必要な助言を行った上で引取りを行うこと。
出典元 環境省 http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/laws/nt_h25_86.pdf
2013年9月の改正動物愛護法より、保健所は犬猫の所有者からの持ち込みに対し、その理由によっては引き取り拒否することが可能になっています。
この中には引き取り拒否のことも追記されています。
【引き取り拒否できるケース】
- 犬猫等販売業者から引取りを求められた場合
- 引取りを繰り返し求められた場合
- 繁殖制限のための指導に従わず子犬・子猫の引取りを求められた場合
- 犬猫の老齢・疾病を理由として引取りを求められた場合
- 飼養が困難であるとは認められない理由により引取りを求められた場合
- 譲渡先を見つけるための取組を行っていない場合
出典元 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AE%BA%E5%87%A6%E5%88%86
また、保健所に保管している動物の処分については、以下のように定められています。
第4.保管動物の処分は、所有者への返還、飼養を希望する者への譲渡し及び殺処分
環境省が発表したデータによれば、H30年度の年間犬猫の引き取り数の合計は91,939匹です。
そのうち返還された数が11,625匹・譲渡された数が42,041匹・殺処分された数が38,444匹となっています。
殺処分の内訳は
- 犬が7,687匹(そのうち子犬が1,692匹)
- 猫が30,757匹(そのうち子猫が20,234匹)
であり、圧倒的に子猫が多いことが、この数字からわかります。
しかし、H28年度の犬猫の殺処分数の合計は55,998匹であり、あくまでも数字だけを見ればですが、この2年間でも減少しているとも言えます。
過去の推移を見ても、殺処分数は少しずつ減少しています。
下のグラフは(見にくくてすみません)、過去10年の推移を表しています。
《引き取り数の推移》 :《殺処分数の推移》のグラフ
出典元 環境省 http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html
自治体の努力による里親探し
データ上、殺処分数は確かに減少しています。
その理由として、保健所が引き取りを拒否できるようになったことの影響は大きいと思われます。
犬猫の無責任な飼育放棄を保健所側が拒否、指導することができるようになり、保健所の収容数を減らすことが可能になった為に、結果として殺処分される犬猫の数は減少したと言えます。
また、それぞれの自治体の努力によって、犬猫が新しい里親へ譲渡される機会が多くなったこともあるでしょう。
でも、引き取り拒否された犬猫はどうなったのでしょうか?
そこには確実に飼育放棄された犬猫がいるはずです。
そのことからも、また別の問題が生じているということは容易に考えられます。
ボランティアや愛護団体による引き取り
保健所だけでなく、ボランティアによる犬猫の引き取り、里親探しや普及活動という努力が殺処分減少に貢献しているという現実もあります。
個人や民間の団体の協力がなければ、殺処分回避は困難で、中には民間ボランティアにほとんど依存している自治体もあるようです。
犬猫が保健所に収容される理由
保健所が犬猫を保健所に収容する状況に至った背景は様々です。
迷子の収容
飼い主がいるにも関わらず、何らかの理由で迷子になり、一般の人や警察に保護されて保健所に収容されるというパターンです。
《迷子になる理由》
- ノーリードや放し飼いなどという非常識な飼い主の責任
- 散歩中にハーネスや首輪が抜けた
- 自宅の庭や部屋の隙間から逃げ出した
- 大きな音にパニックになっていなくなった
- 誘拐されて放棄された
迷子になった犬猫に「いずれ帰ってくるだろう」「犬は帰巣本能がある」と期待している飼い主も多いですが、一人では帰れないことがほとんどです。
そのことを飼い主は認識しておかなければならないと思います。
保健所では、保護して収容した犬猫に関して、犬は狂犬病予防法に基づいて一定の保管期間が定められていることに加え、公示期間(最低2日間)というものが設けられています。
公示期間は、飼い主に返却することを目的として、保健所のHPなどに保護情報が掲載されます。
SNSなどでは、公示期間の犬の情報を里親募集として広く呼びかけている人もいるようですが、あくまでも公示期間の情報は元の飼い主に向けて発信されています。
その期間を過ぎた犬猫は、引き続き里親募集して譲渡の方向へと進めるのか、殺処分になるのかは、自治体ごとに異なる規定があります。
野犬の捕獲
野犬は、狂犬病予防法に基づいて捕獲・抑留されます。
首輪や鑑札のない、所有者がいないと想像されるような野犬であっても、同じように公示期間を経た後にその犬の評価がおこなわれます。
そして、動物愛護管理法の観点からも、できる限り殺処分でなく生存の機会を与えるよう(譲渡できるように)努めなければならないとされています。
(情報の出典元 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou18/dl/070501-01.pdf )
飼い主の持ち込みによる引き取り
飼い主が自ら自分の飼っていた犬猫を放棄し、保健所が引き取りをするというパターンは、H30年度のデータで、犬が3,726匹、猫が10,450匹です。(子犬、子猫を含む)
これは多いのか少ないのか、あなたはどのように感じられるでしょうか?
飼い主からの放棄は、保健所の引き取りの中で、約1割強の割合であるようです。
飼い主放棄の引き取り理由
保健所が、飼い主からの犬猫の引き取りを理由によって拒否できるようになったとは言え、飼育放棄する側の理由には言葉を失うものもたくさんあります。
飼い主が飼育動物を放棄する理由
- ペット禁止の賃貸物件で犬猫を飼っていたのがばれた
- 引越しすることになり引越し先に連れていけない(飼えない)
- 無計画な繁殖により増えすぎて飼育が無理
- 大きくなって可愛くなくなった
- 家族で旅行に行く予定があって家を留守にするので
- 犬猫が病気になり大変なので世話できない
- もう死ぬかもしれないがそれを見たくない
- 飼い主が亡くなりその家族は引き取れない
私自身、愛犬と暮らすまで、このような問題に触れる機会はありませんでした。
私は、愛犬の病気から繁殖の問題に関心を持つようになり、そしてこのような現実を知るに至りました。
その頃に観たある動画で、保健所の職員と猫を持ち込んできた飼い主とのやり取りがなされていました。
その飼い主は、どこにでもいそうな子供を含む家族連れで、旅行に行くという理由で飼い猫を放棄しに保健所を訪れていました。
保健所の職員から、放棄すれば猫が殺処分になると説明を受け、それでも父親は泣いている子供達を説き伏せます。
「旅行と猫とどっちを取るのか。楽しみにしていた旅行がだめになってもいいのか。」と子供が諦めるまで言い聞かせ、最後は子供達も泣きながら同意します。
そして母親は「旅行が終わったらまた飼えばいいのだから」と子供をなだめるのです。
飼い主からの飼育放棄の犬猫は、基本的には里親譲渡の道ではなく、殺処分です。
それを知らず、保健所に引き取りしてもらえば里親探しも何とかしてくれると安易に考え、勘違いしている飼い主も多くいます。
そして私が観た動画のように、殺処分されることを聞かされても、心を痛めることもない飼い主もいます。
保健所には純血種も多く収容されている
保健所に引き取りされる犬猫の中には、純血種もたくさんいます。
いわゆる流行とされた犬種や猫種が、いとも簡単に飼育放棄されます。
思っていたカラーと違う・理想とする体格ではない・飽きた・流行の種類に買い替えたいという呆れた理由で、それまで可愛がっていたはずの犬猫を飼い主は放棄します。
そして洋服の流行でも追っているかのように、「買い替える」飼い主がいることをあなたは想像できるでしょうか?
終生飼育~自分の犬を捨てないで
飼うのなら保護犬や保護猫をという呼びかけは多いですが、里親として譲渡してもらうには条件があります。
里親になりたくても、条件に該当しない人はたくさんいます。
また、保護犬猫の譲渡は行政機関(保健所)だけではなく、民間団体などでもおこなっていますが、譲渡元が必ずしも、良心的である、信頼できるとは限らないのが現実です。
愛護活動という言葉を免罪符にした悪質な団体や、実情が見えず金銭トラブルの絶えない自称ボランティアも多く、関わる上では希望者側も慎重さが必要です。
犬猫をお金で購入することに対しては批判も多いですが、私も愛犬を「購入した飼い主」です。
ですが、私が愛犬と共有する思い出や一緒に過ごす時間はかけがえのないもので、どんなに大切か、その価値は所詮私にしかわかりません。
飼い主のそれぞれが、いろいろな経緯で犬猫達と暮らし始め、家族にしかわからない想いがそこには存在すると思います。
昔、私が子供の頃に実家で飼っていた犬は、子犬の時に保健所から譲り受けた中型犬でした。
当時の私は、保健所のことを詳しく知っていたわけでなく、保健所は犬を飼い主に仲介する場所という浅い認識でした。
出会いが何であれ、どこから迎えた犬であろうが、委ねられた命を幸せに全うさせることは、私達飼い主の義務ではないかと思います。
殺処分される犬猫達を増やさない為には、その小さな家族を全力で守り終生飼育することが、どの飼い主にでもできるはずのことであり、果たすべき責任ではないかと思います。
まとめ
保健所での犬猫の殺処分は、データ上、年々減少していますが、それは自治体の努力や民間の協力なしで成り立ちません。
里親条件をクリアできる人が、保健所の保護犬や保護猫の飼い主になるということは、もちろん大切なことだと思います。
しかし何よりも基本的なことは、すでに犬猫と一緒に暮らしている飼い主はその子を生涯愛し続け、捨てないことです。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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