オス犬には決まった発情期がありません。
周囲に発情期のメスがいればそのフェロモンに誘発されオスはいつでも発情します。
発情期は本能に支配され、想定外の行動はしつけの問題だけでは語れません。
その対処法の1つとして去勢手術がありますが、手術にはメリットもデメリットもあります。
今回は手術の検討材料として、去勢の影響についての情報共有をしたいと思います。
オスはメスの発情期に影響される
メス犬は周期的に発情期を迎えます。
発情期のメスがオスにアプローチするフェロモンの匂いは、2㎞四方にいるオスまで届くと言われています。
つまり、2km圏内のご近所などに発情期のメスがいれば、オスはその匂いを嗅ぎ取ることができるというすごい話です。
メス犬は発情期の周期や期間がある程度定まっているので、その時期に集中して対処することもできます。
でもオスの場合は、どこに発情期のメスがいるかわからないのでコントロールが難しいのです。
これは犬の本能の問題ですので、普段しつけができている犬でも飼い主さんの制御が効かなくなることが多々あると受け止めて下さい。
オスに想定されるトラブル
発情期のオスに見られる行動に次のようなものがあります。
- 遠吠えをする・一晩中でもしつこく吠えたり鳴いたりする
- テリトリー意識が高まりマーキング行動が増える
- ソワソワ落ち着かず攻撃的になり人や他の犬を噛むことがある
- 普段は仲のいい犬でもオス同士で自分を誇示して喧嘩になる
- 散歩中でも発情期のメスがいればそこに行こうとリードを強引に引っ張る
- 発情期のメスを追いかけて脱走する
- 食事をしないで体重が減り痩せたり体調を崩す
刺激されたオスはこのような興奮状態が続き、それが落ち着くまでには時間もかかります。
多頭飼いの犬のメンバーの中に発情期のメスがいる、あるいは近所に複数いるとすれば、オスは頻繁に興奮状態にさらされることになるのです。
子孫を残すための本能に基づく行動は、叱って治るものではないし矯正するようなしつけがあるわけではありません。
むしろ叱ることは犬にとっては酷です。
メスの発情期のオスの対処法
重要なことは、望まないメスの妊娠を避けることとあらゆる意味での安全対策です。
同じ家の中に発情期のメスがいる場合は特に注意が必要です。
ケージを乗り越えてでもオスはメスの元に行こうとするので、この期間は完全に別々の部屋に分けておくくらいの対処が必要でしょう。
多頭飼いでこのようなことをよく理解している飼い主さん達は、やはり慎重に対処されているようです。
- メスとオスの世話をする人を家族で分ける
- メスの世話のあとには手を洗い服を着替える
つまり、できる限りメスの匂いを運ばないように徹底しているのです。
この時期にもっとも注意が必要なのは、オスの脱走です。
オス犬の飼い主さんは、脱走防止の対策を万全にしておく必要があります。
とてつもない力を発揮し、リードや首輪を引きちぎってでも匂いの元に行こうとしますので、交通事故などに遭うかもしれません。
迷子になってそのまま帰って来られない犬も多いと思われます。
メス犬の飼い主さんも、オス犬が突然突進して来れば恐怖ですよね。
怪我や咬傷事故などの危険性もあります。
発情期に入ったオスが、メスと交尾できないストレスも大きく、それが続くと食欲が低下したり体力を消耗したりして、健康上の問題にも繋がります。
オス犬の去勢手術
犬の去勢手術は、全身麻酔下で睾丸を摘出します。
精巣と精巣上体がなくなれば性ホルモンの分泌はなくなり、発情期もなくなります。
発情期の問題を解決する確実な対処法は去勢手術です。
多頭飼いの場合なら、メスの避妊手術かオスの去勢手術のどちらかでもよいのです。
でも、「わざわざ体を傷つけて去勢手術するのはかわいそう」「自然のままで一生過ごさせてやりたい」という考えの飼い主さんも多いのではないかと思います。
ただ理解してほしいことは、本能はしつけでは解決できないということです。
犬は人と暮らしている時点で、もうすでに野生の自然なままではありません。
人に飼われながら、本能に振り回されて我慢を強いられ続けることは、犬にどれだけのストレスがかかるでしょうか。
去勢のメリットとデメリットを確認し、よく検討していただければと思います。
去勢によるメリット
- 犬は生殖能力を失うので望まない妊娠や繁殖を防ぐことができる
- 発情期のメスと接触しても発情することはないので興奮や攻撃的になることなく、事故やトラブルを回避できる
- 犬がよけいなストレスから解放される
- 早期の去勢では、縄張り意識によるマーキング行動を避けられる
- 他のオスとの闘争性や攻撃性が和らぐので落ち着いて暮らせる
- 前立腺肥大や肛門周囲腺腫、精巣腫瘍などオスに多い生殖器の病気を予防できる
去勢によるデメリット
- 交配できなくなる
- 発情で消費するエネルギーが必要なくなり肥満傾向になりやすい
- 早期では骨格が弱くなる
- 子犬のような性質が残りやすくヒステリックな性格に育つ犬もいる
- かかりやすくなる病気もあり甲状腺機能低下症などは去勢との関連が否定できない
- 全身麻酔で行われるので麻酔事故が起こる可能性もある
決定するのは飼い主
犬の去勢手術にはメリットもあればデメリットもあります。
どちらを選ぶかは、飼い主さんにしか決められません。
もし去勢しないことを選ぶのなら、発情期のことをきちんと理解して対処をしっかりおこないましょう。
- 逃走や事故防止
- 無責任な繁殖をさせない
- 犬にむやみにストレスをかけない
まとめ
極端な話、生活圏の2km四方にメスがいなくて、出会うこともなければ、オスは静かに過ごすことができるでしょう。
反対に周囲にメスが複数いれば、オスは落ち着かない生活を強いられることになります。
多頭崩壊の問題があちらこちらで起きている今、望まない妊娠により行き場のない子犬を作り出さないためにも、繁殖制限は飼い主の重要な課題です。
犬の幸せを考え、よりよい結論を出して頂きたく思います。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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