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犬の腎臓病の末期「尿毒症」 口臭や震えの症状に気をつけて

♦尿路/生殖器
この記事は約8分で読めます。

犬の腎臓病は、進行すると腎不全へと移行し、そのもっとも進行した末期腎不全の状態が尿毒症です。

腎臓という臓器は、体内の毒素の代謝などとても重要な役割を持ちますが、病気や外傷などで壊れてしまうと二度と再生しません。

尿毒症は腎臓が機能停止に陥った、かなりシビアな状態と言えます。

今回は、犬の尿毒症の症状や対処法をわかりやすくお伝えしてみたいと思います。

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腎臓が機能できる限界は75%

腎臓は、人も犬もそれぞれ体内に2つあります。

腎臓は、何かの理由で1つを失ったとしても、残った腎臓が健康であれば1つでも十分に機能し、生きていくことができるほどタフな臓器です。

 

少し話が逸れますが、人の医療で生体腎移植という治療方法がありますね。

これは腎不全の患者さんに対し、家族間で基準を満たした場合に限り、適合者から腎臓を1つ摘出して移植する治療方法です。

(亡くなった方からの提供による移植は献腎移植)

あくまでもドナー(提供者)の意志で成り立つ治療ですが、生体腎移植は、健康であれば、腎臓を1つを提供しても支障なく生きられるからこそ可能なのです。

 

腎臓にはネフロンという組織が無数に存在し、そこで尿の元である液体成分を濾過して体外に排出する尿を作っています。

腎臓は、フィルターとしての機能をメインとしていますが、他にも複数の重要な役割を持っています。

 

 

生体において毒素を排泄させる役割を持つ臓器は、腎臓と肝臓の二つです。

肝臓は他の臓器との比較でも大きく強い臓器で、唯一再生能力がある臓器(慢性炎症性疾患等を除く)です。(参考 https://www.riken.jp/press/2017/20171024_3/index.html

しかしながら腎臓は一度ダメージを受けると組織は再生できません。

ネフロンの数が半分(50%)になっても、腎臓はその機能を正常に保てますが、75%以上が失われた時、正常な機能は維持できなくなり、腎不全という状態になります。

 

尿毒症は腎不全の末期

腎不全には急性と慢性があり、進行のスピードや原因などは異なりますが、どちらも末期になると尿毒症に移行します。

腎臓が機能を果たせなくなると、体に不必要な老廃物(毒素)を体外に排出できなくなるので、血液中には毒素が蓄積していきます。

尿毒症を起こす主な毒素は、蛋白質の代謝産物であるインドキシル硫酸・尿素・クレアチニンなどです。

それらの毒素が蓄積した血液が全身をめぐるため、他の臓器にも悪影響を及ぼします。

この状態を尿毒症と呼びます。

尿毒症は、治療が遅れるほど死の危険が高まる重度の状態です。

尿毒症の症状

腎臓の機能が低下し腎不全になると、尿を濃縮するための水分の再吸収機能も失われるので、体の水分は多量に体外に排出されてしまいます。

必要な水分まで出てしまうために体は常に脱水状態になります。

その結果、喉の渇きが激しく、たくさん水を飲むという多飲多尿の症状が現れます。

しかし、腎不全の末期になり、尿毒症まで進行すると腎臓の機能は完全に停止します。

そうなると、水分も毒素も排出できず体内に貯留するようになります。

症状は、極端に尿量が少なくなる(乏尿)・まったく尿が作られない(無尿)というように変化していきます。

つまり、多尿だった腎不全から変化し、尿毒症までいくとおしっこは出なくなるのです。

おしっこが出ないという症状の中には、尿閉というものもあるので区別が必要です。

尿閉は字のごとく、おしっこは作られていますが排出されない状態です。

尿路の途中で、何らかの原因で通り道が詰まり塞がれてしまうので、尿が外に出ていくことができなくなるのです。

尿閉の原因で多いのは腫瘍や結石です。

 

 

  • 無尿・乏尿:おしっこを作る機能そのものが失われている
  • 尿閉:おしっこが作られているが閉塞により外に出すことができない

 

尿閉は、放置すれば膀胱破裂を起こしたり、水腎症を起こして腎機能が低下し尿毒症へ移行したりする可能性があります。

尿閉、無尿、乏尿はいずれも尿毒症に繋がる兆候と考えられます。

 

【尿毒症の症状】:尿閉・無尿・乏尿・吐き気・嘔吐・下痢・貧血・むくみ・高血圧・心不全・せき・呼吸困難・知覚異常・口臭・震え・けいれん

 

症状の中で特徴的なものに、口臭があります。

尿毒症の口臭は、歯肉炎などの口臭とは異なり、アンモニア臭と呼ばれる全身性の臭い、いわゆる尿毒症性口臭という特殊なものです。

 

尿毒症で発生する血中の毒素は、脳神経にも影響を及ぼし神経症状も現れます。

これは尿毒症性脳症と呼ばれ、意識レベルの低下、手足の震え、痙攣、昏睡などの症状を表します。

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毒素の排出に重点を置く

尿毒症を改善するためには、一刻も早く血液中から毒素を取り除くことが必要です。

輸液や輸血で体内の血液循環量を増やし、同時に利尿剤を使って尿を排出させます。

対症療法として、状態に応じて心臓の機能を高める薬や降圧剤などを使用することもあります。

また、原因になる病気があるのならばその治療も行います。

しかし、尿毒症はすでに末期の状態を指しています。

全身状態が悪ければ、利尿剤の効果も得られないことが多く、期待したような改善は見られないかもしれないと覚悟しておく必要はあるでしょう。

在宅での点滴治療の効果とは

慢性腎不全は多尿のために脱水になるので、脱水に対する点滴治療が効果的です。

点滴治療には、皮下点滴と静脈点滴の2通りの方法があります。

静脈点滴は、医療機関に入院して行います。

皮下点滴は、獣医師の指導の元、飼い主さんが自宅で行うことも可能なので、通院の負担も軽減されます。

急性腎不全の場合は、原則、入院治療なので自宅点滴の適応はありません。

ただ、人に置き換えてみれば、通常、点滴は静脈から入れるからこそ大量でもスムーズに入るのであり、それに比べて皮下点滴は、薬剤の量にも限度があり静脈よりも吸収が遅いです。

さらに、このような治療で延命したり、病状を維持できるのは、腎臓の機能がわずかでも残っている段階に限られます。

すなわち慢性腎不全の時の治療であり、尿毒症まで進行すればこの治療はもう間に合わないのです。

尿毒症になる前に対処できれば、対症療法として延命の手段にはなると思います。

尿毒症は、対症療法の選択肢もかなり狭くなります。

犬の透析治療と腎移植の現状

人の尿毒症は、人工透析治療が有効な治療法です。

腎不全は、透析治療への導入が適応となる病気です。

尿毒症で全身状態が悪い場合などは、ICUで長時間に渡る透析治療なども行います。

犬や猫に対しても、血液透析や腹膜透析といった高度な治療を専門的かつ積極的におこなっている病院はあるようです。

ただし、現状では急性期の透析治療というのが限界かと思われます。

たとえば、薬物中毒などにより急性腎不全を起こしているという場合です。

急性腎不全は、一時的に尿毒症などに陥っても緊急で透析を行い原因さえ取り除けば、回復が望める可能性もあります。

動物の人工透析は、そのような憎悪期に限り、短期間で一時的な治療として行うことで効果をあげているのが今の状況のようです。

一方で、慢性腎不全に対し、永久的に定期で継続して透析治療を行うことはやはり今の段階では適応にならないようです。

犬に透析治療ができる設備のある医療機関も多いわけではないでしょう。

人の透析治療も設備のある病院でしか行えないし、対応する医師やスタッフは専門的で、手技や知識について集中して訓練を受けて初めて対応できるのです。

 

腎臓病に特化した設備を持っている病院のサイトがありましたので、参考にご覧になってみて下さい。

 

腎臓移植という治療方法は根本治療になります。

数少ないですが、犬の腎臓移植は一部の大学病院などでおこなわれているようですが、オープンな情報はあまりないようです。

臓器移植には課題も多いです。

  • ドナー(臓器提供者)の問題
  • 術後の拒絶反応
  • 移植後も免疫抑制剤を維持する必要性
  • 感染症の管理

クリアすることは容易ではないですが、助かる方法があるのならどんなことをしてもという飼い主さんの気持ちは、私がそういう選択をするのかは別として、理解できないわけではありません。

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尿毒症の余命

急性腎不全でも慢性腎不全でも、尿毒症まで進行すると、余命は数時間~数か月と考えられます。

おしっこが出なくなったことに気づかないのはもっとも危険なことかもしれません。

何の治療もしなければ、余命は数日以内という切羽詰まったものになると覚悟する必要があるでしょう。

それほどに尿毒症とは深刻な末期症状を指しています。

犬の基礎体力や治療にどこまで反応が得られるかなどによって多少違うとしても、尿毒症が楽観できないものということは認識しておいて下さい。

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まとめ

尿毒症は、腎臓病の末期です。

急性・慢性に関わらず、腎不全が進行し腎機能が完全に停止すると尿毒症になります。

そうなる前の早い段階で対処すれば、たとえ延命しかできないとしても、状態を改善する方法もあります。

腎臓の悪い子の飼い主さんは、気を付けて観察してあげて下さい。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

 

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