犬が吐く・食欲不振という現象は、病気の時に多く見られる症状です。
考えられる病気はたくさんありますが、重大な病気の可能性は知っておいた方がよいと思います。
犬は言葉が喋れないので、取り返しがつかなくなる前に飼い主が気づけなければなりません。
今回は、よく見られるこの症状から、どんな病気が考えられるかについてお伝えしたいと思います。
病的な食欲不振の判断
食欲不振とは
私達も、季節、感情、ストレス、疲労などの条件で、特に病気がなくても食欲が落ちることはありますよね。
食欲不振は漠然とした表現なので、犬の食欲不振はどこで判断すべきかが難しいかもしれません。
食欲不振とは、食べる量が減る、または全く食べないという状態のことを指しています。
【食欲不振の定義】
「全く食べない状態が48時間以上続く」あるいは
「普段の食事量の半分以下しか食べない状態が3日以上続く」
犬の病気の中には、異常に食欲が亢進する症状というものもあります。
しかし、体調が悪い時のほとんどには食欲不振の症状が伴うと考えてよいでしょう。
普段の食事量はその犬によって大体決まっているので、いつも見ている飼い主さんならわかりますよね。
いつもの食事量なのに残ってしまう、食べたがらないのであれば、原因はどうであれ犬が食欲不振に陥っている状態です。
食欲不振の原因
食欲との関係でまず思い浮かぶのが、胃や腸などの消化器系の病気ではないかと思います。
でも、直接的な臓器の病気だけでなく、腎臓や脳神経の病気、関節や骨などの痛み、口の中や歯、喉などの飲み込み機能のトラブルも、食欲に影響する原因になります。
また、犬は嗅覚で食べると言われるほど匂いには敏感ですので、鼻の異常で嗅覚が鈍ることなどが食欲不振へと繋がります。
精神的なストレスも食欲不振の原因になります。
原因について、私達に当てはめてみると理解しやすいと思います。
私達も、匂いがわからない、味がわからない、体に痛みがある、歯が悪くなっている、ストレスを抱えているなど、食欲を左右する原因はたくさんありますよね。
【犬の食欲不振の原因】
- 消化管の病気
- 身体の不調や痛み:腎臓など内臓の病気・脳神経の食欲中枢への影響・関節や骨などの痛み・口内炎や口内の傷・歯肉炎・喉の痛みや炎症
- 嗅覚の不調
- 精神的ストレス
- その他:気温や気候の影響・フードが好みではない・フードが劣化している・年齢とともに食事量が減った・食器の高さや器の食べにくさ・飲み込みが悪く食べることが負担になるなど
病気が原因かどうかの判断
犬の食欲不振は、病気以外でも左右されるものの、重大な病気が潜んでいる可能性もあります。
一回食べなかったというだけでは、まだ余裕もあるかもしれません。
ただ、食欲不振以外に症状はないか?ということは重要な観察事項です。
症状が他になくて全身状態が良いのであれば、少し様子を見ていても差し支えはないでしょう。
しかし、食事だけでなく水も飲まないという状態であれば、条件は変わります。
水分も摂れない場合、体格や年齢にもよりますが、脱水による急変を考えなくてはなりません。
何も口にしない場合、どこまで待てるかの判断が重要です。
脱水については、ちょうど人間の子供と同じように考えてみて下さい。
脱水の観察では、おしっこが出ているかは指標になり、重要なポイントです。
食欲不振で吐く病気
犬が「吐く」はわりと多い現象
犬が吐くことは、程度の違いはあるものの結構見られる現象です。
単発的に見られ、その後はケロッとしていて食事も普通にでき、経過観察でよいことも多いです。
一方で緊急性がある時もあるので、決して放置しないで下さいね。
吐く症状と食欲不振は大抵セットで表れます。
食欲不振で吐く消化器系の病気
♦急性胃炎
急に吐くという症状から始まる犬の病気の中で多いのは、急性胃炎です。
急性胃炎は、次のような原因で胃粘膜が刺激を受けて起こる症候群です。
人にも多い病気ですね。
- 腐敗した食べ物の細菌や毒素
- ウイルス
- 毒物や薬物などの誤食
- 寄生虫
- アレルギー反応など
吐くことを何度も繰り返し、胃の中に吐くものがもうなくても、吐き気症状だけがそのまま残って続くこともあります。
何度も吐くために脱水を起こし、腎機能が悪くなって体内の電解質のバランスが崩れると重篤になることもあります。
急性胃炎は、その原因によって軽度から重度までと重症度は様々あります。
治療は原因を取り除くことが基本ですが、原因ごとに異なります。
病原菌に対しては抗生剤などを投与し、点滴で水分や電解質を補って全身を管理し脱水を改善します。
治療中は、胃を休ませる目的で絶飲食にすることもあります。
回復してくれば口からの水分摂取を開始し、吐く症状が現れなければ少しずつ流動食の食事を始めます。
治療しても回復せず、激しく吐くなどの症状が続く場合は、重大な感染症が隠れている可能性があります。
♦胃拡張・胃捻転症候群
胃拡張・胃捻転症候群は、この病気を発症しやすい好発犬種があります。
これは、胃が空気と食べ物で膨れ上がった状態でねじれ、循環障害を起こす病気です。
循環障害により血流が途絶えると、胃壁は壊死してショック状態に陥ります。
吐き気があるのに吐くことができないのが特徴的な症状の一つで、腹部は大きく膨らみ腹痛があります。
吐くに吐けない状態で犬は苦しみ、呼吸状態は悪くなります。
原因が何かは明らかではありませんが、発症から急変までの時間が短く、命にも関わる重大な病気です。
食欲不振などの前兆はなく、それまで健康で元気な状態だった犬が突然発症するところがこの病気の怖さです。
治療は、全身を管理しながらショック状態の改善に努めながら、胃にチューブを入れて貯留したガスを抜き、それから手術を行います。
しかし、元気な犬が発症し急激に進行するので、発見が遅れることも多いようです。
そのために対処が遅れ、命を失う危険性が高くなります。
SNSなどで、実際にこの病気で犬が亡くなった話を見かけることがありました。
飼い主さんには、犬にこのような病気があることを知っておいて欲しいと思います。
【発症の誘因】
- 大量の早食い
- 水分の一気飲み
- 食直後の運動
《好発犬種》
コリー・ボルゾイ・シェパードなどやせ型で胸の深い大型犬
ダックスフンド・ペキニーズ
♦腸閉塞
腸閉塞(イレウス)は、異物の誤飲や腫瘍、寄生虫などが原因になって小腸が閉塞し、通過障害が起こった状態です。
通過障害が起きた部分から上部にガスなどが溜まり、細菌が異常繁殖します。
激しく吐き、細菌が出す毒素でショック状態などを起こします。
体液や電解質のバランスも崩れ、全身状態は急激に悪くなります。
完全閉塞の場合は、腸管壊死が起こり大変危険です。
腸が完全に閉塞してない場合でも、吐く・食欲不振・便秘・脱水などの症状が現れ徐々に全身の状態が悪化していきます。
治療は、ショック状態を管理しながら、緊急手術で腸を切除したり異物を除去するなどの対処が必要です。
人の腸閉塞の場合、高齢者や腸の手術の既往歴などがある場合に起こりやすいのですが、犬は異物の誤飲が原因になることが多いようです。
特に子犬などは、おもちゃの誤飲に十分注意が必要ではないでしょうか。
♦感染症
食欲不振で吐く症状は、パルボウイルス感染症のような重要な感染症の初期にも見られるものなので要注意です。
パルボはワクチンが有効ですが、ワクチン未接種で、病気で体力が落ちている犬、老犬、免疫力のない幼犬は、感染の可能性もあります。
パルボウイルスの生存力は大変強く、また感染力も強く、治療法も確立されていません。
パルボウイルス感染症は、保健所など多数の犬が収容されている場所で時折発生があるようです。
パルボウイルスは通常だと1年ほど生存できると言われ、感染を食い止めるためには飼育環境の消毒の徹底が必要です。
食欲不振で吐く時の対処法
まず、どこに原因があるのか知るために全身をチェックしましょう。
また、症状が出るまでのエピソードを探ってみて下さい。
- それまでに食べたものは何か
- おもちゃが破損してなくなっている部品がないか
- 散歩中に何か異食した可能性はないか
- 吐いたものの性状
- 他の症状など
食欲不振の原因が病気ではない場合はひとまず安心ですね。
その時は食欲がわくように工夫をしてみることにしましょう。
準備したけど食べなかった食事は一旦片付けて、改めて新しい食事に変えてあげて下さい。
好みの匂いのものを少しトッピングなどすると、食いつきがよくなりますよ。
市販品のウェットフードの缶詰なども使いやすいですが、ささみや野菜、チーズなども使えます。
まとめ
食欲不振と吐く症状が重なる消化器の病気を挙げましたが、吐く症状は脳の病気が原因の時にも見られます。
手遅れにならないために、また、苦しい症状から早く解放してやるために、できるだけ早いタイミングで医療機関を受診させてあげて下さいね。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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