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犬の口や眼球の腫瘍 メラノーマ(悪性黒色腫)の症状と余命

♦癌/腫瘍
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犬も高齢になってくると腫瘍の発生頻度が高くなり、個人的にもとても気になります。

腫瘍には悪性もあれば良性もあり、できる場所や症状も違うし余命への影響も違ってきます。

眼球や口の中などわかりにくい場所にできる腫瘍もあり、メラノーマ(悪性黒色腫)は頻度も高いので是非チェックしておきましょう。

今回はメラノーマの症状や治療、余命について情報共有したいと思います。

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メラノーマ(悪性黒色腫)は色素細胞由来のがん

メラノーマ(悪性黒色腫)は、人の腫瘍としてもよく知られている腫瘍です。

読んで字のごとく悪性の腫瘍で、犬では11歳前後の高齢犬に好発します。

皮膚の色素を作る、ほくろやシミとも関係の深い「メラニン」という物質はご存じと思いますが、メラノーマはこのメラニン色素由来の腫瘍です。

メラニンは、メラノサイトという細胞で作られています。

こちらは犬の皮膚の構造ですが、メラノサイトはこの基底層という部分に分布しています。

基底層由来の2種類の細胞は、ケラチノサイトとメラノサイトである。ケラチノサイトは絶えず再生され、上方に押し上げられていき、角質層で死細胞として排出される。メラノサイトは遺伝子およびホルモンによって調節され、日光または刺激物質の刺激も受けて皮膚に色をつけるメラニンを産生する。

出典元 https://www.excellenceindermatology.jp/cutaneous-anatomy-physiology.aspx

このメラニンという色素を作る細胞であるメラノサイトががん化したものがメラノーマ(悪性黒色腫)です。

人の皮膚に発生するメラノーマ(悪性黒色腫)は、一見ほくろやシミと見分けがつきにくく、ほくろが急速に大きくなってきたので検査したら、それが実はメラノーマという腫瘍であったということは少なくありません。

ほくろとは違う特徴としては、形がいびつであり、左右非対称、色調にムラがある、周辺がギザギザしているなどがあります。

犬においても、メラノーマ(悪性黒色腫)は黒い色素沈着がある腫瘍なので、ほくろや黒い腫瘤、あるいは黒いかさぶたのような外観をしていることが特徴です。

ただ、無色素性や乏色素性と呼ばれる、黒いという特徴を持たないメラノーマ(悪性黒色腫)も、全体の3割程度は存在するようです。

黒くないメラノーマ(悪性黒色腫)は、メラニンが少ないためであり、色素のない小さな腫瘍のために目立たず、発見が遅くなってしまうという危険性があります。

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メラノーマ(悪性黒色腫)は発生部位により悪性度も異なる

メラノーマ(悪性黒色腫)は皮膚の悪性腫瘍ですので、体の皮膚のどこにでもできます。

爪や爪の周囲、粘膜のある目(眼球)、鼻、口の中、肛門部などにも発生します。

ただ人の場合には、メラノーマ(悪性黒色腫)はどこに発生したものであっても悪性腫瘍であるという認識になりますが、犬では、どこに発生したかによって悪性度が大きく異なるようです。

犬のメラノーマ(悪性黒色腫)は、口腔内に発生したものは悪性度が高く、リンパ節や肺転移も多く、転移率80%という高率で余命にも大きく関わって来ます。

しかし、目(眼球)や皮膚(爪を除く)に発生したものは転移が少なく、経過は比較的良好なことが多いようです。

メラノーマ(悪性黒色腫)の原因

メラノーマの明らかな原因は不明ですが、原因として考えられているのは外部から加わる慢性的な刺激が1つとされています。

例えば紫外線もその1つです。

紫外線を浴びすぎると皮膚がんになる、とはよく言われることですが、根拠がないわけではないのです。

他にも、摩擦や圧迫などの刺激も原因と考えられ、犬の口腔内に発生する場合、硬いフード、噛むおもちゃ、硬いガムなどもその刺激の1つになります。

また、夏に熱くなったアスファルトの上を歩くこと、硬くて歩きにくい散歩道なども強い外的刺激になります。

診断

針生検という検査方法による細胞診で、メラノーマ(悪性黒色腫)と疑われる腫瘍の一部を採取して検査します。

そうすると、メラニン顆粒を持つ腫瘍細胞が認められ、それで診断がつきます。

しかし、上記した、黒色ではない色素の少ないメラノーマ(悪性黒色腫)の場合などは、特徴的な所見が認められにくいので診断がつかないこともあります。

最終的には摘出手術を行い、その腫瘍を病理検査することでしか正確な診断ができないこともあります。

【針生検の参考記事】

犬の首まわりのしこりは悪性の病気?リンパ腫の症状と余命

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口に発生する・口腔内メラノーマ(悪性黒色腫)の症状と治療

症状

犬の口腔内にできる腫瘍の30%以上がこの口腔内メラノーマ(悪性黒色腫)と言われ、発生頻度が高く、しかも口腔内メラノーマは悪性度が高いとされています。

口腔内のどこにでも発生しますが、特に高い確率で見られるのが歯肉部(歯ぐき)であり、次いで口唇、舌、上顎などに多く発生します。

口腔内の腫瘍は発見しにくく、また、色素がないタイプでは異常という判別も困難であり、飼い主さんが気づいた時にはすでに進行して大きくなっていることも多いようです。

それだけでなく、肺転移やリンパ節転移も伴っているパターンが少なくないようです。

小型犬やレトリーバーに多い病気であり、そのような犬の口腔内に何か腫瘍らしきものを発見した場合は、メラノーマ(悪性黒色腫)の可能性も考えるべきです。

症状》

口臭がひどい・流延がある(よだれ)・口から出血している・食べ方がおかしい・食べ物やおもちゃに血液が付着する・食べ物の飲み込みが悪い・口腔内に違和感があるような症状・食欲低下や体重減少などの全身症状

呼吸状態が悪い、咳をしているなどの呼吸器症状がある場合は、肺転移を起こしている可能性も考えられます。

治療

メラノーマ(悪性黒色腫)の治療は、手術で摘出することが第一選択になります。

手術の為には腫瘍とその周囲の組織の状態を確認する必要があるので、CT検査が行われます。

また、血液検査・胸部レントゲン3方向・リンパ節針生検などの検査を行い、肺やリンパ節への転移を確認してその進行の程度を調べます。

根治的手術として腫瘍の下層にある骨の切除も必要になり、腫瘍の周辺を大きく切除することが再発率を下げることになります。

さらに、手術後は転移を防止する為に抗がん剤による化学療法や免疫療法がおこなわれます。

しかし、口腔内メラノーマは、発見時にすでに遠隔転移していることも多く、手術による切除が困難な時は、放射線治療も有効と考えられます。

放射線治療は、完治には至らないにしてもその60%は完全完解できると言える治療成績のようです。

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目(眼球)に発生する眼球メラノーマ(悪性黒色腫)の症状と治療

症状

犬の目の腫瘍でもっとも多いものも、この眼球メラノーマ(悪性黒色腫)です。

眼球メラノーマが発生しやすいのは、目の中の虹彩や毛様体(前部ブドウ膜)という部分です。

【目の構造の参考記事】

犬の緑内障は失明の危険あり!症状を知って早期の治療を!

ブドウ膜は、虹彩・毛様体・脈絡膜で構成され、血管やメラノサイトが豊富に存在しています。

初期の眼球メラノーマ(悪性黒色腫)の症状は、目の中にシミのような黒っぽい部分が認められるものの気付かれることは少ないようです。

しかし、進行とともにこのシミ状の色素沈着は大きくなり、虹彩(いわゆる黒目の瞳孔周囲)を覆うように広がって、分厚く肥厚するようになります。

眼球のメラノサイト由来の腫瘍は良性のものも73%と多く、良性腫瘍はメラノサイトーマ悪性腫瘍はメラノーマ(悪性黒色腫)といように名称が厳密に区別されています。

しかし、良性が悪性に変わる可能性があるものもあり、その判断は慎重さが必要です。

虹彩の明らかな肥厚、緑内障を併発、難治性ぶどう膜炎、毛様体や強膜へ浸潤などの兆候があれば、悪性の可能性が高くなります。

その他の症状としては、目が腫れる(目の腫大)・眼球の腫瘤・眼圧の上昇による眼痛(続発性緑内障を示す症状)・目の充血・開眼できない・視力障害などの症状があります。

治療

眼球メラノーマ(悪性黒色腫)は、眼球摘出手術が第一選択の治療方法です。

しかし、良性腫瘍であった場合は眼球を摘出する必要はないので、その腫瘍が良性か悪性かの見極めが重要です。

針生検などの検査を行い診断がつけられます。

良性であった場合、悪性に移行する可能性も念頭に置きながら、可能な限り眼球を温存するために経過観察されます。

悪性であった場合は、眼球メラノーマは転移しにくいと言われながらも他の臓器へ広範囲の遠隔転移もあるので、手遅れにならない早い段階で手術が検討されます。

続発性緑内障を起こしている場合は、早急に眼球摘出の対象となります。

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メラノーマ(悪性黒色腫)の余命

メラノーマは、その進行レベルによって初期からステージが4段階に分類されます。

《メラノーマ(悪性黒色腫)ステージ分類》

ステージI:腫瘍の大きさ2㎝以下でリンパ節転移なし

ステージII:腫瘍の大きさ2~4㎝でリンパ節転移なし

ステージIII:腫瘍の大きさ4㎝以上あるいはリンパ節転移所見あり

ステージIV:多臓器への遠隔転移あり

参考 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17591290

 

《手術単独の治療を行った場合の余命》

ステージI:約1年

ステージII:約6ヶ月

ステージIII:約3ヶ月

ステージIV:約1ヶ月

これを見るとかなり難しい病気であることはわかります。

出血などの症状に気づいて医療機関を受診した時は、すでに進行した状態なのが現実のようで、特に肺転移した病状の余命は厳しいようです。

しかし早期に発見して、手術と化学療法、放射線療法などを併用して治療を行うことができ、その後の全身管理がうまくいったならば、余命を延ばすことも可能と思われます。

近年ではメラノーマを対象としたDNAワクチンが開発されているようです。

遠隔転移が認められないメラノーマに対し、このワクチンを使った場合、余命が1000日以上という結果がアメリカで報告され、2009年にアメリカで承認を得ました。

それでもまだ確立された治療方法ではなく、日本においては治験の段階にあります。

 

まとめ

メラノーマ(悪性黒色腫)は、人と共通の皮膚の悪性腫瘍ですが、犬は人のそれとは違い、発生する場所によって悪性度が大きく異なります。

その中で、口腔内に発生するメラノーマは悪性度が高くて進行も早く、遠隔転移しやすい為、ステージによって余命に大きく影響します。

メラノーマは、メラノサイト由来の黒い腫瘍であることが特徴ですが、色素のない腫瘍も存在するということが要注意です。

口臭や出血などの症状は歯肉炎などと区別しにくいので、気を付けて観察してあげて下さい。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

 

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