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犬の椎間板ヘルニア手術にかかる費用と治療の成功率について

♦整形外科
この記事は約9分で読めます。

犬の椎間板ヘルニアは、安静第一の内科的(保存的)治療の他に、手術という手段もあります。

ですが、脊椎は、重要な神経が通っている部位なので、手術が難しいという印象があるのではないでしょうか。

飼い主としては、手術にかかる費用や後遺症のことも不安になると思います。

それで今回は、犬の椎間板ヘルニアの手術の成功率や費用を調べてみましたので、共有したいと思います。

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犬の椎間板ヘルニアの手術適応

犬の椎間板ヘルニアは、重症度ごとに5段階にグレード分類されます。

どんな治療が選べるのかは、グレード分類を基準にして、ヘルニアの型や犬の年齢、他に病気はないかなど、総合して検討されます。

グレードだけで考えると、一般的には次のようになります。

  • グレード2までの比較的軽度:内科的治療が選択される
  • グレード3以上の中等度~重度:手術が検討される

しかし、犬種の中には、先天的にこの病気を発症しやすい、軟骨異栄養犬種という分類の犬がいます。

この遺伝的素因を持って発症した場合、進行が急激なことが多いので注意が必要で、急遽手術が検討されることもあります。

内科的治療は、症状が安定するまでの一定期間、絶対安静と薬による治療です。

【参考記事】

犬の椎間板ヘルニアの保存的治療 安静・薬・レーザーについて

犬の椎間板ヘルニアの初期症状と進行レベルのグレード分類

グレード5の重度の椎間板ヘルニアでは、神経麻痺症状を認めた時点で早期に手術が必要であり、緊急手術の対象になることがあります。

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椎間板ヘルニアの手術の実際

どのような手術なのか?

椎間板ヘルニアは、何かの理由で潰されてしまった椎間板が突出し、または脱出し、脊髄神経を圧迫することで、痛みや神経症状が表れます。

内科的な治療では、安静にすることと、圧迫された神経とその周辺の炎症を抑える薬により、椎間板の回復を待ちます。

手術による外科的治療では、脊髄神経を圧迫している、飛び出した椎間板を直接切除して取り除くのです。

手術の方法は複数あり、どこから切開するか、どの方法でおこなうかは、椎間板ヘルニアの部位が頸椎か胸椎か腰椎かなどで違います。

頸椎椎間板ヘルニアの手術は、仰向けの姿勢になり、喉から切開する腹側減圧術(ベントラルスロットVentral Slot Decompression)という術式がもっとも多く使われます。

胸・腰椎椎間板ヘルニアの手術は、うつ伏せの姿勢で背中側から切開する片側椎弓切除術(ヘミ・ラミネクトミー Hemi laminectomy)という術式が一般的です。

椎間板ヘルニアの手術の術式の種類

腹側減圧術(ベントラルスロットVentral Slot Decompression)・片側椎弓切除術(ヘミ・ラミネクトミー Hemi laminectomy)・ラブ法・背側椎弓切除術(ドーサル・ラミネクトミー:Dorsallaminectomy)・予防的開窓術 (フェネストレーション:Fenestration)など

近年、注目なのは再生医療、動物医療でも行われるようになり、一般的ではないですが、治療が可能な医療機関もあります。

再生医療は、犬の手足の骨髄細胞を採取し、それを約2週間培養します。

そして、脊髄神経細胞を作り出すことが可能な幹細胞を作り、それを犬に移植する(体内に戻す)という治療を繰り返し行います。

手術に必要な検査

椎間板ヘルニアの手術が適応の場合は、ヘルニアを起こしている病変部の状況を正確に確認することが必要です。

そのためには、症状の確認や単純レントゲン検査に加え、CTやMRI、脊髄造影レントゲン検査などの画像検査が必須になります。

脊髄造影は手技が難しくリスクも高い検査なので、最近はCTやMRIが選択されることが多いようです。

このような画像検査は、人の場合は手軽に受けられますが、犬は、検査中は動かないということが無理なので、全身麻酔下で行われます。

さらに、椎間板ヘルニアの病変確認だけでなく、麻酔が可能か、手術に耐えられるかなどを血液検査や心電図などの検査でチェックします。

手術に必要な入院期間

椎間板ヘルニアの手術は、ヘルニアの原因を取り除く根治治療です。

手術が効果的だった場合、手術後には嘘のようにすっきりと症状が改善するのです。

入院に必要な期間は、それぞれの病院ごとの設定があると思います。

経過によっても多少違ってくるでしょうが、目安は、4~7日間くらいのようです。

手術後の出血などに注意して経過観察し、順調なら、手術後のリハビリも少しずつ開始されます。

抜糸は、退院時に病院から指示があるので、指定された日に外来受診し、傷の確認をしながら抜糸をします。

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手術・検査・通院にかかる費用

検査にかかる費用

椎間板ヘルニアの主な検査として、手術には絶対に必要となる画像検査の費用は次のようになります。

◇単純レントゲン検査

一般的に「レントゲン」と言えばこの検査のことです。

単純撮影ではヘルニアは写りませんので、確定診断には使えませんが、骨の変形や骨折の有無などを見ることができます。

痛みの原因が他にないかを確認する目的で行われ、短時間で撮影でき結果もすぐにわかります。

費用は大体4,000円~8,000円くらいになります。

◇脊髄造影レントゲン検査

脊椎間に穿刺針を刺し、造影剤を針からクモ膜下腔に注入し、レントゲン撮影で造影剤の流れを確認する検査です。

椎間板ヘルニアの病変部の確認ができます。

全身麻酔が必要で、検査に約1時間を要し、費用は20,000円~30,000円くらいになります。

◇CT検査

無麻酔で撮影が可能なこともある検査です。

短時間で病変部の確認ができ、脊髄造影との組み合わで検査も可能です。

10~15分と短時間での検査で、費用は30,000円~50,000円くらいです。

◇MRI検査

磁器を使った画像診断で、特に神経系の評価をするのにとても有効な検査です。

費用は、麻酔も含めて50,000円~10,000円です。

検査機関によって費用の開きが大きく、安いところでも高額な費用がかかる検査ですが、詳細な結果が得られとても優れています。

【参考記事】

犬のてんかん治療に必要な検査や薬 かかる費用の目安は?

手術にかかる費用

椎間板ヘルニアの手術にかかる費用については、手術を行う病院によってかなり違いがあるようです。

動物医療は人のように、保険診療制度があるわけではないので、あくまでも自由診療です。

手術費用の設定は医療機関によるところです。

手術費用は20万円~50万円で、それ以上の高額な費用の設定になっている病院もあるようです。

その費用の内訳は、麻酔費用、検査費用、入院費用も含まれている場合が殆どです。

一見、費用が安い場合でも、MRI検査などの費用は別に徴収される仕組みになっていることがあります。

高度医療センターなどでは、手術費用は高めになっていることが多いです。

手術費用はもちろん大事なことですが、それ以上に、たとえ費用が割高でも、手術に慣れていて、確実な技術を持っている病院を選ぶということがもっとも重要かと思います。

ちなみに再生医療の費用は、1回の移植費用が10万円強、2回目以降が少し安くなるといったところのようですが、これも病院ごとに差はあります。

通院にかかる費用

退院後は定期的に通院が必要になります。

手術費用の中には、抜糸までの費用が含まれるところも多いかもしれません。

通院の再診料は大体1,000円前後で、それに検査費用や薬代などが加算されます。

術後に再発防止のためのレーザー治療を行う場合、1回1,000円~4,000円ほどの費用がかかります。

また、手術後に通院でリハビリを行うことが多いので、マッサージや関節可動域運動などのリハビリの費用が1回1,000円~1,500円程度かかります。

水中トレッドミルなら1回3,000円~5,000円程度の費用がかかります。

重度の椎間板ヘルニアは、手術やリハビリでも機能回復できないこともあって、それに代わり車いすの作成費用がかかる場合もあります。

【参考記事】

犬の椎間板ヘルニアとリハビリテーションの種類・期間について

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椎間板ヘルニア手術の成功率

手術は、ヘルニアの原因になっているものを直接取り除くことができる反面、あらゆるリスクを伴うので、それが成功率を下げる原因になります。

手術のリスク

手術そのものもですが、手術前の画像検査にも全身麻酔が必要ですので、麻酔によるリスクが考えられます。

全身麻酔は、少なからず臓器に負担がかかります。

まれに、呼吸障害や血圧の低下によるショック、腎障害、肝障害、心停止などの重大な合併症が起こる可能性もあります。

特に、高齢犬や元々何らかの内臓疾患などを持っている犬には、麻酔のリスクは高くなります。

手術が成功した後には、術後の合併症として、脊髄周辺の出血が起こることがあり、これは大変重要な症状です。

術後出血は、脊髄神経を急激に圧迫し、急変する可能性があります。

そのような合併症が起こらなくても、術前よりも症状が悪化することも考えられます。

一時的な悪化ということもありますが、後遺症として麻痺が残る可能性もあります。

また手術成功後は、同じ部位ではなく別の部位にヘルニアが再発する可能性はあります。

手術による治療成功率

椎間板ヘルニアの治療は、早期であるほどに成功率は高いです。

内科的治療と外科的治療を比較すると、グレードが低い軽症のものに関しては、成功率にそれほど違いがありません。

しかし、グレードが高い重症のヘルニアについては、手術による治療の成功率が、内科的治療の成功率を大きく上回ります。

グレード別の治療成功率

  • グレード1:内科療法3週間の治療成功率100%、手術による治療成功率100%
  • グレード2:内科療法6週間の治療成功率84%、手術による治療成功率100%。
  • グレード3:内科療法9週間の治療成功率100%、手術による治療成功率95%(回復まで1週間)
  • グレード4:内科療法12週間の治療成功率50%、手術による治療成功率90%(回復まで2.5週間)
  • グレード5:内科療法治療成功率7%、手術(48時間以内)による治療成功率50%(回復まで2週間)

(ただしグレード5での48時間を越えての手術は治療成功率6%)

情報の出典元:Davies and Sharp 1983 Lineberger and Kornegay

しかし、グレード5においては、治療成功率に大きな期待はできません。

グレード5の半数は歩行できるようにはならず、さらに48時間以内に手術を行えるかどうかで治療成功率は極端に変わります。

グレード5で深部痛覚までなくなり完全麻痺になったヘルニアでは、手術も時間勝負です。

椎間板ヘルニアはいかに早期に治療に結びつけるのかが、予後に大きく影響します。

椎間板ヘルニアは、重度でなければ治療成功率は高く、手術することで、痛みや麻痺の症状が改善できることに期待できます。

反対に、重度になるほどに手術には高い技術が必要で、それでも成功率は低くなります。

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まとめ

犬の椎間板ヘルニアは、グレード分類で低いものに対しては、どの治療も成功率にそれほど差がありませんが、グレードが高くなるにつれて手術の有効性がはっきりします。

重度になると、たとえ手術を行っても回復には期待できず、成功率は極端に低くなります。

どの病気であっても同じことが言えるとは思いますが、椎間板ヘルニアの手術もできる限り早期に行うのがポイントです。

椎間板ヘルニアはどの犬種にも起こりうる病気ですが、特に遺伝的な関わりの深い犬種は、普段からの日常生活の工夫が必要です。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

 

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