肝臓の機能の異常は、血液検査でわかります。
よく「肝機能の数値が高い」「肝機能があがっている」という言い方をしますよね。
腎機能とともに肝機能もチェックする機会の多い検査項目なので、どの数値を見るとよいか覚えておいたら便利です。
今回は、犬の肝臓病で多いものと検査数値について、みなさんと情報共有したいと思います。
また肝機能を改善すると言われるサプリもご紹介します。
肝臓は生命に関わる重要な機能を持つ
肝臓は身体の中でも重さのある大きな臓器です。
肝臓の役割の主なものをざっくり書くと次のとおりです。
【肝臓の役割】
- 栄養素の吸収や合成
- 体内の有害物の解毒
- 消化液(胆汁)の合成・分泌
肝臓は丈夫で強い臓器であり、慢性炎症がない健康な肝臓ならば、70%切除しても元の大きさに戻ると言われています。
つまり再生能力が高いという特徴を持っているのです。
同じように体内で解毒の役割を持つ重要な臓器の腎臓は再生することはなく、この点は対照的です。
1.栄養素を取り込んで合成し貯蔵する
食べ物は、体内に入るとそれぞれの栄養素(糖、アミノ酸、脂質)に分解されて、小腸から吸収されます。
腸から肝臓に繋がっている門脈という血管があり、栄養素もそこを通って肝臓に運ばれます。
肝臓でさらに利用しやすい物質に変えられて貯蔵され、必要に応じて血液中に送り出されます。
糖質はグリコーゲンとして貯蔵され、必要時グルコースに変えて送り出します。
タンパク質はアミノ酸として肝臓に取り込まれ、アルブミンや血液を構成する成分が作られます。
脂質は脂肪酸とグリセリンとして取り込まれ、コレステロールや中性脂肪を生成し、エネルギー源や胆汁酸の材料として使用します。
2.薬物や有害物質などの解毒をおこなう
小腸からは吸収される物質には、薬物や体にとっては有害な物質なども含まれます。
肝臓は、このような毒物の分解や中和をします。
蛋白質は栄養素として分解吸収され、副産物としてアンモニアが発生します。
アンモニアは、そのままで体内に蓄積すれば有害な毒物です。
肝臓は、アンモニアを分解して尿素に変えます。
尿素は無害であり、尿中に混じって体外へと排出されます。
人が摂取するアルコールやたばこのニコチンを分解してくれるのも肝臓の働きです。
また、薬も腎臓または肝臓で代謝される為、長く飲み続けることで肝機能に影響するような薬も一部あるのです。
3.消化液を作り分泌する
肝臓ではコレステロールを合成し、それを元にして、脂肪を消化吸収する胆汁酸を含む消化液を作ります。
その消化液がビリルビンという黄色い色素を含む胆汁です。
胆汁は肝臓で作られて、胆のうで濃縮され貯留され十二指腸に分泌されます。
4.血液の代謝や凝固に関わる
血液は骨髄で作られるのですが、赤血球を作るのに必要な葉酸やビタミンB12などの栄養素は肝臓に蓄えています。
骨髄が必要とした時にその栄養素を送り出します。
また、古くなった血液を壊したり、血液を凝固させる(止血作用)物質を作ったりします。
肝機能は血液検査でわかる
肝機能はこの項目の数値を見る
一般的に肝臓の機能の参考にする数値は、次のようなものです。
【肝機能の指標となる検査項目】
- ALT(GPTとも呼ぶ)
- AST(GOTとも呼ぶ)
- T-BIL(総ビリルビン)
- γ-GTP
- ALP
ALTとAST
どちらも肝臓に含まれる酵素です。
肝臓に異常があり、組織が炎症を起こして壊れていく時にこの数値が上昇します。
ただし、ASTの方は肝臓の他に心臓や骨格筋にも含まれているので、そちらに病気がある時にも数値は上昇します。
T-BIL
血液の赤血球中の成分であるヘモグロビンという物質が壊れた時に発生する、ビリルビンという黄色い色素のことです。
胆汁中にも含まれる色素です。
肝臓の処理能力が悪くなると、この数値が上昇します。
ビリルビンの数値が高くなると、皮膚や目の白い部分に黄疸が出現します。
ALP(アルカリフォスファターゼ)
肝臓以外の臓器や骨などにも含まれている酵素で、肝臓で処理されて胆汁中に排出されます。
肝臓、胆道系の異常、胆汁が滞っている時などにこの数値が上昇します。
骨にも含まれている酵素の為、他の肝機能のデータが正常でALPのみ高値の場合は、骨肉腫などの骨疾患も疑われます。
γ-GTP
肝臓の他、腎臓や膵臓の細胞膜にもある、解毒に関わる酵素で、アルコールに敏感に反応します。
アルコール過剰摂取や薬剤性の肝障害、肝炎、肝癌など、肝臓や胆管が傷ついて異常がある時に数値が上昇します。
数値は総合的に判断する
以上の検査項目は、肝臓の病気の指標になる主な数値ですが、数値は相互に影響しあって動くものもあります。
原因も一つではないので、総合的な判断が必要になります。
例えば、一部ですが、
CBC(赤血球数)とHb(ヘモグロビン)で、肝臓の異常に伴う貧血などはないかを見ます。
WBC(白血球数)とCRPとGlb(グロブリン)で、肝炎や感染症による全身の炎症の有無や程度を見ます。
Glu(血糖値)とT-Cho(総コレステロール)とAlb(アルブミン)で、肝不全などによる栄養状態の低下がないかを見ます。
さらに、血液中にアンモニアが増えていないかを調べるためには、NH3(アンモニア)などの検査もあります。
【検査正常値参考サイト】:秋山どうぶつ病院 犬と猫の臨床検査
犬の肝臓の病気
肝炎(慢性肝炎)
犬の慢性肝炎には、遺伝的要素が関係するものもあります。
ウエストハイランドホワイトテリアなどのテリア系の犬は、銅が肝臓に溜まって慢性肝炎を起こしやすい傾向があるようです。
ドーベルマンやアメリカンコッカースパニエルなども原因がはっきりしない慢性肝炎が若年齢で起こりやすいです。
遺伝以外の原因では、食生活から起こるものが多く、半生フードやビーフジャーキーなどの食べ物や肥満が原因と考えられます。
症状は、食欲不振や慢性的な嘔吐などがありますが、はっきりしない為に気づきにくく、黄疸や腹水などの重度の症状で初めて気づくことが多いようです。
慢性肝炎は、進行して少しずつ肝臓の組織が線維化し、末期には肝硬変に移行します。
悪化すれば肝不全を起こし、生命の危険もあるので要注意です。
治る病気ではないですが、肝臓の機能低下を薬などで遅らせる治療が可能です。
これに対し、犬伝染性肝炎はイヌアデノウイルスⅠ型によって起こる感染症で、急性で発症する肝炎です。
1歳以下で感染すると致死率が高く、成犬はかかっても症状が出ないままのことが多いです。
感染力が強く、唾液、尿、食器を介して感染し、回復後も尿中にウイルスが半年程度残るので、周囲への感染源になり注意が必要です。
- 突然致死型:子犬が急に腹痛で発症し半日~24時間以内に死亡する
- 不顕性型:症状はないがウイルス感染している
- 軽症型:食欲不振や発熱などの症状が軽い
- 重症型:2日~1週間くらいの潜伏期があり、鼻水や発熱などで発症、下痢や嘔吐、腹痛などの症状が4~6日継続した後に治る
犬伝染性肝炎はワクチンが有効です。
免疫力が不足している場合、慢性肝炎になってしまうこともあります。
門脈シャント
門脈シャントは先天的な血管の異常であることが多いのですが、後天性のシャントもあります。
腸から肝臓に栄養分を運ぶ門脈という血管が、肝臓を通ることなく心臓に近道になるバイパスを作ります。(これがシャントと呼ばれる異常な血管)
その為、腸から流れ込む、血液中のアンモニアを始めとした多くの毒素が、肝臓で解毒されないまま直接心臓に流れ、体循環で全身をめぐってしまうのです。
肝臓そのものは正常であっても、肝臓の解毒作用が働いてない肝不全と同様の症状になり、有害物質が全身に届けられるので高アンモニア血症や抗尿酸血症を起こします。
肝臓の方は、栄養素が運ばれて来ないので栄養不足になり、肝臓そのものは委縮して小さくなり、身体の発育は不良になります。
生後6ヶ月までの幼犬で、発育不良であり、食後に高アンモニアによる肝性脳症の神経症状が現れるような場合、この可能性が高いです。
後天性のシャントは、慢性肝炎や肝硬変、胆管の閉塞などが原因で門脈圧が異常に上昇し発症します。
異常血管のシャントは、一本だけでなく複数できていることもあります。
シャントには、肝臓内にある肝内性シャントと肝臓の外にある肝外性シャントの2種類があります。
治療方法は手術です。
手術前に血管造影検査が必要なので、手術も高度医療機関でおこなわれることが多いようです。
手術が順調であれば、生存率は高くなります。
肝硬変
肝硬変は、肝臓の慢性的な炎症が続くことによって肝臓全体が変質して線維化し、硬くなって正常な機能ができなくなる病気です。
変性して線維化した肝臓は元には戻りません。
治すことはできないので、利尿剤を使ったり針を刺して溜まった腹水を抜くなどの対症療法をおこないます。
急性肝不全
肝細胞が全て線維細胞に変性してしまい、肝機能不全の状態になります。
肝細胞の70~80%が急激に壊死してしまった状態を急性肝不全と呼びます。
【原因】
犬伝染性肝炎・レプトスピラ症・薬物中毒・急性膵炎・フィラリア症・外傷による腹部損傷・熱射病など
【症状】
嘔吐・下痢・多飲多尿・黄疸・肝性脳症(旋回運動・けいれん・昏睡など)・黒色便・皮下出血・肝機能検査の数値の異常
抗生剤、水分、電解質などを点滴し、アンモニアを下げ、輸血するなど、原因を特定して対処していきます。
肝臓癌
腫瘍には、そこが原発であるものと他の部位から転移したものがあります。
原発性は良性と悪性がありますが、転移性は全てが悪性です。
原発性でもっとも多いのは肝細胞がんです。
無症状の時に健康診断でたまたま早期に発見されることもありますが、腹水や黄疸などの重度の症状が現れてから発見されることが多いようです。
肝臓癌は、エコー検査でわかります。
詳細な診断にはCT検査が必要であり、治療は手術による摘出です。
切除が可能だった場合は予後良好ですが、切除が不可能だった場合、予後は短いかもしれません。
肝機能を改善するサプリメント
SAMe(サミー)とは、正式名をs-アデノシルメチオニンといい、欧米では、関節・肝臓・脳をサポートする成分として認知されている酵母です。
こちらのサプリは、SAMe(サミー)を配合して嗜好性の高いふりかけにしたものです。
初回は試食用がついていますので、安心してお試しいただけますよ。
まとめ
血液検査は目的によって調べる項目もそれぞれ異なります。
肝機能検査は、医療機関で一般的に行うことができる検査です。
その数値からわかる病気は多いですので、おかしいと感じることがあれば、早期に診察や検査を受ける習慣をつけた方がよいと思います。
犬は自分から症状を訴えることはないし、客観的な症状が出てきた時は、病気がかなり進行していることも少なくないからです。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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