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犬のてんかんは完治の難しい脳炎が原因になることもある

♦ストレス/脳神経
この記事は約8分で読めます。

犬のてんかんの症状を起こす原因の1つに脳炎という重大な病気があります。

私の犬は過去に脳炎と診断された経験があります。

治療を開始し、後にそれが間違いだったと判明、つまり脳炎は誤診で私の犬は特発性てんかんでした。

当時は少ない情報を探し回り、不安だった日々は忘れられません。

今回はてんかんの原因になる脳炎という病気について学んだことを共有したいと思います。

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てんかんは病名でもあり症状でもある

脳の病気や症状は、まだ解明されていないことの多い未知の分野でもあり、とても複雑で難しいです。

てんかんは、てんかんという病名でもありますが、何らかの病気が脳に影響して起こる症状の名称でもあります。

  • 原因になる病気があって起こる発作:症候性てんかん
  • 原因不明のけいれん発作を起こす病気:特発性てんかん

【てんかん発作の種類】

犬のてんかんの症状 危険な発作の2パターンと対処法

てんかん発作のような症状を起こす「脳以外の病気」もあるので、診断をはっきりさせるために検査で絞り込んでいきます。

【てんかんの診断の流れ】

犬のてんかんの検査・治療にかかる費用の目安について

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脳炎は症候性てんかんの原因になる病気のひとつ

脳炎という病気は、脳の一部に炎症を起こす病気であり、てんかん発作の原因になります。

脳炎には、

  • ウィルスや細菌による感染性脳炎
  • 免疫異常による(と考えられる)特発性(免疫介在性)脳炎

があります。

脳炎を発見するためにはCTやMRIなどの画像検査が必須です。

感染性脳炎

感染性脳炎の原因

外傷・内耳や副鼻腔の細菌感染・ジステンバーなどのウイルス・クリプトコッカスなどの真菌・トキソプラズマなどの原虫

診断にはMRIに脳脊髄液検査を併用します。(ただし頭蓋内圧が上昇している場合は脳脊髄液検査が不可)

感染性脳炎の治療は病原体に対する薬剤の投与であり、細菌性脳炎などで抗菌剤がうまく効いた場合は完治することも期待できます。

その可能性は治療開始が早ければ早いほど高くなります。

しかし、一般的にウイルス性脳炎は完治の見込みがなく予後も不良とされます。

ジステンバー脳炎はウイルス性ですがワクチンがあります。

ワクチンで免疫を得ている犬であれば、ジステンバーウイルスに感染しても無症状か軽い呼吸器症状程度で完治が期待できます。

免疫を持たない犬にはウイルスが脳の奥の方まで入り込み、脳脊髄炎を起こしててんかん発作を始めとする神経症状が現れ、予後は悪く死亡率も高い病気です。

ジステンバー脳炎には特効薬もなく、一命を取り留めたとしてもその殆どが脳神経系の重大な後遺症を残します。

特発性(免疫介在性)脳炎

特発性脳炎は、特に若い年齢の犬に多いとされる病気です。

「特発性」というのは、「特発性てんかん」もそうですが、「特発性前庭疾患」などいろいろな病気に付けられる言葉で、主に原因不明のものに対して用いられる言葉です。

特発性脳炎には次のような種類があります。

1.壊死性髄膜脳炎(NME)

大脳~脳幹部に多く発生、急性に進行し早期に死亡することが多い。

以前からパグ脳炎と呼ばれていたものはこの脳炎のこと。

2.壊死性灰白質髄膜脳炎(NLE)

間脳と大脳に同時に病変が出現する。

ヨークシャーテリアに多い脳炎。

3.肉芽腫性髄膜脳炎(GME)

壊死性のものとの違いは病変の特徴であり、肉芽腫が脳にできるという、腫瘍に似た脳炎。

視神経の症状から発症する眼型という型は、進行性網膜委縮などの眼疾患との鑑別が難しい。

特発性脳炎はどの犬種にも起こりうる病気ですが、好発犬種があります。

その犬種に特有とされる脳炎(パグ脳炎が代表的)もあります。

《好発犬種》

チワワ・マルチーズ・ヨークシャーテリア・ミニチュアダックスフンド・パピヨン・シーズー・ペキニーズ・柴犬など

脳炎の症状はてんかん発作も含む神経症状です。

《脳炎の症状》

てんかん発作・運動失調・歩行異常・視覚異常(見えていない)・念転斜頸(首が傾く)・起立不能・意識障害(ボーっとしている)など

私の犬が脳炎と診断されそれが誤診とわかるまで

当時、私の犬には1つの同じ動作の繰り返しがよく見られていました。

それは癖と言えばそう見えるしぐさでもありました。

意識を失うような全身発作はなかったので重要視していたわけではなく、ただちょっと気になるのだということを他の診察のついでに当時のかかりつけ医に話しました。

すると獣医師からは、それは神経症状でありてんかんの部分発作とも考えられると言われました。

そして急遽、脳を確認するためにCT画像検査を行う運びになったのです。

まさかそんな展開になると思わなかったのですが、さらにその画像をもって脳炎の疑いありと診断されました。

脳炎は運がよければ完治するかもしれないが、完治がなければ2年ほどの寿命かもしれないという告知をされ、その日からステロイド剤と犬を鎮静させる目的で精神安定剤が投与されました。

ステロイドはかなり思い切った量だったと思われ、副作用が目立つようになりました。

私は犬の水飲みボトルに目盛りを打ち、多飲多尿になった犬の飲水量と尿量をチェックしました。

尿量は、シートにできた円の大きさを大まかな目安にしたもので、正確に測定したわけではありません。

そして脳炎の情報を必死で探しましたがそこにあるのは大抵、希望が持てないような内容でした。

ちょっとした奇妙なしぐさ以外に何もないのに、当時、まだ1歳にもなっていない愛犬が安定剤で昏々と眠っている姿を眺め、悲しくてやりきれない思いでした。

結局、このまま諦めるしかないのか?

私は諦めたくないのだと伝え続けたのですが、治療方針が曖昧なその獣医師に納得ができなくなり、2ヶ月ほどしてセカンドオピニオンを求めることにしました。

そして規模の大きい他の医療機関でこの経過を説明しました。

担当の獣医師としては、いずれにしても他の検査を始めとする画像検査までのやり直しが必要とのことでMRIまで再検査しました。

そして、画像は脳神経専門の獣医師が読影した結果、脳炎等の異常所見なしという診断に変わったのです。

最初の病院で画像検査まで受けたにも関わらず、なぜ脳炎があるとされたのかは不明のままです。

とりあえず多量のステロイドを早急に中止しなければならないのですが、ステロイドはそれなりに継続していれば離脱症状を招くので一気にやめることができない薬です。

その為、一ヶ月ほどかけて徐々に減量し、中止することができました。

私はその時点から現在に至るまでのあらゆる医療について、セカンドオピニオンを担当してくれた獣医師にすべてお任せしています。

【ステロイドの参考記事】

犬のアレルギー治療薬の種類・ステロイドなどの特徴や副作用

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脳炎に完治はない

脳炎は進行する病気で、脳に病変が広がるために発作が起こるわけですから、抗てんかん薬だけで発作をコントロールするのは困難です。

特発性脳炎は、早期発見でき治療開始すれば、致命的になる前に進行を食い止めることもできるようです。

その治療には、抗てんかん薬とともに免疫抑制剤やステロイド剤などが使用されます。

ただ発生の原因も不明で根本的な治療は確立されてない病気で、完治は期待できません。

それでも治療がうまくいき、病気と共存しながら病状の安定ができている寛解という状態は望めるようです。

私が知っている犬で、特発性脳炎を発症し、一時期はとても危険な状態だったにも関わらず治療が順調で、何年も健康な犬と変わらないように暮らしている子も確かにいます。

一方で、治療しなければ予後は不良で、発症後1年以内に亡くなることも多いそうです。

中には、初めててんかん発作を起こしてから短期間で重責発作を起こし、そのまま亡くなってしまうパターンもあるようでした。

ここで重要なのはやはり早期の診断かと感じます。

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てんかん治療の違いと医療機関の選択

私の犬には脳炎はありませんでしたが、その後に大きな発作を起こし、特発性てんかんの診断で内服治療を続けています。

何かおかしいと感じた癖のようなしぐさは、やはり部分発作の1つだったのでしょう。

てんかんの治療は獣医師によって微妙に異なります。

私の犬の主治医は、まず原因を探った上で次に発作をできる限り抑え、脳のダメージを避ける治療方針で、私の希望や考えと合っています。

しかし積極的な原因追及はせず、継続的な内服ではなく発作時だけの対症的な治療という獣医師もいるようです。

発作が落ち着き抗てんかん薬が半分になったという知人もいます。

薬の減量はいいとしても、血中濃度を測り十分な濃度を保たなければ内服する意味がないのではないかと私は疑問に思うのですが。

つまり治療は獣医師によっても違いがあるのです。

そして全ての犬が画像検査までおこなうわけでもありません。

提供される医療と飼い主が求める医療

うちの犬のようなパターンは多分珍しいと思うのですが、これと反対で、てんかんと診断されながら脳炎があることに気づかれていないパターンは案外あるのではないかと思います。

てんかんとして治療されている犬の中には、脳炎が原因になっている可能性はあると思います。

症状からてんかんとして見当をつけ治療をしていて、改善が見られずに重責発作で亡くなってしまった例などは、実は進行した脳炎があったのかもしれません。

動物医療は、どこの病院どの獣医師でも同じではありません。

私の犬は、セカンドオピニオンを受けなければ、必要ないはずの治療薬で命を失った可能性はあります。

画像検査までおこなった上の診断なので私はそれが全てと信じたし、てんかん=脳炎と結びつけたその獣医師の認識はあながち間違っていません。

ただ画像の読影に問題があったということだと思います。

結果的には無事によい病院に結びつきうちの犬は救われ、私はよい方に考えることにして前医には何も伝えませんでした。

どこまでの医療をどの獣医師に委ねるか、後悔しないためにも飼い主はその選択をどうぞ真剣に考えて下さい。

獣医師の方針が違うように、医療を受ける側も何を求めるのかはそれぞれ違うでしょう。

それでも治療の限界・リスク・費用などについて話し合い、信頼し納得し折り合うことのできる医療をどうぞ選択して下さい。

 

まとめ

犬の脳炎、特に自己免疫性脳炎は増えていると言われます。

その理由の一つは、動物医療で画像診断が発達しこのような病気が多く発見されるようになったこと、もう一つは好発犬種である小型犬の飼育数が増えていることなどが挙げられています。

てんかんの犬は多いですが、その中には発見されていない脳炎もあるかもしれません。

うちは結果的に何もなかった方の間違いで運がよかったと言えるのかもしれません。

このことで動物医療の差を改めて認識し選択の重要性も思い知りました。

この経験が皆様の参考になりましたら幸いです。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

 

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